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2005年度政府予算案と地方財政対策――三位一体改革と自治体

2005年2月3日  澤井 勝

1、いくつかの前提条件

(1)日本経済は今のところ踊り場だが、内閣府の発表によると、今回の景気の谷は2002年の1月で、経済活動の拡張は2004年8月の時点で31ヶ月となり、神武景気の31ヶ月と並んで戦後5番目となったもようだ。その後、景気動向指数は一致指数が50%を割り込む。鉱工業生産指数も横ばいかやや低下傾向である。完全失業率はゆるやかに回復し、11月には4.5%と最も悪かった02年平均の5.3%を0.8ポイント下回った。有効求人倍率は0.92倍と全産業で改善している。

(2)景気の拡大を支えたのは、中国の経済成長と米景気の堅調という外需要因が大きいが、ITを含む個人消費もそこそこ堅く、また設備投資が伸びているなど内需要因もある。今回の景気拡大は、金融サイドの不良債権処理が進むなかで進んでいるのも特徴。マンションを中心とした住宅は、都心部での開発が進み、価格も一定水準まで下がって、ロケーションによっては即日完売という状況も見られる。

(3)一方で、企業収益は1999年を底に、改善してきたが特に04年に入っては、全産業で大きく改善した。これは、第一に不良債権の処理が進んだこと、希望退職募集など大幅な人員整理と、成果主義の導入など給与体系の転換、そして、派遣社員へのシフトと臨時、嘱託の増加などによる、経常経費の切り下げによるコストダウン効果が大きい。

(4)他方で雇用者所得とリストラ.バブル経済崩壊後の日本経済の長期停滞で、就業者の非正規化が加速した。派遣社員、フリーター、パート化など。そのために、勤労者の所得格差が拡大し、階層の固定化がすすんだ。女性と若者、それに中高年をデフレ経済と企業のリストラが直撃したといえる。家計経済研究所のパネル調査では、卒業して8年経った女性の雇用就業者のうち非正社員の割合はバブル時代は19%だったが、崩壊後卒は29%となっている。25歳から29歳の男性の場合は、その給与所得のジニ係数が97年の0.194から02年の0.211となり格差が拡大している。30歳台も同様に格差が拡大している。(就業構造基本調査の分析から)
 このような就業構造の転換は、今後も続くものと見なければならない。ニートなどの若年層の問題と、女性の不安定雇用と不十分な社会保険適用、さらに長時間でスキルが上昇しない、家族多就労構造が階層の固定化をともなってひとつの構造となっている可能性が高い。

(5)政府税調での中心的な議題となったのは、以上に見たような景気回復を背景に、景気対策として実施されてきた「定率減税」(所得税で税額の20%、上限25万円、住民税で15%,上限4万円、減税規模は所得税で3兆2千億円)を廃止することであった。この増税へのゆるやかな転換は、実は、消費税の税率引き上げという本格的な増税への道を整えるためには、不可欠の転換である。

(6)もっとも、国民負担率(租税と社会保険料の合算額を国民所得で割ったもの)は日本が35.5%(2004年度)、米国が35.2%(2001年、以下同じ)、イギリスが50.2%、ドイツが55.3%、フランスが63.9%、スエーデンが74.3%である。なお、財政赤字の対国民所得比を加算すると、日本が45.1、米が36.9、イギリスは変わらず、ドイツは59.0、フランスが66.0、スエーデンは変わらず、となっている。日本の場合は、国民所得比で9.6ポイントの財政赤字を抱えていることになる(04年11月財務省資料)。そのように見ても、若年層の負担を極端に重くせず持続可能な「福祉国家」を標榜するなら、現在の制度を維持するとしても新しい政府債務増加分を税で賄うことが必要だと思われる。それに、年金財源などへの新たな租税負担の導入を考えなければならないのである。少なくとも、租税と保険料とで、イギリスなみの国民負担率を想定しなければならないはずである。

2、05年度政府一般会計予算案の概要と問題点

 政府の予算案は04年12月20日に財務省原案、復活折衝を経て24日に政府案が示された。そのうち一般会計については概ね次ぎの通り。

(1)歳入と歳出規模は82兆1830億円で前年度比0.1%増。

(2)歳入のうち租税収入は44兆70億円で、前年度より5.4%の増加。

 所得譲与税による税源移譲は17年度追加分は6910億円。定率減税見直しによる17年度増収分は1850億円。法人税収は04年度当初比22.4%増加する。消費税も6.3%と大きく伸びる見込だ。

(3)国債の収入は34兆3千900億円で国債依存度は41.8%。前年より2兆2千億円減少し、国債依存度も44.6%から2.8ポイント下がった。このような税収の増加と国債依存度の低下の要因は、歳出の削減(国庫補助負担金の廃止1兆円規模、地方財政計画の圧縮などもあって)という要因もあるが、主として、先に触れたような企業収益好調による、法人税収の大幅な伸びである。
 04年度中の自然増収も大きい。16年度補正予算では、税収の増加が2兆2940億円、15年度剰余金が1兆4910億円あった。歳出の追加としては、災害対策費が公共事業の追加を中心に1兆3618億円、国債整理基金への繰り入れ1兆3903億円、地方交付税に1兆1686億円(うち1340億円を16年度分として地方に配分、1兆330億円は17年度交付税財源として繰り延べる)などとなっている。

(4)基礎的収支いわゆるプライマリーバランス(債務返済費用以外の歳出を税収でどの程度賄えているかという収支)は15兆9478億円の赤字で、前年度の19兆214億円の赤字から3兆737億円改善した。04年度は0.9兆円圧縮したので2年連続の赤字縮小となる。谷垣財務相「05年度はより手応えのある形でプライマリーバランスも改善を見ることが出来た。10年代初頭のプライマリーバランスの黒字化という大きな財政運営の目標に向け、道筋が少しずつついてきた。」
 経済財政諮問会議は1月20日に「改革と展望04年度改定」を決め、21日に閣議決定を行った。日本経済は2006年度に名目2%、実質で1.5%とデフレを脱却する見通しとしている。プアライリーバランスは、内閣府の試算によると2012年度に黒字化することを見込むが、これは前年度改定より1年度の前倒しである。税収ののびは足下の経済が堅調で推移するとの前提のもと本格的増税なしで見込み、年金の国庫負担割合引き上げ3兆円分の増税と、定率減税の廃止は半分まで加味している。

(5)地方交付税は総務省が示した出口ベース(交付税特会の出口)では、16兆9千億円程度と前年度比、100億円程度増とされている。ただし、地方財政計画の規模は、83兆7700億円程度とされ、前年度からさらに9000億円減少した。この結果、地方財政計画の規模は以下のように2001年度をピークに縮小してきている。01年度から5兆5400億円、6.8%マイナスとなったことになる。

     地方財政計画地方交付税
(出口ベース)
臨時財政対策債
2000年度88兆9300億円21兆4107億円    0
2001年度89兆3100億円20兆3498億円1兆4368億円
2002年度87兆5766億円19兆5449億円3兆2361億円
2003年度86兆2107億円18兆693億円5兆8696億円
2004年度84兆6700億円16兆8900億円4兆1905億円
2005年度83兆7700億円16兆9000億円3兆2200億円

 なお、05年度は三位一体の改革に伴なう国保調整交付金を除くと83兆4200億円程度となり、1兆2500億円、1.5%程度の減少となる。
 また、一般歳出(公債費などを除く)は67兆3200億円程度となり、1.2%程度の縮減となる見込である。これは「改革と展望」の期間中(03年から06年)に地方公務員の計画上の定員を4万人(毎年1万人)純減することや、投資的経費のうち地方単独事業を、平成2〜3年度の水準にまで縮小することなど、地方財政計画の規模縮小に関わる経済財政諮問会議と閣議決定に沿った結果であるとおもわれる。

(6)地方の一般財源総額は次ぎのように推移した。

(別表 一般財源等の推移(00年〜05年)

(7)国と地方の長期債務は次のようになる見込だ。

    地方重複除く
国と地方計
16年度末570兆円程度203兆円程度740兆円程度
17年度末602兆円程度205兆円程度774兆円程度

(8)税源移譲では、所得譲与税と税源移譲予定交付金がある。

    16年度17年度    
A、地方譲与税1兆1452億円1兆8419億円 
うち所得譲与税4249億円6910億円(計1兆1160億円)
B、地方特例交付金1兆1048億円1兆5180億円 
うち税源移譲
予定交付金
2042億円4250億円(計6292億円)

 なお、16年度税源移譲予定特例交付金は、当初2309億円を予定していたが実績値がそれを下回ったため、2042億円となっているものである。
 AとBの合計で、04年度6291億円と05年度1兆1160億円、あわせて1兆7451億円の税源移譲となっている。

(9)歳出では、一般歳出の4割以上を占める社会保障関係費が2.9%増の20兆3785億円となった。昨年夏の概算要求段階では、高齢化などにともなう自然増1兆800億円を2200億円圧縮するとしたが、実際には、介護保険の施設給付費の中の食費と居住費の自己負担導入によって420億円を削減しているのが目立つ。また三位一体改革で、地方側の補助金改革案になかった国保の国庫負担を都道府県負担に転嫁することにより、医療費に係る国庫負担が515億円のマイナスとなるなど、社会保障費全体の国費の抑制が行われることとなった。

(10)公共事業関係費は、4.0%減の8兆2719億円。

(11)国債の元利償還金である国債費は、5.0%増加の18兆4421億円を」計上したが、これは歳出の22.4%となる。

(12)三位一体の改革関連では、国庫補助金の改革が次のように行われることとなったが、交付金化など各府省の権益を維持する様相が強くでたといってよい(財務省企画官が整理したものに総務省資料を加味した)。

1、税源移譲に結びつく改革は1兆1239億円。(税源移譲額は1兆11160億円)

  • 義務教育国庫負担金を今回対象となった8500億円のうち、暫定的に17年度は4250億円を税源移譲予定交付金に。秋の中教審答申で議論を行い、結論をうる。
  • 国民健康保険国庫負担金は5449億円を都道府県負担に転嫁する。養護老人ホーム等保護費負担金567億円、公営住宅家賃対策費等補助320億円、など合計6989億円。
  • 両者併せて、1兆1239億円を廃止し、縮減する。

2、交付金化の改革(3430億円)

(1)省庁横断的な交付金制度の創設(内閣府におく)

  1. 汚水処理施設整備交付金(下水道、農業集落排水、合併浄化槽)490億円
  2. 道整備交付金(道路,農道、林道)270億円
  3. 港湾整備交付金(港湾,漁港)50億円
一本の交付金のもと、「地域再生計画」に基づき、地方の裁量により自由な施設整備が可能に(?)。事業間の融通や年度間の事業量の変更が可能に

(2)その他の交付金

  1. まちづくり交付金(拡充)1330億円から1930億円
  2. 地域住宅政策交付金 580億円
  3. 循環型社会形成促進交付金 263億円
  4. 地域介護・福祉空間整備等交付金 866億円
  5. 次世代育成支援対策施設整備費等交付金(ハード) 167億円

3、スリム化の改革(3011億円)

 不用不急の事業を廃止・縮減する。河川修繕費補助、治山施設修繕統合補助など。

 いずれにしても、10年代の初頭に、プライアリーバランスを黒字にするための、歳出の切り込みと、増税は国民負担の増加という路線は、政治的な声をもたないところほど強く貫徹された、という構図となっているようである。

3、05年度地方財政対策
04年12月18日に総務省と財務省とが合意した2005年度地方財政対策の概要、すなわち地方財政計画の骨子は次のとおりである。

(1)地方財政計画の規模、一般財源総額、地方交付税および地方税の総額(前述の通り「付表:一般財源総額の推移」)

(2)平成17年度における地方財源不足(一般財源で賄うべき歳出と、実際の地方税、地方交付税等の一般財源との差額と考えられ、なんらかの形で補填すべきものである)は11兆2000億円程度だが、内訳は以下のようになっている。

  1. 通常収支の不足が7兆5100億円程度(16年度は12兆2530億円だが、そのうち2兆807億円は借入金の償還を繰り述べることで先に延ばしたので、手当すべき不足額は10兆172億円)で、04年度に対して2兆5000億円程度、圧縮されている。
     この通常収支不足の圧縮には地方税の収入見込みの増と、先にも触れた単独事業費の平成2,3年度水準への抑制、地方公務員数の1万人純減などが効いているのではないかと思われる。計画と決算の乖離の問題は、水掛け論にちかいかたちで宙に浮いているようだ。財政制度等審議会の答申は、この財源不足額を一気に07年までに解消すると書いていたが、これは暴論に属する。
  2. 恒久的減税に伴なう減収額、3兆4700億円
  3. 先行減税による減収額、1800億円

 なお、1994年度からの財源不足額は以下の通りである。この地方財源不足は、バブル経済期は解消していたものだが、バブル経済が崩壊した後、94年度から再び本格的に生じるようになったものだ。

(億円)
 94年度95年度96年度97年度98年度99年度
財源不足額5835069500862005854454100129700
通常収支分2988642600575004654446500103700
減税分2864269002870012000760026000
 00年度01年度02年度03年度04年度05年度
財源不足額133699140253141160173767141000112000
通常収支分9867310592310665013445710170075100
減税分350263433034510324373980036500

(3)通常収支の不足の財源補填

1、地方交付税の増額
(1)一般会計における加算措置 2兆5300億円
  • 既往法定分       3700億円程度
  • 臨時財政対策加算    2兆1600億円
(2)臨時財政対策債の発行  3兆2200億円(赤字地方債)
(3)財源対策債の発行    1兆7600億円(建設地方債)
(4)恒久的減税による地方税の減収の補填  3兆4700億円
(1)国たばこ税の一部移譲
(2)法人税の交付税率の引き上げ
(3)地方特例交付金
(4)減税補填債
(5)恒久的減税による地方交付税の減収の補填
  • 交付税特会の借入金により当面補填し、後年度に国と地方が折半して償還する。

(6)三位一体改革の一環としての国庫補助金の廃止・縮減として1兆1239億円が行われることとなった。主な内容は、先述の通りである。

(7)これにともなう税源移譲はまず「所得譲与税」として、義務教育国庫負担金にかかわる分を除く6910億円を新たに所得譲与税として移譲する。これで04年度に移譲された4249億円と合わせて1兆1159億円を所得譲与税として移譲することとなる。配分の基準は国勢調査人口による各自治体のシェアだが、05年度分については都道府県に5分の3、市町村に5分の2とされている。

(8)なお、義務教育国庫負担金の削減額に対応する「税源移譲予定特例交付金」は、05年度に4250億円、04年度に2042億円で、04、05年度合計で6292億円となる。都道府県への配分は、義務教育給与費国庫負担金のシェアによる。06年度にさらに4250億円を削減するとしているが、先に触れたが05年秋の中教審答申を経て、義務教育のあり方について整理することとされている。

(9)国庫負担金の今後の削減は06年度中に、義務教育の4250億円と合わせて、さらに1兆2千億円程度が予定される。すなわち義務教育を除いて追加されるのは8000億円程度だが、このうち8割又は10割が税源移譲される。このうちで最大の削減対象と目されているのは、厚生労働省側の見方では生活保護費などである。しかし、公共事業費など他の分野での削減が検討されるべきなのかもしれない。

(10)地方交付税等一般財源の総額の確保。財務省と総務省および地方団体との間で最も大きな争点となった地方交付税の総額は、前述のように地方交付税特別会計の出口ベースで16兆9000億円と、前年度に比較して100億円ほど多く、一応04年度の水準は確保した。そのことを含む一般財源の確保は、次のように一応の総額を、当面、維持したといえる。04年度は16兆88610億円と、前年比6.5%マイナスだったので、この水準で一応歯止めがかかったかたちだ。地方税と臨時財政対策債を合わせた一般財源は、かろうじて前年度比0.1%のプラスとなった(53兆4400億円)。

(11)ただし次のことを確認しておきたい。05年度は04年度と同額程度の一般財源が確保されたが、これでは、地方自治体の財政危機的状況の深刻さは改善されないという点である。すなわち、04年度に交付税と臨時財政対策債が合計12%削減され、04年度予算が組めなかったという、その水準における一般財源総額にとどまるからである。一般財源の確保という点では、大きく削減されたまま、増大する歳出圧力にさらされるのである。04年度は緊急避難として、基金の取り崩しや流用を行ったが、05年度予算編成では、取り崩す基金がなく、歳入不足を表面化させざるをえない自治体が続出する可能性が強い。カラ財源でつくろってもそれは財政破綻を隠蔽しているにすぎない。

(12)また、国庫負担金の財源を地方譲与税で補填するという、「税源移譲」は、削減額の8割を移譲するという基準自体が、自治体の財政運営、特に、補助金を削減ないし廃止された部局にとっての財源削減として働くことが普通だという点である。特に人口基準での自治体間の配分は、公立保育所等を多く持つ市町村にとっては、大きな財源不足の原因となっている。その点でも自治体間の格差はひろがっている。

4、政府予算と三位一体の改革
 三位一体改革とは、「国庫補助金の廃止・削減」と「地方への税源移譲」そして「地方交付税改革」とを一体的に実現しようというもので、もとは02年の「経済財政運営の基本方針(いわゆる骨太方針)」の議論で登場したものだ。

 この「基本方針」を策定したのは、ご存知の経済財政諮問会議の11名の合議機関で、メンバーは議長である首相、内閣官房長官、経済財政担当相、財務相、総務相、経済産業相、日銀総裁、それに4人の民間議員である。もともとは森内閣のとき、01年の1月に設置されたが、その年5月の小泉内閣で衣替えしたもの。

 重要なのは、その出演者である。主役はもともと財政構造改革すなわち財政抑制を推進する財務省であり、また規制改革による市場経済原理の導入と小さな政府を求める民間議員であると見ることもできる。それに一応、地方分権改革を担う総務省がいるという構図となっている。

 このような経済財政諮問会議の議論が、地方分権改革にとって大きな意味を持つようになったのは、先に触れたが、02年に位置付けられたのが大きい。なお地方六団体は、03年の秋に政令指定都市市長会および全国市長会、それに知事会がそれぞれ国庫補助金の廃止、削減提案を行い、04年の6月以降に第4の当事者となって、8月24日には六団体としての補助金改革案をとりまとめ、国との協議の場に臨んだ。また第5の当事者として、補助金を管轄する各府省と、その族議員、そしてプレッシャーグループがある。

 これまでの三位一体改革の評価としては、次のような点があげられる。

(1)04年度予算において、国庫補助金のうち公立保育所運営費負担金(1661億円)、介護保険事務費補助金(305億円)、在宅福祉事業費補助金(うち生きがい活動支援費補助金)50億円など2440億円が廃止され、03年度での税源移譲分の2051億円(義務教育教職員共済長期国庫負担金分2200億円など)を合わせた4249億円が所得譲与税として、各市町村に人口割で配分された。これは03年6月の「経済財政運営の基本方針(骨太方針第2弾)」の具体化であったが、詰めが甘く、数字合わせという批判が当る。また、削減補助金の財源補填としては、全額補填すべき性格のものに係わらず、9割の補填額にとどまり、筋から言ってもおかしいという極めて正当な批判がある。
 これからも、国と地方の財政と行政の責任を明確にするためにも、権限移譲と財源の移譲は、厳格に対応させるよう、強く主張していくべきである。

(2)同じく04年度の予算では、地方交付税と臨時財政対策債が合わせて12%削減された。このことは、この三位一体改革のもうひとつの柱である、「地方財政の圧縮」が露骨に行われたものであった。この12%の一般財源削減は、地方財政の安定という面からは大きな打撃となった。多くの自治体で、カラ財源を組んだり、基金を取り崩したり、さらなる歳出削減を行ったり、といった苦労の末に、最も声の届き難い層が犠牲とされた可能性が高い。また、「予算の劣化」がすすんだ可能性も高い。特に大きな問題は、05年度以降もこの12%削減という低水準のところから、一般財源確保の議論をしなければならないところに地方自治体側が追い込まれたことだ。

(3)04年中にはいくつか、メリットもあった。第一に、補助金削減について、地方六団体の統一要求と対案がまとめられたこと、である。まがりなりにも、地方案として補助金廃止案を提案し、第4の当事者となった点はそれなりに評価できる。

(4)第二に、合わせて、地方と政府との「協議」が行われたことが大きい意味を持っている。このような、補助金や交付税など財政調整のあり方については、一方の当事者である地方団体との協議機関を設置するよう、自治体は要求してきたのだが、このような協議の制度化に向けて、引き続き関係者の努力が求められる。
 第三には、税源移譲の基本的な姿が、経済財政諮問会議でも、政府税制調査会においても、国税所得税の一部を住民税個人所得割に10%の比例税率で移譲することが決定されたことである。

(5)また昨年11月の三位一体の全体像でも、06年度までに4兆円規模の国庫補助金の削減を行い、それに見合った税源移譲を、国の所得税の一部を個人住民税としてに移譲するとしたが、義務教育国庫負担金についてはこの秋の中教審答申に先送りし、また生活保護については国と地方との協議機関をもうけるとされた。

(6)05年度の地方財政対策では、地方税と地方交付税そして臨時財政対策債をあわせた一般財源の総額は、前年度並を確保したが、先にも触れたように、これまで失った失地を回復できず、自治体の担う役割にみあった財源保障にはほど遠い。特に基金を使い切ったり、財政再建債に依存する自治体にとっては、扶助費や公債費など経常経費の上昇のもとで事態は悪化していると見るべきである。

(7)私たちの今回の「三位一体の改革」に対する基本的なスタンスは、以上の経過を踏まえた上で、なお地方分権を推進するスタンスでなければならない。
 すなわち、もともとは財務省や一部エコノミストが主導する「小さな政府」論や市場原理主義、そして官僚の既得権維持とその結果としての中央集権システムの温存という力に対抗した、私たちの基本的な視座は、「地方分権改革をどうすすめるか」という観点と、「住民自治」を拡大し、民主主義をより強固なものとしてこの国に定着させるという観点である。この軸足をしっかりさせて、「新しい社会」を構想するという筋道で考えるべきである。

(8)その際の前提として、わが国の分権改革の流れは、「小さな中央政府、強力な地方政府」に向かっていると言うことを確認したい。特にわが国の自治体は、欧米のどの国よりその担うべき行政の領域が広い。
 これは、廃止された「機関委任事務制度」のおかげだともいえる。言うまでも無くこれまでの中央集権的な政治風土によって培われてきた、「国の行政全体の下部執行機関としての地方行政機関」というのが、わが国の地方団体だったのである。それが、「地方分権改革」によって、「国と対等な自治体」に大転換することとなった。このとき、「機関委任事務」は基本的には全て、「自治体の事務」となったのであるから、それに見合った財源保障は当然行われなければならない。
 つまり、「機関委任事務」から解放され、身軽となった国の財源を当然に地方自治体に移譲しなければならないのである。仕事がなくなったのに、財源は手放せないという、最悪の組織温存の動きこそ弾劾されるべきなのだ。

(9)これからの課題としては、まず生活保護行政を国と地方自治体がどのように責任を分割するか、という問題だが、まず「憲法25条」にいう、「最低の文化的生活の保障」は、国の責任であることを再確認しておくことが必要である。その意味でも少なくも4分の3という国庫負担割合を堅持させる。その上で国と自治体の責任において、「貧困との闘い」「貧困のわなからの脱出支援」、さらにそれら政策に不適な人々の生活の安定と、自立を支える仕組みを組み立てることが求められよう。

(10)第二は、義務教育の地方分権化の問題である。これからの自治体行政の最大の課題は、この教育をどうするかということになる。今までも、小中学校の校舎の建設や改良は、最大の問題のひとつであった。これから学力維持の問題も含めた子ども達の教育についてもより積極的に行政や財政の資源を集中することが求められる。国が責任を持つより、自治体が責任を持つほうが、子どもの幸せになるということを示すことで、広く市民の共感を得なければならない。

(11)第三には、公共事業の問題である。今回は、公共事業という建設事業については、建設国債で賄われていて、国税を投入していないから「税源移譲」の対象にならないという財務省サイドの議論が先に立ち、廃止補助金の対象とされなかった。そんなことはないのである。今回廃止ないし削減対象となった経常経費も、その財源として国債、赤字国債が投入されている。同じように、建設事業にかかる財源としての国庫補助金は、国債というかたちをとるが、いずれは税で償還されることになる。現在の国庫補助金(建設国債)を削減すれば、将来の国税が浮くのであるから、その分は税源移譲の対象として考えるべきなのである。

(12)第四の課題は、住民税所得割の10%比例税率下の具体的な設計である。特に、所得税非課税の納税者に対して、増税とならないよう、税額控除や減免税など課税調整措置を工夫するとともに、そのための財源手当を交付税などで行う仕組みが必要である。

(13)さらに第五に、住民税所得割の10%比例税率化によって、税収が大都市部、特に東京都に集中することをどのように調整するかという問題がある(法人事業税の分割基準の見直しや交付税の基準財政収入額への算入率の調整など)。

(14)第六に、交付税の配分の見直しの問題がある。すなわち東京プロブレムと裏腹の関係にある、もともと人口が少なく、所得水準も低いと考えられる過疎市町村への、交付税の傾斜的配分をどのように行うか、その具体的な検討が必要である。
 また、交付税の見直しでは、県庁所在都市などにおける生活保護や児童扶養手当、さらに準要保護児童などへの扶助費、野宿者などへの自立支援など、古くて新しい都市問題に要する経費を、適切に交付税として配分する仕組みが具体化される必要がある。

(15)第七の課題は、この三位一体の改革は、分権改革第二ステージだということである。つまり、分権改革の第三ステージを用意しなければならない。地方六団体案にあるように、2007年度以降、さらに4兆円から7兆円の国庫補助金が廃止され、税源移譲されなければならない。このような観点から、地方6団体からの世論や対中央政府への働きかけ、そして適切な批判が展開されなければならない。

(16)そのためには、地方自治体への国民・市民の信頼度を高めていくことが不可欠な課題である。すなわち分権改革によって地方自治体の権限が拡大したことが、市民の生活を支援するという点で効果があったと評価されることが必要である。「分権改革効果の市民的評価」といってもよい。先ほどの教育の分権化などがそれである。そういった点からすれば「三位一体改革」によって、サービス水準が後退したり、サービスが無くなったりするようなことは最も避けたいことである。端的に言えば、国庫補助金が廃止された行政領域で、公共サービスの水準を引き上げなければならない。少なくも、同じようなサービスが維持される必要がある。

(17)このことは、行政が直接に担うサービスを維持するということを意味しない。NPOやボランティアの担う公共サービスの領域を拡大し、その質を確保することで、補助金の枠に囚われないで、より具体的なニーズに合った公共サービスを実現することが求められるのである。公立保育所運営費が一般財源化されているが、そのことを通じて、地域の子育て支援センターの活動を、専属のスタッフを置くなどして強化することが工夫されて良いであろう。市民参画の拡充と、市民事業への支援の拡充が求められる。
 つまり補助金に依存した行政から、自前の財源で、地域のニーズを本当につかんだ公共サービスを再構築することができることを、市民とともに照明していくことが必要なのである。

(18)この間の「地域福祉計画」策定の過程で明らかになってきたこともこのことである。「地域福祉計画」は、社会福祉法の定めによって市町村に策定が努力義務とされている。その特色は、「住民がつくる、住民が進める」計画だという言う点である。もちろん、行政の役割は明確にしなければならない。しかし、「住民がつくる」計画ということから、策定委員会に公募市民を入れるのはもちろん、直接住民の意見を反映させるために、地区や地域ごとに懇談会を行ってきている自治体も多い。小学校区や大字単位、さらに集落単位での懇談会で出てくる意見は、役場の中にいては把握が難しい問題ばかりである。このようにして共有される地域のニーズや、家族が抱える問題は、その地域の自治会などコミュニティや、ボランティア団体などアソシエーション的組織がまず支援することになろう。そのときの行政の役割は、そのニーズや問題の解決策を、公共サービスとして方向性をつけることである。仕事は住民の中で作られ、そこでの協働の中で、住民に支えられてサービスが生きる。
 補助金があるからその事務事業があるのではなく、住民や地域のニーズがあるから、その事務事業があるというふうに転換することが求められる。

(19)このことは、事務事業評価を市民参画で行う仕組みに変えるということでもある。政府と世論、市民に対して以上のような働きかけ行いながら、同時に、拡大する公共サービスを、縮小する財源で支えるために、「自治体と市民や事業者との協働」を本格的に展開することである。そのことによって新しい政府と市民との関係、市民と市民との関係をつくるという課題である。
 このことは、自治体内の分権化と住民自治の推進というふたつの問題に取り組むということでもある。
 第一に、大胆な行財政改革によって、組織全体の活力を引き出す。その一つの方法としては、組織のフラット化による現場への権限移譲がある。さらに、これから求められるのは、「地域への投資」である。この「地域への投資」は、人材の育成であり、地域住民の知恵と力を引き出し、そのための溜まり場と拠点を作る、ソフトを中心とした投資である。
 第二は、地域コミュニティへの支援措置とともに課題ごとのアソシエーション、すなわちNPOやボランティア団体への支援措置の推進である。そしてこれら両者と、行政が「協議」し、行動する「住民協議会」が必要になる。今回の地方自治法改正に盛り込まれた、「地域自治区」はその内容から言えば、このような、「分権と自治」を、地域的に再構成するツールとしての可能性を持っていると考えたい。

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