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財政健全化法で拡大した議会の役割

                           

                     (初出:東京市政調査会『都市問題』096月号)

                     奈良女子大学名誉教授 澤井勝

 

財政健全化法で強まる議会の役割

 

 周知の通り、2007年に新財政健全化法が制定され、20084月から施行されている。2009年秋、おそらく9月には2008年度決算による下記の4つの財政健全化判断比率が公表され(公表自体は20089月末に2007年度決算について行われている)、このうち一つでも一定の基準を超えると、1、早期健全化計画の策定(国の関与なし、議会の議決必要)が義務づけられ、さらに悪化すると2、財政再生計画(従来の財政再建計画にあたる計画、国の関与あり、議会の議決必要)を策定することが義務付けられた。

(1)実質赤字比率  一般会計等(普通会計)を対象とした実質赤字の標準財政規模に

対する比率。

(2)連結赤字比率  一般会計、公営企業会計(下水道、病院など)、国保、介護保険、

 など全会計を連結した実質赤字額、および資金不足額。

(3)実質公債費比率 一般会計等が負担する元利償還金、および「繰出金」や「負担金」

に含まれる公営企業債や組合債の元利償還金に当てるもの、債務負担行為のうち公債費

に準ずるもの、一時借入金の利子、などの標準財政規模に対する割合。

(4)将来負担比率  一般会計等の地方債現在高+債務負担行為に基づく支出予定額(P

FI事業に係わるもの、住都公団の建て替え負担金、国営土地改良事業等への負担金、

土地開発公社の土地取得に要する費用など)+公営企業(下水道、病院など)の公債費に

対する一般会計等からの繰り入れ見込み額+組合等の公債費への一般会計等の繰り入れ

見込み額+退職手当支給予定額+第三セクターなど出資法人の負債のうち一般会計等が負

担する見込み額(地方道路公社の借入金の一定部分、土地開発公社に対する債務保証額

および負債の一定額+地方独立法人の繰越欠損金+その他の法人への損失補償の額、等の

標準財政規模に対する割合。

 

 これらの「早期健全化計画の策定」と「財政再生計画の策定」には議会の議決が必要で

ある。このため、議会の審査能力が高めることが求められている。またこれらの財政健全

化判断比率の公開は毎年度、地方自治体に義務づけられているから、その際に議会が十分

にこれら指標について質疑し、議論することが求められていることは当然である。

 また、監査委員については、毎年度の決算審査の一環としてこの財政健全化判断比率の

審査を実施することが義務づけられ、監査委員の権能は格段に広がっている。

「総務省としては(08年)9月下旬に全団体の健全化判断比率等を暫定値として公表する

ことを予定しているところである。健全化判断比率等は、監査委員の審査を経た後、議会

報告や住民への公表が行われることとされているため、監査委員による審査については、

従前の決算審査の時期を早めることを含め、健全化判断比率や資金不足の審査時期との相

互調整が必要になることがある。

また、従来の決算審査にない審査項目が多くあることから、監査事務局と財政部局が事務作業についての十分な共通理解を得た上で、連携を図ることが重要となる。」(総務省財務調査課、「地方公共団体財政健全化法について」平成2064日)。

 

議会改革の進行と討論の場の設定

 ところで、自治体議会はこの財政健全化法に基づく議決という事態にいたる以前に、そ

の本来の権能に基づき、予算及び決算の審議を通じて議会としての統制を行うことが期待

されている。しかし、実際にはその審査能力は十分とは言えず、一部先進的な議会以外は

市民の付託に答えきれていないのが実情だと言わざるを得ない。これには、当局側の議会

への情報提供などが消極的であることも影響している。

 とは言え、この議会による予算・決算審査能力を向上させることも含めて、自治体議会

の改革が進んでいる。市民や研究者による「自治体議会改革フォーラム」が行った「全国

自治体議会実態調査結果」によると回答のあった1508議会のうち、53.9%がなんらかの形

で議会改革を実施し、うち35議会は常設の議会改革推進組織を設置している(『自治日報』

0951日号)。

「議会基本条例」はこの3月末までに54議会が制定済みで、他に73議会が制定を検討

している。執行部の「反問権」を条例や規則で定めている議会は47議会。議員間の「自由討議」を要項や規則でルール化しているのが43議会ある。議会改革の火付け役である北海道の栗山町議会の取り組みで広がっている住民への議員による「議会報告会」は54議会で開かれている。

 三重県議会の「政策討論会」のように、政策提案のための調査・検討の場を委員会とは

別に設けている議会は29ある。

 いずれにしても、議会改革に向けての議員同士が議論する場の設置、「政策討論会」の定

期的開催、住民への議会報告会の開催、などは前記の財政指標の審査に向けた基本的な力

量の形成につながる重要な取り組みである。特に住民への「議会報告会」は重要である。

一般に人は誰でも、だれかに説明をしようとすることで、説明内容の理解が確実なものと

なるのは真実でなのである。

 

財政健全化判断比率を理解するために

 ところで08年の12月に筆者が三重県議会の第3回政策討論会(財政問題)で報告、討

論を行った際の印象を記しておきたい。政策討論会のテーマは、議会が三重県議会基本条

例に基づいて設置した別の専門研究会の報告書である「第一次答申」についての評価であ

った。その評価については次のように指摘させてもらった。

(1)財政健全化判断基準は従来の決算統計に基づく指標と企業会計に基づく指標とが混

在した指標であり、それが理解をしにくくしている。実質赤字支比率はキャッシュフロー

を把握する現金主義決算に基づく決算統計から導出される指標である。

一方で、連結実質赤字比率は、一般会計という現金主義会計の赤字と公営企業会計など

発生主義を基にした企業会計の資金不足(資金余剰)を合算したもので、便宜的な数値である。また「将来負担比率」は発生主義をかなり加味した指標である。

(2)したがって、この二つの会計原理を共に一定程度理解しておく必要がある。すなわ

ち、経常収支比率のような現金主義のフローの把握による財政硬直化の程度の読み方に習

熟する必要がある。平行して、各会計の行政コスト計算書と貸借対照表とが既に作成され

ているから、それをも理解を深めることが求められる。

 

現金主義会計のメリットとデメリット

(3)現金主義のメリットは、直感的にキャッシュフローについての情報を把握することができるところにある。そのため、議会や行政が歳出予算についてその支出を客観的な数値によって監視し、統制することが容易な方式といえる。またそれに基づく情報は、高い信頼性と比較可能性をもち、予算統制を容易にする。また現金主義は、複雑で専門的な会計学の知識を必要としないので、工夫次第で情報の説明や理解が容易である。

特に企業会計と異なり、報告し説明する対象が異なるのでこの専門的知識をそれほど要しないという特徴は重要なメリットである。公会計のステイク・ホルダー(顧客、利害関係者)は、民間企業会計であれば銀行や証券会社など投資家としての金融機関、個人投資家など専門家が主たる顧客だが、公会計はそれとは異なる。最大の相違点は、住民が究極の主権者であり、その主権者の理解を得ることが最大の政策課題だという点である。もちろん、地方債などへの金融機関投資家などへの専門的説明も必要であるが、それはいわば二次的なものである。

(4)また営利企業と自治体ではその存立目的が異なる点も重要である。民間企業では「利益の追求」がもっとも大きな目的であり、善である。しかし、自治体の場合は、その存在理由は「住民の福祉の増進を図ること」(地方自治法第1条の21項)であって、利益を目的とすることは公営企業や第三セクターなど付随的な機関の目的である。したがって、民間企業の経営判断の中心は損益計算書(PL)に示された経常利益、税引後利益の増減などだが、総務省方式での損益計算書にあたるものは「行政コスト計算書」になっているわけであり、そこでの赤字や黒字の内容が経営判断指標としてのポイントになるのである。

(5)現金主義会計のデメリットは既に触れたように、現在および将来のサービスの提供能力に影響する、資産や負債というストック情報が得られないところにある。また現在のコストの把握も、資産の減価や退職手当の費用など、将来の正確なコスト(期間コスト)の情報も、それ自体としては得ることができない。したがって、総合的な財務状況の把握には情報が不足することとなり、企業会計方式の活用が求められている、といってよい。

 以上の報告をもとに、報告への質問や出席議員同士での意見交換が行われたが、ごく初歩的な知識の理解や、考え方の相違を確かめるなど率直な話し合いが持たれた。このような率直な意見の交換の場として、この制作討論会が機能し始めていることが感じられた。ここから新しい政策をつくるための議会としての意思形成が進むことが期待される。

 

財政計画による予算統制と議会――多治見

 ところで、予算統制の基本的な形式は財政計画である。この財政計画は、この間の財政危機の進行によって、かなりの自治体で策定され、公表されるようになった。財政計画は普通、歳入の見積もりと歳出の見積もり、および歳出削減の計画、および歳入確保策の4つの項目からなる。ただ、財政危機の認識の程度と当局、特に首長の危機意識および財政部局のそれの程度によって拘束力が異なってくる。

 岐阜県多治見市は西寺雅也前市長時代に、「中期財政計画」による予算統制を築き上げてきたことで著名だが、200712月に「健全な財政に関する条例」を策定し、今後の予算統制の強化を図ろうとしている。この条例は、特に独自の「財政判断指標」(条例第15条)を設けている点に最大の特徴がある。その独自の「財政判断指標」とは4つあり、「償還可能年数」、「経費硬直率」、「財政調整基金充足率」、「経常収支比率」、である。

このような独自の「財政判断指標」の策定とその運用を、条例に基づき行うことは、総務省など国の策定する指標に依存せず、自らの判断で「財政規律」を確立することを自らに課すことを意味する。その意味では、極めて自律的な自治を目指す取り組みであり、高く評価されている。ここで「自律的」とは、自ら立法し、その自治の立法によって統治する、と言う意味である。そのような自律的な財政規律を自らに課すために、条例は、市長及び議会に多くの義務を課している。

(1)条例の第6条は市長に対して、毎年度、財務諸表4表を作成し、議会への決算認定にあたってはこれら財務諸表を付すことを命じている。財務諸表4表とは、貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書、である。この財務諸表は、普通会計のそれと、公営事業会計および出資法人(市が2分の一以上出資)との連結財務諸表の二つ、である。

(2)第18条では、市長に毎年度、「総合計画との調整のもとで、中期的な期間における各年度について、中期財政計画を策定する」よう求めている。その中期財政計画には、1、一般会計における歳入の見込額及び歳出の計画額、2、財政判断指数(第15条)の見込み、3、財政調整基金等の財政運営に関する基金残高、が盛り込まれなければならない。

(3)第19条では、市長は予算案を提出するに当たっては、当該予算をふまえた財政判断指数の見込みを合わせて提出し、議会の議決に付すべきことを定める。

(4)決算の認定にたっても、財政判断指数の見込みを合わせて、議会の認定に付すことを定める(第20条)。

 

財政向上目標と財政向上指針

(5)この他に、第21条で「財政向上目標」を、市長の任期ごとに定め、議会に報告し公表すること、第22条では、「財政向上指針」を、市長の任期ごとに定め、議会に報告し公表すること。そして第23条ではこの「財政向上指針」策定に当たっての「市民参加」を義務づけている。さらに第25条では「財政健全基準」の策定をすることと、それを議会に報告することと市民参加を規定している。

(6)財政状況が悪化したときには、第一段階として、市長は「財政警戒事態宣言」を出す(第26条)。これは「中期財政計画における計画期間内の財政判断指標の見込みのうち1つ以上が財政健全基準を満さなくなったとき」である。これに伴い、市長は、「財政向上指針」に代えて「財政正常化計画」を策定しなければならない。なおこの「財政正常化計画」については、市民参加の義務づけはあるが、議会にたいしては報告することとされ、議決の対象となっていない。

(7)さらに悪化して、「財政判断指数の見込み及び決算における財政判断指数の実績のうち1つ以上が財政健全化基準を満たさなくなったとき」は「財政非常事態」を宣言し、「財政健全化計画」を策定しなければならない(第29条)。この「財政健全化計画」は議会の議決を必要とする。

 なお、財政判断指数の算定をどの範囲で行うかについては、本条例の施行規則で定めている。対象とする負債の範囲は、次のように、一般会計と特別会計である。市債残高は臨時財政対策債を含む。また上下水道事業への繰り出し金および債務保証と損失補償、一部事務組合の地方債残高のうち負担金で負担する額などの準公債費を含む。

 多治見市の特別会計は次の8会計である。南姫財産区特別会計/土地取得事業特別会計/下水道事業特別会計/駐車場事業特別会計/国民健康保険事業特別会計/老人保険事業特別会計/介護保険事業特別会計/一般廃棄物埋立税を財源とする環境整備事業特別会計。

この他に企業会計として、水道事業会計と病院事業会計があり、これらも負債算定対象会計となる。なお、よく問題となる公共用地の先行取得事業は「土地開発公社」ではなく、「土地取得事業特別会計」で実施しているようである。また、多治見市の特色として、法定外目的税として「一般廃棄物埋立税」を設け、それを財源に環境整備事業を行っていることが注目される。

 なお、この多治見市の独自の財政指標の設定とそれを軸にした財政統制に、多くの示唆を得ることができるが、デメリットもある。それは他団体との比較ができないという点であり、このデメリットを是正するためには、財政健全化判断指標などに基づく全国標準の指標の積極的活用も必要であるのは言うまでもない。

 

予算・決算統制の基本は一般会計(普通会計)の健全化

 ところで財政健全化法による「財政健全化判断比率」の一つの特色は、「連結決算」の考え方を大きく取り入れたことである。この秋に、「早期健全化計画策定団体」となるかどうかは、病院の累積債務、公営交通の営業赤字、土地開発公社の損失補償や借入金など他の特別会計や出資法人など第三セクターの赤字や資金不足、不良債務などが表面化した団体がそのほとんどを占める。財政健全化法と「健全化判断比率」はこれらの今まで隠されてきた赤字を表面化するところに一つの基本的な狙いがあったから、そのように制度設計されているのである。

 したがって、これらの病院事業や公営交通事業、それにレジャー施設などの財政健全化は、それぞれ固有の課題があり、それを解決するべく収支計画の改善を基軸とした経営健全化計画が立てられることになる。ただし、その際に、不良債務の肩代わりや利子補給、借り換えなどに一般会計からの支援があれば、健全化計画の内容や期間は全く異なることになる。

 そういったことも含めて、連結した自治体会計全体の立て直しを図るための基本的な課題は、まず一般会計(普通会計)の健全化を先行させる必要があるということになる。なぜなら、自治体の基本的な収入は税収であり、それ以外は、強制力のない企業的な収入か、手数料や使用料など公共サービス提供の対価である。サービスの対価であると言うことは、それなりのコストがかかり、それが公共性の高いものであるなら、それで稼ぐということにはならない、という性格を持っている。すなわち、地方自治体の収入はあくまで税収が基軸である、という原点に立ち返るべきなのである。

 

標準財政規模の確保と経常支出削減による「財源余剰」創出

 一般会計はまず租税収入の受け皿である。租税はサービスの対価ではないから、サービスを縮小したり廃止したりしても、それとは無関係に入ってくる収入である。極論すれば、自治体財政の一般会計を黒字化するための早道は、「働かないこと」である。働かなくても、収入は確保できるのである。

 たとえば多治見市の「財政判断指標」のうち、「償還可能年数」は、一般会計の起債残高と特別会計の負債(準公債費になる下水道事業債や病院事業債、ローンに当たる債務負担行為なども含む債務)を、一般会計の歳入である経常一般財源で除した数値である。この経常一般財源とは第一に地方税収入のうち超過課税を除いた経常収入の見込額である。第二は、地方交付税のうち特別交付税を除いた普通地方交付税の見込額である。多治見市の場合は、さらにこの経常一般財源を計上支出に充てる経常経費充当一般財源として絞っているから、「償還可能年数」はかなり余裕をもたせた係数となっている。

 また、財政健全化法の「財政健全化判断比率」のうち、「実質公債費比率」にあっても、分子は各会計の公債費にかかる元利償還金と、準公債費を加えた額から都市計画税など特定財源を除いた額であり、連結決算の考え方が導入されているが、分母は一般会計の標準財政規模である。「標準財政規模」とは地方自治体の一般財源の標準的大きさを示す指標で、実質収支比率、実質公債費比率、連結実質赤字比率、将来負担比率、経常収支比率などの基本的な財政指標や財政健全化判断比率の分母となる重要な数値である。その大きさは、「標準税収入額+普通地方交付税額+地方譲与税」で求められる。言い換えれば、標準的に収入しうる「経常一般財源」の大きさである。標準税収入額とは、基準財政収入額から地方譲与税を除いた額を基準税率(75%)で除した額である。なお、2004(平成16)年度以降は、臨時財政対策債発効可能額もこの標準財政規模に加えられている(地方財政法施行令附則第12条の規定による。)

 言い換えれば、各特別会計や第三セクターなどの経営健全化の基盤となるのは、突き詰めて言えば一般会計における税収及び普通地方交付税である。この経常一般税源を確保するとともに、経常支出の削減とそれに充当する経常一般財源を抑制し、同時に投資的経費に充当する一般財源を圧縮することで、一般会計における「財源余剰」を生み出すことが、財政健全化のスタートであり、また健全化全体を推進する基本的なエンジンなのである。

 

兵庫県の「条例」と「方策の議決」による予算統制の深化

 200810月、兵庫県議会は「行財政構造改革の推進に関する条例」とそれに基づく「行財政構造改革推進方策」を共に議決した。行財政改革計画推進を議会の議決で決めた例としては、管見によると東京都墨田区(墨田区行財政改革推進条例、20004月、現在は例規集になし)や千代田区(千代田区行財政改革に関する基本条例、20024月)の例がある。墨田区の場合は、これによって公募委員も含む行財政改革推進委員会(竹下謙委員長)をおき、「行財政改革大綱」を策定している。2006年には行財政改革推進区民会議(中邨章会長)を置き改定を行っているが、いずれも議会の議決はないものと考えられる。千代田区がこの条例で二つの数値目標、すなわち、経常収支比率85%程度、人件費比率25%程度を掲げているのがめずらしい。

 兵庫県の場合は、1995年の阪神大震災の復興事業による地方債残高が大規模に残っているため、経常収支比率が2007年度決算で103を超える状況が続く。将来負担比率も361.7%と早期健全化比率400%に近いし、実質公債費比率は20.2%で起債許可団体の比率18%を超えている。このため行財政構造の健全化推進を条例で縛り、議会の議決で合意を取り付けるところに特色がある。

 200810月に議決された「行財政構造改革の推進に関する条例」は、他に例を見ない条例で、中心は、第3条の「行財政構造改革推進方策」を定めることとしたところにありし、その「方策」は第4条で「議会の議決」を必要とするとしている点がポイントである。この条例議決に伴い、「行財政構造改革推進方策」も106日に県議会で議決されている。諮問機関として、有識者による「行財政構造改革審議会」(委員7名)と「行財政構造改革県民会議」(委員39名、公募委員、県会議員などを含む)を置いている。さすがに「実施計画」(第6条)については議会の議決を求めていないが、知事は議会に報告する義務がある。

 この「行財政構造改革推進方策」を「新行革プラン」と呼んでいる。内容は、A4198頁の膨大なもので、その中では平成30年度までの「財政フレーム」や一般職の定員の2700人の削減、全職員の給与を4.5%から9%削減すること、期末・勤勉手当など各種手当ての削減、なども議決の対象となる構造となっている。

 行政施策では、1,事務事業については、旅費、賃金、需用費、使用料、委託料などは平成19年度当初予算の70%水準へ削減。超過勤務手当は同じく85%水準に抑える。2、施設の維持管理については、概ね85%水準に抑制する。その内容は長期継続契約への切り替え、電力など入札の実施による契約業務の工夫、保守点検など回数の見直し、指定管理者導入時に公募を実施、県有施設の空きスペースの活用、など。

 財政フレームでは、2018年度までの財源不足額を11984億円と見込み、これに新規事業に必要な300億円を加えて財源不足を定めている。これに対して起債を抑制しながら、人件費や事務事業費、投資的経費の削減などで8760億円の財政効果をあげるとしている。

 2009218日には、昨年途中からのリーマンブラザーズショック以来の世界経済の急変と、税収見込みの急速な落ち込みなどを盛り込んだ09年度県予算に合わせて、この「方策」を変更する議案が提出され議決されている。内容的には歳入の減と、政府予算に基づく歳出の増に合わせて、地方交付税の増や基金の取り崩しなどと、事業ごとの変更が盛り込まれている。これらはすべて議会の議決事項である。

 このような兵庫県の取り組みは、「県は過去2回にわたって行革計画を策定したが、財政状況は悪化。失敗を繰り返さないために条例化に踏み切った(神戸新聞、08917日)」と指摘されているが、議会の予算・決算統制に新しい展望をもたらす可能性もあり、引き続き注目していきたい。

 

おわりに  予算・決算統制と数値目標

 予算統制の中心は多治見市でも兵庫県でも、個別の事業にまで下ろした数値目標の設定であり、それを議会の議決や審議に関わらせている点である。その点では、国における小泉内閣の「骨太の方針」が毎年閣議決定され、「社会保障費の伸びを毎年度2200億円抑制する」ことや「プライマリーバランスの2011年度黒字化」という、わかりやすい政策基準によって毎年度の予算を統制し、歳出を抑制するのにそれなりの効果があったことが参考になる。ただし、この小泉構造改革は、特に地方財源と社会保障財源を誤った「小さな政府論」に基づいて削減し、貧困の構造化を推し進めたという観点から賛成できない。

地方自治体の場合は、期限を切って「経常収支比率90%」とか「人件費比率25%」、「実質公債費比率16%」などの数値目標を設定することが必須条件である。それに加えて、この数値目標の決定を議会の議決でできるようすべきである。そのために執行機関の積極的な協力と議員の審査能力の向上を引き続き進める必要があることを繰り返し強調しておきたい。

なお、議会に関わる予算統制という議論とは別に、財政マターの施策として有力なのは、政策的経費の「枠配分」方式の採用による予算編成の分権化を推進すること、単年度主義から複数年度予算への改革、そして鳥取県から始まった予算編成過程の公開とともに、智頭町の100人委員会のような予算編成への市民参加の推進にも期待するところが大きい。

 

 

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