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滋賀県市町村財政の現状と課題ーー06年度決算と新財政健全指標
              2001年度決算から2006年度決算のラフな検討          

                                       2008621日                    滋賀地方自治研究センター第16回定期総会                           於いて:野洲市中央公民館                           当センター理事 澤井 勝

                            

T、新世紀に入ってからの地方財政と新財政再建法

1、滋賀県の市町村財政は、この平成132001)年度から182006)年度にかけて、急速に悪化してきた。

この時期は経済財政諮問会議を舞台に小泉内閣(014月)のもとで財政構造改革が進められ、地方交付税の削減(21兆円から15兆円に)、補助金の削減(4兆円)と地方税への税源移譲(3兆円)が行われた時期である。いわゆる「骨太方針」が本格的に組み立てられたのは2002年の6月である。同年1120日には「片山案」として「三位一体の改革」が諮問会議に提案されている。

 

2、この骨太方針のもと、第一に地方財政計画の規模は01年の893千億円から、08年度の834千億円まで、5兆円ほど縮小している。最も大きく縮小したのは、投資的経費で01年度の271700億円から2005年度の148151億円に約45%の減少となっている。つまり半減である。人件費は01年度の236254億円から、08年度の222071億円に6%ほど圧縮されている。

 

3、歳入では地方交付税の圧縮が大きい。すなわち、01年度の203498億円から08度の154061億円に、ほぼ5兆円、ほぼ25%削減されている。なお、00年度からすると6兆円の減である。

   地方税は税源移譲もあり、01年度の355810億円から、08年度の404703億   円に増加している。しかしこの地方税の増加も、大きな地域格差をもたらしてい   る。東京都や愛知県に地方税が偏在するかたちだが、一般財源の総額は、01年の     559千億円から08年度の558千億円にほぼ横ばいである。

 

4、地方財政計画規模の圧縮は、一般行政経費の伸びを抑え、それが特に福祉や医療に関する経費の抑制につながっていると思われる。

   

5、昨年には新財政再建法が制定され、084月から施行されている。4つの財政健全化指標が一定の基準を超えると、1、早期健全化計画の策定(国の関与なし、議会の議決必要)、または2、財政再生計画(従来の財政再建計画、国の関与あり、議会の議決必要)を策定することが義務付けられた。

(1)実質赤字比率  一般会計等(普通会計)を対象とした実質赤字の標準財政規模に対する比率。

(2)連結赤字自立  一般会計、公営企業会計(下水道、病院など)、国保、介護保険、など全会計を連結した実質赤字額、資金不足額。

(3)実質公債費比率 一般会計等が負担する元利償還金と繰出し金や負担金に含まれる公営企業債や組合債の元利償還金に当てるもの、債務負担行為うち公債費に順ずるもの、一時借入金の利子の標準財政規模に対する割合。

(4)将来負担比率  一般会計等の地方債現在高+債務負担行為に基づく支出予定額(PFI事業に係わるもの、住都公団の建て替え負担金、国営土地改良事業等への負担金、土地開発公社の土地取得に要する費用など)+公営企業(下水道、病院など)の公債費に対する一般会計等からの繰り入れ見込み額+組合等の公債費への一般会計等の繰り入れ見込み額+退職手当支給予定額+第三セクターなど出資法人の負債のうち一般会計等が負担する見込み額(地方道路公社の借入金の一定部分、土地開発公社に対する債務保証額および負債の一定額+地方独立法人の繰越欠損金+その他の法人への損失補償の額。

6、財政健全化の指標

               早期健全化基準       財政再生基準

             市町村   都道府県    市町村    都道府県

(1)実質赤字比率    11.25%   3.25%     20%      5

              〜15

(2)連結実質赤字比率  16.25%   8.75%     30%     15

              〜20

(3)実質公債費比率     25%   25%     35%     35

(4)将来負担比率     350%   400     なし     なし

 

 

 

U、滋賀県市町村の財政状況(平成13年度から18年度決算から)

                 主に「普通会計決算 決算カード」から

 

7、歳入面での特徴 その一(主に13市の決算を見ながら)

(1)標準財政規模はおおむね縮小してきた。標準財政規模とは、経常的に収入しうる一般財源の制度的な大きさ(地方税、普通地方交付税、譲与税、税交付金)であり、主な財政指標の分母となる基本的な歳入である。

 大津市では01年の602億円から06年の562億円と6.4%も縮小している。この間に住民基本台帳人口は12千人ほど増加しているにもかかわらず。したがって住民一人当たりはさらに小さくなっている。他の12市も例外なく減少している。

(2)基準財政収入額(普通地方交付税を計算するときもちいる標準的な税収入の75%)

はこの間におおむねよこばいから漸増となっている。これは特に06年度の地方税の定率減税半減の影響が大きい。(景気回復による法人税収増も)

(3)基準財政需要額(普通地方交付税算定を計算するときに用いる標準的な行政をするときに必要と考えられる一般財源の額)は、この間に相当程度、縮小してきた。これが普通地方交付税の減の原因となっている。大津市で300億円、彦根氏市20億円、長浜市1億5千万円、近江八幡で10億円、草津市で10億円、守山市6億円、栗東市はプラス38千万円、甲賀市で5千万円、野洲市は?、湖南市で5億円弱、高島市で46千万円、東近江市で12億円、米原市が4億円程度。

(4)したがって財政力指数(基準財政需要額÷基準財政収入額)は分母が横ばいで分子が小さくなっているので、当然上昇気味である。すなわち普通地方交付税はこのように、需要額の縮小によってもたらされている。したがって、交付税の5兆円の復元を主張するなら、この需要額を大きくすることが求められる。

(5)財政調整基金は取り崩しが続き、13市中9市(大津、彦根、栗東、甲賀、野洲、湖南、高島、東近江、米原)で減少してきている。

 

8、歳出面での特徴 その一 経常収支比率は上昇して財政の硬直性は高まっている。

(1)経常収支比率は大津市と長浜市のほかは上昇してきた。すなわち財政の硬直化がすすんでいる。

(2)経常収支率の中の人件費の割合はおおむね低下傾向にある。

    ・一般職の職員数は例外なく減少している。

(3)一方で、扶助費は着実に構成比を高め、実数も増加している。

(4)公債費の占める割合はおおむね上昇している。その水準も20%を越える水準に達している。

(5)地方債現在高比率(地方債現在高÷標準財政規模)は一部の例外(草津、湖南)をのぞき上昇し、水準も高くなっている。大津は188.8から208.8、彦根は195.1から203.6に、長浜は158.5から193.7に、近江八幡でも157.9から165.7に、草津は206.3から204.3に若干の下げ、守山は166.4から177.6に、栗東は228.8から337.3に。甲賀は143.4から209.2に、野洲は150.8から235.9に、湖南は171.6から171.3とやや下がる。高島は164.5から239.0に、米原は154.7から211.0に。

(6)積立金残高比率(財政調整、減債、その他目的基金の合計を標準財政規模で除したもの)は低下している。

 

、収支等

(1)実質収支は黒字を維持している。

(2)しかし、単年度収支、実質単年度収支が連続して赤字の団体が目立つ(湖南市、甲賀市、東近江市、米原市など)。

(3)財政規模(歳入総額、歳出総額)はよこばいか縮小傾向。

(4)地方税はよこばいか減少。

(5)地方交付税は守山で10億円(2919に)、甲賀市が72から6110億円、野洲市が19から163億円、湖南市が19億から10億に9億円の減。

(6)地方税は市町村民税個人所得割は上昇傾向にある。これは税源移譲の影響が大きい。
 ただし個人住民税の課税所得は低下してきている。ひとつは退職者が増えて年金生活に移る場合が多い。二つは、非正規雇用が3分の一を占めるために所得は減少。法人税割も復活しつつある。

(7)固定資産税は減少傾向がとまらない。これは地価の下落が止まらないからである。

 

10、歳出の特徴 その2

(1)民生費が第一の歳出科目である。しかもこの13年〜18年の間に大きく構成比を伸ばしている。大津で21.5%から28.8%に、彦根は20.4から26.2に、長浜が18.0から22.8に、近江八幡は23.5から28.6に。草津市は21.1から30.5に、守山は21.6から26.4に、栗東は14.4から23.8に、甲賀が17.5から22.7に、野洲は15.1から21.1に、湖南は20.2から25.7に。高島が14.5から18.9に、東近江は19.7から21.9に、米原は15.4から25.4に。

 最高は大津の28.8、最小は高島の18.9。今後はこの民生費の内容の分析が必要である。児童なのか、高齢者なのか(この場合は介護保険と老人保健をともに検討する)、生活保護か、など。

(2)ついで教育費が依然として大きい。その構成比、すなわち市町村財政におけるウェイトは比較的コンスタントである。

(3)おおむね第3位は土木費となっている。民生費が伸びている反面、土木費は大きく構成比を下げている。大津が26.7から15.7に、彦根は21.9から18.3に。長浜は26.9から22.9に。近江八幡は12.3から8.6に、草津は28.9から17.3に。守山が14.6から10.7に、栗東が27.8から15.5に。甲賀は16.6から9.5に、野洲は12.7から10.3に。湖南は12.2から9.2に、高島は15.1から10.6に、東近江は15.3から7.5に。米原だけがウェイトを高めて、10.5から19.2に。
(4)第
4位に衛生費が来る場合が多い。

 

12、公営企業等への繰出し金

公営企業等への繰出し金のウェイトは、ここのところ高まってきている。中心は下水道であり、病院、水道である。

公営企業等への繰出し金の構成比   

 

01

06

 大津市

10.1

12.0

彦根市

9.9

13.6

長浜市

8.5

9.0

近江八幡市

7.6

9.9

草津市

9.6

9.8

守山市

10.8

10.5

栗東市

5.6

7.0

甲賀市

7.9

8.8

野洲市

7.7

6.1

湖南市

8.1

9.8

高島市

9.0

12.5

東近江市

8.3

9.1

米原市

8.3

11.9

 

13、その他

 (1)コミュニティ・ファンドの形成  市民の資金をプールする必要がある。これに企業の寄付や、行政の支援金を加えて、必要なところに必要な資金を投資する仕組みが作られてもよい。市町村でいえば、「ふるさと納税」を活用して、基金を造成することも考えられる。

(2)職員数が減る一方で、分権もあって、事務事業と権限は増加している。たとえば児童虐待、DV法、高齢者虐待。また景観法など都市計画事業でも。職場は仕事をこなすので精一杯で、深く考えて地域の本当のニーズをつかめていない。おざなりの対応に終始する。公共サービス水準の劣化が進む。他方で、一般財源は圧縮されたままである。

(3)臨時職員やパート、アルバイトが増加している。これら職員のスキルアップや給与水準の保障に対応できていない。ここでも公共サービスの劣化が生じている。定数削減と定員の補充についてまず人事政策を明確にすること。その上で、これら非正規雇用の労働のスキルを引き上げ、給与水準を引き上げることが必要だ。正規に戻すことが可能であればそれでもよい。

(4)指定管理者の指定や、民間委託の委託契約などアウトソーシングのかたちごとの事業契約について、公正労働基準や総合評価システムの導入を図る。環境政策の有無、労働法関係の遵守、男女共同参画や子育て支援基準を導入する、公契約改革をすすめる。

(5)税の徴収率の向上が求められる。徴収率が95%をきると、急激に下がっていく。納税をしている人の権利を守るためにも、公正な税徴収が求められる。

(6)国のいうことには従うふりして、己の信ずる道を行くのが正しい。このことは介護保険制度改正のたびに痛感するところ。「特定高齢者」?介護予防の『筋トレ』?一般高齢者と切れたところでなにをやっているのか。

(7)つまり、限りある税金をいかに生かして使うか。そのために、予算と決算の情報をわかりやすく開示し、途中で市民が議論に参加できる仕組みをつくることが急がれる。

 

おわりに