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硬直化が進む三重県財政              
                      
(2008年9月24日、三重県自治研センター)


                    奈良女子大学名誉教授  澤井 勝

財政力類似府県と比較すると

 三重県の財政の特徴を、同じ財政力指数のグループで比較しながら検討してみよう。「財政力指数」とは、普通地方交付税の計算に用いる「基準財政需要額」を分母にして、「基準財政収入額」を割って求める。簡単に言えば、普通の状態で県が行うべき行政サービスにどれだけの一般財源が必要か、その必要な一般財源を三重県がどの程度自らの税収で賄えるか、を見るための指標が財政力指数である。

 三重県の財政力指数は、インターネット上で手に入る最も新しい06年度決算では0.54であり(人口は185万人)、この財政力指数0.5台のクラスには、滋賀県、京都府、兵庫県、広島県、栃木県、群馬県、福岡県がある。このうち海を持たない栃木県と群馬県を除こう。滋賀県(人口138万人)も海を持っていないが、琵琶湖という湖を包み込んでいるので比較の相手としてはいいことにしよう。兵庫県は人口規模が558万人、福岡県は505万人と大きすぎるので除いたほうがよい。京都府(256万人)と広島県(287万人)は、それぞれ指定都市があるので、本来なら比較するのには問題がある。県の機能はその分制限されているからだが、ここではそれには目をつぶっておこう。ということで、ここでの比較対照は三重県、滋賀県、京都府と広島県の比較ということになる。その比較表が付属の「三重県財政診断表」である。

 付:「三重県財政診断表」
(エクセルの分析表です)

 

三重県は一人当たり税収が良い

この表から最近の三重県の財政の特徴がいくつか見えてくる。第一には、地方税の収入力が高い、ということである。この4府県の県民一人当たりの税収(表の一番左にある番号で6行)は三重県が一番大きい。06年度決算で、三重県が131870円、以下、滋賀県の123290円、京都府の121230円、そして広島県は12589円。三重県は京都府や広島県より県民一人当たりの税収では1万円あまり多いのである。

 内容を見てみる。個人の所得割では様相が異なり、4県の中では一番小さく、一人当たりの住民税は17千円あまり。4府県の範囲では京都府が最も多くで18500円となっている。一方で、法人事業税と法人税割は三重県は滋賀県よりも多く、4府県中の一番である。つまり、二つの法人関係税の好調さによって地方税での三重県の優位性が実現している、ということになる。亀山を中心とする県北部の先行投資の効果かもしれない。逆に言えば、個人所得の劣位をどのように考えるかという、課題があるということでもある。

 

経常収支比率が高く財政は硬直

 三重県財政の特徴の第二は、経常収支比率の高さにある(35行と36行)。臨時財政対策債と減税補填債を分母に入れた経常収支比率は94.6だが、それを除くと100.5となる。これは京都府についで高い。全国平均は92.6で、全国の順位は15位と上位3分の一に入る。さらに、この経常収支比率は最近になって急上昇してきたところに問題がある。経常収支比率が高いということは、財政が硬直化していることを示している。なぜ財政の硬直がよくないか。それは、新しい行政需要や投資に向ける一般財源がなく、もしそれを実施しようとすれば、借金を増やすか、貯金を取り崩すか、のふたつしかない。現在の三重県財政は、二つの選択肢を両方とも使っているようである。

 このため、一方で実質単年度収支(28行)が3年連続して大きな赤字となっている。3年間で215億円の貯金を取り崩している。これは03年度に90億円の積み立てを行っている(この表には載っていない)ことから、それを取り崩したものと考えられるが、かなり大胆な財政運営である。このような財政運営でひずみがでていないか、少し心配なところがある。

 

人件費と公債費が重い

この経常収支比率の高さを構成しているのは、第一に人件費であり、第二に公債費である。人件費はこの3年間に2.8ポイントほど高くなっているが、これは団塊の世代にかかる定年退職者の増加に伴う退職金の増加によるのではないか。少なくも滋賀県や広島県より高い水準になっている。人件費の構成要素の一つである職員数は広島県や京都府より多いが、人口10万人あたりの職員数(63行)はこの3年間に20人ほど、実数で一般職は267人ほど削減され、滋賀県と同水準になっている。このためこれからの人事政策のポイントは、内部管理重点から職員の力をどう現場に展開できるか、というところにあると思われる。

 公債費の経常収支比率は04年度の24.2という高い水準から06年度の22.9まで下がっているが、これでも4府県中で一番の高さである。また、地方債残高は増え続け、06年度末には県民一人当たり52万円あまりとなっている(50行)。もっともこの水準は滋賀県や広島県と比べてまだ低い。また実質公債費比率(33行)も12.5%と心配される高さではない。これが18%に近づくと問題だが。いずれにしても、起債の管理と公債費の繰上げ償還を含めたコントロールが重要である。

 

地方交付税の回復を

 もう一つは、普通地方交付税の減少が財政の枠組みの伸張を抑え、歳入不足感をもらしていることである。すなわち三重県の場合、2001年度に1930億円余りあった普通交付税は、06年度には1350億円弱に減少、600億円近くを失った勘定となっている。この交付税の大幅な、あるいは行過ぎた減収は全ての自治体が受けた損害であり、改めてその回復をめざさなければならない。特に公立病院への繰り出し金が圧縮される中で、病院経営が圧迫され、ドクターの処遇を切り下げることがさらに医師など医療スタッフの公立病院離れを加速するという悪循環を作り出したともいえる。

 

建設事業の水準が高く、事業者の転換が急がれる

 もう一つ指摘しておきたいことは、普通建設事業費の水準が高いという点である。06年度には住民一人当たりでは74千円あまりで、他の3府県よりかなり多い。大体県民一人足り1万円以上多い投資額となっている。これは、これまでの投資水準が低く、後から追いつくための投資とも考えられるが(地方債現在高が他の3府県より小さいことから)、少し注意を払う必要がある。全国的に言えば、公共投資額はピーク時の半分となっていて、この傾向は続くと見なければならない。来年度の国のシーリングでも今年度の3%削減を5%削減に拡大するとしているから、三重県が単独で相対的に高水準の建設事業を維持できるとは考えられない。既に着手されていると思うが、建設事業圧縮に早期に手をつけ、地域の建設土木業事業者が福祉産業や農林業など他産業に転換できるよう支援する事業を積極的に推進することが望ましい。その上で、技術的にも環境政策的にも優良な建設土木事業者を育てていきたい。

                    

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