TOPPAGE自治体財政をめぐるコラム>財源不足はなお不足

財源不足はなお不足              
(初出:『自治日報』09年1月15日号)

                      奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

 

2009年度の地方財政対策の特徴のひとつは、「地方財源不足」が104700億円となり、3年ぶりに国の一般会計からの交付税の加算措置(臨時財政対策加算25600億円)が復活したことである。このこともあって、地方交付税特別会計の入り口ベースでは法定率の交付税および国税清算分の先送り等と麻生総理のお声がかりの1兆円加算などで161113億円と今年度比6.4%増となった。一方で、地方財政計画の規模は825600億円程度となり、今年度より8500億円、0.1%減となっている。そのため、国の一般会計885480億円とは著しい差が開いた。国のほうは、埋蔵金と言われる特別会計剰余金など66千億円あまりを緊急に一般会計に繰り入れ、一般歳出を517千億円と9.4%伸ばしている。これに対応する地方の一般歳出はわずか0.7%しか伸びていない。この国と地方の財政規模の不均衡は、年度途中で、多分地方の借金で修正せざるを得ないことになろう。

「地方財源不足」とは、国と自治体の予算を円滑に執行するのに必要と考えられる地方の一般財源を、地方税や地方交付税などの制度的な一般財源の収入でどの程賄えるかを測ったときの不足額をいう。この「地方財源不足」は、地方交付税の借金による増額、臨時財政対策債の増発などによってとりあえず補填されている。

ところでわが国の地方自治体は、欧米諸国に比較して、総合行政庁としての性格が鮮明で極めて重装備である。最近の家族関係や地域社会の崩壊に対してそれを立て直す仕事の最前線を担い、風力発電やバイオマスの開発など地球環境問題への対応や、グローバリゼーションによる地域経済の空洞化に立ち向かうのも自治体である。分権改革と市町村合併によってこの傾向は一層強まっている。経団連など「小さな政府論」からする道州制については1126日の町村長大会の強い反対表明もあり、行方はわからない。しかし、基礎的自治体重視の方向は変わらないとすると、なお自治体の仕事は増えることになる。

法律による授権によって重装備となるわが自治体は、慢性的な財源不足に悩まされてきた。この構造的な財源不足を解消するには総合行政主体をやめるか、大幅な税源移譲と税制改革および地方財政調整制度の拡充的再構成が必要である。しかし総合行政主体をやめることはまず無理である。とすれば毎年度の予算編成過程で、この税制改革と財政調整の拡充の方向を目指すことが求められる。すなわち財源不足額を地域のニーズに合わせてさらに拡充する必要があるのだ。

だが地方財源不足は三位一体改革で大幅に圧縮されてきた。すなわち03年度の13.4兆円から08年度の5.2兆円に8兆円以上。この地方財源不足の削減(地方財政計画の圧縮)は、第一に地方単独建設事業の削減、第二に地方公務員の定数の削減(毎年度1万人の純減)、第三に民間委託やアウトソーシングなど一般行政経費の削減、によって行われた。

この結果、地域経済は地方単独事業が半減する一方で、それに代わるソフトな新産業を興すことができず疲弊し荒廃している。役場では正職員の退職不補充を臨時職員で埋めたために職場の半数が非正規の臨時職員やアルバイト、派遣社員に入れ替わり、サービスの低下を通じて住民生活の安心を脅かしている。またアウトソーシングで行政責任の放棄が問われる例が増えている。地域も職場もズタズタなのだ。

この間の財源不足圧縮は明らかにオーバーキルである。今回の財源不足10兆円では、これをカバーするにはなお極めて不十分である。深まりゆく危機を、新しいセイフティーネットの再構築のチャンスととらえ、労働規制強化のための要員や就労支援員、介護や医療労働者、林業労働者、新エネルギー開発要員など少なくも20万人単位での増員が必要である。麻生総理の「交付金1兆円(交付税1兆円)」の掛け声で生まれた「地域雇用創出推進」枠を5千億円ではなく、3兆円に拡大しなければならないのである。

新年度に入ってからの1兆円の予備費執行も含め、追加的補正予算が必要になるのは必至である。その補正予算も含め、将来の地域を創る戦略的視点に立った機敏な取り組みが求められる。

Copyright© 2001-2009 Masaru Sawai All Rights Reserved..