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分権改革時代の議員報酬

2010年12月10日
『自治日報』コラム自治
    奈良女子大学名誉教授 澤井 勝


 奈良県生駒市で1124日に、特別職報酬等審議会が市長宛の答申を行った。公募市民二人を含む委員7人の審議会が10月初旬からの40日間で5回の審議を行って答申をまとめたものだ。結論は市長、副市長の給料は10%、議員報酬は12%の削減である。私もこの答申の議論に参加したので、審議会の議論についてかいつまんで要点を紹介しておきたい(答申や会議録等は生駒市ホームページに掲載)。

 まず地方議会議員の報酬について、地方自治法第2031項で「報酬を支給しなければならない」とされている。この報酬については、具体的な規定は自治法上はない。そのため、他の監査委員などの非常勤の職員と同様、その勤務日数に応じて支給すればよいとの考え方もあり、会議日数等に応じた換算方式を採用している福島県矢祭町の方式もあり、それを修正した会津若松市議会方式や全国町村議会議長会方式もある。

 しかし、生駒市のように大阪大都市圏の人口12万都市の議会の場合、兼職を前提とした議員のあり方をそのまま踏襲する訳にはいかない。自治法203条自体が戦前の名誉職制度の考え方を引きずっているとも言える。そもそも議員活動は会議や委員会への出席だけではないから、会議日数等で測定できる議員活動はそのミニマムと考えたい。事実、生駒市の場合、「生駒市政治倫理条例に基づく資産等報告書」によれば、24名の議員のうちほぼ3分の2の議員が議員報酬や手当のみで生活し活動をしている現状がある。

 ところで、当市の前回の報酬改定時期である1996年からの社会経済情勢の変化で、最も大きなものは2000年の「地方分権一括法」による「国の機関委任事務制度」の廃止である。これによって国と都道府県、市区町村は対等・平等な関係に立っている。法律の解釈権も市区町村、都道府県にも付与されている。言い換えれば、2000年以降、地方議会の役割はそれ以前に比較して、段違いに重く、大きくなっている。たとえば従来は政令や省令で規律していた基準等が条例事項になっている。この方向はなお強くなると考えなければならない。したがって、現在及び将来の地方議員は、フルタイムで調査研究を行い、政策立案の勉強会を開き、事業執行を監視することや市民との協働に汗をかくことが求められる。

 もちろん、兼業を持つ議員やボランタリーな議員の活動は多様な市民の議会参加という観点からも尊重されるべきだ。同時に、サラリーマンが職を辞して議会に参入することを可能にする程度の収入が保障されるべきである。これによって機会の平等が保障される。

 一方で、この間に民間給与実態調査(国税庁)における平均の民間給与水準は11.9%減少してきている。また集中改革プランなどの行財政改革によって、職員数の大幅減とともに、公務員の給与水準も大きく切り下げられている。生駒市の管理職平均の給与等も同じ時期に、たまたま同率の11.9%削減となっている。このような市民や働く者の「痛み」を議会もまた共有することが、地方政治への信頼を醸成する要因の一つと考える。

 したがって、分権改革以降の地方議員の報酬は、「生活給的要素と職務への対価」という性格を併せもつものと考えるのが妥当である。具体的な措置としては、このような「報酬水準の確保」と言うことと、「民間給与水準の大幅な引き下げ」という市民の痛みを共有することとを両立させなければならない。このような議論を経て、面積やライスパイレス指数、財政力などの要素を加味した類似団体との比較も勘案して前記答申としたものだ。

 ところで、報酬引き下げや定数削減に向けた市民の動きの底には、抜きがたい議会や行政に対する批判があることは事実である。危機に立つ二元代表制の再構築のためには、議会活動を率直に市民に向けて開き合意を作っていくことが求められる。生駒市でも1119日には議員報酬と定数削減の条例制定の直接請求が成立し、本請求が行われた。これに対応して生駒市議会も11月末からの10日間で12の全小学校区で報酬と定数について市民との対話集会を開く。これは議会活動の非常に大きな転換である。議論途中の議会基本条例の内容の前倒しだ。答申の付言では、期待される議会活動とはなにか、それを誰がどう評価するか、などの課題を議会としてさらに追求していくことを希望するとしているが、既にその一歩が始まっている。

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