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2008年度地方財政計画の特徴と自治体の課題

   地方法人事業税の国税化と地方再生事業の新設の意味
 (初出:『自治総研』2008年2月号)

 

                     奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

1、2008年度地方財政計画

 

(1)下げ止まった地方財政計画の規模

          地方交付税は増加に

 

2008125日に、2008年度の地方財政計画が閣議決定され、第169国会に提出された。これは例年より2週間ほど早い。これに先立って、20071218日、予算の財務省原案を決定するにあたって、財務省と総務省との間で2008年度の地方財政対策が合意された。この結果を踏まえて、この地方財政計画が決定されている。

 2008年度の地方財政計画の第一の特徴は、地方財政計画の規模が834,014億円と前年度に比べて2,714億円、0.33%の増となったことである(巻末の付表の2「一般財源等の状況」を参照)。これによって2001年度の893,100億円から昨年度の839,088億円まで6年間連続して減少してきた計画規模が、ようやくごく少額であれ、上向きとなった点である。地方財政計画規模のこの間の減少幅は54012億円、ピーク時より6.0%の減少であった。同じ時期(01-07年度)、国の一般会計は826,524億円から829088億円と2,564億円の増加であるのと対比すると、その圧縮の大きさがわかる。

 第二の特徴は、この計画規模の小幅な上昇の主な要因は、一般財源総額(地方税と地方交付税、それに臨時財政対策債を加えたもの)が587,096億円と前年比0.87%の増加が見込まれるところにある(同じく付表2を参照)。そのうち、地方交付税が地方交付税特別会計の「入り口ベース」で3.36%、同特別会計の「出口ベース」で154,061億円になり前年度比2,000億円、1.34%増加したことが大きい。地方税は今年度の見込みが高すぎたために来年度は0.24%の伸びにとどまる。臨時財政対策債も7.73%の伸びだが、これは「地域再生対策費」の分、3,700億円が効いている。これを除くと、1,668億円の減となる。

地方交付税(出口ベース)は、2000年度の214,107億円をピークに、2007年度の152,027億円にまで削減されてきたものだ。削減額はこの7年間で62,080億円に達する。

 

(2)「地方法人特別税」と「地方再生対策費」の創設

 

第三の特徴は、2008年度に都道府県税である法人事業税の一部、26,000億円(消費税の1%に相当する)を「地方法人特別税」という国税に転換し、2009年度の「地方法人特別譲与税」として都道府県に再配分することである。これは、特に2007729日投開票の参議院議員選挙で惨敗した自民党などから、都道府県間の税収格差を是正することが必要だという声が高まる中で、財務省を中心に、東京都の税収を水平的に移転しようとする動きが高まったこというかたちで先行した。これに対して総務省は、法人関係税の一部の国税化と合わせて地方消費税の拡充(2%へ)を行うという形の、「税源交換」を提案する。この対立がとけぬまま11月の末になって、与党税制調査会の場での調停となった。

つまり、都道府県間の税収の偏りと税収の格差を、法人事業税という東京への集中度が高い地方税の一部を国税化し譲与税として再配分するわけである。配分の基準は人口と従業者数である。

第四の特徴は、この国税となった「地方法人特別税」を原資に、地方交付税の追加的枠として「地方再生対策費」4,000億円を創設したことである。この「地方再生対策費」は、「地方交付税の算定を通じて、市町村、特に財政状況の厳しい地域に重点的に配分」するとしている。

 

したがって、「三位一体改革」のもと、大幅に圧縮されてきた地方財政規模と地方交付税が、ようやく前年度を上回ったのが最大の特徴である。7月参議院選挙結果の効果が出ているとも言える。このことは一応評価しておきたい。ただし、これは後に見るように、法人事業税の国税化による「地方法人特別税」とそれを活用した交付税の追加である「地方再生対策費」の創設によるものであり、この地方再生対策費を除くと、交付税は2,000億円の減となっている。すなわち、地方財源を国税に吸い上げて、それを原始として交付税化することによる交付税の増加であって、国と地方の財源配分という点では、むしろ地方分権に逆行する施策であった、というべきである。

 

(3)2008年度の地方財源不足は52,476億円

 

 概算要求後に国の予算編成が進む中で、来年度の各省庁の予算が固まってくる。その中で、それぞれの予算を執行するために、どれだけの「地方一般財源が必要か」という、必要一般財源の額も確定してくる。それを決めるのは、まず予算の見込み額総額である。次にその予算見込み額のうち、国が直轄で行う分、国と地方が財源負担を行う分(例えば、生活保護費であれば国が10分の7、府県や市が10分の3)、それに地方が単独で実施する分という割り振りがあって、地方負担額が計算されてくる。平行して、制度的に与えられた条件(地方税制度から見込まれる税収と国税5税の一定割合である地方交付税収入の見込み額)から、また経済成長の見通しから実際にはどの程度の一般財源が期待できるかが積算される。  

例示的にいうと、85兆円という国の一般会計予算を編成するときに、予算編成の検討過程で必要と考えられる地方一般財源が55兆円になったとしよう。一方で、地方税の収入は景気動向にもよるが35兆円、地方交付税の法定の収入見込みが15兆としたとき、55兆円(必要一般財源)からこの地方税収35兆円、および地方交付税15兆円を除くと、5兆円の地方一般財源が不足する、ということになる。

来年度はこの「地方財源不足額」は52,476億円と積算された。前提としては、地方税の伸びが横ばい程度、国税の伸びも鈍化することが予想されていることがある。一方で、歳出面では人件費や単独所業など建設事業の抑制を進めるものの、社会保障関係費の自然増と公債費の増加が継続していることなどがある。

この財源不足額はピーク時の2000(平成12)年度には恒久的減税の影響額を除く通常収支レベルで106,000億円あったものである。このように地方財源不足がほぼ半減している理由は、一方で歳入面での税源移譲による地方税の拡大と、他方での歳出削減が進んだからである。特に人件費が職員数の減と度重なるマイナス人事院勧告などで減少してきたこと、および、投資的経費がピーク時の半分に切り詰められていることが主とした原因である。特に「決算と計画の乖離の是正」措置がこの2年行なわれてきた効果が出てきている。

地方財政計画上の職員数は、2008年度は前年度から全体として28,319人の減を見込み、給与関係費は222,071億円と3,040億円、1.4%のマイナスを計上している。

 とはいえこの不足額は、1996(平成8)年度以来、13年間連続して地方交付税法第6条の32項の規定(引き続き3年以上、交付税総額の1割以上の不足が生じた場合は、地方財政制度の改正か地方交付税率の引き上げ、または地方行政制度の改正を行う)に該当することとなった。

 

(4)財源不足の補填措置

 

 この財源不足額について、2007(平成19)年度に決めた、2009(平成21)年度までの制度改正に基づいて次のような補填措置を行った結果、国と地方が折半して補填すべき財源不足は生じないこととされ、2007年度に引き続き、国(財務省)からの「臨時財政対策加算」は行われないこととされている。 

 

ア、財源対策債の発行(建設事業の予算額によって発行規模が規定される、起債充当率を引き上げることで行われる)

                                15,400億円

イ、国の一般会計による加算(いわゆる既往法定分、2007年度以前の地方交付税法で2008年度に地方交付税総額に加算するとされている額)      6,744億円

    この内訳は、07年度の税源移譲に伴う地方交付税減少の緩和額、 2,000億円

          公共事業等臨時特例債の利子負担等への加算額、   4,744億円

ウ、臨時財政対策債の発行                   28,332億円

    ・2001(平成13)年度移行に発行した既往の臨時財政対策債の元利償還に充てる

    額                            12,522億円

    ・地方財政計画の投資的経費(単独)と一般行政経費(単独)の決算との乖離を是正するための所要一般財源に相当する額             12,110億円

    ・地方再生対策費                       3,700億円

エ、特別交付金の交付                       2,000億円

    恒久的減税による減収を補填する制度であった減税補填特例交付金の後継事業としての交付金

 

(5)地方交付税の総額は154,061億円、1.3%増

 

 2008年度の交付税の総額は、次のようなった。

ア、国の一般会計からの繰り入れ(特別会計の入口ベース)    151,041億円

     所得税及び酒税の32%、法人税の34%、国税の消費税の29.5%、たばこ税の25

                               147,527億円

・先に触れた国の一般会計からの加算額、いわゆる既往法定分      6,744億円

・当該年度国税減収清算と過年度清算分               △2,870億円

 

イ、交付税特別会計の出口ベースの交付税の総額は、上記の入り口ベースの交付税に、剰余金2,502億円、前年度からの繰越金5,869億円(前年度はこれが15,201億円あった)、交付税特会の借入金の利子支払いがマイナス5,711億円、で合計154,061億円となった。これは前年度比2,034億円、1.3%の増加である。

しかし、冒頭でも触れたように、交付税総額の2,034億円の対前年度比の増加は、4,000億円の地方法人事業税を原資とする地方再生事業費の追加の結果であり、それを除けば実質ではマイナス2,000億円である。それだけ、歳出のカットとその基礎にある基準財政需要額の圧縮は厳しいものがある。

このように圧縮された需要額の復元こそ、今回のように地方税を原資とし、地方財源の内側での表面上のやりくりではない、国から地方への財源移転として、また財政調整財源の確保、拡充のためには不可欠である。

 

(6)地方税の収入見込み額は横ばい

 

 地方税の収入見込み額は、道府県税が188,403億円、市町村税が216,300億円である。伸びは道府県税が121億円(0.1%)減少、市町村税が1,096億円(0.5%)の増加としている。この道府県税のやや減と、市町村税の微増を見ると、政府は地方の税収は来年度は伸び悩むものと見ていることがわかる。この理由としては、来年度の政府の経済成長の見通しは名目で2.1%、実質で2.0%としてなお堅調という見通しであるから、前年度の税収見通しが高すぎた反動という要因が強いのであろう。

 しかし、この地方税収が確保できるという保障は残念ながら乏しい。政府経済見通しの名目2.1%が高すぎるのである。

 

(7)ピークアウトした日本経済

 

 すなわち、様々な指標(名目経済成長率など国民経済計算速報値、日銀各支店の地域経済報告、新規住宅着工件数、毎月勤労統計の給与水準、労働力調査の詳細報告、完全失業者数、有効求人倍率、全国家計調査の収入と消費動向など)から見れば、日本経済は昨年、20078-9月に「ピークアウト」をしている可能性が高い。

2008年初頭の東京市場の株価は大きく下落して始まり、15千円台から13千円台を割り込んだ。一方で為替市場ではドル安、円高が進み、1ドル104円近くまで円が上昇している。

同じく20081月初めに、ニューヨークの原油先物市場では、オイル価格が1バレル100ドルの大台を超える価格を一時つけた。同時に株安とドル安がすすんだ。

米国のサブプライムローン問題では、バブルそのもの信用膨張から、一転して債権の回収が不能となる形で資産の毀損が拡大している。やっかいなのは証券化された債権がどこまで広がっているか確認が不可能なために、信用不安の拡大が止められないことだ。今進んでいるのは、資産の評価損で目減りして資本が痛んでいる金融機関が、貸し出し先を絞ることによる信用の収縮である。さらに個人用の住宅債権の強制売却によって住宅を失う人が数百万人単位で増えている。これが個人向け信用の収縮、企業の投資活動へのブレーキとなって、個人消費の落ち込みや住宅建設の大幅なダウンをもたらす。このことを通じて雇用不安など実体経済の後退が進行している。市場原理主義による信用の野放図な膨張の結果、市場経済機能の自壊が進んでいるといっても良い。

このような米国経済の後退局面への移行は、自動車や電機という米国向けの輸出に依存する日本経済に対して、減速要因として多かれ少なかれ影響が出てきつつある。少し先になるだろうが、この状態を「外需依存型経済による成長路線の失敗」といわれることになろう。

また、原油価格を中心とした、原燃料と原材料価格の高騰が2007年中に進み、我が国製造業、特に中小企業に打撃を与えた。原燃料の高騰が中小企業の経営を圧迫し、利益幅が小さくなり、資金繰りの壁から倒産企業が増えている、(20071231日、日経)。20071月から11月までの間に、企業倒産が168件と1万件を3年ぶりに突破(帝国データバンク調べ)。特に中小零細企業が多い。原材料の高騰と、貸金業法改正や建築基準法改正の規制強化という二つの要因が働いている。負債1億円未満の零細企業の倒産が全体の60%を占めている。前年同期比で25%増えた。業種別には建設業の2,709件が最多で14%の増加となった。ついで小売業、サービス業が続く。

このため、札幌市は売上高原価比率や販売管理費比率が上昇する中小企業を対象に、3月末まで融資制度の金利を年2.0%以下とする。長野県は2007年度の融資枠を125億円積み増して1,055億円に拡大した。山口県は制度の対象を広げ、売上原価に対する石油製品比率が高い企業にも融資する。運輸、食品のほかクリーニングや製紙業の資金需要に応じる。石川県は機械や繊維などの業界団体に対して、その優越的な地位を利用して零細企業による価格転嫁を妨害しないよう取引内容を是正するよう要望書を送った。

岩手銀行や神奈川銀行など地域金融機関も中小企業向けの貸出金利を優遇する商品を販売し出している。

 

(8)自治体での税収の伸びは厳しい

 

 自治体の現場では、さらに不利な条件が重なる。第一には、2007年度問題が地域で明瞭になってきている点である。すなわち団塊の世代の退職に伴って、所得が一気に少なくなる人が増えている。年間所得は年金生活や退職後雇用への移行で、おおざっぱにそれまでの6割の水準となる。

 第二には、若年層にあっては非正規雇用の割合が高どまりしているため地域住民の低所得者の層が増加している。「労働力調査詳細結果」の20077-9月平均の数字によると、雇用者数は5577万人と前年同期に比べて92万人の増加となっている。このことは雇用情勢の好転を示している。しかしその内容はよくない。この雇用者のうち、1,736万人が非正規雇用者で、その全雇用者に対する比率は33.3%と丁度3分の1となっている。非正規雇用の内容は、パート・アルバイト、派遣、契約、嘱託などである。

正規雇用の労働者は2005年の10-12月期まで減少を続けてきたもので、2006年に入ってから増加に転じている。この点は明るい数字であるが、それでも非正規雇用の労働者の伸び率と比べて多いときもあれば、かなり少ないときもある、という状態が続いてきている。

このために非正規雇用者数の割合33.3%は、20057-9月期の33.0%から0.3ポイント悪化すらしている状態である。つまりこの3年間は、非正規雇用の割合は全労働者の3分の一という状況が持続しているのである。昨年も触れたが、この非正規雇用の比率は世界的に見て異常な高さである。NIRAの調査ではOECD諸国のうち、イギリスが23%、ドイツが20%、米が13%、フランスが12%、イタリアが11%となっている(20061221日、日経)。

この状態が続く中で、地域の個人所得の伸びは停滞するか、減少するかしている。200711月発表の9月の毎月勤労調査の確報(従業員5人以上)では、全ての給与を合計した一人当たりの現金給与総額は前年同月比0.6%減の273,008円と2ヶ月ぶりに減少している。パートの労働者が増加したために、賃金を下げる方向に作用しているという。

このために、市町村の基幹税である住民税個人所得割が伸び悩む自治体が増加しているのである。総務省が言うように、一般財源総額が増加していると喜んでいることはできない。依然として「地方一般財源の伸びが見られない」、という状況は続くのである。

さらに固定資産税も伸び悩むところが少なくない。これは、大都市地域、それも都心地域の地価はバブル期並みに上昇する一方、その他の地方的地域では依然として地価の下落が続いているからである。国土交通省が2007919日発表した全国の基準地価(71日時点での土地の正常価格で不動産の市場取引価格と考えられる地価)では全国の平均は依然としてマイナス0.5%と下落が続く。その中で東京都は全用途平均で12%の上昇で、一人勝ちの様相が濃い。

 

(9)中断した交付税特会の借入金償還

 

 来年度の交付税総額の確保のために措置されたものの中には、2006年度補正予算から始められた交付税特別会計借入金の計画的な元金償還が、2007年度補正予算からは中止され、2013(平成25)年度以降に繰り延べられたことがある。すなわち2007年度に予定されていた償還額5,869億円を2000年度に繰り延べて交付税総額に加算する。後掲の「地方交付税算定基礎」では、「前年度からの繰越金」とされているものである。また2008年度に予定していた償還額は2014年度以降に繰り延べられる。この償還計画は、交付税特会の借入金のうち地方負担分341,509億円について20年間の償還計画として策定したものである。わずか2年で(実質的には2006年度補正予算の一回のみ)財政健全化の歩みは中断してしまったわけである。

 

2、地方財政対策の争点

 

(1)地方法人特別税と地方法人特別譲与税

 

 冒頭にも触れたように、今回の地方財政対策の最大の争点は、地方税の偏在とその調整であったことは疑いがない。参議院議員選挙の敗因として、小泉・竹中ラインでの「三位一体改革」によって地方の財源、特に地方交付税を奪ってきたことへの手当てがなかったことが、与党内からも強く指摘された。そのターゲットになったのが法人2税、そのうちでも法人事業税であった。これについては、財務省サイドは、その一部の国税化によって主として東京都の財源を吸い上げ、それを水平的に他の道府県に配分することを主張した。それに対して、総務省サイドは、法人2税の国税化とそれに見合う地方消費税の地方への移譲を主張した。「税源交換」という主張である。これは法人関係税の不安定性が地方税になじまないということと、それに換わる税源として、より普遍性のある消費税を地方税として確保しようとするものであった。

 この論争は、消費税を社会保障財源の基幹税とするとした政府税制調査会や自民党などの論調から総務省が最初からハンディをもたされた論争であったようだ。結局は、自民党税制調査会の調停で、ほぼ財務省案が通ることとなった。

 ただし、地方財源としての地方消費税の拡充については、与党の税制改革大綱および政府税制調査会答申でも明記され、2009年の税制改正に向けて、足場ができたというのが総務省の主張である。

@、2008年度に法人事業税(所得割・収入割)の一部、26,000億円は地方法人特別税として国税化される。

A、地方法人特別税の課税標準は法人事業税(所得割・収入割)の税額(標準税率分)である。

B、地方法人特別税の賦課徴収は都道府県が行う。

C、2008101日以降に開始する事業年度から適用する。したがって08年度中はほとんど歳入されない(40億円程度)。

D、この地方法人特別税を原資に、都道府県に対して「地方法人特別譲与税」を譲与する。

E、譲与基準は、人口で2分の1、従業者数で2分の1とする。ただし愛知県のように、今回の改正による法人事業税の減収額が、財源超過額の2分の1を超える場合は、減収額の2分の1を限度に、当該超える額を譲与額に加算する。

F、地方法人特別譲与税は2009年度から譲与する。

 

(2)地方再生対策費

 

 今回の地方財政対策のもうひとつの目玉は、「地方再生対策費」4000億円の創設である。「地方税の偏在是正により生じる財源を活用」して、「地方の自主的・主体的な活性化施策に必要な歳出を計上」したとしている。「地方税の偏在是正による財源」とは、地方法人特別税の意味であり、この地方税から転換した国税を原資として、交付税として配分することになる。つまり、地方財源で地方の税収格差を埋めようというもので、国からの垂直的財源移転による格差是正ではない。そういう意味でも地方分権改革に背馳するものである。

 さらに、2008年度は地方法人特別税の収入がないから、それに代わって臨時財政対策債3,700億円を追加発行することとされている。この臨時財政対策債は全額都道府県が引き受ける。すなわち、地方再生対策費のうち道府県分の1500億円と、市町村の地方再生対策費2,500億円分の臨時財政対策債を引き受ける。市町村は臨時財政対策債ではなく、交付税2,500億円を道府県の持分から融通してもらうこととなるようである。

 つまり、都道府県は、法人事業税の一部を国税として振り替えられ、さらにその持分の交付税のうち2,500億円も市町村に水平に移譲することになる。ここでは2重に、都道府県と市町村の水平的財政調整が行われていることになる。

 

@、4000億円は都道府県に1,500億円、市町村に2,500億円配分する。

A、算定経費は、「地方税偏在税制による財源を活用して」、地方が自主的、主体的に行う活性化施策に必要な経費を、基準財政需要額において包括的に算定する。市町村、それも財政的に厳しい地域に重点的に配分する。

B、算定方法

  ア、都道府県(1,500億円程度)、標準団体(人口170万人)で20億円程度。

   ・測定単位は人口

   ・単位費用×人口×段階補正×(第一次就業者比率、高齢者人口比率、面積による密度補正)

  イ、市町村(2500億円程度)、測定単位はふたつある。

   ・測定単位 人口(うち2,250億円程度)

   ・単位費用×人口×段階補正×(第一次産業就業者比率、高齢者人口比率)

   ・測定単位 耕地および森林面積(うち250億円程度)

   ・単位費用×耕地および森林面積

  ウ、市町村試算 

   ・人口10万人  2億円程度  基準財政需要額に対する比率  1.2

   ・人口5万人  1.3億円程度                 1.4% 

   ・人口1万人  8,000万円程度                 2.7%

      ・人口5千人  6,000万円程度                2.9

 合併市町村については、旧市町村単位で算定した額を合算することによるまちづくり支援。

 この地方再生対策費は少なくも2年度は行われる。2009年度の税制改革での税源移譲がどのようなかたちになるか不明であるので、それ以後の姿は今のところ定めがたい。いずれにしても、このような臨時措置は、速やかに解消される必要がある。その上で、「地方再生対策費」は新しく「新地方再生対策事業費」とし、財政規模も2兆円ないし3兆円規模で、福祉、教育、環境、医療などの財政需要を積み上げて再構成される必要がある。あらためて指摘しておかねばならないのは、条件不利地域に対する財源保障としては、このような財政調整が行われることが望ましい、ということである。「自己決定、自己責任」は一定の財政力(担税力)をもっていることが前提とならなければならない。市場での競争は、市場に参加する人々の「機会の均等」(情報、財政力、責任能力、判断力などが均等であるという「機会均等」)を前提としている。そのような機会や能力を制度的に、あるいは地政学的に奪われている地域には、傾斜的な財源配分、財政調整こそが求められるのである。

 

(3)国の一般会計予算は0.2%

      プライマリーバランスは悪化

 

 政府は20071224日の閣議で2008年度の政府予算案を決めた。一般会計の総額は0.2%増の83613億円とやや拡大型予算である。新規国債発行は4年連続して縮小したが、減額幅は840億円と小粒である。税収は0.2%増の535,540億円。前年度は景気回復を見込んで16.5%と大幅な伸びを見込んでいたものだが、今回は一転して微増の見通しとなっている。一般歳出は472,845億円で0.7%の増。公共事業費は3.1%の減、国立大学運営費交付金は1.9%減の一方、社会保障関係費は6,400億円の増加となった。また地域再生対策費4,000億円など交付税増を認めている。

 この結果、プライマリーバランス(基礎的財政収支)は、国の一般会計ベースで07年度の44千億円から52千億円に悪化することとなった。このプライマリーバランスの赤字拡大を財務省が容認したのは、2009年に予定されている消費税率引き上げを中心とする大型の税制改革のためであろう。増税を主張するためには、経費の削減とともに、歳入が歳出に不足しているという状況を示す必要があるからである。

 

(4)社会保障関係費の増

     生活扶助費の切り下げは2009年以降に

 

 地方財政計画の歳出面では、国の一般会計にある社会保障関係費のうち、地方財政を通じた予算がある。一般行政経費のうち国庫補助負担金を伴う事業では、生活保護費が2670億円で1.2%増だが、これは2007年中の厚生労働省の動きからするとマイナスになっているはずの経費である。

厚生労働省は、20071019日に「生活扶助基準に関する検討会」(樋口美雄慶応大学商学部教授:座長)の初会合を開き、低所得の一般世帯と生活扶助の基準額とを比較して、低所得者の収入水準まで生活扶助の基準を引き下げる作業に入った。1120日には、同検討会の報告を受けた。わずか1ヶ月の協議での同検討会の報告では、60歳以上の単身世帯のうち低所得世帯の生活費は月額62,931円だが、生活扶助では71,209円と1万円多いという。夫婦と子ども一人世帯では低所得世帯の生活費が148,781円で生活扶助は15408円。したがって、生活扶助基準を数年かけて低所得者の生活費まで引き下げる方針を固めた、と報道されている(20071121日、日経)。

 これに対して、「厚労省は老齢加算、母子加算の引き下げと撤廃に続いて、生活扶助費の引き下げに向けてバタバタ、ひっそりと、当事者の話も聞かないで検討を進めている。問題は、生活保護費が相対的に高いことではなく、低所得者の消費水準が低く抑えられていることだ。北九州市の餓死事件のように水際で受給者を絞り込んで貧困生活を強要し、その水準が低いからと生活保護の水準を下げると言うのでは憲法第25条に反する。生活保護は障害者自立支援法、介護保険法、地方税などの減免規定に連動する。最低賃金もそうだ。生活扶助引き下げは低所得者全体の生活を引き下げる効果があることを銘記すべきだ」という有力な反論がある。(稲葉剛・NPO法人もやい代表理事。20071129日、朝日)

 野党からばかりではなく与党内からも「弱者切捨てと批判を受ける」「生活保護受給者の生活をおびやかす」などの異論も強く、結局、2008年度の引き下げは見送られ、2009年度以降の実施をめざすこととなった。ただし、母子加算の段階的廃止は2008年も実施する予定だ。

具体的には、低所得の一般世帯に比べて割高となっている部分を引き下げることは2008年度は見送り、2009年度から3-4年かけて段階的に行う。一方、勤労所得を一定額、生活扶助に上乗せする「勤労控除」の額を引き上げる増額措置などは2008年度に導入する。まず東京(高齢夫婦世帯で月に121,940円)などから最大で22.5%低い地方の生活扶助を引き上げる。逆に都市部を引き下げる。単身より有利な家族世帯の生活扶助を下げる。それから一般世帯を上回る生活扶助を引き下げる方向だ。例えば、「全国消費実態調査」によると、夫婦と子ども一人の世帯では、収入が下から一割の一般の低所得世帯の生活費は、生活扶助費を月に1,600円下回っている、という。

 

(5)最低賃金法改正など

 

 一方で地域最低賃金の決定に生活保護費の水準を下回らないよう求める最低賃金法改正が成立している。ちぐはぐな政策である。

「改正最低賃金法」は生活保護との整合性を求め、さらに「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」との文言を入れる修正が行われた。同じ国会で成立した「労働契約法」は、就業形態の多様化を踏まえ、転籍や雇用条件などの雇用ルールの明確化を盛り込んだ。パートや派遣社員に配慮して「均衡の待遇」を」明記した。なお残業代引き上げなどを盛り込んだ「労働基準法改正案」は、経営側の抵抗で成立は見送られた。

 

(6)違法な窓口規制に走る自治体

 

 一方で、自治体の窓口対応に大きな問題がある。厚生労働省の適正化指導にもともとの問題があるのだが、さらに財政難から生活保護費の伸びを削減するよう圧力を受けた担当部局が、生活保護法に違反するような窓口規制を行っている。

 生活保護について司法書士や弁護士などの有志が行った2007年夏の全国一斉相談で、福祉事務所の窓口で門前払いを受けた人のうち、49%は受給資格があった可能性が高いことがわかった、という、(20071025日、朝日、永田豊隆。)993件の相談のうち289件が窓口まで行っている。このうち143件は明らかに収入や貯金などが生保護基準を下回り、資産もなく就労や扶養の予定もなかった。電気やガス、水道などライフラインを止められ、病気の治療代がないなど「緊急ケース」が2割あった。「親類の援助を」「65歳以下は資格なし」「持ち家を処分しろ」など違法な理由で断られ、98%の284件は申請さえさせてもらえなかった。

 

(7)障害者自立支援費

 

 地方財政計画の国庫補助負担金をともなう一般行政費のうち、障害者自立支援給付費は13,076億円と2007年度の11,921億円より1,155億円多く、9.7%の伸びとなった。これは相次ぐ自立支援施策の利用者負担の切り下げによるところが大きく、また事業者への経営危機支援も引き続き行われるためである。

小規模作業所の全国組織「きょうされん」の調査によると、自立支援法施行後の20064月以降に、福祉施設を利用する際の負担が増えた世帯が半数に上る。200610月から20071月までに46都道府県の2,410の障害者世帯に聞いた。1万〜2万円未満の負担増が37.7%でもっとも多かった。2万〜3万円未満の負担増も22.9%いる。

通所施設などの事業所は、報酬が月払いから日払いに変更になって大幅な減収となっている。これの対策として法施行前の9割までの収入を保証する施策がとられている。

 利用者負担は、緊急措置として2008年度予算では「低所得者1」(収入が年80万円以下)では3,750円から1,500円に、「低所得者2」では6,150円から3,000円に下げられることになった。この緊急措置に要する予算は、それでも130億円にしか過ぎないのである。なお、2007年度の利用者負担引き下げと経営支援の緊急措置で、1,200億円程度の予算が追加されている。施設利用者の負担の引き下げ措置は、2009年以降も恒久化されることとなっている。

 この間の議論で明瞭になってきたのは、介護保険制度との統合をにらんだ障害者福祉への「利用者1割負担」の導入が破綻したということだ。高齢者福祉と障害者福祉との違いを十分に吟味することなく、統合を図るのは間違いである。

この違いは、まず家族との関係にある。高齢者、特に後期高齢者ではかなり高額の年金所得の人も少なくない。月の年金収入がサラリーマンの場合、平均で20万円程度にはなる。それに家族の所得もしっかりしている家族が相対的に多い。しかし、障害者は個人では障害基礎年金以外の所得がない場合が多いと思われる。支える家族もその多くが、障害者の介護や生活援助というハンディキャップのために多くの所得を期待できない。

この本人と家族の所得の大きさと安定性の違いと、扶養関係の違いが介護保険と異なって大きな抵抗を生んだのであるとも考えられる・

 

(8)後期高齢者医療制度

 

 20084月からは、年金から個人単位で保険料を徴収し、保険給付を県単位での広域連合で行う、「後期高齢者医療保険制度」が発足する。このために地方財政計画では後期高齢者医療給付費の項が新設され、15,708億円が計上されている。

 既に各県ごとの後期高齢者保険料が決定されている。

 

〔財源〕

 これまでの老人医療費制度と以下のような違いがある。

@、これまでは扶養家族ということから、高齢者本人の保険料負担は必要がない場合が多かったが、新制度では全ての高齢者が被保険者となり、保険証は一人一人の保険証である(介護保険と同じ)そのために被保険者本人として、保険料を負担する。その保険料は年金からの天引きが原則である。ただし、年金額が年18万円未満の人や、介護保険料と後期高齢者医療保険料を合わせた額が年金額の2分の1を超える人は、年金からの特別徴収ではなく、市町村に納付書等で納付する。

A、医療費の窓口負担は老人保健制度(20083月に廃止となる)と同じく1割となる。ただし、現役世代並みの所得がある人は3割負担となる。

B、保険料の決定は府県単位で全市町村が加入する広域連合(特別地方公共団体)が行い、具体的な徴収事務は市町村が行う。

C、なお、健康保険などの被保険者の被扶養者であった人の保険料は、2007年の1030日の与党合意で20084月から9月までは凍結し、10月から半年は9割を軽減とするとされた。

 

加えて高齢者の負担増については、想定される総選挙対策の一環として、来年4月に予定されている高齢者の医療費負担増(7074歳への2割負担への引き上げ、1,300億円。および今紹介した75歳以上保険料新規徴収、400億円)の凍結や障害者自立支援法の見直し(自己負担の凍結、400億円)、児童扶養手当の一部削減の凍結(数十億円)などが与党合意として行われることになった。ただし、利用者負担の廃止などの制度見直しには触れていない。これらは2007年度補正予算で財源を確保することとされた。

75歳以上の後期高齢者医療制度で、都道府県ごとの一人当たりの保険料の平均額は全国平均で年額72,000円、月6,000円となった。最も高いのは神奈川県で92,750円、以下東京91,800円、大阪88,066円、愛知84,440円、福岡83,740円、埼玉83,653円、京都82,500円、兵庫81,400円。低いのは青森で46,374円、ついで岩手の47,733円、山形の49,000円。(厚労省が20071126日発表した調査で、都道府県からの聴き取りと独自の試算による。)

 

(9)児童扶養手当の削減凍結

 

 地方財政計画の一般行政経費のうち、母子世帯に支給される児童扶養手当も2007年度の4,666億円から、2008年度は4,770億円と104億円の増加となっている。これは、2008年度から予定されていた児童扶養手当の段階的削減が凍結された影響もあると思われる。この凍結案は20071116日に与党として合意している。民主党は削減関連序文の廃止法案を準備していたもの。

離婚等の増加もあって母子世帯は増加傾向にあるなかで、社会保障費削減の一環として、母子福祉法の改正が行われ、改正法では受給が5年を超える場合に最大半分まで減らすことにしていた。児童扶養手当は月額9,850円から41,720円が支給されている。

厚生労働省の調査では、2005年の母子家庭の平均収入は213万円だった。これは前年比よこばい。就労収入は171万円と前回03年調査より9万円増えたが、一方で児童扶養手当の支給が一部の世帯で減ったため。200611月に2106世帯に調査を実施し、1517世帯から回等があった。百万円未満の母子家庭が18.9%ある。臨時・パートが43.6%、常用雇用が42.5%、派遣社員が5.1%。常用雇用が前回調査より3.3%増えている。

一方では、母子家庭支援策が空回りしているという指摘がある(20071022日、朝日)。母子家庭への児童扶養手当を減らす代わりの施策とされる就業支援事業が進んでいない。2006年度の実施状況について、都道府県、県庁所在都市、政令指定都市に予算と決算の執行状況を朝日新聞が聞いた。「自立支援教育訓練給付金事業」は平均の実施率は45.6%。「常用雇用転換奨励金事業」では12.4%に過ぎない。「高等技能訓練促進費」は地域よってバラツキが大きい。母子家庭は123万世帯(073月)で、うち児童扶養手当を受けているのは955,844世帯。この3割が受給浮開始から5年たち削減対象となっていたものである。

 

3、これからの自治体の課題

 

(1)新しいセイフティーネットの構築

    同一価値労働同一賃金原則の確立

 

 市場原理主義的な思考方法は経済のグローバル化に後押しされ、今後とも大きな影響力を発揮することは避けられない。自治体においても、地方分権推進委員会の主スローガンが「自己決定・自己責任」であり、またNPM(ニューパブリック・マネージメント)の手法が、比較的抵抗なく受け入れられているように、財政危機のもとで、市場原理の活用の意欲は強い。

 ただ自治体は単なる経済主体ではない。民間企業とは異なり、租税を反対給付なく徴収し、営利企業ではできない行政サービスを供給するよう、市民(納税者)から信託を受けた統治主体であり、政治機構である。政治機構としての原理は民主主義である。多様な人々の「実質的な平等と自由」が地域で実現できるよう、人々を支援し、ともに「新しい公共空間」をつくっていくミッションがある。そのために、まず求められるのは「新しいセイフティーネット」の構築である。

 その基礎は、同一価値労働同一賃金の考えかたを、自治体の諸施策の中に実現していくことである。同一価値労働同一賃金の原則とは、仕事の内容が違っても、同じ価値とみなされる労働には同じ賃金を払うという原則である。20071024日の朝日新聞、松井京子さんによると、イギリスやカナダなどでは「ペイエクイティー」などと呼ばれ立法化されている。既に1951年にILO100号条約で定められている。日本も1967年に批准したが、労働基準法第4条に「男女同一労働同一賃金」があるとして改めて立法化されてこなかったものだ。20076月のILO総会の委員会は、日本政府に対して同原則の立法化と実践を求めることを決めた。200710月に京都市内で「均等待遇アクション21京都」(宇治市)が「一時間でできるカンタン職務評価」講座を開いた。カナダなどを参考に簡単に職務評価ができるワークシートを開発、各地でワークショップを開く。「コミュニケーション技能は必要か」「特別な知識は必要か」「問題解決力は必要か」「精神的に大変なことは」など、負担、環境、責任、技能の観点から分析し、評価し点数化する。

 この同一価値労働同一賃金の原則を地域で実現することが、「格差社会」を変え、働き甲斐があり希望の持てる社会をつくることでもある。自治体はまず自らが抱え込んでいる臨時職員や非常勤嘱託、派遣職員、請負事業の従業員の待遇改善に取り組む必要がある。この間のアウトソーシングで正規職員数は減ったもののそれに劣らぬ臨時職員が配置されている。それら非正規労働者のスキルアップ政策がなければならないし、それに見合った労働条件が確保されなければならないからである。

それとならんで、指定管理者の指定や工事契約、請負契約においても同一価値労働同一賃金の原則が保障されるものとしなければならない。

このことは地方自治体の内部にも跳ね返ることになる。繰り返しになるが、アウトソーシングによって増加している臨時職員などの待遇改善やスキルアップに取り組むことが求められるのである。また、一時議論されたワークシェアリングについてもあらためて論議を進める必要がある。

たとえば、東京都千代田区は2008年度から、保育士など1年契約の非常勤職員の報酬を引き上げる、としている(2007124日、日経)。正規職員との格差を縮小するねらいだという。同じ職種でも専門能力や経験によって月額報酬を5段階にわけ、意欲の向上や優秀な人材の確保を目指す。現在は文化財調査指導員や保健師のT類が月192100円、保育士などU類が177100円、その他のV類が152100円となっている。これを5段階に拡大し、T類が204700円から25400円。U類が18万から226600円、V類が163300円から202200円とする。通勤費は月55千円を上限の実費支給とする。これによる人件費の増加額は年に4千万円程度だという。

 

(2)地球環境問題への積極的取り組み

 

20071129日には、都知事の諮問機関である東京都税制調査会(神野直彦会長)が都の独自の課税として環境税導入の検討を求める中間報告をまとめた。ガソリンなど化石燃料への課税、電気・ガスへの課税、自動車への超過課税、都民税の超過課税、の4案を示した。税収は環境対策に充てる。議論の中で、ガソリンなら一リットル当たり1.9円、灯油同2.1円、電気は1キロワット当たり0.3円などの税率が例示されている。

 既に森林を管理する財源としての「森林税」、「森林環境税」は20府県以上で条例制定され、産業廃棄物処理税も広がっている。

 京都議定書で定めた温暖化ガスを削減する目標値を実現するために、ガソリン税の環境税化を自治体として提案するべきである。

 

(3)シームレスな地域包括ケアシステムの構築

 

介護保険法も施行されてあしかけ8年になる。2008年度は第4次の介護保険事業計画の策定と介護保険料の算定の年度である。

自宅で利用できる介護保険サービス以外の介護サービスの拡充に自治体単独事業として乗り出す自治体が増えている。東京都目黒区では紙おむつは月6,300円まで無料、寝具の乾燥・消毒は年6回まで無料。出張理美容は年4回まで12,000円、リフト付き福祉タクシーはメーター料金の40%は区が負担する。介護保険は本人の自立支援が基本だという原点にかえって、生活に最低限のサービスを使えるようにする。さらに、ふとん乾燥や髪の手入れなどの気分転換は、生活の質を維持する上で大切である。「神戸ライフ・ケアー協会」のようなNPOやダスキンなど民間企業も生活支援サービスを始めている。散歩や贈答品の買い物、墓参りの同行やペットのえさやりを一時間800円から1,800円である。

それに往診と訪問看護を提供できる医療機関とのネットワークをつくることが基本的な施策としなければならない。

 

(4)地域就労支援政策の確立

 

2000年の地方分権一括法によって雇用労働行政は一方で集権化され、それまで府県行政の中にあった職業安定事業などは国の各都道府県労働局に統合された。他方で雇用対策法の改正で広く地方自治体(都道府県、市町村)に雇用政策実施の努力義務規定が定められた。

ついで20036月に職業安定法の改正が行われて、国の機関となったハローワークとともに、「無料職業紹介事業」の権限が地方自治体に解放され、20043月に施行されている。この結果、地方自治体による無料職業紹介事業は徐々に拡大してきている。2007年初頭の段階では全国で88自治体、近畿では7自治体が無料職業紹介事業を始めている。

近畿の自治体では無料職業紹介事業が多様化してきたという(2007124日、日経)。大阪市は2006年度から生活保護受給者に絞り紹介を始めた。専門相談員がカウンセリングを行い就就労に結びつける。宝塚市も20068月から開始している。豊中市は母子家庭の母親や障害者、高齢者向けに絞って無料職業紹介事業を実施している。これは20044月から行っている和泉市に継ぐものである。京都府は府北中部の公立病院に医師を無料で紹介する事業を20084月から行う。離職した女性医師などを研修して復職を支援する。大阪府は2005年、兵庫県は2004年から農業志望者向けの無料職業紹介を行っている。和泉市は携帯電話で求人情報を検索できるサービスを20072月から始めている。頻繁には役所に来にくい障害者、高齢者がアクセスしやすいようにし、地域での就労率を高める。

また島根県の「ふるさと島根定住財団」の仕事では、Uターン、Iターンの人々の就労支援で無料職業紹介事業が成果をあげている。

今のところ、ハローワークとの協力関係を大事にしながら、障害者や高齢者、母子家庭の母親、生活保護受給者など、ハローワークにアクセスしにくい人々の就労支援がきめ細かく、柔軟にできるのが自治体の無料職業紹介事業のメリットといっても良い。またUターン事業においても利用度が高い。

今後は、派遣や請負などから抜け出す意志はありながら、抜け出せないでいる2030代の非正規雇用の若者層や引きこもりの層に対する、ジョブ・カウンセリングと組み合わせた無料職業紹介事業の展開が市町村として望まれる。

さらに、国の規制改革会議がハローワークの自治体への移譲を検討する一方、厚生労働省の定員削減の結果、ハローワークの統合・廃止が始まり、無料職業紹介事業が縮小に転じている。ここでは自治体が積極的にこの事業を担うことが求められる。

鳥取県では、2008年度予算で厚労省が一方的に県内の境港、郡家の二つのハローワークを廃止し、職業相談員の配置や就職セミナーの開催、求職自己検索機5台の設置などに縮小すると通知してきた。これに対して平井伸治知事は、「一方的な国のやり方にはいきどおりを感じるが、結果として受け止めざるを得ない」とした上で、「残すべき機能を検討し、国からの支援を引き出しながら、地元密着型の雇用対策を展開したい」と県版ハローワークの制度設計に乗り出す(20071222日、山陰中央新報、Dファイル)。

鳥取県の場合、もっと早くから積極的な人口定住政策として、自治体による無料職業紹介事業を研究し、実施すべきだったと思われる。今回も国に遠慮しすぎているように見えるのが気になるところだが、鳥取型の新しい雇用施策の制度化を期待したい。

 

おわりに

 

 今回の地方財政計画を最も大きく規定したのは、昨年の参議院選挙だったといえる。政府も与党も、地方への適切な心配りを示す必要があったのである。その上で、財政再建に向けた「骨太方針」のもとでの、地方財政対策が行われ、地方税の基幹税の一つである法人事業税の半分が国税化され、それをもとに「地方再生対策費」が新設された。その意味では、分権改革の財政的な面での国の責任を解除し、自治体間の財政調整という新しいかたちを、どさくさまぎれに導入したという色彩がある。

 水平的な自治体間の財政調整についての自治体間の議論や討論と、それを通じた自治体間の共通認識と合意を形成する努力を抜きにしている。これではこれからの市民社会形成にとってマイナスに働くことにしかならないのである。タテワリの集権的意思決定を再生するものだったといわれても仕方がない。今後は、次の税制改革に向けて、総務省と自治体の間、財務省と自治体の間、自治体と自治体の間、そして市民と自治体など政府との討論を積極的に用意しなければならない。

 なお、議論の中心は、地方交付税5兆円の復元と、それに向けた福祉、環境、医療、教育を中心にした基準財政需要額の積み上げの議論でなければならない。あわせて、地方消費税の地方税としての拡充が検討されるべきである。

 

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