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2009年度地方財政計画の特徴と自治体の課題

   経済危機に対応できる財政経済政策を通じて政府を創る
 (初出:『自治総研』2009年2月号)

 

                     奈良女子大学名誉教授 澤井 勝


目次  
はじめに 1,アメリカの経済危機と日本経済 (1)2008年は株価下落と円高で始まる (2)景気後退と地方税収の落ち込み 総合経済対策と第一次補正予算 (3)リーマンブラザーズ・ショックと貿易赤字への転換 (4)2009年初頭ではほぼ赤字経営に (5)「派遣切り」と完全失業率の急速な上昇 
(6)格差社会日本 
2,2009年度地方財政計画 (1)2008年度第二次補正予算と地方財政措置 (2)2009年度の国の一般会計予算 過去最高の予算規模になったが (3)一般歳出は大幅に増加したけれど (4)財源不足は10兆4,664億円 (5)財源不足の補填措置 (6)地方交付税の総額 (7)地方財政計画は縮小した (8)給与関係費 (9)一般行政費(補助) (10)一般行政費(単独)、(11)地方再生対策費 (12)地域雇用創出推進費 (13)地方税の見通しについて (14)道路特定財源の一般財源化 
(15)甘い成長率見通し 税収のさらなる落ち込みは必至 (16)追加経済対策への対応 「グリーンな公共事業」への展開 (17)計画では投資的経費は減少 (18)雇用対策の戦略的展開 
おわりに 新しいセイフティーネットの構築に向けて

 はじめに

20081218日に、鳩山総務大臣と中川財務大臣との折衝で、2009年度の地方財政対策が合意をみた。その主な内容は次の通りである。

(1)2008年度途中からの世界金融危機の深化と、その実体経済への波及を反映して、地方税収が大きく落ち込むとともに、国税も法人税、所得税、消費税ともに当初予算を大きく下回ることとなった。このため、2009年度の地方税の収入見込みと交付税の法定率での収入見込みの発射台も大幅に下がった。

(2)このような歳入減と、景気対策という歳出増の圧力で、この間に一貫して削減されてきた地方財源不足額は、104,664億円と大幅に増加した。前年度の不足額は52,476億円だった。

(3)その結果、地方交付税は、地方交付税・譲与税特別会計の出口ベースで158,202億円となり、前年度の154,061億円より4141億円、2.69%の増加となった。交付税の増加は2年連続である。しかし、交付税の増額は、後に触れる1兆円の加算措置を入れてもなお微増の領域である。

(4)これに臨時地方財政対策債51,488億円を加えた実質的な地方交付税は、209,686億円となり、14.96%の増加となった。この実質的な地方交付税も03年度の約24兆円から08年度の約18兆円と6兆円あまり削減されてきたものだが、ようやく2005年度の水準に戻したことになる。

(5)国の一般会計からの臨時財政加算が3年ぶりに復活し、27,533億円が地方交付税財源として交付税特別会計に繰り入れられる。

(6)交付税には、この財源不足に伴う加算措置や臨時財政対策債などの措置の他に、1兆円の加算が行われ、うち5千億円は各自治体ごとに基金に積んで雇用対策に使うこととされた。

(7)これらの地方財源不足対策を行った後にも、地方財政計画の規模は、825,557億円と前年度を8,457億円下回った。マイナス1.01%である。これは主に水準超経費が激減したためだが、単独一般行政費の決算と計画の乖離を埋められなかったことが基礎にある。一方で、国の一般会計の規模は885,480億円と6.6%増と膨張したため、地方財政計画と国の一般会計の差は、5兆円以上、国が大きくなった。7年前の2002年度には、地方財政計画のほうが6兆円以上大きかったが、完全に逆転している。

(8)国の2009年度一般会計予算では、租税印紙収入が461.030億円と前年度比で13.91%の大幅減となる。その収入のマイナスを、国債の増発といわゆる「埋蔵金」で埋めて歳出増に充てたため、国の一般歳出は517310億円と9.40%の大幅増加となった。他方で地方の一般歳出は662,200億円とわずか0.70%増にとどまり、国と地方の財政規模の不均衡が極めて大きくなった。

(9)国債発行額は332,940億円と前年度より78,460億円、31.3%の大幅増加となった。うち建設国債が75,790億円(前年度52,120億円)、特例公債(赤字国債)が257,150億円(同201,360億円)である。また「埋蔵金」活用のため、税外収入は91,510億円と120%の増加となっている。

(10)また地方財政計画でも、地方債計画額は141,844億円と前年度比13.7%増と大きな伸びとなった。地方債依存度は14.3%と2008年度計画の11.5%を2.8ポイント上回っている。

1、アメリカ金融危機と日本経済

(1)
2008年は株価の大幅下落と円高で始まる

 2008年度については、政府の2008年度の経済見通しは次のように、実質成長率を2.0程度(名目で2.1%程度)としていた。「サブプライムローン問題を背景とする金融資本市場の変動、原油価格の高騰などが我が国経済に与える影響に注視するが、2008年度においては、世界経済の回復が続く下、引き続き企業部門の堅調さが持続する。家計部門がゆるやかに改善し、「構造改革」への取り組みの加速・深化と政府・日銀の取り組みによって、物価の安定の下での民需中心の経済成長となると見込まれる。」しかし、この楽観的な経済見通しは直ちに修正を迫られることになる。
 サブプライム住宅ローン問題が表面化したのは、1昨年、2007年の810日、米欧日で株が急落したことに始まる。9日に仏大手銀行のBNPパリバが米国のサブプライムローン(低所得者向けの住宅ローン)の焦げ付きにからんで傘下の3ファンドを一時凍結し、償還などをストップしたと発表。米株安の原因となったサブプライムローン問題が欧州にも波及したことが判明した。東証は一時458円下げ、午前の終値が16721円に。
 
08年に入ると、足下の日本経済はなお企業部門が好調だったが、株式市場では、アメリカ経済の後退懸念から、大きな下落を繰り返すことになる。116日の東京市場では、日経平均株価が4日連続して下落し、前日比468円安の13504円で、200510月以来の低水準となった。年初から1800円下げた。東証第一部の9割を越す銘柄が下げた。一方で長期金利は24ヶ月ぶりの低水準となった。円は一時10597銭まで上昇して、20055月以来の円高になった。3月には13日の東京金融市場で、アメリカ経済の後退観測が強まる中、円高ドル安が急に進み、9511月以来124ヶ月ぶりに1ドル100円を突破し、一時9977銭まで円高が進んだ。株式市場では東証一部上場銘柄のうち86.8%が値下がりし日経平均は427円安い1万243円。アジア、欧州でも株価が大きく下がった。原油高がさらに進み、1バレル=111ドルに上昇した。金相場も最高値を更新して、1トロイオンス=100ドルの大台に乗った。

 

(2)景気後退と地方税収の落ち込み

    総合経済対策と第一次補正予算

 

また景気動向指数も低下傾向を強める。内閣府が084月7日に発表した082月の景気動向指数は、現状を示す一致指数が44.4%となり50%を2ヶ月連続で下回った。景気の判断基調については「足元が弱含んでいる」としてこれも2ヶ月連続で下方修正した。   

084月の景気動向指数(速報値)は、一致指数が前月より0.7ポイント低下した。基調判断を「局面が変化している可能性がある」として、景気後退に入った可能性を表現した。続いて、086月の景気動向指数では主に企業の生産活動から見た景気の現状判断を、景気の後退局面に入った可能性が高い「悪化」へ下方修正した。民間の研究機関では07年秋頃に20022月を底にした戦後最長の景気拡大が終わったとの見方も出ていたが、それを追認するかたちになった。

このことは2009129日の政府の「景気動向指数研究会」(吉川洋座長)によっても、第13循環の景気の山が200710月と認定され、確認された。「雇用拡大なき景気上昇」あるいは「労働分配率低下の景気拡大」または「非正規労働者倍増の景気」、「格差拡大と貧困を生んだ景気」は69ヶ月ということになる。

地方自治体のほうでは、8月の地方交付税の08年度分についての団体別の配分額決定で、交付税の配分を受けない「不交付団体」が179と前年度より9団体減少した。景気減速による地方税収の伸び悩みが原因である。不交付団体数の減少は8年ぶりだった。法人住民税が減る徳島県阿南市や埼玉県上尾市など15団体が新たに交付団体になり、他方、横浜市やひたちなか市など6団体が不交付団体になった。

これらの動きを受けて、924日に発足したばかりの麻生内閣は929日に総合経済対策の実施に向けた18081億円の補正予算案を決め、衆議院に提出し、民主党の賛成も受けて成立した。後期高齢者医療制度の負担軽減などに2,500億円、4月の道路特定財源の暫定税率切れにともなう地方税(自動車取得税116億円、軽油引取税493億円、地方道路税46億円)の減収補填のための特例交付金656億円など。また中小企業の資金手当のために、4,469億円が計上された。建設国債3,950億円を増発する。

 

(3)リーマンブラザーズ・ショックと貿易赤字への転換

 08915日、米大手証券第4位のリーマンブラザーズが破綻した。これを受けた金融不安から、急速な貸し渋りと短期金融市場でのクレジット・クランチに近い状態が進行する。短期市場では資金の出し手がなくなり、資金が必要な企業も借りることが急に困難になる。日米欧の主要6中央銀行は918日、リーマンブラザーズ破綻の影響で欧米民間銀行を中心にドル資金調達がマヒ状態になっているため、協調して総額1800億ドル(約19兆円)のドル資金を自国市場に供給する緊急対策を発表した(日経19日)。日銀は米連邦準備理事会(FRB)と総額600億ドルの通貨スワップ協定を結び、国内の外国銀行を含む金融機関に直接ドルを貸し出す。

 このような金融危機は実体経済にも波及する。財務省が08925日に発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)では、貿易収支が3240億円の赤字となった。198212月以来の赤字で26年ぶりとなる。原油や石炭、非鉄金属などの資源高騰と米国やEUなどへの輸出減による。輸出主導で経済拡大を続けてきた日本経済も大きな転機を迎える。

 10月になるとさらに経済状態は急速に悪くなる。ソニーは1023日、093月期の連結企業業績が、営業利益が2千億円と7月時点での予想4700億円から2700億円減ると発表した。「この1ヶ月で、世界の経済情勢は急激に悪化し、円高の進行など想像を絶する変化を見せている。」という。

 

(4)2009年初頭ではほぼ全面的に赤字経営に

 20081222日、トヨタ自動車は093月期の決算見通しを、以前の見通しを大幅に下方に修正して、1200億円の営業赤字になると発表した。これまで日本経済のリーディング産業であった自動車産業は、アメリカのビッグスリーばかりか日欧の全企業がこれまでにない減産に追い込まれるなかで、どこまでその業績が下がるのか底が見えない。特に200810月以降に急激に悪化している。日本経済全体としては輸出産業を中心に、よくない在庫の積み上げもあり、生産の縮小が続く。

1226日公表の0811月の鉱工業生産指数は、前月比▲8.1%と2ヶ月連続で大幅に低下(前年同月比では▲16.2%)し、指数としては94.02005年=100)にまで低下している。低下に寄与したのは特に普通乗用車、トラックなど輸送機械、一般機械、電子部品・デバイス等である。

そして09130日発表の0812月の鉱工業生産指数は、84.605年=100)と前月より9.4%下がり、過去最大の下げ幅となった。

株価は12月には8000円台半ばまで回復し、一時7000円台を割った水準を訂正しているように見えるが、なお先行きは見えない。その中でも089月期中間決算で過去最高益1284億円となったパナソニックや、日立製作所やJFEスチールのように経常収益を大きく増額修正している企業もあり、なおまだら模様であった。

しかし09130日、この日立製作所も093月期で最終損益が7千億円の赤字となると下方修正、21日にはパナソニックも連結純損益見通しを再修正、093月期は3500億円の赤字となると発表した。またソニーも122日、同期の営業赤字が2000億円の黒字から2600億円の赤字になると大幅な下方修正を発表している。最終損益も1500億円の黒字から1500億円の赤字となる。トヨタ自動車は三回目の業績修正で、営業赤字が1500億円から4000億円程度に拡大すると報じられ(130日、産経など)、純損益もその公表を始めた1963年以来、初めて赤字となる公算である。

 

(5)「派遣切り」と完全失業率の急速な上昇

 これにともなって、失業問題が急速に大きくなっている。注目されるようになったのは、いすゞ自動車の派遣労働者の雇い止めであり、大分キャノンの派遣労働者の契約解除である。それがトヨタ、日産、ホンダ、さらにソニー、三菱自動車などの派遣や請け負い労働者、期間工の大幅な削減に広がった。この大企業など製造業における労働者の切捨ての動きは、急激に広がり、規模を拡大している。     

1031日発表の9月の有効求人倍率は製造業の新規求人が前年同月比22.0%減になったことから0.84倍と4年ぶりの低水準となり、その中で、弘前市の「キャノンプレシジション」は240人の派遣社員の契約を31日付で解除した。トヨタ自動車九州は6月と9月の2回で計800人を契約解除している。日産も栃木と九州で計1000人契約解除の方針。工作機械の森精機では受注減で650人の派遣社員を年度内に300人にする方針(朝日、111日)。

 厚生労働省は09130日、0810月から093月の間に職を失う非正規社員が、全国で124802人に上ると発表した。08年末調査の1.5倍である。また09年春卒業予定の大学生と高校生のうち、就職内定を取り消されたのは1215人となり、08年末調査より6割増えた。

 同じく厚生労働省が09130日に発表した0812月の全国の完全失業率は4.4%で、前月より0.5ポイント上昇し、悪化幅は過去最悪となった。完全失業者数は前年同月より39万人多い270万人で、うち会社都合が25万人増の77万人。自己都合が5万人増の98万人だったとされる。

 この動きからすると089月段階の完全失業率4.0%が、これから半年で5%に悪化する可能性は極めて高い。20089月の完全失業者数は271万人だったが、これが338万人に増える計算になる。67万人程度の増加である。特に20093月には、派遣労働者の3年間の派遣契約期間が切れるところが多いと予想されるから、この数字はかなりリアルなものである。さらに、130日、NECは093月期決算で2900億円の純損益赤字となる見込みと発表、09年度末までにグループ全体で正社員で1万人弱、非正社員で1万人強を減らす方針を公表した。非正規から正規へリストラの波が拡大している。

 これらの解雇の動きに対して、大分キャノンが立地する大分県の杵築市や大分県が臨時職員の採用に踏み切り、京田辺市などが正規職員の前倒し採用を表明するなどの動きがある。緊急事態への対応としては評価したい。この動きは広く自治体に広がっている。また政府も遅まきながら第二次補正予算や09年度予算に雇用対策を盛り込んでいる。

 

(6)格差社会日本

20067月の経済協力開発機構(OECD)対日経済審査報告によると、2000年の生産年齢人口の相対的貧困率は日本が13.5%で、OECD平均8.4%を大きく上回り、貧困率の高さではアメリカについで2位だった。なお、我が国の65歳以上では相対的貧困率は21.1%(OECD平均13.9%)、全年齢では15.3%(同10.3%)だった(2007612日、OECDワーキングペーパー556号)。

さらにOECDは081021日に「格差分析レポート」(Growing Unequal?)を公表した。各国の2000年代半ば(日本は2003年)の可処分所得(所得再分配後)のジニ係数(01の間の指標で、1に近いほど不平等度が高く、ゼロに近いほど平等)を比較している。日本は0.31でOECD平均値0.28をやや上回った(格差がやや大きい)。最小はデンマークの0.23、最大はメキシコの0.4790年代半ばからの10年で見ると、日本は0.003ポイントとわずかながら下がっている。景気の低迷が長期化して幅広い階層で所得水準が下がったためか。米や独、カナダは上昇し、これらの国では所得格差が拡大している。

この格差分析レポートでは、日本の相対的貧困率(所得が全階層の中央値の半分以下の所得者の割合)は14.9%でOECD30カ国中4位と、格差が大きいトップグループを形成している。2000年より貧困率は1.4%も上昇している。

なおこのレポートは次のようにも指摘している。一世帯あたりの所得は過去10年で減少した。低所得層にとっては1990年代後半が最も困難な時期であったが、高所得層は2000年代前半に所得の減少を経験した。日本の下位10%の国民の平均所得は6,000米ドル(購買力平価)であり、OECD平均の7,000米ドルを下回る。上位10%の国民の平均所得は60000米ドルでOECD平均の54000米ドルよりはるかに高い。」

また大澤真理子東大教授は次のように指摘している(08103日、朝日)。「90年代に高所得者を中心に減税し、所得の再分配機能が落ちた。一人暮らし世帯の01年の貧困化率(相対的貧困化率=年収が全国民の所得の中央値の半分以下の人の率。02年の場合、中央値は476万円でその半分は238万円)は男性22%に対して、女性は42%。女性の非正規化と再配分機能の低下で、働くシングルマザーの貧困率は58%と世界一高い。女性の貧困解決が日本の貧困解決のカギだ。」

 

2、2009年度地方財政計画

 

(1)08年度第二次補正予算と地方財政措置

政府・与党は1030日、総額269千億円の「追加経済対策」を発表した。国費の追加支出である「真水」は5兆円。このうち定額給付金が2兆円、介護報酬を3%引き上げ、保険料引き上げ対策として1200億円程度の国費投入で基金を設ける。雇用保険の保険料を09年度に限って最大0.4%下げる。無料の妊産婦検診を5回から14回に拡大する。今年度限りの措置として第二子以降に特別手当年3.6万円を支給する。09年度から2年間、高速道路料金を原則3割下げる。土日祝日の乗用車通行料金を地方圏では1000円の定額にする。このほか中小企業向けの金融支援枠を21兆円、など。

また追加経済対策として、今年度に限り地方自治体に6千億円の「地域活性化・生活対策実施臨時交付金」を支給することを決めた。耕作放棄地の再生や商店街の活性化など地方単独事業を支援する。財源としては上下水道事業などに融資する地方金融機構の含み益で不要になった金利変動準備金から3千億円を捻出する。残りは財政投融資の余剰資金から流用する。この交付金6000億円は基金に積み立て、09年度中に実施する地方単独事業に活用する、としている(09120日付け、総務省財政課長内かん)。

また、国税の減収にともない08年度の地方交付税が22,730億円の減収となるため、その補填措置として、その全額を国の一般会計からの加算によって補てんする、としている。この加算のうち、地方負担分とされる12410億円については、ルールでは臨時財政対策債で賄うところ、国の一般会計からの加算とするため、2011年度から2015年度までの交付税総額から減額することとされた。

国民一人当たり12千円、総額2兆円を臨時に給付するとした「定額給付金」の地方財政措置については、「別途通知」とされた。

この他に、生活対策に掲げられた「雇用セイフティーネット強化対策」および「再就職支援対策費」として、「ふるさと雇用再生特別交付金」2,500億円と「緊急雇用創出事業交付金」1,500億円とが創設される。この交付金については、「各都道府県においては、交付金を財源として基金を設置して、民間事業者やシルバー人材センターへの委託等により、地域の求職者等を対象にした雇用機会の創出や非正規労働者、中高年労働者等の一時的な雇用機会を創出するための事業を平成23年度までの期間にわたり実施する」としている(1220日づけ、総務省財政課長内かん)。この雇用対策交付金は、09年度の地方交付税追加の1兆円のうち5千億円の「地域雇用推進費」に事業的にはつながるものとも考えられる。

6千億円の「地域活性化・生活対策実施臨時交付金」と、4千億円の「ふるさと雇用再生特別交付金」「緊急雇用創出事業交付金」をあわせると、合計で1兆円となる。この1兆円は、臨時的な措置とされているが、本来地方交付税の一般行政費(単独)に積み込まれるべきもので、これだけで1兆円の財源不足額の追加となるはずである。

 

(2)2009年度の国の一般会計予算

       過去最高の予算規模になったが

 急激な経済の落ち込みに対して、2回の補正予算で総合経済対策を実施することとなったが、全体としては力不足である。これを受けた新年度予算も、過去最高の予算規模となったが、あり合わせの財源でとりあえずの施策を寄せ集めたかたちである。特に緊急対策の内容が雇用対策にしても、また自動車産業に代わるエネルギー転換政策や環境施策にしても中途半端であり、小出しの施策に終始している。「百年に一回」というような経済危機に対する危機感が薄いと思われる。

たとえばこれら地球温暖化対策の財源として、現行の揮発油税など道路特定財源を、「環境税」としてデザインし直し、暫定税率の上乗せを図るなど、政策転換を鮮明にし、これからの国の方向性を示すことが求められているにもかかわらず、そのような強いメッセージは全く伝わってこない。

 その点、08115日、投開票されたアメリカ大統領選を制し、この難局を超えて「変革=チェンジ」を人々とともに推進しようとするオバマ政権に対しては、思い切った財政出動を求める声が強い。オバマ版のニューディル政策の実施を求めてもいる。

ポール・サミュエルソンさん(93)は次のように言う(朝日、1025日)。「今回の危機は規制緩和と金融工学が元凶である。この危機を終わらせるためには、大恐慌を克服した「赤字をいとわぬ財政支出」が必要だ。極端に言えば、経済学者が「ヘリコプターマネー」と呼んでいる、紙幣を増刷してばらまくような大胆さで財政支出をすることでなければならない。ルーズベルト大統領の雇用政策も目標実現に7年間かかった。その際に、無駄な事業ではなく善い目的に使うのが、賢明な国民の選択である。」

またジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大教授は次のように言う(朝日、113日)。「企業だけではなく働く人を助けなければならない。米国政府がまずやるべきことは、ローン返済に行き詰まった人が担保の住宅を失うのを防いだり、失業者を支援することだ。減税の早期実施とインフラ整備も必要だ。地球温暖化対策に力を入れ「グリーンなアメリカ」をつくるべきだ。規制緩和と自由化が経済的効果をもたらすという見解は行き詰まった。新たなブレトンウッズ会議で、特定の通貨に依存しない多角的でグローバルな準備通貨システムをつくる必要がある。ケインズの主張した国際通貨「バンコール」の現代版だ。」

 

(3)国の一般会計予算と一般歳出は大幅に増加したけれど

 2009年度の国の一般会計予算の規模は、885480億と前年度当初予算比で約5兆円、6.6%の大幅な増となった。国債費を除く一般歳出は517309億円と9.4%の増となった。これはいずれも、最高の水準である。なおここには、年度途中の経済の激変に備えるために、「経済緊急対応予備費」1兆円が組み込まれている。

 税制改革では、基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げることは決めたが、そのための財源として、本来なら消費税の税率引き上げで行うべきところ、公明党の反対や自民党内からの抵抗で、明確にすることができなかった。当面の財源としては2年間だけ財政投融資特別会計の準備金を充当するとして、いわゆる「埋蔵金」を活用することとなった。

予算と同時に閣議決定された「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた『中期プログラム』」では、「今年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取り組みにより経済状況を好転させることを前提に、消費税を含む税制抜本改革を2011年度より実施できるよう、必要な法制上の措置をあらかじめ講じる」としたが、先行きはまったく不透明である。

この他の税制改革では、1,住宅ローン減税の適用期限を延長、最大控除額を500万円(長期優良住宅の場合は600万円)に引き上げる。2、省エネやバリアフリー改修を行う場合の税額控除制度を創設する。3、平成2122年に取得する土地を5年以上長期所有して売却する際の譲渡益に1000万円の特別控除制度創設、など。4、エネルギー転換や資源生産性向上西する設備等に即時償却を可能とする制度導入。5、中小法人の軽減税率を現行22%から18%に引き下げ。6、相続税制の抜本改正は見送り。7、金融・証券税制では、株式等の譲渡益について、現行10%(国税7%)の軽減税率を延長する。8、一定の排ガス性能・燃費性能等を持つ自動車に係る自動車重量税を減免する、など。

住宅取得に係る税額控除や環境配慮の自動車の税軽減など前向きの税制改革もあるが、株式譲渡益への優遇措置や相続税の見直し延期など、高所得者を優遇する政策が目立つ。

 

(4)地方財源不足は1046440億円

 015月に成立した小泉政権で2002年度から本格的に始まった経済財政諮問会議という仕組みの中で、特に02年度中にかたちをなしてきた「三位一体の改革」によって、補助金の削減と引き替えに進んだ地方財政規模の圧縮が行われ、地方財源不足額も縮小させられてきた。すなわち次のようである。なお、後掲の「付表1、一般財源等の推移」を見ていただきたい。

 

地方財源不足の推移

00年度 133369億円   うち通常収支不足 98673億円

01年度 14 253億円            105923億円

02年度 141160億円            106650億円

03年度 173767億円            134457億円

04年度 162350億円            122530億円

05年度 112000億円             75100億円

06年度  87000億円                         57000億円

07年度  44200億円             44200億円

08年度  52476億円             52476億円

 09年度 104664億円            104664億円

 

 地方財源不足とは、各年度の国の予算を編成するに当たり、それに対応する地方一般財源が十分にあるかどうかを測定し、制度的に与えられた地方一般財源(地方税、地方交付税、地方譲与税など)が必要とされる財源より不足する状態を言う。2000年度からの状況は、この地方財源不足が恒常的にあることを示している。ピークは2003年度の173767億円で、そのうち134457億円が通常収支不足である。残りの不足額は減税の影響によるものである。これがその後の5年間で通常収支不足で8兆円(13兆マイナス5兆)ほど圧縮されたことがわかる。

 この地方財源不足の圧縮は同時に地方財政計画の圧縮である。地方財政計画の規模は同じ時期(00年から08年)に89兆円から83兆円に6兆円ほど小さくなった。なお、同じ時期、国の一般会計は85兆円から83兆円にやや小さくなっているが、小泉政権や竹中平蔵氏が言ったほど「小さな政府」になっているわけではない。「小さな政府」を強要されたのはもっぱら「地方」だったのである。

 この地方財政規模の縮小は、「地方財政計画と決算の乖離の解消」などの主張をベースに、@、建設事業の地方単独事業の圧縮、A、定員削減による人件費の圧縮、B、一般行政の民営化などアウトソーシングによる経費節減によって進められてきた。このため、地域も職場もズタズタになっているといって良い。

 

(5)地方財源不足の補填措置

2009年度はこれが104664億円となった。だいたい2001年度レベルへの回帰である。

この状態は地方交付税法第6条の32項の規定に該当する。すなわち3年以上連続して交付税総額の1割以上の財源不足があるため、地方財政制度の改正か、地方交付税率の改正によって、この財源不足を補填する義務がある。このため、2009年度は次のような対策が取られることなった(2009120日『財政課長内かん』などから)。

@まず、一般公共事業債等の充当率を臨時的に引き上げること、すなわち「財源対策債」を12,900億円発行する。これは次のような仕組みになっている。通常は10億円の建設事業(補助事業)を行うとき、国庫補助率が2分の1であれば、5億円の国庫補助金があり、その残りの5億円は地方負担である。この地方負担のうち地方債で充当しても良い割合を「起債充当率」といい、総務省が毎年定める。起債は現在は原則として許可制ではなく協議制だが、その協議の基準として機能しているのが「起債充当率」である。この起債充当率は、通常は3割から4割で事業ごとに定められる(『地方債の手引き』)。通常の充当率が30%とすると、15千万円の起債が認められ、残り35千万円が一般財源負担である。この場合で言えば、10億円の補助事業には、35千万円の一般財源を用意しなければならない、ということになる。

来年度はこの起債充当率が場合によっては90%に引き上げられる。ということは、同じ10億円の国庫補助事業をするのに、45千万円まで起債ができることになり(余計に3億円の起債ができる)、用意すべき一般財源は5千万円で済む。したがって、3億円の一般財源がこの建設事業から解放されることになる。これを他の事業の一般財源として活用しようという意味で「財源対策債」なのである。

A2008年度以前の地方財政対策によって、地方交付税法で2009年度に加算されることとされていた7,231億円を国の一般会計から地方交付税特別会計に繰り入れる。

B2007年度の交付税のうち、国税減収によって地方がもらいすぎとなっていて、国に返済すべきとされた精算額4994億円の返済を後年度に繰り延べる。

C自動車取得税の減税に伴い、その減収補てん特例交付金500億円を補填する。

D以上の結果、これらを除く79,039億円がなお不足する。ここから、地方が負担する臨時財政対債の元利償還費を借り換える臨時財政対策債の発行額23,933億円を差し引いた55,106億円について、国と地方が折半して補填することとなった。

E国負担分の27,553億円については、臨時財政対策加算25,553億円と、「地方特例交付金等の地方財政の特例措置に関する法律」付則41項の特別交付金2,000億円を加えた額である。

F地方負担の折半対象財源不足の補填は、臨時財政対策債27,553億円で行う。

G臨時財政対策債は、この分とこれまでの臨時財政対債の元利償還に係る発行額、23,933億円を合算した、51,486億円である。

 

(6)地方交付税の総額

@政府の「生活防衛のための緊急対策」に基づき、これまでの加算措置とは別枠で地方交付税を1兆円増額する。これに合わせて、地方財政計画の歳出に特別枠「地域雇用創出推進費」5千億円を創設する。地域雇用推進費は、財政投融資特別会計の金利変動準備金を取り崩して、09年度と10年度にそれぞれ5千億円を計上する。

Aまた次のように地方財政計画の歳出歳入の見直しを行う、としている。

  1,地域活性化のための財源1,500億円を一般行政費(単独)として財源確保。

  2,小児科や産科医療など地域の中核となる公立病院に対する財政措置などの充実財源として1,500億円程度を確保(一般行政費と公営企業繰り出し金)。

  3,最近の金融情勢から公債費の償還期間の延長等。

B1兆円の加算と折半補填措置を行った結果、地方交付税の総額は前年度に比べて4,141

億円増の158,202億円となった。これは地方交付税特別会計の出口ベース(地方自治体が受け取る交付税)の総額である。

Cこれに臨時財政対策債を加えた広義の(あるいは実質的な)地方交付税は209,688億円になり、前年度比27,295億円の増加となった。

Dなお、地方交付税の法定率分は、次のようである。国税5税の法定率分としては118,328億円で、これは前年度の144,657億円に比べて18.2%の大幅減である。内容は、所得税が162,790億円から155,720億円に減る見込みで、酒税も15,320億円から14,200億円になる。この2税の32%が交付税である。法人税の収入見込みは167,110億円から105,400億円に37%以上の減少となる。法人税の交付税率は34%。消費税の国税分は106,710億円が、101300億円に減少する見通しとなっている。交付税率は29.5%。そして国のたばこ税が8,940億円から8,430億円に減る。交付税率は25%である。

 

(7)地方財政計画は縮小した

国の一般歳出が膨張する一方、地方財政計画は825,557億円と前年度の834,014億円より1.0%減少した。地方財政計画の歳出で見ると、この減少が生じた原因がわかる。この09年度の地方財政計画が前年度より縮小した理由は、次に見るように給与関係費や投資的経費の圧縮にあるが、特殊な要因としては、地方税の大幅減収によって、不交付団体の税収が大きく落ち込み、差し引きで「水準超経費」が24,500億円から、12,800億円に落ち込んだことが大きく影響している。

 

(8)給与関係費

給与関係費では計画額は221,271億円で前年度より800億円のマイナスとなっている。少額のように見えるが、この中には、公立保育所の保育士人件費が一般行政費(単独)から給与関係費に移された額1,806億円、および基礎年金公費負担分の負担割合が2分の1となったことによる負担増1,485億円を加えた合計3,291億円が含まれている。これを除くと4,091億円の大幅減額である。

地方財政計画上の職員数は、「基本方針2006」において向こう5年間で5.7%の定員を純減するとした目標に沿い、また義務教育教職員の少子化に伴う配置転換なども加えて、23,868人の純減とするとされていることから、給与費の大幅圧縮となった。しかし、この5年間で5.7%削減という目標は、現場の必要からはじき出されたものではない。実際には、この減少率を大きく上回って定数削減が進められ、職場の3割から4割が非正規公務員である。すでに自治体の定数削減は行政サービスを維持したり、よりよいものとする限界を超えていると見るべきである。

一方で国家公務員数は2004年度で641,563人だったが(この年に大学と医療機関が独立法人化)2006年度には623,362人に、2年間で2.83%減となっている(日本統計年鑑)。

 

(9)一般行政費(補助)

 一般行政費で国庫補助負担金をともなう経費は、122,887億円と7,227億円(6.2%)の増加となっている。このうち最大の増加要因は「後期高齢者医療費負担金」で地方負担が2759億円となっている。そのほか、生活保護費の事業費が2947億円、うち地方負担が6,982億円で地方負担が305億円増である。また介護給付費や児童保護費障害者自立支援給付費、精神保健費、幼稚園就園奨励費などが増額されている。

このうち生活保護費は、09年度はこの計画の伸びを大きく超える伸びが予想される。既に昨年の10月以降、各市町村への生活保護相談と保護申請は急激に増えている。愛知県などは前年度比100%を超える伸びを示す都市もあり、大阪市でも12月には30%増となっている。生活保護費の地方一般財源負担の伸びをカバーするために、09年度途中での「生活保護費臨時交付金(仮)」の交付が求められることになろう。

一方、在宅福祉事業費や職業訓練費、児童手当交付金などが減っている。これらは、本来もっと充実させて良い経費である。特に介護保険制度を機能させるためには、在宅での生活を支える在宅福祉事業費は現在の3倍以上に拡大する必要がある。また、職業訓練も今こそ重点的に拡大すべきであり、勤めながら訓練を受ける「日本版デュアルシステム」を各道府県レベルで20万人が受けられる体制をつくる必要がある。それも介護労働者や林業あるいは農業従事者の養成など、これからの我が国が必要とする分野を支える労働者を育てる仕組みが構築されなければならない。

 

(10)一般行政費(単独)

 地方単独の一般事業費は138,285億円で、前年度比で125億円の減となっている(0.1%減)。規定の行政経費を民営化などアウトソーシングによって縮減をするよう見込んでいるからである。このような一般単独事業の縮減は現場の理屈にあわない。計画ベースの一般行政費(単独)と、決算ベースの一般行政費(単独)は、地方自治総合研究所の高木健二の整理によればほぼ5兆円程度ある(2009年度『自治労地方財政対策会議資料』。)先にも触れたが、「地方が自主的・主体的に取り組む地域活性化事業、定住自立圏構想の推進、医療・少子化対策」などの財源を確保するため、これまでの実績をふまえて、この決算と計画の乖離を23兆円の規模で解消するべきである。

 

(11)地方再生対策費

2008年度に創設された「地方法人特別税」を原資に、地方交付税の追加的枠として「地方再生対策費」4000億円が継続して設けられている。この「地方再生対策費」は、「地方交付税の算定を通じて、市町村、特に財政状況の厳しい地域に重点的に配分」するとしている。ただし、この「地方再生対策費」は、08年度に行われた、地方税である法人事業税の一部の国税化による「地方法人特別税」とそれを活用した交付税の追加として創設されたものであるから、地方財源を国税に吸い上げて、それを原資として交付税化することにほかならない。国と地方の財源配分という点では、むしろ地方分権(財源の垂直的再配分)に逆行する施策であった、というべきである4000億円は都道府県に1500億円、市町村に2500億円配分する。この措置は2年間だけの措置であるが、この対象事業は交付税の対象事業として、本来の交付税率引き上げ等によって継続していくべきである。

 

(12)地域雇用創出推進費

 これは1兆円の交付税の追加にかかわる経費で、その半分の5千億円が計上されている。2009年度と2010年度の2年間の措置だとされている。これについてもいったん基金に積んで、活用をはかるよう助言が行われている(2009120日『財政課長内かん』)。

 

(13)追加的な19千億円を一般財源として平年度化すべき

これら二つの経費の合計額9000億円(地方再生対策費、地域雇用創出推進費)と2008年度の第二次補正で交付される6千億円の「地域活性化・生活対策実施臨時交付金」、および4千億円の「ふるさと雇用再生特別交付金」「緊急雇用創出事業交付金」をあわせると、合計で19千億円となる。これは、通常であれば計上されることのない臨時的経費である。しかし、09年度の地方財政計画では、地域雇用創出推進費など9000億円がなければ、地方財政規模は816千億円とさらに縮小していたはずである。

来年度以降の地方財政計画策定に当たっては、これら19千億円を確実に平年度化することが、まず必要である。

 いずれにしても、地方財政計画と国の一般会計規模との乖離が非常に大きくなっていることをどう是正するかが問われている。この大きな国の予算に対応する地方一般財源がないという状態を是正し、少なくも88兆円の国の一般会計規模に対応すべき、一般財源を確保することが喫緊の課題である。新たな国税からの移譲なども考えられてもよい。

 

(14)地方税の見通しについて

 2009年度の地方財政計画での地方税収入見込みは、税制改正後、前年度当初に比較して42,843億円のマイナス、10.6%減の361,860億円としている。道府県では18.1%減、市町村では4.0%の減の見通しである。

 特に法人関係税の落ち込みが大きく見込まれている。道府県税で特に落ち込みが大きいのは法人税割が39.3%減、法人事業税は47.3%減となっている。個人住民税は0.5%増、地方消費税1.2%増。市町村税では法人税割が36.9%減、個人住民税所得割が0.3%増、固定資産税は0.2%の増と見通している。

 

(15)道路特定財源の一般財源化

 地方税では自動車取得税および軽油引取税が普通税となり、使い道の縛りがなくなる。国の道路特定財源には揮発油税の全額27685万円(2008年度ベース)、石油ガス税の2分の1140億円、自動車重量税の3分の25,541億円がある。このうち9400億円で「地域活性化基盤創造交付金」が創設される。これは従来の地方道路財源の一部であった「地方道路整備臨時交付金」を廃止して新たに設けられるものだ。ただし、「創造交付金」については、2000億円程度がソフト事業や社会保障財源とされているだけで、実質は道路財源であるといっても良い。

 

(16)甘い成長率見通し

   税収のさらなる落ち込みは必至

 このような税収見積もりは、国民経済の成長率をどう見積もるかによって大きく左右される。昨年末の予算編成にあたって前提とされた国内総生産(GDP)の見通しは510.2兆円程度である。2008年度の実績見込みは509.4兆円であるから、実質成長率0.0%である。名目の成長率は0.1%程度とかろうじてデフレを回避することとなっている。

 しかし、この数字が検討されたのは昨年11月であり、決定は12月中旬であろう。9月のリーマンブラザーズ・ショック以後、10月から急激に悪化した経済動向を反映するには時間的なラグがあると考えるのが自然だ。足下の経済動向からすると、マイナス成長は避けられないであろう。したがって、この政府経済見通しをもとにした税収見込みは、さらに大きく落ち込むと考えておかなければならない。

 総務省も「財政課長内かん」で次のように述べている。「本年度の地方税については、大幅な減収が生じる見込みとなっており、道府県民税法人割および利子割、法人事業税並びに市町民税法人税割および利子割交付金における減収額については、減収補填債による補填措置を講じる。」

 

(17)追加経済対策への対応

  「グリーンな公共事業」への展開

 同じ事情から、どのような政権であれ、2009年度途中での追加経済対策が必ず必要となる。既に、岩手県などは2009年度の公共事業を2008年度に前倒しして実施しているし、宮城県は電線類地中化などの公共事業を1000万円未満に小割りして発注し、一般競争入札ではなく指名入札によって地元中小事業の事業量確保に乗り出している(200925日、ワールドビジネスサテライト)。

追加経済対策第3弾となるが、その規模は、真水で20兆円、金融対策(中小企業への資金供給、銀行や事業者への資本注入など)で100兆円などの規模も想定される。

 その中心は、将来の地域の生産性向上と地球温暖化防止のためのインフラ整備という「新しいグリーンな公共事業」となろう。

 橋梁と道路の耐震補強工事、海岸線や港湾の防潮堤の強化とかさ上げ工事、学校や役場庁舎、病院、体育館等の公共施設の耐震工事、それにこれら公共施設への太陽光発電設備の設置、電動自動車スタンドの設置拡大、環境に配慮した風力発電の計画的設置、市民発電への支援、など。

 

(18)計画では投資的経費は減少

 来年度の地方財政計画では国の公共事業関係費は前年度比5.0%増の59,800億円程度を計上しているが、これには特別会計に直入されていた地方道路整備臨時交付金相当額が一般会計に計上されているので、これを除くと5.2%の減となっている。うち直轄事業負担金が7.4%減の1300億円、国の補助事業は7.8%減の49,500億円である。

 これでは、景気下降の下支えにはならないのは明白である。昨年の秋段階の「財政再建優先」という、「基本方針2006」の呪縛から解放されなければならない。プライマリーバランスの黒字化を2011年度に達成するというドグマ化した目標は既に破綻している。このような財政再建目標事態は有益であるが、これからさらに深化する経済危機に対応するためには、とりあえず財政再建時期の延長(たとえば2016年など)を行い、それを宣言することで、施策の方向性をはっきりさせるべきである。なおそのためには、消費税増税と所得税の累進制の復活などを含む所得再配分機能の強化を目指す「抜本的税制改革案」とを合わせて提案したい。

 

(19)雇用対策の戦略的展開

 これに合わせて、「定額給付金の給付事務」や「違法駐輪車整理事業」、「軽度事務作業」などの緊急の仕事づくりばかりではなく、現在と将来において不足している専門的仕事を担う労働者を育てる、人材への投資が必要である。(もちろんそのような単純労働的な仕事づくりも必要であり、積極的に開拓してもらいたいが。)

 前にも触れたが、失業者の介護労働への参入には、2級ヘルパー養成講座の受講を義務づける。3ヶ月以上の研修で、社会福祉と社会保障の考え方の基礎を学び、すぐれた介護経験を持つ現場で、十分な実習を行うことが必須である。この間の受講料や教材費を行政が負担し、同時に生活費として10万円程度を支給するか、低利で貸しつける。低額の家賃での宿舎の確保も必要である。介護現場に就職できた場合は、この貸付金の返済は免除する。さらに、就職した後は「介護福祉士」の資格をとるよう求め、そのための支援を引き続き行うべきである。

 また雇用対策交付金や交付税に算入された雇用対策推進費は、まず「雇用対策基金」に積む必要がある。この基金を2年度程度の短期の施策の財源としてではなく、これから7年ぐらいのスパンで地域の雇用環境を整備する財源とするべきである。そのために、自治体としてもこの「雇用対策基金」に独自に積み立てを行い、基金を拡充することが望ましい。この基金をもとに、たとえば地域就労支援員や生活保護就労支援員など専門家の雇用を行う。これによって、特に都市自治体が雇用政策の積極的な担い手となり、今日や就労の専門機関として国の機関や府県と協力した重層的なネットワークの第一線を形成することを展望する。林業労働者や農業従事者の育成にはそれなりの時間がかかるから、それに対応できるようにシステムを組み上げることが必要である。

 政府も08129日、非正規労働者の就労支援を盛り込んだ追加の雇用対策をまとめている。今後3年間で2兆円規模の事業費を投入し、140万人の雇用を支えるとしている。柱は、1,雇用維持対策、2,再就職支援対策、3,内定取り消し対策、だった。

 ついで200926日、緊急雇用・経済対策実施本部の第二回会合で、「自治体雇用対策実例集200」をまとめ、公開している。

 姫路市は09115日に「緊急経済対策本部」(市長が本部長)を設置し、以下のような緊急対策を実施、ないし検討している(同市ホームページから)。

@中小企業への支援 ・融資相談窓口の強化 ・「経営安定対策融資制度」の拡充

A雇用対策 ・市臨時職員の募集(100名程度) ・市職員の追加募集(15名程度)

        ・ふるさと雇用再生特別交付金事業および緊急雇用総創出事業への対応

        ・就職面接会の追加開催支援(商工観光局労働政策課)

        ・ハローワークとの連携強化

        ・就職者支援資金貸し付け(健康福祉局)

        ・福祉人材バンクによる就職支援

B公共事業 ・公共事業の前倒し実施

        ・入札差金等を活用し総額1億円の追加・前倒し発注

        ・市内建設業者対策

        ・分離発注による市内建設業者の受注機会確保

        ・市内業者への優先発注(財政局契約課など)

        ・単品スライド条項の運用の拡充

Cその他事業  ・市営住宅への一時入居(6戸)

          ・各種支援制度のPR

 姫路市ではこれに対する体制として、二人の副市長を長とする「経済・雇用対策チーム」と「生活支援チーム」とを設置している。また本部として、21年度予算、20年度補正予算編成による経済対策を検討する。それをさらに、「地域経済再生プランの実施と経済振興ビジョンへの発展」に結びつけるとしている。

 

おわりに 新しいセイフティーネットの構築に向けて

 このような危機の時代は、同時に、制度が動き予算が動く。それは今までのやりかたでは対応できなくなっているからである。その意味では、新しいセイフティーネットを再構築する最大のチャンスでもある。その基本課題については、大阪市政調査会の『市政研究』092月、でラフなデッサンを行っているので参照していただきたいが、ここではその目次だけを紹介しておくこととしたい。

 

1,深まる経済危機と新しいセイフティーネット構築のチャンス

2,日本的デュアル・システムの本格的拡充と

       自治体の無料職業紹介事業の展開

3,同一労働同一賃金原則の確立

    介護労働者の確保に向けて

4,社会保険のセイフティーネットを広げる

    厚生年金加入、医療保険適用、雇用保険の拡充

5,高齢者施策として「最低保障年金」の導入

6,税制改革の方向

    所得税・住民税、消費税、金融資産課税、給付金付き税額控除

7,入りやすく出やすい生活保護へ

    生活保護就労支援員2万人と地域就労支援員2万人

8,地域コミュニティの再生

    地域自治区制度の改正とその設置義務化

9,自治区を基礎に「地域福祉計画」策定と推進の義務化

             「福祉でまちづくり」の推進

10,コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)の設置

             中学校区に二人とすると全国で2万人が必要

11,NPO法人を20万に

     寄付金優遇税制の抜本的拡充とNPO支援

12,林業労働者の10万人雇用

     緑のダムと環境保全、産業としての林業

13,貧困の連鎖を止める教育改革、最低賃金の引き上げと罰則の強化

労働者派遣法改正、消費者行政の拡充

14,現在の経済危機の性格

     二つのデフレの併存と円高

                                  以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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