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二宮金次郎、二つの肖像(4)

                     五常講、協同組合のはしり

                    SS情報ひろば第19号(2014年3月1日)

                       


                  堺市生き生き市民大学学長  澤井 勝

 尊徳が発明したカラクリの一つに、「五常講」がある。24歳で田地1町45畝を買い戻して二宮家を再興した尊徳は、この田地を小作に出し、翌年には小田原藩家老の服部家に若党として働きに出て、年3両の給金を得るようになる。28歳のとき(1814年)に、服部家の用人、中間、乳母、女中など10人ほどの間で始めたのが「五常講」の原型で、中心は、一割五分から二割五分の高利の借金を低利又は無利子の資金に借り換える互助組織である。このときの最初の元金も尊徳の手元基金だ。

後に小田原藩の家臣全体に広げられる「五常講」の基本は、無利子融資である。ただ、元金返済後に1年間だけ、お礼金を出すことを約束する。たとえば10両の金を無利子、10年賦で借りた場合、年に1両、10年で完済となる。次の1年には1両を礼金として差し出す。つまり1割の利子ということになる。しかしこれは利子ではない。有利子の借金だとまず利払いが続き、元金は減らない。少しでも滞ると利子が嵩み、借金返済の見込みは立たなくなる。しかしこの無利子貸付金だと完済する見通しははっきりしているので、生活改良の工夫も立てやすい。そして10年間、毎年1両ずつ返済することが可能なら、追加の1年分を礼金として出すことも容易なはずだ。そういう考え方だ。

 このように元金の返済と礼金(元恕金という)とが蓄積され、次の低利融資に向けられる原資が育っていく。それが行きっぱなしの「補助金」と異なるところだ。

 この「五常」というのは、論語にいう「仁義礼智信」である。金銭の貸し借りをうまく確実に回すためには、信用こそ最重要で、この約束の厳守が「信」。信を実行するには余裕のある人が困窮者に貸し付けるために差し出す(推譲という)。これが「仁」。約束を守って正しく返済するのを「義」。約束履行の後に恩義を謝して礼金を差し出し、迷惑をかけないのが「礼」。いかに借財を返済するか、互いに利便が大きくなるように工夫するのが「智」。

その根源は「仁」にあるという。童門冬二さんの『二宮尊徳の経営学』によれば、「すべては信の一字に要約される。しかもその根源は仁の心に発する。親が子に対するような愛情が元になるのだ」という。今流に言えば、「人を助けようというボランタリーな心根」か。あるいは「連帯の精神」でもある。

また「講」とは、組合のこと。そのため「五常講」は信用組合や生活協同組合の先駆とも言われている。ドイツのライファウゼン農村信用組合や、イギリスのロッジデール組合より50年前に企画、実践されている。

 

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