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自治体・公共サービス分野の規制改革と公務労働

2005年7月1日
於、東京虎ノ門、ニッショーホール
奈良女子大学名誉教授  澤井 勝


 このレジュメは、自治労中央本部の集会における講演のために準備したものに、若干の手を加えたものです。

1、「経済財政諮問会議」と「2005骨太方針」

   2005年6月13日、第15回会議に、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005(原案)」が提出され、6月21日に閣議決定された。

   「小さな政府」を始めて掲げる。

   「市場化テストの本格的導入による官業の徹底的な民間開放」

   「予算制度改革」

   「国・地方の徹底した行政改革」

   「公務員の総人件費改革」。国と地方とも公務員数の純減」。地方公務員はこの間の実績値4.6%減を次の5年間、継続する。人事院勧告は、5%切り下げと、地域手当の勧告の見通し。なお、3月29日総務省「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について」(新地方行革指針)。

2、「規制改革」と「市場原理導入」の流れ

 (1)従来からの民間委託、公設民営化、アウトソーシング、など民営化の流れ。国鉄、電電公社、専売公社の民営化から。

 (2)PFI(Private Finance Initiative)法の制定。

     1999年7月に「民間資金の活用による公共施設等整備等の促進に関する法律」が制定され、2000年3月にその実現方法を示す「基本方針」を定めた。

羽島市市民プール(平成13年)、岐阜大学総合研究棟(平成14年)、可児市学校給食センター(平成16年)

     2005年5月現在、国25件、自治体146件、特殊法人27件、計197件

 (3)指定管理者制度の導入。2003年7月地方自治法第244条の2第3項改正、4−7項追加等。2006年10月に全面施行。中心は株式会社などによる「公の施設」管理に道を開くこと。一方で、NPOなど市民組織による施設管理への参加の可能性が開ける。

「公の施設」の政策目標の明確化と、ミッションの明示。それを事業者選択の基準とするための、「総合評価一般競争入札」の考え方の重要性。「公の施設管理」ではない「事業委託契約」についても、この総合入札制度の活用がなおキーポイント。

 (4)市場化テストの導入。規制改革・民間開放推進会議(議長:宮内義彦オリックス会長)の第一次答申(2004年12月24日)。モデル事業は、2005年度に3分野8事業。2006年度に地方税の徴収などで本格施行。

     これに関連して、貸借対照表(BS)と行政コスト計算書(損益計算書)の策定などによる公会計の改革が進む。イコール・フッティングの基礎をつくるには、コスト計算を共通の土台で行う必要がある。すなわちコスト積算の共通性。

    地方債の許可制度から協議制への移行による「格付け」のための基礎でもある。

 (5)独立行政法人化とエージェンシー。2001年に導入。国立博物館、美術館など。

    2004年4月から国立大学に。

 (6)公立病院の民間への移譲。福岡県立5病院の民間移譲(2004年)など。それに先立って北九州市立病院など。

 (7)公営交通の民間への移譲。札幌市営バスなどの民間への移譲。

3、背景として

 (1)財政構造改革 1973年オイルショックからスタグフレーションの時代をへて、「福祉国家の見直しから福祉社会へ」

  1、アングロアメリカンのタイプ、市場原理主義をかかげて。

    NPM(New Public Management) 1980年代からサッチャーの改革の中で徐々に整理されてきたもの。

2、ヨーロッパ大陸のタイプ、社民的な社会連帯の流れ、ワークシェアリングとコーポラティズム

  3、日本の場合。財務省と経済産業省主導で。経団連など経済界の強い圧力。

経済財政諮問会議と規制改革会議。

 (2)官民の協働(行政、事業者、NPOなど市民セクター)とガバナンス論。

   1、各地方自治体の総合計画や福祉計画における「パートナーシップ」

   2、自己決定を求める市民の誕生。NPOなどの市民事業。

   3、ブレア改革においては、PFIをPPP(Public Private Partnership)に展開している。

4、イギリスの経験

   1978年、マーガレット・サッチャー首相に。
      レイト・キャッピング、CCT(後述)、人頭税(Pall Tax)

   1990年、メージャー首相。この年に、コミュニティ・ケア改革。

  1997年6月選挙でブレア労働党政権。基本的には、サッチャー・ブレア改革を継承しながら、「サービス・ファースト」などによるニューレーバーとしての修正。

 (1)サッチャーとCCT(Compulsory Competitive Tendering)、すなわち強制的競争入札制度、その前提としての市場化テスト。

1980年に地方自治体に導入された。「経費の節減にはつながったものの、サービスの質の低下、労働環境の悪化、地方自治権の侵害などの批判から、労働党のブレア政権によって廃止された。」

 (2)エージェンシー化 1988年の車検局を初めとして1997年までに12のエージェンシーが設立され、国家公務員の中のエージェンシー職員は71%、52万8000人中37万5000人。

(3)1998年の白書、「住民重視の近代的な地方政府(Modern Local Government in touch with the People)」でCCTを廃止提案を行い、1999年の改正地方自治法(Local Government Act)によって廃止するとともに、新たに「ベスト・バリュー」という制度が導入された。

「ベストバリュー」とは、投下した資本に対して、もっとも高い価値の行政サービスを提供するために、計画策定、業績評価、監査、是正などを総合的に行うというシステムである。特に、サッチャー改革が、公共サービスの水準低下と荒廃、志気の低下を招いたとの反省から、「公的機関による評価システム」によって、自治体の責任を明確にし、是正措置や奨励策によるサービス水準確保をを重視する。

また、「最も経済的で効率的、効果的な手段を用いて、サービスのコストと品質の双方に配慮した基準に従ってサービスの供給に勤めること」(ぎょうせい『イギリスの政治行政システム』竹下譲、横田光雄、稲沢克祐、松井真理子。NTT出版『市場化テスト』本間正明等、169頁)。

これはPDCAサイクル(プラン・ドウー・チェック・アクション)と同じ発想による、行政サービスの品質管理の仕組みである。

なお、基礎にあるのはサッチャー時代、1985年の公務員制度改革白書、「ネクストステップ」に盛り込まれた、バリュー・フォー・マネー(Value For Money)VFMの考え方である。「一定の支払いに対して、もっとも高い価値のサービスを提供する」、つまりお値打ちもの、お買い得、という考え方で、92年発足のPFI事業やベストバリュー(Best Value)もこの考え方を土台にする。

5、公共サービスの新しい三つの担い手と協働。

市場原理の導入による所得価格差の拡大、非正規雇用者の増大、家族の変容にこたえて新しい公共サービスをつくる。

(1)行政

(2)企業

(3)市民組織
   ・コミュニティ、すなわち自治会など地域住民組織
   ・アソシエーション、すなわちNPO型の組織

6、「協働の原則」の明確化とコントラクト(契約)
    (奈良市ボランティア・NPOとの協同検討委員会案、2005年7月)

   1、対等  2、相互理解  3、自主性の尊重  4、自立化の推進――依存や癒着関係への警戒  5、目的の共有  6、公開  7、共に変わること  8、期限付き

7、競争にさらされる「公務員の担う労働」

NPOなどと競争しつつ、市民の評価に耐えられる仕事と働きの実現が求められる。「大変なことをようやってはる。」「ほんまにお世話になってます。」「親身になって相談に乗ってくれはる。」

8、政策評価と事務事業評価の意味。枚方市の「まちづくり指標」の例。

  政策評価の領域が、「新しい公務労働」の領域として、民間の評価機関との連携のもとに確立されるべきだ。

9、いわゆる「準市場」の特質と可能性。

   市場原理を活用しつつ公的規制によって公共サービスの水準の確保ないし引き上げを補償するための制度的枠組み。医療保険の世界や介護保険などがよい例である。

10、市場化と民主主義との相互関係は?

   「経営効率化」という「企業経営手法」の導入(NPM)は、首長のリーダーシップを重視することで改革のスピードアップを図る。このことが、公平性や参加、討議民主主義といった原理としばしば抵触することとなる。この二つの原理(効率性と民主主義)の両立を図り、バランスをとることが重要だ。

11、市民的公共性(新しい公共)の確立と協働を進めることにおける労働組合の役割。

(1)労働組合の特質。
   家族の変化と格差拡大、地球環境問題の深刻化など市民生活の変化に立ち後れる行政の活性化のために。

(2)自治研運動の展開に向けて。
  ・職場自治研、私たちの仕事はなんのために。
  ・地域自治研
  ・これらを通じて「私たちの仕事はどういう仕事か」を明示する。

(3)非正規労働者との連帯。

(4)地域住民の生活課題ときり結ぶ。

(5)国際支援の活動や、地球環境問題への取り組みなど新しい社会運動の担い手に

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