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「柏崎市財政の現状と課題」
 所収:地方自治総合研究所「提言 30年後の柏崎を考える
                     廃炉か再開かの議論を超えて」第2章
 2008年9月   澤井 勝

 

42章 柏崎市財政の現状と課題

   原発への財政的依存の現状と財政健全化への道

 

1、 合併から2006(平成18)年度決算までの柏崎市財政の特徴

 200551日に、柏崎市、高柳町、西山町の12町が合併。決算は05(平成17)年度から合併後の決算となっている。この合併で柏崎市の人口は88千人から94千人に増加し、面積は442平方キロに拡大した。人口密度は類似団体並みの平方キロ当たり214人。ただし、住民基本台帳人口は07年度末の94050人から、08年度末には93683人に368人減少で、よこばいと言ってもよい。

2007716午前10時過ぎに震度6強の中越沖地震が発生した。耐震設計の2倍以上の揺れで原子炉7基は全て停止し、再開の見通しは立っていない。

 

2、柏崎市の財政の特徴は、第一に歳入面での相対的な豊かさにあった。その豊かさは、やはり原発立地に依存する豊かさである。

  
付表1 柏崎市財政指標等の推移

(1)08年度決算では一人当たり市税収入は183309円で類似団体(都市類型U-1で長野県茅野市や滋賀県近江八幡市など)より3万円から5万円多い。実額では柏崎市が1716500万円で、歳入総額の37.2%。茅野市は884700万円、近江八幡は843500万円である。

この市税収入のうち、原発関連は第一に東京電力の償却資産にかかる固定資産税の486千万円が大きい。市税収入の28.1%を占める。第二に、東京電力の法人税にかかる法人市民税で、41800万円で2.4%である。それに法定外目的税である使用済み核燃料税が53000万円。3.1%ある。

したがって原発関連税収は58億円で、市税収入に占める原発関連税収は33.63分の一を占めることとなっている。この原発関連税収を除くと、柏崎市の一人当たり税収は茅野市を下回り、近江八幡市とほぼ同じの127千円程度になる。

見方を変えれば、東京電力関連の税収が仮に無くなったとしても、近江八幡市と同等の税収はあるということであり、その水準で暮らすようにすれば、破綻することはないわけである。ただし、原発関連収入に依存して設置してきた箱物などの維持管理費の負担はそのまま残ることになるから、それらをどう整理し、縮小していくかが大きな課題である。

 

 (2)地方交付税は492千万円で、収入額の8.8%。そのうち普通交付税が405千万。この数字は類似団体よりやや少ない。これは一人当たり基準財政需要額がほぼ類似団体なみなのに対して、基準財政収入額が大きい(茅野市より1万円、近江八幡より5万円)ためである。

 

(3)原発立地関連の収入では、市税のほか国と県からの関連交付金がある。

 1、広報安全対策交付金                 2301万円

 2、電源立地地域対策交付金(旧長期)       137447万円

 3、県電源立地地域対策交付金(旧特別)       59054万円

 4、原子力発電施設立地地域特別交付金        35075万円

 5、原子力発電施設立地市町村振興交付金       58064万円

 6、大規模発電用施設立地地域振興事業補助金     15000万円

 合計して2006年度は306941万円となる。原発関連の交付金の額は歳入総額461億円の6.7%である。額的に言えば、これら交付金類より原発関連の市税のウェイトが大きく、特に償却資産にかかる税が圧倒的に大きいことがわかる。ただし、いずれにしてもこれら交付金が、地方債で行うべき事業の財源を肩代わりしてきたために、柏崎市の財政に大きな余裕をもたらしてきたことは確かである。

 なおこのほかに「原子力立地給付金」9259万円がある。

 

3、一方で歳出面では財政は硬直していて、新規の建設事業にはもちろん制約があり、その上に分権改革に伴う権限移譲に応ずるソフト事業の財源も不足している状況にあった。

 

(4)高い経常収支比率にその特徴が最もよく出ている。2006年度決算での経常収支比率は97.4であり、臨時財政対策債や減税補填債を考慮しなければ102.0となっている。これは新潟県内の5都市(新潟市、長岡市、上越市、新発田市、柏崎市)でも2番目の高さである。この5都市の平均は88.8である。県内の20都市の平均は90.0となっている。

 このような経常収支比率の高さは、歳出面では公債費と物件費および繰出し金が他の都市に比較して高いところにひとつの原因がある。

06年度経常収支比率

       県内5市    柏崎市

人件費     28.8       28.1

扶助費     7.2        5.9

公債費         20.1             21.9

物件費         11.7             18.3

維持補修費      2.7              3.4

補助費等        7.9              4.0

繰出金         10.4             15.7

 

 この原因は、第一に、原発関連の財源の豊富さに依存して、多くの箱物系の公共施設の建設が行われ、その維持管理費(人件費、賃金、委託費、光熱水費など)にコストがかかっていることに原因がある。それと関連して維持補修費の割合も高くなっている。第二は、したがってまた建設にかかる起債の元利償還金の負担が大きい。第三には下水道など公営企業への繰出し金が大きい。

 それに原子力発電所の償却資産にかかる固定資産税が減少していることが経常収支比率の計算の分母(標準財政規模)を小さくしてきているという理由もある。また国の三位一体改革による地方交付税の削減によって交付税額が縮小したことも響いている

東電の固定資産税の動き(ピーク時から)

1995    127500万円       2002       708900万円

1996    1133140万円       2003    631560万円

1997    1067110万円            2004    584570万円

1998    1073400万円            2005    533640万円

1999     969500万円            2006    484170万円

2000         858900万円            2007    46億円

2001      777500万円

 

(5)さらに加えて、普通建設事業が類似団体と比較して高水準にある08年度決算では、一人当たりの普通建設事業費は69592円で、茅野市の49926円より2万円ほど多く、近江八幡の23237円の3倍近くとなっている。この建設事業の他都市と比較してかなり高い水準での執行は、合併以前から引き継がれてきている。このうちには、原発交付金によるものがかなり含まれていることが考慮されなければならないが。

 

(6)原発交付金のうち、かなりの額が建設事業ではなく、維持管理費などソフト事業に充当されているのは、今後の財政規模の縮小(原発再稼動が遅れる場合、5月の市の財政見通しでは平成22年度当初から再開としている。さらには廃炉の道を選択せざるを得ない場合など)を考えた場合、大きな問題である。

2006年度

電源立地地域対策交付金の場合

 元気館管理運営事業  17793万円の事業費のうち  交付金11千万円

 学校給食共同調理場  26132万円の管理費のうち  交付金18547万円

 こみ収集事業     19977万円の委託費のうち  交付金18千万円

 市政協力事務費    6231万円の報償費のうち    交付金5千万円

 地域コミュニティ活動 9918万円の補助金のうち    交付金9千万円

 保育園運営費     98264万円の人件費のうち  交付金76千万円

 

 どのような経費にでもこの交付金は充当できる。しかも、積算根拠が不要な、どんぶり勘定的な充当が可能であるようだ。さかのぼって見ると、充当経費は毎年、かなりの程度入れ替わってもいる。

 

(7)一方で原発交付金については、原子炉が存在する限りは、安全対策や地域活性化などそのための財政需要があることを踏まえて、今後とも一定水準の交付を保障すべきである。ただし、この交付金は柏崎市として、地域振興推進基金として積み立てることが必要である。財政規模を圧縮していく一方で、財政規模を膨らませてきた原発交付金は、地域の将来のため企業誘致や福祉施策の展開のために有効に活用すべきだからである。

 

(8)公債費負担の状況  税収などの経常的一般財源の大きさを示す「標準財政規模」は類似団体並みである。この標準財政規模を分母にした公債費の負担を見るために起債制限比率と実質公債費比率を見てみるといずれも、県内5都市に比較して高い水準にある

 「起債制限比率」は16.6で、類似団体より6ポイント以上高い。これは合併後に急上昇しているので、合併の影響もあると思われる。

 新財政再建法で、再建計画などの策定義務化の指標のひとつである「実質公債費比率」は22.2(三年度間平均)で、早期健全化基準の25%に近い数字となっている05年度は20.7だったから、上昇してきているわけで、かなり警戒すべき水準にある。「これは旧柏崎地域広域事務組合からの債務継承に加え、下水道事業等の公債費負担への繰出しが大きいところによる」(『平成18年度 もうひとつの決算書』柏崎市)。市は19年度予算から、新規発行債(除く、臨時財政対策債、減税補填債、合併特例債や過疎債のような交付税措置のある起債)を年に7億円に抑制する目標をたてているがそれを守れるかがひとつのポイントである。

この起債枠の設定によって、12年後に実質公債費比率を18%にまで下げられるとしている。しかし、192007)年度途中の中越沖地震による災害復旧事業に伴う起債や法人住民税や県核燃料税交付金の減などの要因がどう影響してくるか、未知数のところがある。債の管理がこれでいいかは再検討すべきであるとも考えられる。たとえば、新規発行債を7億ではなく6億にした上で、繰上げ償還をさらに積極的に行う、など

 

3、財政見通し(200851日)について

 (1)一番の目玉は、普通会計ベースで、平成212009)年度に形式収支、実質収支ともに赤字に転じるという推計となっている点である。人口減の傾向が続くことや、各収入の見込み、主な建設事業の計上などの前提条件が妥当だとして、災害復旧事業の継続と、それに伴う歳入見通しが適切かどうか、引き続き検証していかねばならない。

 その上で、この赤字の規模をどう評価するかだが、平成222010)年度に247千万円程度の実質収支の赤字となる。翌年の23年度にはこの実質収支の赤字がやや減少して245千万になるが、その後はこの赤字は収束に向かうという推計となっている。それは投資的経費のうち普通建設事業が平成22年度に107億円のピークをつけ、以後は平成29年度の32億円程度まで縮小していくという推計になっているからである。平成27年度の国営土地改良事業負担金227千万円が例外だが。

(2)  新財政再建法で言えば、実質収支の赤字のピークである約25億円は、標準財政規

模(227億円=06年度)の11%程度なので、早期健全化計画策定のラインに届くかどうかの水準であり、財政再生基準(赤字再建団体にあたる)には大分余裕がある。ただし、地方税の減少が続いたり、交付税が予想どうりに確保できなかった場合のことも検討し、早めに自主的な「財政健全化計画」(この「財政見通し」をベースにするとして)を策定し、そのローリングを毎年実施していくべきである。

 

後掲参考資料『新潟県柏崎市財政指標等推移』普通会計決算。

 

資料 1、各年度『決算カード』および『市町村類似団体別財政指数表』総務省自治財政局。

   2、柏崎市『もうひとつの予算書』平成203月。

   3、『平成1929年度 財政収支見通し』200851日、議会説明資料。

   4、その他市議会への説明資料。

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