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二宮金次郎、二つの肖像(8)

             まずできることを、今の地域福祉に共通
           堺市SS情報ひろば第23号(2015年4月1日)

                       

 積小為大。「せきしょういだい」と読む。尊徳の考え方の柱の一つ。弟子の一人、福住正兄(ふくずみまさえ)の『二宮翁夜話』では次のように説明している。「大きなことをしたいと思えば、小さなことを怠らずに勤めるのがよい。小が積もって大となるからだ。」(現代語訳・佐々井典比古)。
 次はよく引き合いに出されるエピソードだ。金次郎は二宮家を23歳ごろに再興し、1町5反歩の田畑を持つ一方、これを小作に出し25歳には小田原藩の服部家の中間となっている。服部家では、奉公人や他の武家の相談に乗っている。これは栢山村でも親戚や近所の農家にしていたのと同じで、主に借金を返すために、お金を低利で融通するという面倒見だった。前にも触れたが、マイクロ・ファイナンスのはしりと言える。
 ある日、服部家の女中が、他の家の女中と二人連れで、その他家の女中の借金の頼み事に来た。金次郎は貸しても良いが、どうやって返済するのか尋ねたが、既に給金は前借りして親に渡していて返済の見込みがないことがわかった。
「金次郎はしばらく考えていたが、やがて、にっこり笑って、こういった。『お給金をもらえなくても、返すが方法があるんだよ。』金次郎は話を続けた。薪には炊き方がある。ご飯を炊くには、まず三本の薪を用意して、鍋の底に丸く当たるように置くこと、火をつけたら薪は全部燃やし、煙を出さないようにすること、消し炭も活用すること。こうすれば毎日、何本かの薪が節約できる。節約して余った薪は私が買い取ってあげる。数日後、金次郎は、他家の女中のところに行き、ご飯を炊いているところを見た。ところが鍋の炭が落としてなかった。「この鍋底の炭をきれいに落としなさい。これも私が買ってあげる。」こうやって金次郎はお金を貸した」(長沢源夫『二宮尊徳のすべて』人物往来社から)。
 この例では、まず金次郎の考え方の一つである、「推壌」の実践がある。「推壌」とは、自分の持つ余裕資金や資産を世間の人の役に立つように差し出すことだ。いわばチャリティーの精神である。そして借りた方からすれば、積小為大である。まず自分で出来ることを見つけて実践し、それを積み重ねる。薪の積み方を変える、鍋墨を落として熱効率を上げる。それで薪を節約してコストダウンし、その分を他に活用する。
 この自分ができるところから始めて、それを続ける。それで大きな仕事につなげている現代の良い例は、豊中市や堺市で活動しているコミュニティソーシャルワーカーだ。豊中市の勝部麗子さんはごみ屋敷の解消やひきこもりの人を支える活動で15年。引きこもりの人に会えないとき、「心配しています。連絡ください」と書いてドアにはさんで帰る。去年、勝部さんは500枚はさんだ。昨年NHKで10回にわたって放映されたドラマ「サイレントプア」のモデルでもある。
 「30年間引きこもっていた方が心を開いてくれた瞬間や、批判していた近隣住民がごみの片付けを手伝ってくれる瞬間に立ち会ったとき、やっていて良かったと思いますね。人はいつからでも変われる。そうやって住民が自ら地域の課題を解決する。そんな地域をつくるのが目的です」という。(朝日新聞2014年6月18日)。

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