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地域福祉計画と生活保護

      奈良女子大学名誉教授   澤井 勝 
   (初出:自治日報『コラム自治』08829日号)
    

 

 地域福祉計画の策定がかなりの市区町村ですすんでいる。2000年の改正社会福祉法第一〇七条で規定されたものだ。08年の3月末で市と区のうち57%の461団体、町村では24%の237団体が策定済みとなっている(厚労省調べ)。これに今年度中に策定が終わる予定なのが80市区、84町村の見込みなので、年度中に市区の7割、町村の3分の1近くが策定済みということになる。残りの市区町村でも、住民が担う地域福祉を進めるために、なるべく早くこの計画を策定、推進することが望ましい。

 この地域福祉計画が画期的なところは、「協働の時代」を具体的に福祉の現場で作っていくところにある。改正社会福祉法では、その第四条が(地域福祉の推進)と題され、福祉施策の歴史の中で初めて「地域住民」を、福祉事業者やボランティア団体などと並んで、「福祉サービスの利用者」を支援すべき者として、積極的に位置づけた。つまり「地域住民」は行政の協働の相手として位置づけられたのである。

 大阪府堺市は今年度、第2次地域福祉計画・第4次市社協地域福祉総合推進計画の策定作業に入ったが、その二つの部会のうち、一つは「新しい協働部会」である。また第1期の計画は2003年から04年の2年間で作成されたが、三つの部会のうち一つが「協働部会」で、ここを震源地にして、縦割りを超えて役所の地域福祉に関連すると思われる各課への「協働の視点での事業の見直し」を仕掛けていったことがその後の議論に役立っている。

 堺市の第1期計画の成果としては、地域住民の組織的な足がかりとして「校区ボランティアビューロー」がほぼ市内の全校区で立ち上がったところにある。これは相談活動の拠点でもある。これからはさらに専門家を含む3層制または4層制の地域福祉ネットワークを形成する取り組みを進め、各行政区への権限と予算の分権化を展望することになる。

 また高齢者の医療費が最も低い長野県で、その中で最も成績のよい茅野市の市長を3期務められ、去年、公約どおり退任された矢崎和弘前市長のお話を聞く機会があった。その中でも、地域福祉計画(茅野市ビーナスプラン)などを、協働の実践として策定し、推進している事例をうかがったが、その中心的なコンセプトは、「現場の実践者に議論してもらい、その推進も現場の実践者=市民にまかせる」という考え方である。これができなければ協働などといわないほうがよい、とも言う。

 このように地域福祉計画は各地で「協働の実験場」としてかなりの成果を挙げてきている。住民が主体として活発に動けるような仕組みが立ち上がりつつある。

 ところで、これまでの地域福祉計画には生活保護受給者を地域で支援し、支えるという視点はまずない。それは生活保護行政が国に責任がある行政であり、専門的な職能に係わる分野だ、という点からカッコに入れられてきたからである。まずは住民主体の地域福祉システムを、という観点が先にたったからである(これは正しい)。しかし、今年7月に発表された2007年の就業構造基本調査では雇用者の35%が非正規労働者であり、前回調査より3%以上増えている。この状況が続くとすれば、地域社会で、生活保護受給者もその予備軍も増えていくことが残念ながら予想される。ということは、生活保護受給者の地域社会へのインクルージョン(統合)もまた地域福祉計画の重要な課題となるはずだ。生活保護受給者の多くは高齢者であり、障害者であり、母子家庭である。そして、二重に地域社会から孤立している。高齢や障害、一人親というハンデと、生活保護受給者というハンデと。個人情報を守りながら、彼らの自立生活を地域が支える計画でありたい。

大阪市西成区役所の地域福祉アクションプランでは、「生活保護部会」を設置して議論を手さぐりだが進めている(同区のホームページ参照)。西成区では生活保護率が05年で159パーミルと全国の14倍でなお増加しているから、生活保護受給者を抜きにして地域福祉は進まない。そこで自然にアクションプランに組み込んでいるのだが、この議論を生かしていきたい。主に高齢受給者のボランタリーな社会参加を進めることが当面の課題。いずれにしても、民生委員と生活保護のケースワーカーとの協力と支援の仕組みをつくることが当面のところ最大のポイントのようだ。

 

 

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