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協働のルールづくり               
澤井勝(初出:『自治日報』04年6月12日号)

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協働のルールづくり

 ここのところ「市民と行政との協働」の議論が定着してきたように感じる。それは、ひとつの条件として「市民」が「NPO」というかたちをとってきたからだろう。今年1月末時点で、全国の認証NPO法人数は15千を超えた。昨年の同じ時期には8700団体だったから、1年間で6千団体以上増加したことになる。さらに、ボランティア団体や任意団体にとどまるものなどもNPOとして捉えるならこの数倍の市民活動団体が動いている。

 なお、この5月に策定された「あいち協働ルールブック2004」(昇秀樹名城大学教授座長の検討会で作成)では、次のようにNPOを定義している。「NPOとは、社会や地域のために自主的に活動しているボランティア団体、市民活動団体、特定非営利活動法人などの民間の非営利活動団体のことをいう。その特性として、法人格の有無を問わず、1,団体としての名前と意志決定のルールがあり、複数のメンバーがいる。2,行政機関の一部ではない。3,剰余利益を関係者で分配しない。4,他の団体に属さず、自律的に運営している。5,参加したい人に開かれている、などをもった団体」としている。

 しかし行政内部の議論では、NPOそのものの理解が不十分で、安上がりの下請け事業者と同じと考え、過酷な条件を突きつける場合もまま見られる。さらに本来、協働の相手として対等な関係であるべき自律的なNPO事業体を、財政節約のための狭いアウトソーシングの受け皿に利用しようとして、「官製NPO」をつくるようなことも見られる。これではまだ揺りかごの中にいるに等しいNPOを、行政依存の単なる下請け機関におしとどめ、結局、自立した市民の力をつくることにはならず、行政への過大な負荷は長期的に拡大することにしかならない。

そのために、このNPOと行政の協働のあり方を検討し、市民と行政に共通の理解を形成しようと言う動きが顕著になってきている。この「あいち協働ルールブック」もそうだ。  

この場合は、98年ごろからのイギリスでの「コンパクト」を意識しつつ、県とルールブックに賛同する団体との「共同声明」に持って行こうとしているのが特色。「コンパクト」とは、政府代表者(中央および地方政府)とNPOの代表者が「協定(コンパクト)」を結ぶことである。この協定で、行政とNPOが共に遵守すべきルールを定め、NPOの自主性、独立性を尊重し、相互の補完性を明確にする。さらに、目的および目標(ミッションの明確化)を共有し、毎年度の公開された事業評価によって、この目的・目標の達成度を測るものだ。

この6月から始まる「しが協働モデル研究会」(おうみネット参照)も、同じような問題意識で議論されるのではなかろうか。このような議論は、単なる「協働におけるマニュアル」を超える方向を指し示している。つまり、行政サービスをアウトソーシングするための「NPO利用の心得」という業務指示書に、それはとどまらない。行政そのものが、NPOとの「協働」の中で、「協働」に合致するように呼応して変化していくことが求められているからである。そのために、対等な当事者が共に守るべき「協働のルール」を約束し、その事業の共同の「ミッション」と「ルール」の実現状況とを点検し、さらに市民にその評価を委ねて行くことを目指すべきなのだろう。

 その「協働」のもうひとつの主体として、実は、住民型組織がある。いわゆる「コミュニティ」型組織だ。山岡義典法政大学教授はNPOなどの市民型組織(アソシエーション型組織)と住民型組織、この両者の「協働」の可能性を開くところに地域づくりの要があるという(ふるさと島根定住財団等、「心かよい、人動く」松江今井書店発行)。

 この具体的な実践の場は、ようやく動き出した各市町村の「地域福祉計画」策定とその実施過程にある。行政計画としての地域福祉計画をつくる市町村は、地域で住民型組織の底力を引き出して再生する共に、NPOとの協働を組み立てることが必須条件である。そのとき行政は、「安全と安心の確保」という広い意味での地域の地域福祉計画のミッション(目的)を明確にし、そこでの行政の責任としてなにを実現するかという目標を、それら市民組織および住民組織と共有することがまず求められる。「地域福祉計画」における「協働のルール」の確立作業こそ、地域における市民自治形成の試金石となるはずである。

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