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介護保険からの卒業 和光市の場合
     
                          
奈良女子大学名誉教授 澤井勝

                            大阪市政調査会『市政研究』2016年秋号

 

 

日本の社会は「租税抵抗」が強い 小さな政府だが

2016年6月1日、2017年4月に予定されていた消費税の8%から10%への再増税について、安倍首相は2019年10月に再延長すると表明した。これは2014年4月の8%への税率時期上げ時の「増税の再延長はしない」という公約違反であるが、これを受けた5,6両日行われた新聞各社の世論調査では、公約違反との声は少数派となっている。

朝日の場合、引き上げ再延長を「評価する」とする回答が56%で、「評価しない」の34%を大きく上回っている。読売の調査でも、「評価する」が63%で、「評価しない」は31%と同じ傾向といってよい。この時期での増税には、国民の多数としては反対が強いことがわかる。

とはいいながら、税による生活保障への要求は強いことも、同じ調査が示している。朝日の調査では、7月10日投開票の参議院選挙で、重視する政策を7つの選択肢から2つ選ぶ設問では、「医療・年金などの社会保障」が最も多い53%。以下、「景気・雇用対策」が45%、「子育て支援」が33%である。読売は、同じような質問で6つの中から一つ選ぶものだが、「年金など社会保障」が38%、「景気や雇用」が25%、「子育て支援」が15%の順となっていた。

このように、一方では現在から将来に向けた、生活の安定へのニーズが、財政支出面では「年金・医療など社会保障」に向いているのが多数派を形成しているが、同時に、「増税によるその負担」は回避する、という矛盾した心境にあるように見える。このような矛盾した状態を生んでいるのは、我が国が戦後の高度経済成長とその帰結としてのバブル経済、低成長への移行の中で育んできた「分断社会」である、と井出英策、古市将人、宮崎雅人らは言う(筑摩選書『分断社会を終わらせる』、以下『分断』)。

「分断社会」とは、「格差」をみとめず、みとめても自分の負担(租税)で格差を是正することには反対する。格差是正への冷淡さが生まれる。世界価値感調査(wvs)と呼ばれる国際調査では、「所得はもっと平等にされるべきだ」に賛成する人の割合は、調査対象58か国のうち39番目と低い(『分断』13頁)。また日本人は政府や公務員をほとんど信用していない。WVSでは56か国中43位、国際社会意識調査では35か国中の最下位である(15頁)。「果たして信頼できない政府に対して人々は納税したいと思うだろうか。それよりも財政のムダをなくし、公務員や政治家の給与・定数を減らし、借金が積み重なった責任を政府に押し付けようとするのでは「ないだろうか。」(『分断』16頁)。

このような高度経済成長を通じた日本社会を井出らは「勤労国家レジーム」と定義する。成長の為に多額の借金を財源として生かす。所得税と法人税の減税の財源として、世帯間公平のあるとされる消費税を活用する。景気対策の為に都市中間層向けと地方向けにハードな公共事業を続ける。都市の合意をとりつけながら、地方での就労機会を確保する。かわりに社会保障や教育は個人(家族)と市場にゆだねる。日本人の労働への義務意識がしみ込んだ「勤労国家レジーム」が形成される。

 

分断社会を超えて

井出らはこの分断社会を変えていくためには、「必要原理」に基づく変革が求められると提案する。人間の生活・生存にかかわる基礎的ニーズを財政が満たすというアプローチを実現すべきだとする。この基礎的ニーズとは、教育や医療、育児・保育、介護・養老の現物給付である。これらはあらゆる人が必要とするものからできている。必要原理は格差解消を直接の目標とはしない。あくまで必要を満たすために現物給付がある。

「就学前教育を例にとれば、なんらかの困難に直面した世帯に集中して政策的介入を行うのではなく、普遍主義の立場から必要原理に基づき、就学前教育にかかわる必要を満たすべく、幼保一元化など制度の拡充を図ることが求められている。まずは所得に関係なく基礎的ニーズを満たす。そのうえで、もっとも恵まれない子どもたちがその他の裕福な家庭の子どもたちと対等に競争できるようにすべく、追加的支援を行っていく。」(エスピン・アンデルセン2011)。(『分断』172頁)

 

必要原理の一段の掘り込み 埼玉県和光市の介護保険の場合

この必要原理と普遍主義の立場を介護保険の現場で実現してきたのは、埼玉県和光市(東内京一保健福祉部長)であるといってよかろう。もともと介護保険制度の設計思想は、必要原理に立っている。介護を必要とする人には、その必要度(介護度)を客観的に測定するとし(要介護認定審査会)、その介護度に応じて介護給付が提供される。これには、要介護者の所得は関係がない。

また保険であるから、総ての被保険者は保険料を支払ってきている。このため、要介護状態になったときは、権利として給付を受けることができる。生活保護受給者の場合でも、その負担すべき介護保険料は介護保険給付として給付される。要介護状態からの自立に必要な介護サービスやリハビリテーションは所得などに関係なく提供されるのが原則となっている。

また、介護保険は高齢者が直接の給付対象だが、受益者は広い。介護の社会化というスローガンに端的に表明されているように、要介護高齢者の自立支援をケアマネージャーやヘルパー、理学療法士、医師、看護師などがチームで行うことで、それまで介護の責任を負わされてきた配偶者や娘、嫁がまず助けられる。一家の働き手である息子や娘は、介護退職をしないですむ。日中はデイサービスが支えてくれる。受益は普遍的である。介護という基礎的ニーズは、誰でもその状態になりうるものだから、世代を超えるという意味でも普遍的なものだ。

このような普遍主義的な介護保険制度の理念としては、介護保険法で3点定められている。

(1)  第1条 要介護状態になっても、尊厳を保持して自立した生活が営めるよう介護保  

険サービスを給付すること。

(2)  2条 保険給付は悪化防止のために行われる。

    利用者の状況に応じて、利用者の選択による適切な保険給付が行われる。

(3)第4条 給付を受ける国民自らが介護予防や心身の状態の維持改善に努める義務を負う。

和光市は、これらの介護保険制度の持つ理念を、国に先駆けて実現するよう様々な工夫を積みかさねてきた。国は介護保険をより効果的なものとするよう、様々な改正をして来ているが、その多くは、和光市の介護予防事業の展開や、富山の「この指とーまれ」、奈良万葉苑などのユニットケア、広島県御調町の地域包括ケア、などの先進事例を取り入れてきたものである。和光市は特に、介護予防事業を早くから事業化してきたモデル都市なのである。   

以下、主として東内京一監修・宮下久美子著『埼玉・和光市の高齢者が介護保険を卒業できる理由』MCメディカ出版、20152月(以下、『卒業』)、と『和光市第6期介護保険事業計画』2015年7月、(以下『計画』)、市町村アカデミー機関誌『アカデミア』第106号、2013年夏号、などから紹介していきたい。

和光市は埼玉県の南部、東京都に隣接し、1時間以内の通勤圏にある人口81635人(2016年9月1日)の都市で、高齢化率16.4%。高齢化率は全国平均より10%ほど低い。人口はまだ少しずつ増加している。

日常生活圏は三つ(北部、中央、南部)でそこに、5か所の地域包括支援センターが置かれている。この地域包括支援センターにはそれぞれ社会福祉士、ケアマネージャー、看護師、管理栄養士などの専門職が4〜5人配置されている。すべて社会福祉法人などへの業務委託だが、運営財源は市の一般財源なのが特徴である。他の市町村では、センターの運営財源は任意事業の委託料と介護予防支援事業の介護報酬とされているため、3人を置くのも苦しく、財源確保の為に介護予防支援に事業の中心を置いたり、居宅介護支援事業やデイサービス事業を併設している場合が多い。和光市の地域包括はこれらの併設は認められていない。これによって本来の地域包括の仕事に専念できる条件が与えられている。また、これら地域包括支援センターの専門職は、全員が地域ケア会議(後述)のメンバーであるので、常に個別ケアプランの評価の議論をしており、これを通じてスキルアップをするとともに、市の職員とも共通の理念のもとで判断し、行動することができているという。

 

際立つ認定率の低さの基礎

和光市が全国の介護保険事業のモデル都市となっているのは、まずその認定率の低さと安定性である。要介護(要支援)認定率とは、65歳以上の高齢者のうち何パーセントが要介護(支援)認定を受けているかの比率である。それが和光市では10%を切っている。

 

        05  06  07  08  09   10    11    12    13   14    15    16

全国  14.4 15.7 16.3 16.7 16.4 16.5 16.5 16.5 17.4 17.8 18.1 18.2

埼玉県 11.3 12.4 13.0 13.4 13.1 13.1 13.1 13.3 13.8 14.0 14.2 14.3

和光市 11.5 11.6 11.9 12.0 11.3 10.2 10.1 10.0 10.2 10.0  9.6  9.4

                             (事業計画から)

 このような低い認定率は、課題と目標を明確にし、プログラム終了時の評価をきちんと行うケアプランのサイクルが確立していることによって実現している。それは、要支援者の約4割が毎年、介護保険から卒業している(自立している)ところにも見られる。

これらの結果、和光市の介護保険料は全国平均に比べて低くなっている。第6期での介護保険料基準額は月額4228円で、全国平均の保険料基準額5514円を1300円下回っている。

このように介護保険からの卒業を実現している和光市の介護保険事業の特色は、まず地域ケア会議の持ち方にある。第二は毎年度、ニーズ調査と現状把握のために行われている高齢者全員への郵送調査がある。第には、そのデータを活かした介護予防の強化を目指した基盤整備である。

 

和光市の「地域ケア会議」でケアマネが育つ理由

 

コミュニティケア会議(地域ケア会議の和光市での名称)(以下主に『卒業』第7章「視察が殺到する和光市の地域ケア会議」による)

 和光市がコミュニティケア会議の前身である任意参加の会議を立ち上げたのは、介護保険制度開始翌年の2001年。困難ケースなどを取りあげ保険者としてサービス提供の実態を把握して適正なサービス提供を検討する会議だった。2006年度の新予防給付導入(地域包括支援センター設置、要支援T、Uの導入)後は、要支援者の新規ケアプラン全ケースを会議で検討することとした。

 現在、和光市のコミュニティケア会議は、市役所の長寿あんしん課・福祉政策課が主催する中央会議(ケア会議)が月に2回、北、南、中央の3エリアで地域包括支援センターが主催する包括会議がそれぞれ月1回開催されている。ケア会議は、20分で1ケース、一回の会議で6ケース程度の評価と修正を行う。

ケア会議の出席者は、約30名。市役所の福祉政策課と長寿あんしん課の職員4,5名、市内5か所の地域包括支援センターの全職員、助言者として管理栄養士、歯科衛生士、薬剤師、理学療法士、基幹病院の院長など4,5名である。それと検討するケアプランの担当ケアマネージャーとサービス事業者となる。担当ケアマネージャーは事前に担当者会議を開いて、ケアプランを検討。抽出した課題と支援の整合性をチェックする。それには担当地域包括支援センターの職員が加わる。

 ケースによっては、市の生活保護担当や障害担当、消費生活相談担当の職員や、民生委員や成年後見人の候補者が同席することもある。それは介護予防ケアプランだけではなく、生活支援などボランティアなどインフォーマルサービスを含めた「包括ケアプラン」となっている場合が多いからである。

 検討するケースは、新規の介護予防ケアプラン全ケース、二次予防事業から要支援に移行した(悪化した)ケース、要介護から要支援に移行(改善した)ケース、要支援から要介護に悪化したケースである。

 各エリアで開催される「包括会議」は、エリア内の地域包括の全職員に市の職員がオブザーバーとして加わる。この会議では、要支援高齢者の支援期間終了時の評価、二次予防事業対象者の新規プランの検討と支援期間終了時の評価と課題の整理を行う。

このように年間600件のケースをチームで検討することを通じて、会議出席者は和光市の「介護予防」「自立支援」という方針と、ケース調整する力を身に着けていく。

 和光市のケア会議でケアプランを検討する独自の意味は次の点にある。高齢者が抱える心身の課題、住宅、家族状況など環境面の課題など、その人を取り巻く全体的な状況をアセスメントする。そして、これも独自な「予後予測」によって、どの課題にどのようなサポートがあれば自立につながるかを考えて支援していくことを大事にしている。まず本人がやる気になる目標設定ができているか。その目標を達成できる具体的・効果的な支援の組み立てになっているか。ケアマネージャーやサービス提供事業者には、支援によって実現を目指す「その人らしい生活」の具体的なイメージを持ってケアプランを作成し、サービスを提供していくことを求めている。それが出来ているかどうかを多数の職種の専門家が確認するのが和光市の「ケア会議」である。

 

和光市の自立支援の事例

 長期目標をクリアするために解決すべき課題を明確化する。課題を解決するための具体的な短期目標を設定し、スモールステップで1つずつ課題をクリアし、長期目標達成に導いていく。

Aさんの長期目標 「バスを利用して駅前のスーパーに買い物に行く。」

課題1 下肢筋力が低下していて長い距離を歩けない

 短期目標その1 50m先のバス停まで杖なしで歩ける

 短期目標その2 300m先のクリニックまで歩いて通える

課題2 下肢筋力が低下していて階段をあがれない

 短期目標その2 バスのステップと同じ高さの階段を上下できる

課題3 握力が低下していて重いものが持ち上げられない

 短期目標その3 買った荷物を入れたショッピングバックをもち上げてバスを乗り降りできる握力をつける

長期目標 バスを利用して駅前のスーパーに買い物に行けた。

介護保険卒業!

 

全高齢者への郵送調査と訪問調査

 各市町村は3年ごとに介護保険事業計画を策定するとき、高齢者のニーズ調査を行うのが通例となっている。このニーズ調査は、多くの市町村では、介護サービスの利用意向を聞くというかたちになっている。

和光市の場合は、このニーズ調査を、2001年度から毎年度、高齢者の実態調査として行っている。現在は12項目・112問からなる調査票を高齢者の3分の一に郵送で送っているが、回収率は6割と高い。この未回収の4割に対して再度、訪問して調査することを通知することで1割程度は帰ってくるという。特徴は、残りの3割については、全戸訪問調査を行っていることである。返送しない人、返送できない人こそリスクを抱えている可能性が高いと考えるからである。

調査項目は、「家族・生活状況」「生活機能(手段的自立度IADl・知的能動性・社会的役割・総合評価)」「閉じこもり」「転倒・骨折」「低栄養・口腔ケア」「認知機能」「足のトラブル」「日常生活動作ADL」「社会参加」「健康」「心の健康」「介護予防への関心」の12項目、112問である。

 2002年度からは、返送者に、生活期の全般、運動機能、栄養、口腔、記憶、心の健全などについて、どの項目について注意が必要かを伝える「いきいき評価アドバイス」を返送し、介護予防への方向付けを行っている。

毎年度、高齢者の3分の一、2200人を郵送と戸別訪問で全員調査をし、そのデータは、個人台帳として整理し、「介護予防隊」と呼ぶデータベースを構築している。三年で和光市の全高齢者のデータが集積できるわけである。この個人データは、地域包括支援センターと健康福祉部が共有している。そして地域ケア会議の各ケースごとにそのデータが示され、市の担当課職員と地域包括支援センター、各ケアマネージャーに共有され、更新される。

この結果、和光市の高齢者は、3年に一度はこの調査を受け、「いきいき評価アドバイス」を受け取ることが当たり前の習慣となっている。この調査は、高齢者に和光市の介護予防事業とその理念を常に啓発する基本的ツールでもある。

 

居宅サービスに集中した基盤整備

(以下は主に『卒業』第4章「在宅限界点を高めるサービス基盤整備」および第5章「介護保険では足りないサービスを独自に創出」から)

 和光市の介基盤整備はまず、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設、定員60名)と老人保健施設(老健、定員99名)が一つずつある。しかし中心は、在宅での生活を支える地域密着型施設と、複合型のサービス付き高齢者住宅(サ高住)である。

 2013年には和光市は埼玉県から、総ての介護保険サービスについて、指定と監督の権限移譲を受けている。これによって、法的には都道府県が行う訪問介護事業やデイサービスなどの居宅サービスと、特別養護老人ホームなどの施設サービス事業所の設置認可や監督も、地域密着型サービスのように和光市として行えることとなっている。これは従来の実績によって獲得した新しい領域である。

 和光市が集中して取り組んできたのは、居宅での療養生活を施設で受けられるようなサービスによって支えることができるような基盤整備である。

 

和光式サ高住と地域密着型の整備

まず、サ高住の積極的な誘致とその在宅サービス拠点としての整備で、これを事業所の積極的な協力のもとで実現してきた。北部に2009年にできたリーシェガーデン和光は、同一建物内に、デイサービス、訪問介護、居宅支援事業、それに定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所を置いている。中部の日生オアシス和光(2011年)は、同じく4つの事業所を置くほか、配食サービス、24時間対応可能な在宅療養支援診療所と薬局を設置している。2016年には南部にもう一か所、配食サービスや24時間対応定期巡回・随時対応訪問介護看護を持つサ高住が置かれた。

地域密着型サービスは、市町村に許認可権と監督権がある。グループホーム、小規模多機能型居宅介護(訪問介護とデイサービスへの通い、必要に応じて宿泊)、24時間対応の定時巡回・随時対応型訪問介護看護、認知症グループホーム、などだが、これ和光市は積極的に支援してきた。

これに加えて、介護予防事業の地域拠点にリハビリ機器を設置し、気軽に立ち寄れる環境を整備しているのも特色である。中央公民館、南部地域センター、第4小学校のふれあいプラザ、白子コミセン、北地域センター,本町小学校ふれあいプラザなど。

 

介護保険外の地域支援事業、および市町村特別給付(介護保険料300円上乗せ)

 介護保険から卒業した高齢者と、要支援・要介護になる前の介護予防対象者の受け皿になっている事業を、和光市は独自に整備してきた。これらの高齢者には一次予防事業や高齢者福祉センターでのサークル活動、シルバー人材センターの事業などを積極的に紹介している。これを地域支援事業として展開しているのが和光市の特色である。和光市の介護予防の地域支援事業のメニューは23種類。運動や認知機能訓練、栄養状態改善、口腔ケア、閉じこもり防止などの通所形式と訪問形式のものとある。

 市町村特別給付には、「食の自立支援・栄養改善サービス費助成事業(配食サービス及び栄養マネジメント)」「高齢者紙おむつ等購入費助成事業」「高齢者地域送迎サービス助成事業」が実施されている。

 

結びに代えて

 井出英策氏は、9月24日の朝日新聞朝刊で、「政策も税も、言い換えれば受益も負担も『誰かが』ではなく『誰もが』に切り替える。そして世代間や受益の有無による分断をなくしていくことが、安心して生活できる社会づくりに何より重要なのです」と語っている。

 10%への税率引き上げという消費税増税の再延期で、社会保障費の充実に向けられた1%分についても新しい予算措置を待つという不安定要素が高まった。この中で、高齢者に重きを置いた税制改革から、子育て支援や教育にもっとシフトした税制へと転換することが重要だということであろう。

その方向が妥当だとした場合でも、和光市のような独自の実践はますます光を放つ。それは、高齢者の介護費用の拡大を抑制し、介護保険料の伸びを抑える具体的な多くの提案をつかむことができるからである。この費用抑制は、サービスの切り捨てではなく、独自のケアマネージメントを通じた、介護保険からの自立をチームで支援することから生まれる。介護保険は使うものではなく、それから脱却して、自立した生活を家族や地域の人々と可能にするために活用する仕組みとなっている。和光市の場合は、介護費用の抑制は、高齢者と家族、地域にとっては負担軽減と自立という贈り物となっているようだ。また若年層にとっても高齢者への費用増の抑制と第2号保険料の負担軽減に結び付く。その分を子育て支援に回すことも可能である。

「誰もが」への道は、彼岸にあるのではない。まず市内のすべての高齢者の調査を行えるように、来援度からの第7期介護保険実施計画策定で準備する。地域ケア会議のあり方を和光型に変えていくための検討作業もすぐ始められる。その議論の中で、新しいネットワークも生まれるだろう。各地での独自の地域支援事業の取組も期待していきたい。

 

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