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ベストバリューと評価システム

(初出:『自治日報』2005年8月12・19日号))

奈良女子大学名誉教授 澤井勝

  今年に入って「市場化テスト」のモデル事業が国の機関であるハローワーク、社会保険、行刑施設など3分野8事業で行われている。これで第二次臨調の答申(1983年)を受けて国鉄(8741日)、電電公社(8541日)が民営化されてから、五月雨的に進められた行政活動の民間への開放施策はほぼ出揃ったともいえる。

PFI法が1999年に制定され、今年5月までに国で25件、自治体で146件が完成ないし建設中である。同じ年に独立行政法人通則法が設けられ、国立博物館など84法人に次いで044月から100余りの国立大学が独法化された。037月に公布された地方独立行政法人法は044月に施行されている。20007月の自治法改正で公の施設の管理に指定管理者制度が導入され、来年10月の完全施行に向けて各自治体が対応に追われている。

福岡県立病院の民間への移譲や札幌市のバス事業など公営交通の民間への移譲もこの流れのひとつである。また、政策評価施策の導入と自治体財政へのバランスシート作成の導入なども、一連の「行政活動の市場化」の流れの中に位置付けることが必要である。

これからこの流れは加速し、時間はかかるが行政活動全体に波及することになることも予想される。しかし、わが国のこのような五月雨的な「行政活動の市場化」の流れには、基本的に欠けている視点がある。それは「行政活動の市場化」は、必ず「第三者」と「市民など当事者による政策評価」がセットされなければならない、という視点である。

いうまでもなく、このような「行政活動の民間への開放」ないし「行政活動の市場化」は、1980年代の英国でのサッチャー改革によって本格的に始められ、既に25年。電力など国有企業の民営化と国家公務員のエージェンシー化、自治体に対するレートキャッピングとCCT(強制競争入札、いわば強制的市場化テスト、)などがそれである。しかし、「市民参加」の視点を欠いたこの時期の「市場化」は、労組の勢力を削ぎ、行政の機構の圧縮と親方日の丸意識の変化などの効果を生んだとされる一方、地方自治の空洞化とサービス水準の低下、公務員の志気の低下と荒廃を招き、CCTはブレアによって廃止されている。

サッチャーの後継者メージャー首相の最大の仕事は、91年の「シティズンズ・チャーター」の制定で、これは政府が消費者である市民に、行政の達成すべき目標を掲げてその実現を約束するものである。そのための「サービスの水準の設定」が行われ、経年変化と自治体間の比較ができるような数値目標が多数設定され、公表された。

97年の総選挙で勝った労働党のブレアは、サッチャー、メージャー改革を基本的には受け継ぎ、このシティズンズ・チャーターも、「ベストバリュー」(お値打ち)施策の柱の一つとなる。99年の地方自治法改正で、自治体は政府と監査委員会が策定した16分野192の指標(パフォーマンス・インディケーター、2001年)を参考に、住民の意見を聞きながら5年後のサービス向上の具体的な目標を定めることとされている。それは、「自宅で生活支援を受けている65歳以上の人の割合」とか、「11歳時の全国共通試験の自治体間平均成績」、「収集ごみ1トン当りのリサイクル率」、「住民一人当りの図書館利用回数」などといった具体的な指標であり、10年以上かけて開発されてきたもので、現在も修正が行われている。これはオレゴン州のベンチマークよりある意味で徹底している。

この計画を政府から独立した監査委員会(オーディット・コミッション、ここのホームページで先の諸指標を見ることができる)が審査し、優れている自治体には地方税率の変更権が与えられる(自治分権ジャーナリストの会『英国の地方分権改革』参照)。

わが国の場合でも、「行政活動の市場化」を進めるとしたら、第三者および、納税者であり、本来の主権者である市民の参画による、その経過と成果を評価する「まちづくり指標」が開発されなければならない。それによって指定管理者との協定やPFI協定、市場化テストなどを通じた市場化の経過と、その結果を評価することが不可欠だ。「行政の効率化」と「公共サービスの質の向上」および「市民とのパートナーシップの拡大」という三つの価値をともに実現したいものだ。

なお、総合計画の進行管理のための「まちづくり指標」の例として、枚方市の47本の「まちづくり指標」(0003年度)を参照されたい(同市ホームページ参照)。

 

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