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地域を知るーー
  「本物の」自然ガイドブック

(初出:「自治日報」05年4月8日号)
 

 市町村合併がこの間に急速に進んでいる。特に、昨年(2004年)の「三位一体改革崩れ」で、地方一般財源が前年度より12%も減少したことが、あごにヒットしたような感じがある。普通地方交付税の大幅なダウンに見舞われた町村を中心に、浮き足立ったのではないかと思う。0531日の総務省の発表だと、20063月末に1820程度までに減少する見込みとなっている。このために、ずいぶん無理のある合併話が急遽まとまるという問題含みが多いように見える。今後これら難題を抱えての新自治体が、順調に「まちづくり」を進めていくためには、多くの努力が求められる。

一方で、地方自治法による地域自治区や合併特例法による地域自治区あるいは合併特例区を設ける新自治体も既に60程度にのぼる。

 いずれにしても、新自治体の場合の旧町村地域などや、合併しない市町村の小学校区などの地域が、個性をもって活性化することが不可欠であることは間違いがない。地域に活力があってこそ、新自治体や合併しない町村の活力も生まれるのだからである。支所を性急に廃止し、職員数の削減など合併の効果を拙速に刈り取ろうとすることはやめたほうが良い。それは地域の衰退を早め、かえって市全体の活力を喪失することに拍車をかけることにしかならない。むしろ、地域担当職員の手厚い配置によって、地域住民の自己統治能力を引き出し、支えていくことが当面の課題なのである。

 ところで地域を活性化するためには、まずその「地域を知る」ということから始めることが大事だ。地域を知るということは、その自然を知ることだ。また人々の生活と生産、労働、そして流通についての歴史を知ることだ。

たとえば自然は豊かだ、住みやすいまちだ、という言葉が、新市建設計画にうたわれている場合が多い。しかし、本当にその自然は豊かなのだろうか。いったい、その地域には何種類の植物が育っているのか。どういうきのこは、どこにでるか。どの渓流にサンショウウオが生息しているか。一年を通して何種類の渡り鳥がこの地域を通過していくか。そして、これらの生き物達がどうやって子育てをし、人々はどのように係わってきただろうか。数は減っているか。残念ながら山持ちの人でも、ここ20年も山に入ったことがなく、隣家との境界がわからないという場合も少なくないのが現状ではないか。

京都府の井手町は、人口8700人程度の町だが、自らの町の文化と自然を次の世代に伝えていこうと1999年には「井手町環境保護条例」と「ゲンジボタル保護条例」を策定している。そして翌年に基礎調査を行い、2001年度に「井手町自然ガイドブック」を編纂した。この調査実施体制は、矢野悟道神戸女学院大学名誉教授(理学博士、植物)を統括者にして西脇市動植物生態調査研究グループ(魚類、鳥類)や小中学校の理科担当の教員など昆虫や菌類、植物、動物の専門家によって行われた。編集委員会事務局にはコンサルタントが入っている。

この本格的なガイドブックはA5版で250頁、大きな字と写真と図版で構成されて見やすい。たとえば最近、ビオトープなどの主役となっているトンボ類については、井手町で見られる主なトンボとして52種類が挙げられ、そのうちシオカラトンボ(ムギワラトンボ)やアキアカネなど8種類が大判の写真で紹介されている。鳥類では主な種として99種類。「井手町では西部に広がる平地の農耕地やその周辺の里山、東部の山間地域に拓かれた農耕地付近など里山環境が広く存在しています。人による干渉が大きい里地では多様な環境が作り出され、井手町では最も豊富な鳥類相が見られるところです。」など地域に親しみやすい解説がある。

こういった「本物の」自然ガイドブックを通して、子ども達も大人も、わが町の自然をより具体的に知り、それを保全したり、復元したりする動因となることが期待される。なお、同町のホームページに、このガイドブックを利用した町の広報誌が掲載されている。合併後もこのような、地域ごとのホームページを維持し、それを地域ごとのまちづくりの情報発信と交流の拠点とすることも求められる。

                               
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