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交付金類は第二地方交付税に

                     奈良女子大学名誉教授  澤井 勝
                                    (初出:『自治日報』09年4月10日号)

総選挙をにらんで政府与党の第三次経済対策が4月中旬にもまとめられ、また09年度第一次補正予算案が連休前にも国会に提出されるという。これに対する野党の動きも急である。これらの動きの中で、政府与党や各省による臨時交付金創出の動きが目立つ。

327日には自民党の「地域活性化特命委員会」が2009年度から3年間で10兆円以上の地方財政支援を実施すると報じられた。これは直轄事業負担金の廃止を求める知事会内の動きを考慮し、直轄事業や補助事業、単独の公共事業の地方負担をカバーするところに狙いがあるようだ。また08年度第二次補正に織り込まれた「地域活性化・生活対策臨時交付金」(6000億円)についても09年度から3年間、引き続き交付するとしている。

厚生労働省は介護スタッフの処遇改善のために、介護保険財政を通さずに直接事業者に人件費補助を行う方向。3%の介護報酬引き上げが事業者の赤字の補填に消え、給与引き上げに結びつかないことがはっきりしてきたためである。野党も介護報酬引き上げを10%とする賃金引き上げ法案を提出している。常勤換算で80万人と言われる介護従事者に4万円の人件費補助を行うとすると財源は1年に3800億円程度が必要となる。

加えて与党は、追加経済対策に「地域医療再生基金」の創設を盛り込む方向だ。都道府県ごとに地域医療再生計画をつくり、その費用を賄う基金設置について国庫補助を行う。その使途は幅広く認めるという。これも3年間で1兆円規模を想定している。ただし、実際の仕事をいろいろな制約のもとで担うのは都道府県である。

323日には、政府・連合・経団連の政労使三者は、雇用の安定と創出に向けた緊急対策で合意した。この中心は、ワークシェアリング拡大についての合意だが、雇用創出策としては国の第二次補正の「ふるさと雇用再生特別交付金」2500億円と「緊急雇用創出事業交付金」1500億円の活用である。この二つの交付金は、09年度の交付税に算入された「地域雇用創出推進費」(5千億円)に継承されることになろう。この交付税配分額はたとえば青森県の場合、県に58億円、弘前市に54千万円などとなっている。

さらに、政労使は職業訓練の強化と、職業訓練期間中の生活費支給でも合意した。この方式は、失業者など求職者にその職業的なスキルを引き挙げることを求め、失業者の社会的な滞留と貧困の連鎖を断ち切るため、また地域の人材力を高めるには必須の施策である。ここではハローワーク機能の強化と増員が検討されているようだが、都道府県の職業訓練校の拡充と強化、再編に波及することは必至である。また民間職業訓練校の活用についても労働局と都道府県とが協力することが求められよう。

政権がどうなるにしても、経済危機を乗り切る財政施策としては選択肢が限られているから、これらの交付金創設や交付税措置はかなり実現すると考えられる。しかし、さきのの「ふるさと雇用再生特別交付金」と「緊急雇用創出事業交付金」の執行過程を現場近くで観察すると、そこにはかなり厳しい縛りがあり、受け皿となった都道府県は、自らの創意や自発性を発揮する余裕を奪われ、政府の一出先機関と化しているようだ。国とすれば、政策目標にピンポイントで資金を配布することに熱中することは理解できる。しかしこれでは、国に権限が集中し、縦割りが強まる。結果として自治体は中央集権機構の一部に舞い戻り、単なる予算消化の無責任体制が再生することも危惧される。

資金は必要であるが、同時にそれは、分権的・自律的に使えるものでなくてはならない。この二つの要請を同時に解決するためには、来年度からはこれらの交付金類を、省庁の所轄から新設する第二地方交付税特別会計に移し、年に4兆円規模の「臨時経済・雇用対策総合交付金」として、人口や有効求人倍率、人口当たりの公立病院ベット数、耕作放棄地面積など各省庁がもち寄った政策目標を示す基準で配分するべきである。これには、08年度から交付税に2年度間の措置として創設された「地方再生対策費」(4000億円)の配分基準が参考になる。なお、介護の人件費補助は交付税化せず、直接給付とするべきである。

また、この総合交付金事業を自治体レベルで事後的に評価する市民、当事者、自治体、事業者、省庁出先機関などによる「政策評価市民委員会」を設けることにしたい。

 

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