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2014年度地方財政計画の論点
 地方財政計画とは、地方交付税の意義

2014(平成26)年度の地方財政計画の主な論点

                       2014319日 

              奈良女子大学名誉教授  澤井 勝
             於:熊本自治研センター(労金会議室)

1、地方財政計画とは

「地方交付税法第7条 内閣は毎年度、翌年度の地方自治体全体の歳入と歳出の総額の見積額を記載した書類を作成し、これを国会に提出するとともに、一般に公表しなければならない。」この「地方自治体全体の歳入と歳出の総額の見積り」を地方財政計画という。

現在の地方財政計画の役割としては、

(一)地方交付税総額(地方財源不足額)を積算することで地方財源(地方税で賄うべき財源)の総額を確保する。
(二)個々の地方自治体の行財政運営の指針を示す、
(三)国の財政経済政策の参考に資する、

とされている。
 沿革的には、一九四八年度に「地方歳出歳入予算推計」という形で始まったもので、そのねらいは激しいインフレーションのもとでの給与や建設事業費の増加、義務教育年限の引き上げや自治体警察の創設など制度改正による自治体の仕事の増加という条件下でその状況を把握しようとするものであった。その後、一九五〇年には、シャウプ勧告を受けて地方財政平衡交付金制度が発足するが、地方財政計画は全地方自治体の収支の不足額を算定し、その不足額を平衡交付金として国の一般会計予算に計上するという機能を持たされることとなった。平衡交付金の総額を直接決めるという性格を与えられたのである。これは平衡交付金制度の建て前である個々の地方自治体の財源不足額を基準財政需要額と基準財政収入額の差額としてとらえ、それを積み上げるということが困難であったからである。
 一九五四年度からの地方交付税制度への切り替えによって、交付税の総額は国税の一定割合で定められることになり、このような地方財政計画の性格は失われたが、なお、地方一般財源不足を測る機能は残された。具体的には地方交付税法第六条の三第二項、「毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引き続き各地方団体について算定した財源不足額の合算額と著しく異なることとなった場合においては、地方財政若しくは地方行政に係わる制度の改正又は地方交付税率の変更を行う」と規定され、この不足額は現実的には地方財政計画における歳入歳出の過不足ではかられることになったからである。 ただ、計画の対象となるのが普通会計で公営企業会計などが入らず、超過課税による収入や国庫補助負担金にともなう超過負担などが算入されていないなどの限界をもち、決算との間にはかなりの乖離がある。

 

2、地方交付税とは

 全国の地方自治体が提供すべき行政サービスは、個別の法律によって等しく定められている。また、自治体の置かれている地理的な条件の差異、あるいは高齢化や少子化の程度、地域活性化の方針などに違いがあり、ある程度の単独事業は、実施することができるよう財源が保障されなければならない。しかし、自治体の産業構造や、住民の経済力は様々なために、主な収入源である地方税もまた異なっている。したがって、どの地域でも一定の行政サービスを維持するためには、地方税が不足する団体(財源不足団体)に、地方税の身代わりとなる財源を保障する義務が国にはある。この財源不足を埋める財源が地方交付税で、現行の制度ができたのは昭和27年度(1952年度)である。その特徴は、

@、国税の一定割合を地方交付税とし、財源不足団体にその不足の程度に合わせて再配分する。これを垂直的財政調整制度という。(水平的調整は自治体相互間の財源移転を言う。ドイツのラント(州)は水平調整)。

A、国税の一定割合(これを交付税率という)とは

  所得税と酒税の32%、法人税の34%、消費税の22.3%(15年度は29.5%)、国のたぼこ税の25%。

B、来年度の地方交付税総額は168855億円と見込まれる。そのうち94%が普通地方交付税、6%は特別地方交付税(特交)。

C、地方自治体ごとの財源不足は、「基準財政需要額−基準財政収入額」という算式で自治体ごとに、毎年度計算する(6月から7月かけて計算し、8月末ごろ閣議決定)。

D、団体ごとの基準財政需要額は、消防費、土木費、教育費、厚生費、産業経済費などの費目ごとに積算して合計する。

E、行政費目ごとの基準財政需要額は、「(測定単位の数値×補正係数)×単位費用」で計算する。小学校費の経常経費の測定単位の数値は児童数、学級数、学校数で、補正係数は態様補正と寒冷補正がある。単位費用は毎年度、地方交付税法改正で定める。

F、基準財政収入額は、地方税の標準的収入の100分の75の基準税率で計算する。

G、地方交付税の財源保障機能には、@地方交付税の総額の保障、A個別行政費目ごとの財源保障機能、の二つがある。

 

3、現在は地方財源不足が毎年度続いている。1992年のバブル経済崩壊後。この場合は、なんらかの補てん措置か、地方交付税率の引上げ等の地方財政措置がとられることとなっている。

 @ 毎年度の地方財源必要額(すなわち本来であれば地方税によって賄われるべき一般財源の額)は、国の予算が編成された段階で、国補補助事業(公共事業や義務教育や福祉施策)の規模が積みあがってくると、それに必要な地方財源(地方一般財源)も積み上がってくる。その額と、従来からの地方単独事業に必要な額(一般財源)もあるので、それを加えた「必要地方一般財源」の額が積算される(A)。この作業は、財務省と総務省の理事官レベルで詰めていく。

A 一方で、毎年度の制度的に与えられる地方一般財源を計算する。まず経済成長の予測を行う。同時に今回のように制度改正の影響を算定する。これによって地方税収入の見込み額を算定する。また、国税収入の見込みから、特に交付税対象の5税の見込みから、法定交付税率での地方交付税を算定する。これらを合算して制度的に予想できる地方一般財源の額(B)を計算する。

B (A)−(B)で地方財源不足額を想定する。バブル経済の崩壊(1992年)以後は、この意味での地方財源不足が続いている。これは本来なら、地方交付税率の引き上げが必要な事態であり、それが20年も続いていることになる。2010年以後の地方財源不足額は以下の通りとなっている。

2010年度  182,168億円

2011年度  142,452億円

2012年度  136,846億円

2013年度  132,808億円

2014年度  105,938億円

 この財源不足は、国と地方が折半して補てんすることが平成13年度(2001年度)から基本的なルールとなっている。この「折半ルール」は、3年度ごとの措置とされ、更新されてきている。

 

4、来年度の地方財政の規模(通常収支ベース)

通常収支分は総額833700億円 これは前年度819154億円の1.0%増となっている。

 これに「東日本大震災分」が加わる。復旧・復興事業費が19600億円(前年度23347億円)。これに全国防災事業費2500億円(2031億円)。

・ちなみに国の一般会計の規模は958853億円で前年度の926115億円の3.5%増となっている。国(一般会計)が地方(通常収支分)より102千億円強大きい。

・地方財政の規模は、このところ横ばい。

  201426)  837300

  201325)  819154

  201224)  818647

  201123)  825054

  201022)  821268

  200921)  825557

  200820)  834014

  200719)  831261

  200618)  831508

  200517)  837689

4、今年4月からの消費税の8%への引き上げ また1510月からの10%への引き上げを見通して

・地方消費税の増額(5%のうち1%から8%のうち1.7%に、1510月から10%のうち2.2%に)

  引き上げ後の地方消費税収入の使途の明確化、社会保障4経費(年金、医療及び介護の社会保障給付費、少子化に対処する経費、その他の社会福祉、社会保険、保健衛生に関する経費

・地方交付税への算入率(13年度29.5%、14年度22.3%)

・自動車税の改正(10%段階で自動車取得税(道府県税)を廃止する。その代替財源はこれから議論する。総務省、財務省、国土交通省、環境省の関係課長会議が1月に設けられた。

 

5、14年度の国税および地方税の収入見込み(別紙)

6、交付税の原資化を拡大

 14年度は(1)法人住民税法人税割のうち5800億円を国税化(「地方法人税」)し、地方交付税特別会計に直入し、地方交付税として再配分する。この交付税率は100%。これは10%段階でさらに拡大する。

 これに伴い、現行の税率は都道府県民税法人税割が5.0%から3.2%に、市町村民税法人税割が12.3%から9.7%に引き下げられる。「地方法人税」の税率は4.4%。

(2) 法人事業税の一部の18000億円を国税化(地方法人特別税)しているが、これを12000億円に縮小して、6000億円を法人事業税に復元する。この地方法人特別税は道府県に地方法人特別税譲与税として再配分されている。

 

7、地方財源不足は105938億円で前年度の132808億円から縮小。

 主な要因は地方税収、特に法人税収の増加と、13年度の交付税の増加分を、14年度に繰り越した(11349億円)こと。

 

○折半対象以外の補てん措置          53061億円

@    財源対策債の発行               
7800億円

A    地方交付税の増額による補てん        15748億円

   ・一般会計における加算措置(法定加算)   8648億円

   ・別途の加算                6100億円

   ・特会剰余金の活用             1000億円

B    臨時財政対策債の発行            29513億円

○折半対象財源不足               52877億円

@臨時財政対策特例加算(国の一般会計から)  26436億円              

  A臨時財政対策債の発行(各自治体が発行)   26438億円

 

8、地方交付税の確保 地方交付税  168855億円(対前年度▲1769億円、1.0%)

 @地方交付税の法定率分             126669億円

 ・国税5税分                  122191億円

 ・国税決算清算分                 ▲3145億円

 ・交付税特会借入金支払利子            ▲2000億円

 ・平成25年度からの繰越金             11349億円

 A一般会計における加算措置            42186億円

 ・既往法定分、剰余金活用              9648億円

  ・別枠の加算                    6100億円

 ・臨時財政対策特例加算             26438億円

 

9、歳出特別枠・交付税の別枠加算の確保

○地域経済基盤強化・雇用対策費        11950億円

○別枠の加算                   6100億円

 歳出特別枠については、地域の元気創造事業への振り替え分(3000億円)を含めて実質的に前年度水準を確保

 交付税の別枠加算については、地方税収の状況を踏まえて、縮小することで全廃を主張する財務省を一部押し返した。

 

10、公共施設等の総合的かつ計画的な管理による老朽化対策等の推進

 ○ 総合的かつ計画的な管理計画策定の費用  特別交付税措置

 ○ 計画に基づく公共施設等の除却について、地方債の特例措置 300億円 地方債計画に単独事業の内数として計上する。

 

11、一般財源総額は603577億円で前年度比 +6050億円 1.0%

・地方税      35127億円

・地方譲与税     27564億円

・地方交付税    168855億円

・地方特例交付金     1192億円

・臨時財政特例債   55952億円

 

12、自動車関係諸税の改正

@ 都道府県の自動車取得税の2014年減税、2015年には廃止

20144月から自動車取得税の税率は5%から3%に引き下げる。これの減収額は952億円と見込まれる。その代替財源は未定。都道府県への納税額お100分の95のうち10分の7が市町村への交付金となるが、それも減収となる。そのため、市町村の軽自動車税の税率を引き上げる。

 15年度以降に新規取得される4輪車等の新車の税率を自家用乗用車は1.5倍、その他は1.2倍に引き上げる。4輪の自家用自動車は7200円から10800円に。

 二輪車等の税率を、15年度分から現行の1.5倍(最低2000円)に引き上げる。原付が1000円から2000に。

 

財務省や安倍政権の地方財政についてのこれからの検討課題。

13、固定資産税の償却資産課税の見直し。

14、法人実効税率の引き下げを検討する。

 

その他の措置

15、合併に伴う市町村の変化に対応する措置

  ・支所に要する経費  ・標準団体の面積要件の拡大  ・人口密度に需要の割り増し

 

16、交付税の補助金化(国の政策意図の地方自治体に強制するためのカネ)が、従来の枠を超えて広がっている。

@ 13年度には地方公務員給与の引き下げのために、交付税を減額した。

A 14年度では、「地域の元気創造事業」3500億円程度について、行革努力分30000億円(道府県分750億円、市町村分2250億円)、地域経済活性化分500億円(道府県分125億円、市町村分375億円としている。)

これは地方交付税の趣旨をゆがめるものである。

「地方交付税法第1条 この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、および行政を執行する権能を損なわずに、その財源の均衡化を図り、および地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」

 

17、おわりに

 生活困窮者自立支援法の成立、20154月から施行される。生活保護制度と社会保険制度との間に「第二のセイフティーネット」をつくるもの。熊本県内では、熊本県、熊本市、菊池市がモデル事業を行っている。また、グリーンコープが家計支援事業を行い、モデルの一つとなっている。

参考資料、『月刊自治研』20141月号の生水裕美さん『だから仕事は面白い』及び同じく『月刊自治研』20143月号の行岡みち子さん『グリーンコープの生活相談室から見える生活困窮者自立支援法』

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