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人口減少時代との付き合い方

(初出:奈良自治研センター『自治研なら』109号、2013年11月)

奈良女子大学名誉教授 澤井勝

 前号で、人口減少の影響が、住民税などの税収減として、まだ人口が増えている香芝市や生駒市でも顕著になってきていることに触れた。問題はこの先だ。この人口減少時代を、地域の人々の生活を荒廃させることなく、減少の程度をゆるやかなものとしながら、どこかに安定的に着地することは可能だろうか。

一方では、子供の数が減っていくことを大前提に、それを受け入れたうえで、地域の高齢者中心の村を支えていくことに関心を集めている地域がある。医療や介護サービスの充実、季節の祭りの維持のための工夫。保健サービスと食の改善などで健康寿命を延ばすなど。これをA型としよう。

それも一つの選択肢として、地域の資源を生かしながら、若い世代の生活を支えて子供の数を増やし、地域が継続していくことを中心に考えるという選択肢もある。事実、このような問題に、果敢に立ち向かっている地域もある。これをB型とする。

 ところで、この人口減少で、地域に子供がいなくなり、小学校や中学校の統廃合が進んでいることは、過疎の山村だけではなく大阪、京都など大都市部でも同じだ。奈良県でも奈良市では柳生中学校の存廃や、精華小を帯解小に統合する話、佐保台小の統廃合などの議論がある。しかし奈良市の「学校規模適正化検討委員会」での議論を見てみると、子どもの数が少なることを当然の前提として、それに合わせた教育内容を確保するための議論になっている。小規模校では児童の発達に差しさわりが出る。また複式学級での学習困難などが危惧され、それを回避するために統廃合が必要だという議論だ。ここには、地域の人々の生活全体を、どう再生するかという視点が欠けている。行政の縦割りのせいだろう。

違う例もある。105号で紹介した下条村の隣にある長野県泰阜村(やすおかむら)は、人口1800人だが、昨年の人口の社会増は県内一で、高齢化率も2005年にピークをつけ、ここ7年は38%程度でやや下がり気味だ。在宅福祉は1985年ごろから独自に取組み、まず診療所のドクターを中心に、訪問看護と訪問診療を展開する。最近は訪問看護士が常勤で4名、非常勤1名、それに診療所看護師2名、常勤のヘルパー7名、非常勤4名の体制である。また必要な人には、一日57回の訪問介護、看護サービス、デイサービスを行い、介護保険の利用限度額にはこだわらない。この在宅福祉事業によって寝たきりの人はごく少ないし、高齢者医療費も県平均よりかなり低い。一方で、若者定住の施策も、空き家確保や公営住宅の建て替え、若者人口増加促進助成金など手厚い。これらによって高齢化率が安定していると思われる。A型で始まり、今はB型に力を入れる、そういう流れかもしれない。

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