TOPPAGE地方財政対策と地方財政計画2008年度地方財政計画の特徴

008年度地方財政計画の特徴と自治体の課題

    地方法人事業税の国税化と地方再生事業費の新設の意味

                           200827

                   奈良女子大学名誉教授 澤井 勝


  

 

下げ止まった地方財政計画の規模

          地方交付税は増加に

1、08年度の地方財政計画の第一の特徴は、地方財政計画の規模が834014億円と前年度に比べて2714億円、0.33%の増となったことである。

これによって2001年度の893100億円から昨年度の839088億円まで6年間連続して減少してきた計画規模が上向きとなった。地方財政計画規模のこの間の減少幅は54012億円、ピーク時より6.0%の減少であった。同じ時期(01-07年度)、国の一般会計は826524億円から829088億円と2564億円の増加。

 

2、第二の特徴は、この計画規模の小幅な上昇は、一般財源総額(地方税と地方交付税、それに臨時財政対策債を加えたもの)が587096億円と前年比0.87%の増加が見込まれるところに主な要因がある。

地方交付税が地方交付税特別会計の「入り口ベース」で3.36%、同特別会計の「出口ベース」で154061億円になり前年度比で2千億円、1.34%増加している。

 

3、地方税は今年度の見込みが高すぎたために来年度は0.24%の伸びにとどまる。臨時財政対策債も7.73%の伸びだが、これは「地域再生対策費」の分、3700億円が効いている。これを除くと、1668億円の減となる。

 

4、地方交付税(出口ベース)は、2000年度の214107億円をピークに、2007年度の152027億円にまで削減されてきたものだ。削減額はこの7年間で62080億円に達する。

 

「地方法人特別税」と「地方再生対策費」の創設

5、第三の特徴は、08年度に都道府県税である法人事業税の一部、26千億円(消費税の1%に相当する)を「地方法人特別税」という国税に転換し、09年度の「地方法人特別譲与税」として都道府県に再配分することである。財務省を中心に、東京都の税収を水平的に移転しようとする動きが高まったこというかたちで先行したものだ。

つまり、都道府県間の税収の偏りと税収の格差を、法人事業税という東京への集中度が高い地方税の一部を国税化し譲与税として再配分するわけである。配分の基準は人口と従業者数である。

 

6、第四の特徴は、この国税となった「地方法人特別税」を原資に、地方交付税の追加的枠として「地方再生対策費」4000億円を創設したことである。この「地方再生対策費」は、「地方交付税の算定を通じて、市町村、特に財政状況の厳しい地域に重点的に配分」するとしている。

要約すれば、「三位一体改革」のもと、大幅に圧縮されてきた地方財政規模と地方交付税が、ようやく前年度を上回ったのが最大の特徴である。ただし、これは後に見るように、法人事業税の国税化による「地方法人特別税」とそれを活用した交付税の追加である「地方再生対策費」の創設によるものであり、この地方再生対策費を除くと、交付税は2000億円の減となっている。すなわち、地方財源を国税に吸い上げて、それを原資として交付税化することによる交付税の増加であって、国と地方の財源配分という点では、むしろ地方分権に逆行する施策であった、というべきである。

 

08年度の地方財源不足は52476億円

7、来年度は「地方財源不足額」は52476億円と積算された。前提としては、地方税の伸びが横ばい程度、国税の伸びも鈍化することが予想されていることがある。一方で、歳出面では人件費や単独所業など建設事業の抑制を進めるものの、社会保障関係費の自然増と公債費の増加が継続していることなどがある。

この財源不足額はピーク時の2000(平成12)年度には恒久的減税の影響額を除く通常収支レベルで106千億円あったものである。

 

8、このように地方財源不足がほぼ半減している理由は、一方で歳入面での税源移譲による地方税の拡大と、他方での歳出削減が進んだからである。特に人件費が職員数の減と度重なるマイナス人事院勧告などで減少してきたこと、および、投資的経費がピーク時の半分に切り詰められていることが主とした原因である。特に「決算と計画の乖離の是正」措置がこの2年行なわれてきた効果が出てきている。

 

9、とはいえこの不足額は、1996(平成8)年度以来、13年間連続して地方交付税法第6条の32項の規定(引き続き3年以上、交付税総額の1割以上の不足が生じた場合は、地方財政制度の改正か地方交付税率の引き上げ、または地方行政制度の改正を行う)に該当することとなった。

 

財源不足の補填措置

この財源不足額について、2007(平成19)年度に決めた、2009(平成21)年度までの制度改正に基づいて次のような補填措置を行った結果、国と地方が折半して補填すべき財源不足は生じないこととされ、07年度に引き続き、国(財務省)からの「臨時財政対策加算」は行われないこととされている。

 

(1)   財源対策債の発行(建設事業の予算額によって発行規模が規定される、起債充当率を引き上げることで行われる)

                                15400億円

(2)国の一般会計による加算(いわゆる既往法定分、2007年度以前の地方交付税法で2008年度に地方交付税総額に加算するとされている額)。        6744億円

    この内訳は、07年度の税源移譲に伴う地方交付税減少の緩和額、 2000億円。

          公共事業等臨時特例債の利子負担等への加算額、   4744億円。

(3)臨時財政対策債の発行                    28332億円。

    ・2001(平成13)年度移行に発行した既往の臨時財政対策債の元利償還に充てる

    額                            12522億円

    ・地方財政計画の投資的経費(単独)と一般行政経費(単独)の決算との乖離を是正するための所要一般財源に相当する額             12110億円

    ・地方再生対策費                       3700億円

(4)特別交付金の交付                        2000億円

    恒久的減税による減収を補填する制度であった減税補填特例交付金の後継事業としての交付金

 

地方交付税の総額は154061億円、1.3%増

2008年度の交付税の総額は、次のようなった。

(1)   国一般会計からの繰り入れ(特別会計の入口ベース)      151041億円

     所得税及び酒税の32%、法人税の34%、国税の消費税の29.5%、たばこ税の25

                               147527億円

・先に触れた国の一般会計からの加算額、いわゆる既往法定分      6744億円

・当該年度国税減収清算と過年度清算分               △2870億円

(2)   交付税特別会計の出口ベースの交付税の総額は、上記の入り口ベースの交付税に、剰余金2502億円、前年度からの繰越金5869億円(前年度はこれが15201億円あった)、交付税特会の借入金の利子支払いがマイナス5711億円、で合計154061億円となった。これは前年度比2034億円、1.3%の増加である。

しかし、冒頭でも触れたように、交付税総額の2034億円の対前年度比の増加は、4000億円の地方法人事業税を原資とする地方再生事業費の追加の結果であり、それを除けば実質ではマイナス2000億円である。それだけ、歳出のカットとその基礎にある基準財政需要額の圧縮は厳しいものがある。

この需要額の復元こそ、地方税を原資とし、地方財源の内側での表面上のやりくりではない、国から地方への財源移転として、また財政調整財源の確保、拡充のためには不可欠である。

 

地方税の収入見込み額は横ばい

10、地方税の収入見込み額は、道府県税が188403億円、市町村税が216300億円で合計は404703億円である。伸びは道府県税が121億円(0.1%)減少、市町村税が1096億円(0.5%)の増加としている。

しかし、この地方税収が確保できるという保障は残念ながら乏しい。政府経済見通しの名目2.1%が高すぎるのである。

 

ピークアウトした日本経済

すなわち、様々な指標(名目経済成長率など国民経済計算速報値、日銀各支店の地域経済報告、新規住宅着工件数、毎月勤労統計の給与水準、労働力調査の詳細報告、完全失業者数、有効求人倍率、全国家計調査の収入と消費動向など)から見れば、日本経済は昨年、078-9月に「ピークアウト」をしている可能性が高い。

 

景気後退がはっきりしてきた米国経済

11、米国のサブプライムローン問題では、バブルそのもの信用膨張から、一転して債権の回収が不能となる形で資産の毀損が拡大している。やっかいなのは証券化された債権がどこまで広がっているか確認が不可能なために、信用不安の拡大が止められないことだ。今進んでいるのは、資産の評価損で目減りして資本が痛んでいる金融機関が、貸し出しを絞ることによる信用の収縮である。さらに個人用の住宅債権の強制売却によって住宅を失う人が数百万人単位で増えている。これが個人向け信用の収縮、企業の投資活動へのブレーキとなって、個人消費の落ち込みや住宅建設の大幅なダウンをもたらす。このことを通じて雇用不安など実体経済の後退が進行している。市場原理主義による信用の野放図な膨張の結果、市場経済機能の自壊が進んでいるといっても良い。

 

12、このような米国経済の後退局面への移行は、自動車や電機という米国向けの輸出に依存する日本経済に対して、減速要因として多かれ少なかれ影響が出てきつつある。少し先になるだろうが、この状態を「外需依存型経済による成長路線の失敗」といわれることになろう。

 

13、また、原油価格を中心とした、原燃料と原材料価格の高騰が2007年中に進み、我が国製造業、特に中小企業に打撃を与えた。原燃料の高騰が中小企業の経営を圧迫し、利益幅が小さくなり、資金繰りの壁から倒産企業が増えている、(071231日、日経)。071月から11月までの間に、企業倒産が168件と1万件を3年ぶりに突破(帝国データバンク調べ)。

 

自治体での税収の伸びは厳しい

14、自治体の現場では、さらに不利な条件が重なる。第一には、2007年度問題が地域で明瞭になってきている点である。

 第二には、若年層にあっては非正規雇用の割合が高どまりしているため地域住民の低所得者の層が増加している。

 

15、このために非正規雇用者数の割合33.3%は、20057-9月期の33.0%から0.3ポイント悪化すらしている状態である。

この非正規雇用の比率は世界的に見て異常な高さである。NIRAの調査ではOECD諸国のうち、イギリスが23%、ドイツが20%、米が13%、フランスが12%、イタリアが11%となっている(日経061221日号)。

この状態が続く中で、地域の個人所得の伸びは停滞するか、減少するかしている。0711月発表の9月の毎月勤労調査の確報(従業員5人以上)では、全ての給与を合計した一人当たりの現金給与総額は前年同月比0.6%減の273008円と2ヶ月ぶりに減少している。このために住民税個人所得割が減少するところが少なくない。

 

16、さらに固定資産税も伸び悩むところが目立つ。これは、大都市地域、それも都心地域の地価はバブル期並みに上昇する一方、その他の地方的地域では依然として地価の下落が続いているからである。

 

中断した交付税特会の借入金償還

17、来年度の交付税総額の確保のために、措置されたものに06年度補正予算から始められた交付税特別会計借入金の計画的な元金償還が、07年度補正予算からは中止され、2013(平成25)年度以降に繰り延べがある。

すなわち2007年度に予定されていた償還額5869億円を2000年度に繰り延べて交付税総額に加算する。また2008年度に予定していた償還額は2014年度以降に繰り延べられる。

 

地方法人特別税と地方法人特別譲与税

18、冒頭にも触れたように、今回の地方財政対の最大の争点は、地方税の偏在とその調整であったことは疑いがない。

そのターゲットになったのが法人2税、そのうちでも法人事業税であった。これについては、財務省サイドは、その一部の国税化によって主として東京都の財源を吸い上げ、それを水平的に他の道府県に配分することを主張した。

それに対して、総務省サイドは、法人2税の国税化とそれに見合う地方消費税の地方への移譲を主張した。「税源交換」という主張である。これは法人関係税の不安定性が地方税になじまないということと、それに換わる税源として、より普遍性のある消費税を地方税として確保しようとするものであった。

 

19、この論争は、消費税を社会保障財源の基幹税とするとした政府税制調査会や自民党などの論調から総務省が最初からハンディをもたされた論争であったようだ。結局は、自民党税制調査会の調停で、ほぼ財務省案が通ることとなった。

 ただし、地方財源としての地方消費税の拡充については、与党の税制改革大綱および政府税制調査会答申でも明記され、09年の税制改正に向けて、足場ができたというのが総務省の主張である。

 

20、内容は次の通り。

(1)2008年度に法人事業税(所得割・収入割)の一部、26千億円が地方法人特別税として国税化される。

(2)地方法人特別税の課税標準は法人事業税(所得割・収入割)の税額(標準税率分)である。

(3)地方法人特別税の賦課徴収は都道府県が行う。

(4)2008101日以降に開始する事業年度から適用する。したがって08年度中はほとんど歳入されない(40億円程度)。

(5)この地方法人特別税を原資に、都道府県に対して「地方法人特別譲与税」を譲与する。

(6)譲与基準は、人口で2分の1、従業者数で2分の1とする。ただし愛知県のように、今回の改正による法人事業税の減収額が、財源超過額の2分の1を超える場合は、減収額の2分の1を限度に、当該超える額を譲与額に加算する。

(7)地方法人特別譲与税は2009年度から譲与する。

 

地方再生対策費

21、今回の地方財政対策のもうひとつの目玉は、「地方再生対策費」4000億円の創設である。「地方税の偏在是正による生じる財源を活用」して、「地方の自主的・主体的な活性化施策に必要な歳出を形状」したとしている。

「地方税の偏在是正による財源」とは、地方法人特別税の意味であり、この地方税から転換した国税を原資として、交付税として配分することになる。つまり、地方財源で地方の税収格差を埋めようというもので、国からの垂直的財源移転による格差是正ではない。そういう意味でも地方分権改革に背馳するものである。

 

22、さらに、08年度は地方法人特別税の収入がないから、それに代わって臨時財政対策債3700億円を追加発行することとされている。この臨時財政対策債は全額都道府県が引き受ける。すなわち、地方再生対策費のうち道府県分の1500億円と、市町村の地方再生対策費2500億円分の臨時財政対策債を引き受ける。市町村は臨時財政対策債ではなく、交付税2500億円を道府県の持分から融通してもらうこととなるようである。

 

23、つまり、都道府県は、法人事業税の一部を国税として振り替えられ、さらにその持分の交付税のうち2500億円も市町村に水平に移譲することになる。ここでは2重に、都道府県と市町村の水平的財政調整が行われていることになる。

 

24、内容は次の通り。

(1)4000億円は都道府県に1500億円、市町村に2500億円配分する。

(2)算定方法

 @ 都道府県(1500億円程度)、標準団体(人口170万人)で20億円程度。

   ・測定単位は人口

   ・単位費用×人口×段階補正×(第一次就業者比率、高齢者人口比率、面積による密度補正)

 A 市町村(2500億円程度)、測定単位はふたつある。

   ・測定単位 人口(うち2250億円程度)

   ・単位費用×人口×段階補正×(第一次産業就業者比率、高齢者人口比率)

   ・測定単位 耕地および森林面積(うち250億円程度)

   ・単位費用×耕地および森林面積

 B 市町村試算 

   ・人口10万人  2億円程度  基準財政需要額に対する比率 1.2

   ・人口5万人  1.3億円程度                1.4% 

   ・人口1万人  8千万円程度                 2.7%

      ・人口5千人  6千万円程度                2.9

 合併市町村については、旧市町村単位で算定した額を合算することによるまちづくり支援。

 

25、この地方再生対策費は少なくも2年度は行われる。09年度の税制改革での税源移譲がどのようなかたちになるか不明であるので、それ以後の姿は今のところ定めがたい。いずれにしても、このような臨時措置は、速やかに解消される必要がある。

 

26、その上で、「地方再生対策費」は新しく「新地方再生対策事業費」とし、財政規模も2兆円ないし3兆円規模で、福祉、教育、環境、医療などの財政需要を積み上げて再構成される必要がある。

 

27、あらためて指摘しておかねばならないのは、条件不利地域に対する財源保障としては、このような財政調整が行われることが望ましい、ということである。「自己選択、自己責任」は一定の財政力(担税力)をもっていることが前提とならなければならない。市場での競争は、市場に参加する人々の「機会の均等」(情報、財政力、責任能力、判断力などが均等であるという「機会均等」)を前提としている。そのような機会や能力を制度的に、あるいは地政学的に奪われている地域には、傾斜的な財源配分、財政調整こそが求められるのである。

 

国の一般会計予算は0.2%

   プライマリーバランスは悪化

28、政府が1224日に決定した一般会計の総額は0.2%増の83613億円とやや拡大型予算である。新規国債発行は4年連続して縮小したが、減額幅は840億円と小粒である。税収は0.2%の増。一般歳出は472845億円で0.7%の増。公共事業費は3.1%の減、国立大学運営費交付金は1.9%減の一方、社会保障関係費は6400億円の増加となった。また地域再生対策費4000億円など交付税増を認めている。

この結果、プライマリーバランス(基礎的財政収支)は、国の一般会計ベースで07年度の44千億円から52千億円に悪化することとなった。こ

 

社会保障関係費の増

 生活扶助費の切り下げは09年以降に

29、地方財政計画の歳出面では、国の一般会計にある社会保障関係費のうち、地方財政を通じた予算がある。一般行政経費のうち国庫補助負担金を伴う事業では、生活保護費が2670億円で1.2%増だが、これは07年中の厚生労働省の動きからするとマイナスになっているはずの経費である。

厚生労働省の「生活扶助基準に関する検討会」(樋口美雄慶応大学商学部教授:座長)は1120日に報告を行った。わずか1ヶ月の協議での同検討会の報告では、60歳以上の単身世帯のうち低所得世帯の生活費は月額62931円だが、生活扶助では71209円と1万円多いという。夫婦と子ども一人世帯では低所得世帯の生活費が148781円で生活扶助は15408円。したがって、生活扶助基準を数年かけて低所得者の生活費まで引き下げる方針を固めた、と報道されている(1121日、日経)。

 

30、これに対して、「問題は、生活保護費が相対的に高いことではなく、低所得者の消費水準が低く抑えられていることだ。北九州市の餓死事件のように水際で受給者を絞り込んで貧困生活を強要し、その水準が低いからと生活保護の水準を下げると言うのでは憲法第25条に反する。生活保護は障害者自立支援法、介護保険法、地方税などの減免規定に連動する。最低賃金もそうだ。生活扶助引き下げは低所得者全体の生活を引き下げる効果があることを銘記すべきだ」という有力な反論がある。(稲葉剛・NPO法人もやい代表理事。1129日、朝日)

 

31、野党からばかりではなく与党内からも「弱者切捨てと批判を受ける」「生活保護受給者の生活をおびやかす」などの異論も強く、結局、08年度の引き下げは見送られ、09年度以降の実施をめざすこととなった。ただし、母子加算の段階的廃止は08年も実施する予定だ。

 

最低賃金法改正など

32、一方で地域最低賃金の決定に生活保護費の水準を下回らないよう求める最低賃金法改正が成立している。ちぐはぐな政策である。

「改正最低賃金法」は生活保護との整合性を求め、さらに「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」との文言を入れる修正が行われた。「労働契約法」は、就業形態の多様化を踏まえ、転籍や雇用条件などの雇用ルールの明確化を盛り込んだ。パートや派遣社員に配慮して「均衡の待遇」を」明記した。なお残業代引き上げなどを盛り込んだ「労働基準法改正案」は、経営側の抵抗で成立は見送られた。

 

違法な窓口規制に走る自治体

33、一方で、自治体の窓口対応に大きな問題がある。厚生労働省の適正化指導にもともとの問題があるのだが、さらに財政難から生活保護費の伸びを削減するよう圧力を受けた担当部局が、生活保護法に違反するような窓口規制を行っている。

 生活保護について司法書士や弁護士などの有志が行った今夏の全国一斉相談で、福祉事務所の窓口で門前払いを受けた人のうち、49%は受給資格があった可能性が高いことがわかった、という、(1025日、朝日、永田豊隆。)993件の相談のうち289件が窓口まで行っている。このうち143件は明らかに収入や貯金などが生保護基準を下回り、資産もなく就労や扶養の予定もなかった。電気やガス、水道などライフラインを止められ、病気の治療代がないなど「緊急ケース」が2割あった。「親類の援助を」「65歳以下は資格なし」「持ち家を処分しろ」など違法な理由で断られ、98%の284件は申請さえさせてもらえなかった。

 

障害者自立支援費

34、地方財政計画の国庫補助負担金をともなう一般行政費のうち、障害者自立支援給付費は13076億円と07年度の11921億円より1155億円多く、9.7%の伸びとなった。

 

35、小規模作業所の全国組織「きょうされん」の調査によると、自立支援法施行後の064月以降に、福祉施設を利用する際の負担が増えた世帯が半数に上る。0610月から071月までに46都道府県の2410の障害者世帯に聞いた。1万〜2万円未満の負担増が37.7%でもっとも多かった。2万〜3万円未満の負担増も22.9%いる。

通所施設などの事業所は、報酬が月払いから日払いに変更になって大幅な減収となっている。これの対策として法施行前の9割までの収入を保証する施策がとられている。

 

36、利用者負担は、緊急措置として08年度予算では「低所得者1」(収入が年80万円以下)では3750円から1500円に、「低所得者2」では6150円から3000円に下げられることになった。施設利用者の負担の引き下げ措置は、09年以降も恒久化されることとなっている。

 

38、この間の議論で明瞭になってきたのは、介護保険制度との統合をにらんだ障害者福祉への「利用者1割負担」の導入が破綻したということだ。高齢者福祉と障害者福祉との違いを十分に吟味することなく、統合を図るのは間違いである。

この違いは、まず家族との関係にある。高齢者、特に後期高齢者ではかなり高額の年金所得の人も少なくない。月の年金収入がサラリーマンの場合、平均で20万円程度にはなる。それに家族の所得もしっかりしている家族が相対的に多い。しかし、障害者は個人では障害基礎年金以外の所得がない場合が多いと思われる。支える家族もその多くが、障害者の介護や生活援助というハンディキャップのために多くの所得を期待できない。

この本人と家族の所得の大きさと安定性の違いと、扶養関係の違いが介護保険と異なって大きな抵抗を生んだのであるとも考えられる・

 

後期高齢者医療制度

39084月からは、年金から個人単位で保険料を徴収し、保険給付を県単位での広域連合で行う、「後期高齢者医療保険制度」が発足する。このために地方財政計画では後期高齢者医療給付費の項が新設され、15708億円が計上されている。

 既に各県ごとの後期高齢者保険料が決定されている。

 

40これまでの老人医療費制度と以下のような違いがある。

(1)これまでは扶養家族ということから、高齢者本人の保険料負担は必要がない場合が多かったが、新制度では全ての高齢者が被保険者となり、保険証は一人一人の保険証である(介護保険と同じ)そのために被保険者本人として、保険料を負担する。

(2)医療費の窓口負担は老人保健制度(083月に廃止となる)と同じく1割となる。ただし、現役世代並みの所得がある人は3割負担となる。

(3)保険料の決定は府県単位で全市町村が加入する広域連合(特別地方公共団体)が行い、具体的な徴収事務は市町村が行う。

(4)なお、健康保険などの被保険者の被扶養者であった人の保険料は、07年の1030日の与党合意で084月から9月までは凍結し、10月から半年は9割を軽減とするとされた。

 

4175歳以上の後期高齢者医療制度で、都道府県ごとの一人当たりの保険料の平均額は全国平均で年額で72千円、月6千円となった。最も高いのは神奈川県で92750円、以下東京91800円、大阪88066円、愛知84440円、福岡83740円、埼玉83653円、京都82500円、兵庫81400円。低いのは青森で46374円、ついで岩手の47733円、山形の49000円。厚労省が1126日発表した調査で、都道府県からの聴き取りと独自の試算による

 

児童扶養手当の削減凍結

42、地方財政計画の一般行政経費のうち、母子世帯に支給される児童扶養手当も07年度の4666億円から、08年度は4770億円と104億円の増加となっている。これは、08年度から予定されていた児童扶養手当の段階的削減が凍結された影響もあると思われる。この凍結案は1116日に与党として合意している。民主党は削減関連序文の廃止法案を準備していたもの。

離婚等の増加もあって母子世帯は増加傾向にあるなかで、社会保障費削減の一環として、母子福祉法の改正が行われ、改正法では受給が5年を超える場合に最大半分まで減らすことにしていた。児童扶養手当は月額9850円から41720円が支給されている。

厚生労働省の調査では、2005年の母子家庭の平均収入は213万円だった。これは前年比よこばい。就労収入は171万円と前回03年調査より9万円増えたが、一方で児童扶養手当の支給が一部の世帯で減ったため。昨年11月に2106世帯に調査を実施し、1517世帯から回等があった。百万円未満の母子家庭が18.9%ある。臨時・パートが43.6%、常用雇用が42.5%、派遣社員が5.1%。常用雇用が前回調査より3.3%増えている。

 

これからの自治体の課題

 

1、新しいセイフティーネットの構築

    同一価値労働同一賃金原則の確立

 

 市場原理主義的な思考方法は経済のグローバル化に後押しされ、今後とも大きな影響力を発揮することは避けられない。

 

 ただ自治体は単なる経済主体ではない。民間企業とは異なり、租税を反対給付なく徴収し、営利企業ではできない行政サービスを供給するよう、市民(納税者)から信託を受けた統治主体であり、政治機構である。こちらの原理は民主主義である。多様な人々の「実質的な平等」と自由が地域で実現できるよう、人々を支援し、とも「新しい公共空間」をつくっていくミッションがある。そのために、まず求められるのは「新しいセイフティーネット」の構築である。

 

 その基礎は、同一価値労働同一賃金の考えかたを、自治体の諸施策の中に実現していくことである。同一価値労働同一賃金の原則とは、仕事の内容が違っても、同じ価値とみなされる労働には同じ賃金を払うという原則である。

 

1024日の朝日新聞、松井京子さんによると、イギリスやカナダなどでは「ペイエクイティー」などと呼ばれ立法化されている。既に1951年にILO100号条約で定められている。日本も67年に批准したが、労基法4条に「男女同一労働同一賃金」があるとして改めて立法化されてこなかった。20076月のILO総会の委員会は、日本政府に対して同原則の立法化と実践を求めることを決めた。 10月に京都市内で「均等待遇アクション21京都」(宇治市)が「一時間でできるカンタン職務評価」講座を開いた。カナダなどを参考に間単に職務評価ができるワークシートを開発、各地でワークショップを開く。「コミュニケーション技能は必要か」「特別な知識は必要か」「問題解決力は必要か」「精神的に大変なことは」など、負担、環境、責任、技能の観点から分析し、評価し点数化する。

 

 この同一価値労働同一賃金の原則を地域で実現することが、「格差社会」を変え、働き甲斐があり希望の持てる社会をつくることでもある。

それとならんで、指定管理者の指定や工事契約、請負契約においても同一価値労働同一賃金の原則が保障されるものとしなければならない。

このことは地方自治体の内部にも跳ね返ることになる。つまりアウトソーシングによって増加している臨時職員などの待遇改善やスキルアップに取り組むことが求められるのである。また、一時議論されたワークシェアリングについてもあらためて論議を進める必要がある。

 

たとえば、東京都千代田区は2008年度から、保育士など1年契約の非常勤職員の報酬を引き上げる、としている(2007124日、日経)。正規職員との格差を縮小するねらいだという。同じ職種でも専門能力や経験によって月額報酬を5段階にわけ、意欲の向上や優秀な人材の確保を目指す。現在は文化財調査指導員や保健師のT類が月192100円、保育士などU類が177100円、その他のV類が152100円となっている。これを5段階に拡大し、T類が204700円ー25400円。U類が18万ー226600円、V類が163300円ー202200円とする。通勤費は月55千円を上限の実費支給とする。人件費の増加額は年に4千万円程度だという。

 

2、地球環境問題への積極的取り組み

 

1129日には、都知事の諮問機関である東京都税制調査会(神野直彦会長)が都の独自の課税として環境税導入の検討を求める中間報告をまとめた。ガソリンなど化石燃料への課税、電気・ガスへの課税、自動車への超過課税、都民税の超過課税、の4案を示した。税収は環境対策に充てる。議論の中で、ガソリンなら一リットル当たり1.9円、灯油同2.1円、電気は1キロワット当たり0.3円などの税率が例示されている。

 既に森林を管理する財源としての「森林税」、「森林環境税」は20府県以上で条例制定され、産業廃棄物処理税も広がっている。

 京都議定書で定めた温暖化ガスを削減する目標値を実現するために、ガソリン税の環境税化を自治体として提案するべきである。

 

3、シームレスな地域包括ケアシステムの構築

 

介護保険法も施行されてあしかけ8年になる。08年度は第4次の介護保険事業計画の策定と介護保険料の算定の年度である。

自宅で利用できる介護保険サービス以外の介護サービスの拡充に自治体単独事業として乗り出す自治体が増えている。東京都目黒区では紙おむつは月6300円まで無料、寝具の乾燥・消毒は年6回まで無料。出張理美容は年4回まで12千円、リフト付き福祉タクシーはメーター料金の40%は区が負担する。介護保険は本人の自立支援が基本だという原点にかえって、生活に最低限のサービスを使えるようにする。さらに、ふとん乾燥や髪の手入れなどの気分転換は、生活の質を維持する上で大切である。「神戸ライフ・ケアー協会」のようなNPOやダスキンなど民間企業も生活支援サービスを始めている。散歩や贈答品の買い物、墓参りの同行やペットのえさやりを一時間800円から1800円である。

それに往診と訪問看護を提供できる医療機関とのネットワークをつくることが基本的な施策としなければならない。

 

4、地域就労支援政策の確立

 

2000年の地方分権一括法によって雇用労働行政は一方で集権化され、それまで府県行政の中にあった職業安定事業などは国の各都道府県労働局に統合された。他方で雇用対策法の改正で広く地方自治体(都道府県、市町村)に雇用政策実施の努力義務規定が定められた。

ついで20036月に職業安定法の改正が行われて、国の機関となったハローワークとともに、「無料職業紹介事業」の権限が地方自治体に開放され、20043月に施行されている。この結果、地方自治体による無料職業紹介事業は徐々に拡大してきている。2007年初頭の段階では全国で88自治体、近畿では7自治体が無料職業紹介事業を始めている。

 

おわりに

 

 今回の地方財政計画を最も大きく規定したのは、昨年の参議院選挙だった。政府も与党も、地方への適切な心配りを示す必要があったのである。その上で、財政再建に向けた「骨太方針」のもとでの、地方財政対策が行われ、地方税の基幹税の一つである法人事業税の半分が国税化され、それをもとに「地方再生対策費」が新設された。その意味では、分権改革の財政的な面での国の責任を解除し、自治体間の財政調整という新しいかたちを、どさくさまぎれに導入したという色彩がある。

 水平的な自治体間の財政調整についての自治体間の議論や討論と、それを通じた自治体間の共通認識と合意を形成する努力を抜きにしている。これではこれからの市民社会形成にとってマイナスに働くことにしかならない。タテワリの集権的意思決定を再生するものだったといわれても仕方がない。今後は、次の税制改革に向けて、総務省と自治体の間、財務省と自治体の間、自治体と自治体の間、そして市民と政府との討論を積極的に用意しなければならない。

 なお、議論の中心は、地方交付税5兆円の復元と、それに向けた福祉、環境、医療、教育を中心にした基準財政需要額の積み上げの議論でなければならない。あわせて、地方消費税の地方税としての拡充が検討されるべきである。また環境税の本格的な導入を実現するべきである。

 

 

 

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