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合併後の津市の財政状況について
               三重県地方自治研究センター
での報告
                     奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

                         2015年3月

 

目次

はじめに

(1)  住民基本台帳人口の推移 人口目標はほぼ達成

(2)  基準財政需要額と基準財政収入額

(3)  合併算定替えの状況 70億円の交付税の割り増しが無くなる?

(4)  合併算定替えの見直し 70億円の6−7割が一本算定に加算

(5)  280億円の基金残高

(6)  合併特例債と基金造成

(7)  実質公債費比率

(8)  起債残高は漸減 実質公債費比率も低下

(9)  起債の状況及び合併特例債

(10)経常収支比率

(11)津市の経常収支比率 90%台で横ばいが続く

(12)扶助費の内容

(13)物件費、補助費等、操出金など

(14)経常収支比率再掲

(15)人件費比率は26%台まで低下

(16)職員数は584人減

(17)職員数の削減はひといき

(18)総務省「『平成の合併』について」平成22年3月公表、の指摘事項

(19)まとめに代えて

 <財政状況について>

 <これからの課題 支所の位置づけの見直しと集落住民活動支援>

 

付属統計

第1表の1 主な財政指標(1)

第1表の2 主な財政指標(2)

第2表の1 歳入構造分析(1)決算額

第2表の2 歳入構造分析(2)構成比

第2表の3 歳入構造分析(3)対前年度比

第2表の4 歳入構造分析(4)人口一人当たり

第3表の1 市町村税の推移(1)決算額

第3表の2 市町村税の推移(2)構成比

第3表の3 市町村税の推移(3)対前年度比

第3表の4 市町村税の推移(4)人口一人当たり

第4表の1 性質別歳出の推移(1)決算額

第4表の2 性質別歳出の推移()構成比

第4表の3 性質別歳出の推移(3)人口一人当たり

第4表の4 性質別歳出の推移(4)対前年度比

 

参考資料

1,津市旧市町村別人口推移(平成18年〜平成26年)

2,津市旧市町村別人口推移(昭和56年〜平成17年)

3,津市合併算定替えの状況

4,市町村の姿の変容に対応した交付税算定について(案)

5,市町村合併による行政区域の広域化を反映した普通交付税算定方法の見直しについて

6,津市における職員数の推移

7,「集落支援員」について

8,地域おこし協力隊について

 

 

 

 はじめに

 三重県津市が、平成18(2006)年1月1日に、旧津市、久居市、河芸町、芸濃町、美里村、安濃町、香良洲町、一志町、白山町、美杉村の10市町村の合併で成立して平成27(2015)年で10年になる。合併後の平成24年に策定された津市総合計画後期基本計画の人口フレームでは、平成27年の人口目標値を28万4千人としていたが、平成26年3月31日現在では28万4059人となっている。その点では、合併時29万2千人の人口が、全国的な傾向と同じく、趨勢的に減少する見通しのもと、その程度を緩和した目標としての28万5千人という数字は、現時点では達成できていると評価できる。

(なおこの人口には、平成24年から住民基本台帳法の改正で、外国人も含み、合併時の人口はそれを受けて、日本人のみの住民基本台帳人口と外国人登録人口を合わせた数字となっている。ちなみに、平成26年3月時点での津市の外国人は7035人で、人口の2.46%となっている。これは比較都市(後述)の奈良市の0.77%、大津市の1.19%よりかなり多い。これも津市の特徴の一つと考えて良い)

 では、合併の効果として期待された、行政の効率化、財政基盤の強化などはどうだったのだろうか。これはまだ進行中の問題であり、その評価については今後の課題でもある。特に、合併特例措置としての10年間の地方交付税の増額措置(合併算定替え)が終了した後の見通しについては不透明である。またもう一つの合併特例措置である合併特例債についても、その財政負担の内容については、これから評価されていくこととなる。

 この報告では、合併後の津市の財政状況について、わかる範囲で検討していくこととしたい。

資料としては、総務省ホームページに掲載されている毎年度の「市町村別決算カード」を主なデータとする。これは、毎年度、各都道府県、市区町村が総務省に報告する「決算状況調べ」(いわゆる決算統計)である。そのほかに、津市のホームページに掲載されている「決算状況」も参照しているが、元は同じである。

したがって、対象となっているのは「普通会計」という実在しない会計である、これは11700あまりの団体の決算状況を統一して把握、表示するために、現実の「一般会計」に特別会計のうち「公営事業会計」以外の会計を統合した、統計上の会計である。国が毎年度、国会に提出する「地方財政計画」や「地方財政白書」なども同じベースとなっている。

また広く入手できる資料としては、この決算統計の数値を、見やすいように組み合わせたデータが、総務省および各団体のホームページに載っている。それが「財政状況資料集」である。ここには、グラフ化した比較表や時系列の動きなどが10枚の統計表や図版等で見ることができる。

なお、団体間の比較として、奈良市と大津市の2012年度の数字を利用している。両市とも津市と同じく県庁所在都市であること、人口が30万人程度と類似していること、財政力指数は0.75程度とこれも近似しているからである。ただし、両市とも中核市となっているので、普通市である津市とは処理する権限に相違がある点は留保しておく必要がある。三重県では四日市市が2000年から特例市となっているので、津市とともに二つの頭を持っている県だという特色が有る点も留意しておきたい。

また、本報告書の作成に当って、これまで「市町村合併財政検証研究会」で収集、整理、分析した資料の一部を利用している。特に合併特例債、合併算定替えについては、同研究会「第1節合併特例債」「第2節合併算定替え」のデータやアンケート結果などを利用していることをお断りしておきたい。

 

以下、資料の「第1表 主な財政指標の推移」から見ていくことにしよう。

 

(1)住民基本台帳人口の推移 人口目標はほぼ達成 

 ここでは、まず「住民基本台帳人口」から検討していく。付属統計第1表の1、2を参照されたい。

決算統計の約束事として、使う人口は年度末の住民基本台帳人口とすることとなっている。先にも触れたように住民基本台帳人口は、平成24年以降は従来の外国人登録法による登録人口と従来の住民基本台帳人口を合せた数字とされている。 津市の平成18年(2006)年度から2011年度までの動きは、ゆるやかな減少傾向を示している。2012年度からは先にも触れたように外国人も含む数字となっているので、2011年に比較して7千人ほど増加している。2013年度では1069人、0.4%の減となっている。

 参考までに人口の推移を合併市町村ごとに見ておく。平成18年3月31日の人口(外国人含まず)と平成26年3月31日の人口(外国人含む)の各地区ごとの人口を比較した参考資料1から次のことがわかる。全体では人口が増えているように見えるが、これは外国人を含んだからである。外国人7000人を含まない人口で仮に試算すると、26年の人口は27万7千人程度になり、6千人程度減少していることになる。

 注意を引くのは、内陸部の旧白山町と旧美杉村の減少が目立つことである。それについで旧美里村、旧安濃町、旧香良洲町の減少も目を引く。

 この傾向は、参考資料2を見ると、合併前からの人口変動を受け継いでいると思われる。この資料から、地域内の人口が減少しているのが目立つ、旧白山町と美杉町について、合併前の9年間と合併後の9年間の減少の程度を見てみよう。

 

       平成9年〜17年          平成18年〜平成26年

旧白山町   718人減  5.1%減      1246人減  9.4%減

旧美杉村  1205人減 14.9%減      1572人減 23.6%減

 

 見てわかるとおり、旧白山町も旧美杉村も、合併後のほうが人口減少が加速しているように見える。これがどういう要因によるものかはここでは不明であるが、この減少のスピードをどう緩やかにするかは、津市全体にとっても大きな政策課題の一つである。これからの施策として、これら、特に旧美杉村や旧白山町における集落活性化施策を中心とした地域活性化施策の展開を求められるとも考えられる。

 

(2)基準財政需要額と基準財政収入額

 これらは普通地方交付税の算定に用いる数字である。基準財政需要額とは、標準的な行政を行うのに必要と考えられる一般財源の大きさである。毎年度、総務省から配布される地方交付税算定台帳に所定の統計数値を入れて、客観的に計算する。津市の場合、この8年間、大体440億円から450億円の水準で推移している。ピークは2009年度の455億6900万円だが、これは前年にリーマンショックがあった影響なのかもしれない。

人口一人当たりの数字では、津市の2012年度が15万5574円、奈良市が14万4091円、大津市が14万1293円となっていて、一人当たり1万円以上津市が大きい。これは津市の場合、1市町村合併にともなう特例措置がより効いているためであると考えられる。ちなみに奈良市も平成17年に月ヶ瀬村(当時の人口1778人)と都祁村(同6722人)を合併しているが規模が小さい。大津市の最近の合併は、平成18年に志賀町(同23219人)を合併しているがこれも相対的に規模が小さい。

 

(3)合併算定替の状況 70億円の交付税の割り増しがなくなる?

 参考資料2は津市の合併算定替の状況である。合併算定替えとは、合併後10年間は、特例で二つの普通交付税の算定ができる。一つは合併して一つの団体になったことから、一つの団体として計算する方式である。もう一つが合併算定替で、合併前の旧市町村がそのままあるとして計算し、それを合算する方式である。一本算定だと役所は一つ。学校など施設も多い。それを合併で効率化するのが目的の一つでもある。合併後10年間はこの特例によって一本算定の額より割り増しをし、その間に施設や職員等の合理化、効率化を実現するよう求めることになる。

では普通交付税の一本算定と算定替との差額はどれほどあるか。参考資料3にあるとおり、津市の場合、平成25年度の算定では、割増額は71億5223万8千円となっている。すなわち、一本算定の交付税額は108億5341万6千円、合併算定替では180億565万4千円であるから、その差額は71億5223万8千円となる。したがって交付税の39.7%、ほぼ40%が合併算定替えによる増加分となっている。臨時財政対策債許可額についても計算されているが、ここでは普通地方交付税に注目しておく。

この合併算定替えの額は、10市町村の合併という条件のもとだとしても、他の合併市町村と比較しても非常に大きい。

他の資料によるこの対象期間での平均値で見た、合併算定替の額の一本算定からの増加額を県内の合併団体と比較すると、津市がトップで62億円、以下、伊賀市30億円、松阪市29億円、志摩市25億円、伊勢市22億円、いなべ市19億円、桑名市16億円などとなっている。

 

この合併算定替え分は、合併後11年目から5年間で削減され、16年目には割り増しはゼロとなる。したがって、津市の場合、11年目の平成28年から割り増し分が削減されることになっていた。モデル的に70億円を5年間で削減すると1年目に1割、7億円、2年目にさらに2割、14億円(計21億円)、3年目にさらに2割、(計21億円)と言ったペースで圧縮される。6年目には交付税はおおむね108億円の水準にまで下がる。これが津市の財政の最大の問題点だった。

 

(4)合併算定替えの見直し 70億円の6−7割が一本算定に加算

 今回、「合併算定替え終了に伴う財政対策連絡会議」(2013年10月設立総会、当時241市、その後308市)等の要望に基づき、この合併算定替えの見直しが行われることなった。結論から言えば、割増分の6割から7割の割増分は存置する方向である。平成の大合併では、特に広大な面積を持つ団体が大幅に増え、支所の統廃合や、小学校、中学校の統廃合が進めにくいという状況がある。

 総務省財政局の平成27年2月18日付の通知では、「市町村の姿の変化に対応した交付税算定について()」として以下のような点が示されている(参考資料4および5)。

 

「以下の項目について、平成26年度以降5年程度の期間で見直しを行う。

@    支所に要する経費

A    人口密度等による需要の見直し

B    標準団体の面積の見直し

具体的な見直しの内容

・平成26年〜28年 支所に要する経費を加算  3463億円

・平成27年〜29年 消防費、清掃費、地域振興委費  1000億円程度

・平成28年以降  保健衛生費、小中学校費、徴税費等、その他項目 2300億円 

・合計6700億円程度」

 

これによると、合併算定替えで増加している9300億円の内、6700億円が平成26年以降、一本算定に加算されことになる。比率で言えば、72%である。

もしこのようにして津市の交付税の割増分約70億円のうち、慎重に見て6割がこれからの交付税に加算されると仮定してみよう。合併算定替え終了時、平成32年度の津市の普通地方交付税は、平成25年度をベースにすると108億円+70億円×0.6で150億円となる。平成25年度ベースで30億円の減となる。これによると平成32年度にも平成21年度の合併算定替えの交付税額が確保されることとなる。まったくのおおざっぱな試算だが、この見直しが着実に実行されることを期待したい。これでも大きな財源の圧縮となるから、基金の計画的な取り崩し、臨時財政対策債の活用、そして繰越金のこれも計画的な圧縮などの工夫が求められる。

 なお津市の場合、繰越金が多いという財政運営の特徴があるようである。

        繰越金の状況(百万円)

年度  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013

繰越金 4231   6439  2814   2212  1920   4660  3883   2060

構成比  4.33     6.79     2.90      2.12    1.87      4.44     3.80     1.91   

 

(5)280億円の基金残高     

また津市の財政の特色のもう一つは、この基金、特に財政調整基金への積み立てが積極的に行われてきたところにある。2006年度の場合、取り崩し額は47億円にのぼるが、積み立ても36億円弱と相殺に近い額を積み立てている。2007年度には34億円を積み立て、取り崩しは15億円なので差し引き20億円がプラスとなっている。その後も、積立金が取り崩しを上回ることとなっている。(「第1表の1 主な財政指標」を参照)

この結果、平成24年度決算では、財政調整基金残高は183億3934万円、減債基金残高が18億8948万円、特定目的基金残高が69億3992万円となっている。

ついでに、市のほうでは既に計算は出来ていると思われるが、合併算定替から一本算定に加算される額、9300億円のうち、既に加算が平成26年度から始まっている「支所に要する経費」3463億円が、津市にどの程度影響するか試算すると、3463億円÷9300億円×70億円=26億円程度になる。これが3年間にわたって措置される。この分は、支所に要する経費として優先的にて確保されてもよいという主張も成り立つ。もちろん地方交付税はあくまで一般財源であるから、積算の根拠にその使途が拘束されることはないのは建前である。そのことは前提としても、なお「支所に要する経費」は、積算根拠としてはあるのも事実である。

もう一つ、留意しておきたいのは、この9300億円の合併特例措置のうち6700億円を一本算定に加算する措置は、合併を選択しなかった団体、そして合併が出来なかった団体の地方交付税財源から移転されるものだという点である。地方交付税の総額は、国税5税の一定割合ということを基本に、原理的にはその総枠は毎年度の地方財政折衝によって決められる。今回の合併市町村に対する合併算定替えの見なおしによる交付税の増額は、総額を増加させるものではない。あくまでそれは一定の交付税総額の内部での配分の話だからである。合併という選択を選ばなかった、あるいは選べなかった市町村は交付税の減という負担を追うことになる。このことも留意しておきたい。

 

(6)合併特例債と基金造成

なお、合併特例債の使途として、基金造成のための起債が認められている。合併特例債は建設事業債と基金造成の2事業で認められているが、いずれも起債充当率95%、後年度にその元利償還金の70%が交付税措置(基準財政需要額に参入)される。したがって、事業費の66.5%(95%×70%)が需要額に算入されることになる。(この項は、「市町村合併財政検証研究会」資料「第1章 合併特例債」に依る。」

起債の上限は、建設事業は、次の算式による。

 180億円×(合併後人口/10万人×a+)×(増加人口/1万人×c+d)×(2−2/合併関係市町村数)

基金造成事業の起債上限額は、次の算式よる。

 (3億円×合併関係市町村数)+(1万円×増加人口)(5000円×合併後人口)

必要がある場合には、標準財政規模のおおむね5割まで積み立てることができる。ただし上限は40億円。

この算式による津市の合併特例債の上限は、建設事業債が672億円、基金造成事業債が38億円となっている。

津市の場合は、建設事業債のうち2012年度までに116億円を発行している。消化率は11.6%である。今後の発行計画を含む消化率を51.2%としているので、比較的に慎重であると評価できる。

基金造成事業債は2008年度に38億円と上限額を発行している。この基金の取り崩しについては、平成18年12月の総務省通知によって、一定の範囲で基金を取り崩して事業の財源とすることを認めた。その範囲とは、

・基金の取り崩しは、特例債の償還が終了した範囲内にとどめること。

・使途は条例で定め、建設計画に位置づけること。

・取り崩しは条例で定めること。

この取り崩しについての考え方としては、志摩市からは次のような回答があったとされている。「現時点では取り崩してはいませんが、平成27年度以降普通交付税の段階的な縮減に対応する財源として活用する考えをしています。(具体的な事業は未定)」

 

基金の規模

なお基金(財政調整基金、減債基金、特定目的基金の合計)の規模については、2012年度の人口一人当たりの数字を見ると、津市が9万5124円で、奈良市の2万1033円、大津市の3万9946円を大きく上回っている。津市は奈良市の4.5倍、大津市の2.4倍の基金がある。2013年度は、津市はさらに伸ばして、279億円、一人当たり9万8167円となっている。

 

(7)実質公債費比率 (「第1表の1 主な財政指標」参照)

 このような合併特例債と通常債など、これまでに発行した起債などの負債の元利償還金による財政負担を見ておこう。そのための決算統計上の指標はいくつかあるが、中心は「実質公債費比率」である。

 実質公債費比率は、基本的には分子に地方債の元利償還金(公債費)を置き、分母に標準財政規模を置いて求める。なぜ実質というかというと、分子の元利償還金に一般会会計の事業だけではなく、上水道や交通など公営企業の支払う元利償還金への一般会計からの繰り出し金を含み、さらにPFIや一部事務組合等の公債費類似経費(準公債費)を算入することにしているからである。いわば連結決算の考え方を導入しているのである。具体的な算式は以下の通り。

 {(A+B)−(C+D)}/(E+F−D)×100

A:地方債の元利償還金(公営企業分、繰り上げ償還等を除く)

B:地方債の7元利償還金に準ずるもの(準元利償還金)

C:元利償還金または準元利償還金に当てられる特定財源(都市計画税など)

D:地方債の元利償還金の経費として基準財政需要額算入された額及び準元利償還金の「経費として基準財需要額に算入された額

E:標準財政規模

F:臨時財政対策債発行可能額

 

Bの準元利償還金

@    満期一括償還方式の地方債の一年当たり元利償還金

A    公営企業債の元利償還金に対する一般会計からの繰り出し金

B    一部事務組合等が起こした地方債の元利償還金に対する負担金・補助金

C    債務負担行為に基づく支出のうち公債費に準ずるもの(PFI事業に関わる委託費、国営事業負担金、利子補給など)

 

なおPFI事業とは、プライベート・ファイナンス・イニシアティブの頭文字を取ったもので、公共事業を実施するために、民間の資金と経営能力・技術力やノウハウを活用する方法である。あくまで地方自治体が発注者となり、公共事業として行うもので、民営化とは違う。三重県内でも四日市市での市立小中学校施設整備事業や桑名市の図書館等複合公共施設特定事業、津市の新斎場「いつくしみの杜」事業(平成27年供用開始)などの事例がある。

 

(8)起債残高は漸減 実質公債費比率も低下

この実質公債費比率は2007年に成立した財政健全化法に基づく健全化判断比率として採用されている。地方債の発行は。2006年度から許可制度から協議制度に移行している。この協議制の下で、自治体が自律的に起債の発行をコントロールして財政規律を維持するための指標とされている。この実質公債費比率が18%以上の団体は、地方債の発行に国の許可が必要とされている。さらに25%以上の団体は一部の単独事業について地方債が制限され、35%以上の団体は一般公共事業債についても制限される。

 津市の場合は、2008年度は15.9とやや高い水準にあったが、起債発行を抑制するとともに、繰り上げ償還を毎年度実施するなどして起債残高を漸減してきたようだ。

 

       繰り上げ償還の状況(千円)

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013

0            138928    242497  83994    105312   69038    3866     3751

 

         地方債現在高(百万円)

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013

111036   104239   101781  96966     96553    93780    92083    94580

 

この結果、実質公債費比率も2006年度の15.9から2013年度の8.9まで下がって来ている。

奈良市および大津市と比較しみよう。津市は人口一人当たりの地方債残高は33万2405円、奈良市は59万3183円、大津市が31万1789円で、大津市がもっとも債務が小さい。津市はそれに匹敵する水準である。奈良市は非常に厳しい状況である。それでも実質公債費比率は奈良市でも13.5でそう高いとは言えない。

ただし津市の場合、この実質公債費比率も、実体的にはこれほど低くはないと思われる。

先に見たように、標準財政規模が見かけ上、合併算定替えの期間中(0から15年)は臨時的に大きくなっているから注意が必要である。

 

実質公債費比率(3年度平均)と普通地方交付税(百万円)の推移

 2006   2007   2008   2009   2010   2011   2012    2013

実質公債費比率  15.9    13.4   13.4    13.0    12.2    10.9    9.8     8.9  

普通地方交付税  13629   12952  13891  15660  17530  18100  18106  18006

元利償還金    13113   13157   13189  12711  12548  12289  11461  11357

 

 本表に見るように、2006年から2013年にかけて、元利償還金という分子部分が17億円強減少してきていることは、実質公債費比率を引き下げていることは確実である。これは繰り上げ償還等の政策努力を反映していると考えられる。他方、普通地方交付税が44億円程度増加していることが比率引き下げに影響していることは明らかである。この間に、合併算定替えによる交付税の増額分が2006年度の45億円から2013年度の71億円に増加していることも寄与していると思われる。(参考資料3を参照)

 

(9)起債の状況及び合併特例債

 さて起債が抑制的だと指摘したが、それは下表のようになっている。(「第2表 歳入の構造分析」参照)

 

       地方債による歳入(億円)

          2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012  2013 

地方債        59     43      88     61     106    81     84    127

臨時財政対策債        32     29      27    42      77     51     51     不明

 

 ちなみに2012年度の奈良市は329億円、大津市で94億円の発行額となっているから、かなり抑制的とも言える。

 この中には、合併特例債も含まれている。資料によれば、2012年度までの建設事業への発行可能額に対する発行実績は77億9千万円で消化率は11.6%である。今後の計画も含めた消化率は51.2%となっているから、発行可能額の半分しか予定されていないおとになる。

 気になるのは2013年度の発行額が127億円と、従来の水準を大きく上回っていることである。これが今後も続くかどうか、注意しておくべきである。

 

(10)経常収支比率

 「第1表の2 主な財政指標(2)」に経常収支比率が示されている。経常収支比率は、市税や普通地方交付税などの経常的に収入される一般財源に対して、人件費や公債費、扶助費など経常的に支出される費用がどの程度になるかを計る指標とされている。(現在は、この比率の計算の分母に臨時財政対策債の発行済み額を加えている。臨時財政対策債は、交付税の身代わりとして、自治体が発行することを認められている地方債で、この対策債の元利償還金の一部は後に基準財政需要額に算入され、交付税として帰ってくる仕組みとなっているから、交付税と同じ一般財源として分母に加えられているのである。)いわば投資的経費を捻出する可能性がどの程度あるかを計ると言う意味で財政の弾力を示す。性経常的支出に向けられる税等が増えと、投資的経費に向けられる一般財源が少なくなり、財政的に窮屈になると考えられていたからである。特に景気後退期に、公共事業の機動的な出動によって景気対策の一つを実行したりすることが難しいと考えられていた。

 今でも経常収支比率は市町村で75%程度が適当と考えられている。しかし、現実には905%を超えるのが普通である。平成26年の地方財政白書では、平成24年度の都道府県が94.6%、市町村が90.7%となっている。市町村は平成16年度から22年を除く8年度の間、90%を超えている。このように、経常収支比率が90%と高止まりしているのは、自治体の歳出の構造が変わったためである。

 経常収支比率を構成している経常的支出の最大費目は、言うまでもなく人件費である。こお人件費充当分が平成16年度の29.5%から平成24年度の24.8%まで下がっている。代わって伸びているのがまず扶助費充当分である。扶助費充当分は平成16年度の7.3%から平成24年度には11.2%に4ポイント上がってきている。公債費充当分は20.1%から18.8%と若干、下がり気味である。これに加えて、補助費等が伸びてきている。

 

(11)津市の経常収支比率 90%台で横ばいが続く

 津市の場合を見ておく。2006年度から2013年度にかけて、人件費は33.6%から26.2%まで低下している。扶助費は7.5%から8.4%まで上昇。公債費は20.8%から16.1%まで低下した。物件費は16.8%から18.5%まで上昇した。補助費等は4.2%から3.8%に下がったが、操出金は11.5%から16.4%に上昇している。この結果、津市の経常収支比率は、年度ごとの上下を繰り返しつつ、90.2%から90.7%と横ばい状態を維持している。

 つまり、人件費と公債費の比率は低下したが、代わりに扶助費と操出金の比率が拡大して帳消しとなっているのである。歳出構造が変わってきているのである。

 ここで性質別歳出の内容を見ておこう。

 

(12)扶助費の内容

 扶助費の内容を目的別に見ておこう。平成26年3月発行の総務省「地方財政の状況」(地方財政白書)によると、市町村の扶助費11兆65億円は95%が民生費である。最も大きいのは児童福祉費で4兆6681億円。全体の42.4%を占める。これは児童手当(子ども手当)を主な内容としている。次いで生活保護が3兆4581億円、31.4%となっている。三番目は社会福祉費で、主な内容は障害者福祉の自立支援給付などの2兆3159億円、21.0%である。

老人福祉費分は、介護保険ができて、最大の介護費用が介護保険特別会計に移されている貯め、扶助費としては小さくなっている。2073億円で1.9%である。

 これらのうち、生活保護については、生活困窮者自立支援法の施行に伴う、幅広い生活困苦支援施策の展開が期待され、また景気動向にも影響されるので、見通しにくいがなお堅調に推移するとも考えられる。児童手当については、子供の数が減少していくとすると、今までのような伸びはないかもしれない。とはいえ、子ども子育て支援への要請は強いから、財政面では、なお最大の費目であるに違いない。障害者福祉については、障害者権利条約の批准(2014年1月)や障害者差別解消法の施行(2016年4月)もあって、施策としてはなお拡大する方向と見る必要がある。

 

(13)物件費、補助費等、操出金などの内容

「物件費」は近年、どこの団体でも増加している。最大の費目は委託料である。先の地方財政白書によると、市町村の平成24年度の物件費の内、57.3%が委託料であるが、10年前には49.7%だったから、大幅にシェアが伸びている。民間委託の拡大を反映している。それまでの直営を廃して、民間に委託することで職員数を削減する手法は、経常収支比率の面では、物件費の経常収支比率を高めるという作用があることに留意しておきたい。

「補助費等」では、地方公営企業に対する負担金、さまざまな団体への補助金、報償費、寄付金などで、下水道事業への負担金、補助金が大きい。また病院や交通への負担金、補助金がそれに次ぐ。

地方財政白書によると市町村の「操出金」のうちで最大のものは、後期高齢者医療事業会計への操出金で、操出金全体の26.9%を占めている。次いでは介護保険事業特別会計への操出金で、25.1%の構成比である。そして三番目が公営企会計(法非適用企業)への操出金で23.7%である。そして国民健康保険特別会計へのそれで23.1%となっている。

このような操出金は、今後なお増大していくものと考えられる。特に後期高齢者医療制度と介護保険への操出金は卓実に増大する。国民健康保険については、2018年4月から都道府県が経営に参画し、市町村とともに共同の責任をもつことになった。市町村は国民健康保険料及び税の賦課徴収の責任を負う。その点では、市町村にも国保財政の拡大の歯止めがかっている訳であるが、これが適切に機能するかどうかが問題である。なお、財政調整基金や減債基金への操出金は「積立金」として別個に掲示されている。

 

(14)経常収支比率再掲

 津市の経常収支比率は、いま見たように90%を維持しているが、その構成は変わってきている。その内容を見ると、後期高齢者医療や介護保険への操出金が大きなシェアをもっていることから、これからも上昇していくことは避けられない。その程度は、政策努力によって左右される面もあるが、ここ数年の趨勢としてはこの比率の上昇は覚悟しておく必要がある。さらに、普通地方交付税の合併算定替えの特例が終わった後は、かなりこの数値があがることが予想される。分母である経常一般財源が圧縮されるからである。

 ところで、奈良市の経常収支比率は97.6と8ポイントほど津市よりも高い。人件費、公債費、扶助費とも津市をかなり上回る。奈良市の財政状況はかなり厳しいということが言える。

大津市の場合は、2012年度の数字では、91.8%と津市とほぼ同じ水準となっている。ただしその構成はかなり違うようだ。人件費の比率は津市よりも低く、扶助費と公債費は津市よりも高い。大津市の場合は、明らかに職員数が津市よりも少ないのが特徴である。

 

(15)人件費比率は26%台まで低下

 合併後の新市で効率化に向けた最大の課題は、人件費の削減である。人件費の内訳は

平成26年3月の総務省地方財政の状況によると、市町村の平成24年度決算で、職員給が64.5%(基本給が43.4%、その他手当が21.0%)、退職金が12.2%、議員報酬・委員等報酬・特別職給与が8.1%、地方公務員共済負担金が14.3%などとなっている。

 この市町村の人件費は、全国的に見ると、平成18年度から24年度まで、合併の有無にかかわらず減少してきた。そのような人件費の全国的な傾向と水準に比較して津市の経常収支比率での人件費比率は以下の通りである。

 

2006  2007  2008  2009  2010  2011  2012  2013

全国  26.7      26.5      25.6     24.7      23.8       23.9      23.5  

津市  33.6      34.0      30.3     29.0      26.6       27.6      27.5     26.2   

 

 この数字で見る限り、津市の場合、合併当初は34%程度と高い水準であったが、2009年度に30%を切り、直近の数字では20%台半ばにまで低下してきている。その点では、人件費の重荷は大分軽減されつつあるとも言える。なお、奈良市は2012年度に28.1%、大津市が25.6%である。

 ただ気になることが2点ある。一つは、この津市の数字が、先程来指摘している合併算定替えによる分母の拡大に基づく数字だという点である。支所の経費との加算による一本算定額の増加が見込まれるにしても、交付税が30億円ほど圧縮されるとことは避けられないから、5年先には、この比率は数ポイント上昇すると見ておく必要がある。しかし、それが広域合併、多団体合併という選択によって生じた比率の高さだとしたら、住民サービスの向上やその水準の確保に向けた努力の結果として、むしろ積極的に訴えていくべきであろう。

 もう一つは、同じことだが、人件費の比率の低下傾向は、26%台から27%台のところで足踏みをしているように観察できる。このことは、これ以上の効率化は、合併団体にとっては、住民サービスの削減等の新しい負担や、住民自身に公的サービスの担い手となることをお願いする施策の展開などと、組み合わせることも必要である。

 なお、ここに言う人件費は、正規職員の人件費である。現在の地方自治体の仕事の多くが、臨職・非常勤によって担われている。2012年の自治労調査によると、政令市以外の市における全職員に占める臨職・非常勤の割合は33.1%となっている。特に保育士や相談業務、図書館司書など専門職ではその大半が臨職・非常勤である。そういった点からすると、これからの人件費の見方は、これら臨職・非常勤を含めた総人件費というとらえ方が必要である。

 

(16)職員数は584人削減

 この人件費の削減のもとになっているのは、職員数の削減である。もちろん、議員定数の削減による報酬の減少、首長等の特別職のポスト喪失に伴う給与削減効果も大きい。職員数の削減は以下のように進められてきた。付属資料6は、もとになっている数字は、津市人事課の数字である。(決算カードの数字は、一般職に消防を含む年と含まない年の数字が混在しているようであるので、参考数字として挙げておく。この数字は普通会計が対象であるので水道事業や下水道事業などの公営企業会計所属の職員は除外されている。)

 

             津市における職員数の推移(人)

     2006   2007   2008   2009   2010   2011   2012   2013 2014

全職員  3083   3014   2900   2793   2706   2639   2573    2507 2499

総合支所  503     453    390   304      296    284     296     298  296

本庁    776     761    736   712      685    665     660     655      655

 

(参考)普通会計職員数(「第1表の2 主な財政指標(2)」参照)

      2006   2007   2008   2009   2010    2011  2012   2013  2012  2012

合計    2691   2582   2506   2427   2380    2325  2276   2289 奈良 大津

人口千人

当たり(人)9.49  9.12   8.87   8.61    8.47    8.31   7.97    8.04  7.22  5.85

 

 この表で見る限り、全職員(正規職員)数は2006年4月1日の3083人から、2014年4月1日の2499人に、584人減少している。

決算カード(普通会計)の合計職員数では2691人から2289人まで402人減である。人口千人当たりの普通会計職員数で言えば、津市が8.04人、奈良市が7.22人、大津市が5.85人である。  

 

(17)職員の減少傾向はひと息

ただし、職員の減少傾向は、底を打ちつつあるように見える。特に支所の職員数は平成24年4月1日の284人から、持ち直して平成26年4月1日には296人となっている。もともとは職員数の削減は総合支所の削減が中心に行われてきた経過がある。この期間中に、本庁の職員数は776人から655人に121名の削減である。総合支所のほうは503人から296人に207人の削減となっている。比率で言えば総合支所は41%の削減であり、本庁は16%程度の削減となっている。これが総合支所の役割の一部見直しが行われたために、若干の職員の増加となっているようである。

当センターの「合併後の行政推進機構研究会報告書」によれば、2013年度から始められた地域インフラ維持・補修業務と地域政策会議について、次のように述べられている。

「合併後、津市の総合支所においては、身近なサービス提供の確保と業務の集約化を念頭に、権限・財源・人材を本庁に集約し、効率化、簡素化を進め、業務上は一定の効果を上げてきた。

しかし、その反面、身近な地域の要望が届きにくくなり、形になるまでに長い時間を要する中、不満の増大とともに、地域住民との間に新たな距離感が生まれているとの指摘もあった。

このため、住民生活に密着した地域要望等に即答・即応するべく、総合支所の権限・財源・人員の見直しを行い、地域住民との協同を果たすようなシステム作りを図ることを目的にこの二つの施策(地域インフラ整備・補修事業と地域政策会議)が2013年度から実施されている。」

この交付税の合併算定替えという支所見直しは、支所を整理すべき対象ではなく、むしろその機能を強化する対象として位置づけていると言える。すなわち、これからの合併都市にあっては、支所の機能の再構築と本庁との関係の再整理を通じて、住民の意向に沿いながら、効率化という合併目的を達成することが求められているとも言えるのである。

 

(18)総務省「『平成の合併』について」平成22年3月公表、の指摘事項(抜粋)。

 この支所機能の再構築は、合併算定替えによる交付税の増加分の一部を、一本算定に加算していく措置として裏付けされている。これに加えて、この算定替え見直しの基調となっている考え方が、総務省による合併団体ヒアリング調査の中で示されている。

 

「平成の合併について」

 

<支所機能の位置づけ>

 

(災害対応の拠点機能の役割)

・支所は、住民の窓口サービスのほか、各地域の情報収集等の機能を果たしており、災害時の現地対策本部の機能を果たした。

・職員を被害のない本庁から被害の大きい支所に派遣し、支所を拠点として、応急復旧、住民生活の再建に向けた被害家屋などの調査を迅速に進めることができた。

・支所への権限移譲が進んでいたこと、また、地域住民相互の強い結びつきの確保の結果、災害の被害を軽減することができた。

 

(身近な行政サービスの提供やコミュニティの維持)

・県土の大半が山間部にあることから、総合支所の役割を重視せざるを得ない状況である。合併前の役場等を支所、出張所とし、身近な行政サービスを提供できる体制を実施しているのが実態である。

・コミュニティの維持にも役割を果たしており、行政が関与しないと、地域だけでは維持できない。

 

<市町村の区域の拡大への対応>

 

(点在する集落への対応コストが必要>

・支所・出張所を維持管理するための経費及び人員

・本庁と支所・出張所間の職員の移動に要する時間及び経費

・区域全体をカバーする消防・保健衛生機能の維持に要する経費及び人員

 

(公共施設の再編が困難)

・区域が拡大する中、公共施設の再編整理が困難であり、老朽化に伴う改修費も含め、維持管理に要する財政負担が年々高まっている。

 

(地域交通の確保)

・コミュティバスを、旧町村間の格差の是正のために全区域内運行することとなり、新たな財政需要が生じている。

 

<過疎集落の維持>

(集落支援員の配置)

・過疎化や高齢化への対策として、新たに各行政局へ3名の集落支援員を配置し、新しい公共支援事業や過疎集落再生活性化支援事業などに、地域の方々と一緒になって地域活性化の対策に取り組んでいる。

・住民とのコミュニケーションを図り、住民の細かなニーズを把握するため、集落担当職員の配意等を行っている。

(活性化交付金の創設)

・各地域が実施する、地域集落の維持及び活性化のためのコミュニティ活動に対し、地域維持活性化交付金制度を設けている。

 

(19)まとめに代えて

 今まで見て来た合併後の津市の財政状況と、それを前提とした課題について、いくつか整理しておきたい。

 

<財政状況について>

1,合併後10年たった津市の財政状況は、地方交付税の合併算定替えによる、普通地方交付税の増額が70億円、普通交付税のほぼ4割(期間平均では年に60億円)に達し、県内の他の合併市町村の中でも飛び抜けて多い。これがこれから削減されていく。

2,しかし、平成26年度からの合併算定替えの見直しにより、今後5年ほどで交付税の増加額の6割から7割は一本算定に加算されていく。それにしても、30億円ほどの交付税減は見込む必要がある。

3,財政状況としては、実質収支ベースでの収支尻は、ほぼ黒字基調で推移してきたので、財政調整基金の積み立てがかなり大きい。基金残高は財政調整期金、減債基金、特定目的金を併せて、2013年度で279億円になる。この基金の活用方法が重要である。

4,合併特例債も含む建設地方債の発行額はよくコントロールされ、実質公債費比率(3年度平均)は2012年度で9.8と全国の中都市の平均7.7よりやや高いが許容の範囲である。

5,経常収支比率は、90程度(臨時財政対策債を含む)で推移してきた。これはほぼ全国の市町村の平均値に収まっている。2012年度で市町村平均値は90.7。ただし、人件費比率は下がったが、扶助費と操出金の比率が上昇し、財政硬直化の要因が代わってきている。

6,注意するべき点は、交付税の合併算定替えによって、標準財政規模が膨らんでいるため、経常収支比率も実質公債費比率も、かなり実態よりも低く表示されていることである。今後のこれら指標の動きをきちんと観察する必要がある。

 

<これからの課題 支所の位置づけ明確化と集落の住民活動支援>

まず注目すべきは、先ほどの総務省による合併団体へのヒアリングによる実態調査と、2013年ごろから明確になった合併算定替えの見直しに共通する問題意識は、支所・出張所の機能の見直しである。基本は、支所を廃止して、本庁に役場機能を集約することを前提とした従来の一本算定の考え方を転換したところにある。これは、標準団体の面積要件などの見直しにも通じている。つまり広大な領域を持つ新団体について、支所機能をより積極的に見直し、支所機能の拡充などを容認する方向が明確になったと言える。

 その中でも、地域活性化の柱の一つとして、総務省サイドからは「集落支援員」(自治連合会や区長会役員など地元人材の活用)や「地域おこし協力隊」(大都市部からの若者を中心とした移住者の派遣)の配置の事例が取り上げられているのが重要である。

 従来の国による地域活性化策は、事業への補助金、農業や産業への補助金、さらには、地域施設の建設補助など補助金を中心に、特にハード面からのてこ入れだったと言える。それが人材の配置や活用という人への投資にシフトしてきているのである。財源的には特別地方交付税措置として行う。

 これらの施策を活用することも考えられるが、津市の場合、その前提として、総合支所の機能の見直しが改めて求められる。特に、先の「合併後の行政推進機構研究会」報告書で指摘されている、「決裁権限の明確化」などを含む、総合支所の事務と権限の明確化や、専門職の配置、増員が求められよう。さらに一部予算の編成権の移譲も検討される必要がある。

 中長期的に見て、最大の課題は、人口減少社会に向けてどのようなまちづくりを考えるかという問題である。そのためには、子ども子育て施策の展開、女性も男性もが働きやすい環境の整備、起業や中間的就労を含む働く場の確保、農林漁業の六次産業化、高齢者の生活の安定、移住定住施策の展開、健康寿命の延伸など保健医療福祉施策の展開、などの施策の組み合わせが求められる。その際のキーは、集落単位からの活性化であり、それぞれの集落や地区での可能性やニーズの把握が重要だということがコンセンサスになりつつある。

 これから求められるのは、集落から小学校区、中学校区、地域包括支援センター、総合支所の区域といった重層的な地域政策の構築である。そしてそこにおける公共施設の配置、統廃合、維持補修・整備プランの策定(公共施設等総合管理計画)なども、特に財政面では重要である。

 いずれにしても、行政と住民(地域組織、NPO、企業など)との「協働」の仕組みの構築を通じて、拡大する公共領域の課題を、限られた資源を活用して解決していくことが求められている。

 

 

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