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わがまちの新高齢者保健福祉計画を

初出:自治日報「コラム自治」 08年3月21号
澤井 勝

 この4月から後期高齢者医療制度が始まる。この制度については、高齢者の負担増加という観点から議論される傾向が強い。特にこれまでは子どもたちの世帯に被扶養家族として入っていた高齢者も、一人一人が保険証をもらい、同時に年金からの天引きで保険料の支払い者になる。また医療費の自己負担金が現役世代と同じ所得の人は3割になることなど、高齢者にも応分の負担を求める方向を強めるという批判が強い。このため、昨年末の与党合意で被扶養高齢者からの保険料徴収は4月からではなく、半年先に伸ばされた。

 ところで、厚労省の元老健局長で「介護保険の哲人」と言われた堤修三大阪大学大学院教授は昨年末、全国保険医団体連合会の交流集会で、この制度は基本的には廃止すべきだと述べている。「傷病リスクの高い後期高齢者と6574歳の障害者で保険集団を構成するのは、リスクの分散という保険制度の根本に反する」、「広域連合は被保険者の意思が反映されない」。「保険料はすぐに天井に突き当たり、給付水準が抑制される」こととなり、医療水準がレベルダウンするなど、「姨捨て山化する」と(国保新聞など)。

 私たちも今回の制度は廃止し、後期高齢者医療の事業を市町村保険者に戻すとともに、介護保険よりも強力で透明な府県と国による再保険制度を再構築すべきだと思う。その理由は以上に加えて、次のような重大な欠陥を持っているからである。

第一に、広域連合を全国一律に強制的に法律でつくったことは、自治権の重大な侵害だからである。その法律とは老人保健法の題名を変えた「高齢者の医療の確保に関する法律」の第48条であるが、広域連合は特別地方公共団体という自治体である。自治団体を一片の法律によって全都道府県につくることを義務づけることは、制度の趣旨を大きく逸脱し認められない。ここにはこの制度設計者の強い集権的な考え方が露呈している。分権改革に対する強力なバックラッシュである。その結果、後期高齢者医療などに対する受け身な職員をつくり、省令や通達待ちの以前のような市町村の姿勢を助長することになっている。

第二の欠陥は、保険料の徴収(これも年金からの特別徴収が主になる)などを除いて、老人医療の現場が市町村から失われることで、老人医療費を引き下げようとする、市町村としてのモチベーションが低下すると言う欠陥である。老人医療費の引き下げが市町村での地域医療活動の徹底を通じた住民の健康水準の向上によって実現できることは、現在は夕張市の診療所長である村上智彦医師が瀬棚町で示している。

また諏訪中央病院の元院長、鎌田実医師は、茅野市について「短命地域だったがいまや有数の長寿地域で医療費も安い。これは医療関係者や保健師、栄養士などが手をたずさえて、なるべく薬を使わず、一人一人の個性に合わせて生活習慣を良い方向に変えてもらおうと工夫してきた結果だ。(特定検診など)数字とノルマで追い立てても今日のような状況は生まれなかっただろう」、と言う(210日、朝日)。このような市町村による地域保健医療施策を通じた医療費抑制の王道をつぶしてしまうおそれが強い。

ではどうするか。まず広域連合の連合長のリーダーシップで、住民とともに保健福祉施策を進めることが重要だ。そのためにも、広域連合議会の活性化が求められる。ところで、市町村にとっては、08年度は第4次の介護保険事業計画・老人保健福祉計画の策定年度である。ところが老人保健計画は法律の上では消えてしまった。国民に命令するばかりの「健康ファッショ」のような「健康増進法」(老人保健法の保健事業はこちらに移行している)には、自治的な保健計画は不要なのだろう。しかし、だからこそ、市町村が自らの長期的な地域づくりの中心施策として、住民の健康な生活を実現し、介護を必要とする住民の自立生活を支えていく、新しい自律的な「介護保険・老人保健福祉計画」を定め推進したい。専門家の知恵を集め、地域包括支援センターや在宅介護支援センターなどのネットワークを再構成することが肝要だ。それが長期的に医療費の抑制につながり、財政負担を軽減する。加えて高齢者と家族の幸せにもなる。忙がば回れ、は真実である。

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