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地域福祉のあり方を学ぶ

                              

     2007102日:13時〜16時 

奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

                   於:(財)電源地域振興センター(浜松町)                                

 目次 

地域福祉のあり方を学ぶ(1)

 地域福祉と自治体行政――分権改革と福祉行政 (0)2000年分権一括法による分権改革 (1)戦後改革と市町村福祉行政(2)1986年の国庫補助負担金の補助率引き下げと団体事務化 (3)三審議会答申と90年福祉8法改正 (4)ゴールドプランから新ゴールドプラン、ゴールドプラン21 (5)エンゼルプランと市町村 (6)障害者プランと市町村 (7)、介護保険と市町村 (8)社会福祉法と市町村、市町村地域福祉計画の策定、支援費支給制度の実施 (9)これからの市町村

地域福祉のあり方を学ぶ(2)

 自治体における地域福祉政策と地域福祉計画 1、地域福祉計画は福祉でまちづくり 2、「まちづくり」は地域社会の人のつながりをつくること。(付ー1)介護保険制度改革の主な論点(20056月改正法)。(付−2)公の施設としての隣保館。(付−3)安心と安定の福祉サービスの仕組みづくり----コミュニティの再生とCSW制度の確立を。まとめ。

 

 

 

地域福祉のあり方を学ぶ(1)

 地域福祉と自治体行政――分権改革と福祉行政

 

(0)2000年分権一括法による分権改革

            

@ 分権改革の中心は、法令(この場合は法律と政令)の解釈権が市町村と都道府県に付与されたことである。具体的には、主査クラスが法令をどう運用するか判断し、起案した施策を課長のところで政策化し、部長がOKを出す決断をすることである。言い換えれば、法令を地域事情に合わせて解釈、運用する責任が自治体にあるということになる。

 A 従来の国の機関委任事務制度は廃止され、「自治体の事務」は自治事務と法定受託事務とに位置づけられた。ここで注意しなければならないのは、法定受託事務も「自治体の事務」だということである。245条の9(処理基準)に従うことは求められるが、法定受託事務であっても、条例で規律することは可能である(松本英正『要説地方自治法』など)。

 B したがって、国の地方公共団体に対する関与のあり方は、地方自治法第245条(関与の意義)の規律するところで、生活保護法、児童福祉法、介護保険法などでも同様である。

   「自治法245条(関与の意義) 本章において「普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与」とは、地方公共団体の事務の処理に関し、国の行政機関又は都道府県の機関が行う次に掲げる行為をいう。

   1,地方公共団体に対する次に掲げる行為

    イ 助言又は勧告

    ロ 資料の提出の要求

     ハ 是正の要求

     ニ 同意

     ホ 許可、認可又は承認

     ヘ 指示

     ト 代執行 

    2,普通地方公共団体との協議

    3,前2号に掲げるものの他、個別的に関わる行為」

  具体的には、

  第245条の4(技術的な助言及び勧告並びに資料提出の要求)

  第245条の5および6 自治事務に関して(是正の要求)と(是正の勧告)

  第245条の7および8 法定受託事務関して(是正の指示)、(代執行)

  が定められている。           

 

C     見たように、国および都道府県の関与には「指導」という類型はなく、国と地方公共団体、都道府県と市町村は、対等な関係にある。

D     しかし現実にはなお「指導」が横行している。「本庁の指導を待って」、「国の適切な指導を求めている」。これらはいずれも地方自治法違反の言辞である。

E     さらに、「通達」はその99%が「技術的助言」に過ぎない。多くの「通達による命令」は失効しているのである。

F     新しい法律が制定されたとき、その執行を、「政省令を待って」という言い方が残るが、これも不適切であり、これら政省令の定めを待つことなく、自律的に解釈し市民に説明すべきである。特に一大臣の決める省令が自治体を縛ることはあり得ないのであるから、あくまで「助言」的なものである。

G     特に厚生労働省に多い、「課長通知」「部長通知」などは参考意見として扱うのが適切である。

H     もちろん、お金にからんでは注意が必要。またこれら通知の類も、国の官僚が専門家の意見と各地の先進例を踏まえて書いている場合が多いから、大いに尊重し、参考にすることは結構である。ただし、変な通知や通達が最近多いから十分に注意が必要である。

 

(1)戦後改革と市町村福祉行政

 

わが国の福祉行政、特に地域福祉にかかる市町村は、1980年代までなお地域の福祉行政の主体として明確になっていなかった。それは、福祉行政そのものが都道府県知事や市町村長に対する「国の機関委任事務」がその大部分を占めていたため、国の事務という観念が強く、国の出先として事務を処理するという域をなかなか出られなかったからである。

 また、機関委任事務ではない福祉行政の多くが、地方財政法16条に言う「奨励的補助金」によって誘導されて形成されるという集権的な性格をもっていた。つまり、集権制のもうひとつの柱である国庫補助事業が大きな割合を占めていた。例えば、老人福祉の分野での「老人クラブ」は国庫の3分の1の補助を得て、全ての市町村で実施される老人福祉施策の主な事業であった。また、「家庭奉仕員派遣事業」、現在のホームヘルプ事業も奨励的補助事業であり、それに伴う補助金交付要綱の世界におかれていた。

  一方で、1980年代から地域福祉をめぐる議論が活発になり、それが1980年代福祉改革という時代的な認識をも生んだ。この基礎には、1970年代の地域コミュニティ論と福祉コミュニティ形成論(複数の福祉活動集団の形成)などの実践現場からの問題提起があり、また制度的には社会福祉協議会の法人化などの流れがあったといえる。

 

(2)1986年の国庫補助負担金の補助率引き下げと団体事務化

80年代の福祉改革は、皮肉なことに、1986年の国庫補助金の補助率の引き下げという財政面からのインパクトを受けた側面が大きい。すなわち「機関委任事務の団体事務化」によって、児童福祉法と老人福祉法などの中心的な事務事業が、自治事務ともいえる「団体事務」として位置付けられることとなったことである。機関委任事務から団体事務に転換するということは、主務大臣の指揮監督権が、当然には市町村ないし市町村長に及ばないことを意味する。従って、「政令に定めるところにより」という規定によって、市町村の団体事務を拘束しようとする規定が多用されることともなった。

例えば、児童福祉法241項「市町村(長)は、保護者の労働または疾病その他の政令で定める基準に従い条例で定める事由により、その監護すべき乳児、幼児の保育にかけるところがある場合において、保護者からの申し込みがあったときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない。」なお「市町村(長)」とあるのは、長への機関委任事務としての規定である。この場合の「長」は、国の機関であり、国の指揮監督を受けるものとして考えられていた。

しかし、このような制度上の転換は、国である厚生省の側にも、市町村の側にも、ましてや中間的な位置にある都道府県にも、十分にその意味が理解されないまま、数々の通達と補助金とその要綱のもとでなお集権的なシステムとして機能してきたといえる。(なおこの86年に社会福祉士法、介護福祉士法が成立している)。

とはいえ、この「団体事務化」によって市町村の、社会福祉行政における役割を見直し、その地域における福祉の主体的・自治的な展開に期待しようとする流れが、明確になってきたということはできる。

 

(3)三審議会答申と90年福祉8法改正

19861月には、「福祉関係三審議会合同企画分科会」が発足した。三審議会とは、中央社会福祉審議会、中央児童福祉審議会、身体障害者福祉審議会で、この各審議会に企画分科会を設けた上で、その合同審議を行うこととされた。これは高齢社会の到来を見通しながら、大きな社会構造の変化に対応しうる福祉制度を総点検するという位置づけで行われた。この合同分科会は19893月に概ね次のような提言を行った。

人生80年時代を迎えて、長寿社会にふさわしい福祉社会を実現するためには、サービスの一層の質的、量的拡充を図るとともに、ノーマライゼイションの理念を浸透させ、同時に福祉サービスを選別主義から普遍主義的な利用を可能にする制度的な保障を確立すること、サービス利用者の選択の幅を拡大することが求められる。そのための社会的基盤の整備を急ぐべきである。特に、社会福祉の運営と実施にかかわる市町村の役割を重視することを提言している。

この市町村の役割を重視するように求めた提言は、社会福祉の領域における、地方分権化の方向を決定付けるような役割を担ったと評価されている(松村洋子・大森彌『福祉社会の政策課題』放送大学教育振興会、2002323頁)。

 19906月には、いわゆる社会福祉8法の改正が行われ、80年代の福祉改革のひとつの仕上げが行われたといえる。この福祉8法とは、老人福祉法、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法、児童福祉法、母子および寡婦福祉法、社会福祉事業法、老人保健法、そして社会福祉・医療事業団法である。

 この制度改正のポイントは次の点にある。

 

(ア)在宅福祉サービスの積極的推進

 ホームヘルパー、ショートステイ、デイサービスを老人福祉法、児童福祉法精神薄弱者福祉法、身体障害者福祉法など福祉各法において法定し、従来補助金の補助要綱などで裁量的にしか位置づけられていなかった各サービスの位置づけを明確にした。例えば、以下のとおりである。

身体障害者福祉法18

「市町村は、身体障害者につき必要に応じ、以下の措置をとることができる。

一 居宅において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活を営むのに必要な便宜であって厚生省令で定めるものを必要とする者に対しては、政令で定める基準に従い、当該便宜を供与し、又は当該市町村以外の者に当該便宜の供与を委託すること。

二、身体障害者福祉センターその他の厚生省令で定める施設における手芸、工作その他の創作的活動、機能訓練、介護方法の指導その他の厚生省令で定める便宜を必要とする者に対しては、政令で定める基準に従い、当該市町村が設置する身体障害者福祉センター等に通わせ、当該便宜を供与し、又は当該市町村以外の者が設置する身体障害者福祉センター等に通わせ、当該便宜を供与することを委託すること。

三 居宅においてその介護を行う者の疾病その他の理由により、身体障害者療護施設その他の厚生省令で定める施設への短期入所を必要とする者に対しては、政令で定める基準に従い、当該市町村の設置する身体障害者療護施設等に短期間入所させ、必要な保護を行い、又は当該市町村以外の者の設置する身体障害者療護施設等に短期間入所させ、必要な保護を行うことを委託すること。」

また、日常生活用具の貸与や給付事業を法定化し、在宅福祉サービスに対する国および都道府県の補助金の規定を法で定めている。さらに、居宅の高齢者に対する専門的相談については、在宅介護支援センターの設置を法定している(老人福祉法6条の2)。

 

(イ) 社会福祉事業法改正による社会福祉事業への追加

 この改正で、第二種社会福祉事業として以下の17件の事業が追加されている。

     児童居宅介護事業・児童デイサービス事業・児童短期入所事業・母子家庭居宅介護等事業・寡婦居宅介護等事業・父子居宅介護等事業・老人居宅介護等事業・老人デイサービス事業・老人短期入所事業・老人デイサービスセンター経営事業・老人短期入所施設経営事業・身体障害者居宅介護等事業・身体障害者デイサービス事業・身体障害者短期入所事業・精神薄弱者居宅介護等事業・精神薄弱者短期入所事業・精神薄弱者地域生活援助事業

 

(ウ)在宅福祉サービスと施設福祉サービスの市町村への一元化

 この改正で、在宅福祉事業に関わる権限と、施設福祉に関わる権限は、ともに市町村に委譲されることとなった。

     老人福祉法では、特別養護老人ホーム、養護老人ホームへの入所決定者は市町村とされ、その権限が都道府県から移譲された。

     身体障害者福祉法では、身体障害者の発見、相談、医療機関紹介、公共職業安定所への紹介、身体障害者更生援護施設への入所決定、更生訓練費の支給、補装具の給付、ショートステイの利用決定、更生医療費の給付など

特に、町村への権限移譲は大きなインパクトを与えた。この権限移譲、すなわち在宅サービスを提供する権限と、施設への入所決定権の移譲は、そのサービスを提供する責任を市町村に総合的に負わせるものであった。これが、この法改正のもうひとつの柱である「老人保健福祉計画」を市町村が主体的に担う基盤となり、その後の介護保険者としての市町村を制度的に準備するものともなったのである。

 

(エ)市町村および都道府県老人保健福祉計画の策定の義務化

 高齢者に対する福祉サービスと保健サービスを、一体的に供給するために、市町村が主体となった「地方老人保健福祉計画」を義務付けることとなった(老人福祉法20条の8、老人保健法46条の18)。

 都道府県は、この市町村老人保健福祉計画の達成に資するために、広域的な観点から「都道府県老人保健福祉計画を策定する(老人福祉法20条の9、老人保健法46条の19)。

 これらの地方老人保健福祉計画は、1993年度中には全市町村、全都道府県で策定され、介護保険制度が実施された2000年には、第二次高齢者保健福祉計画が、介護保険事業計画を包括する形で策定されている。

 この「地方老人保健福祉計画」はいくつかの特色を持っている。

第一には、市町村計画が主体であって都道府県計画はその積み上げによること。

第二には、市町村計画は厚生省が示す「参酌すべき標準」を参考に、「事業の目標量」を掲げることが義務付けられたこと。例えば、7ヵ年計画とした場合、7ヵ年で達成すべき事業の目標量として、ホームヘルプ事業を(利用者数×時間数÷ヘルパー一日活動時間=○○万時間・人)という事業量で表現し、必要とされるヘルパー数(常勤換算)を、整備目標として計画に掲げる。また、要介護高齢者数の推計と、施設利用の趨勢から必要とされる特別養護老人ホームのベッド数と施設数を、整備目標量として掲げる。

第三には、この事業目標量を測定するために、それぞれの市町村における高齢者の実態調査を必須としたこと。この実態調査には、サービス利用意向調査が組み込まれ、サービスの認知度の調査をも伴う。このような住民の本格的なニーズ調査、実態調査が各市町村で行われたのである。これは、かなりの市町村でコンサルタントだのみの形式的調査に堕したようにも観測されたが、熱心な担当者のいる多くの市町村では大きな成果を上げることができ、その後の福祉施策の展開の基盤をつくったともいえる。

 

(4)、ゴールドプランから新ゴールドプラン、ゴールドプラン21

 福祉8法改正に向けた作業が進行中の198912月、政府は「高齢者保健福祉推進十ヶ年戦略を、大蔵大臣、厚生大臣、自治大臣の合意によって策定した。この「ゴールドプラン」は、1990年からの10ヵ年で、ホームヘルパーを10万人に、特別養護老人ホームのベッド数を24万床に、在宅介護支援センターを1万ヶ所などの数値目標を掲げた。

その後、地方老人保健福祉計画が策定されたため、その結果を市町村から積み上げた結果、199412月に見直しが行われた。これが「新ゴールドプラン」で、同じく三大臣合意によって策定されたものである。この新計画では、ゴールドプランと同じ2001年度末の目標値としてホームヘルパーが17万人、ショートステイが5万床から6万床に、デイサービスが1万ヶ所から1.7万ヶ所へ、老人訪問看護ステーションが5000ヶ所、特別養護老人ホームが29万床、などと引き上げられている。

 2001年にこの新ゴールドプランが終了したが、介護保険制度の開始とともに、そのサービス提供基盤の整備という性格を見直しつつ、引き続きサービス供給基礎の整備の見通しを示す必要から、200111月に「ゴールドプラン21」が策定された。「ゴールドプラン」および「新ゴールドプラン」は、毎年度の予算要求の基礎的な数値として活用され、主な目標値は達成されてその役割を果たしたといえる。「ゴールドプラン21」では、介護保険制度の導入によってサービス供給主体が多様化し、市場化の流れが形成されてきたため、目標というより経済見通しのような性格に変化している。

 数値的には、2004年までに、ホームヘルパーが35万人に、訪問看護ステーションが9900ヶ所に、デイサービスが26千ヶ所、ショートステイが96千人分、特別養護老人ホームが36万人分、グループホーム(新しく加えられた)が3200ヶ所、などと見通しが示されている。

 これらのプランによって、市町村における高齢者福祉と保健の施設整備は相当進んできている。療養型病床群、老人保健施設のような医療系統の施設整備とともに、各市町村とも、地域福祉の拠点としての施設がかなり整備され、さらに充実を図るという段階に来ているように思われる。しかし、高齢化はこれからが本番である。特に1947年生まれを先頭とする、「団塊の世代」が後期高齢者に到達する2022年以降にさらに大きな社会的負担が予想されている。そういった観点からも、次の時代に向けた市町村の機能や役割が改めて検討される必要がある。

 

(5)、エンゼルプランと市町村

 このゴールドプランと地方老人保健福祉計画とのセットでの高齢者福祉施策の展開という方法は、他の福祉領域でも引き継がれ、国の施策と都道府県、市町村の計画化というかたちをとるようになる。

 199412月には、「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラン)」が、文部省・厚生省・労働省・建設省の合意によって策定された。ゴールドプランと異なるところは、大蔵省が入っていない点であるが、少子化対策として政府が省の連携によって施策体系を曲がりなりにも示したことに意義がある。少子化対策すなわち子育て支援の基本的方向として次の柱が掲げられている。

@子育てと仕事の両立支援の推進

A家庭における子育て支援

B子育てのための住宅及び生活環境の整備

Cゆとりある教育の実現と健全育成の推進

D子育てコストの軽減

 このプランでは、最後に「地方自治体における取り組み」として、「都道府県及び市町村において、国の方針に対応し、計画的な子育て支援施策の推進を図るなど地域の特性に応じた施策を推進するための基盤整備を進める。」としている。子育て支援政策では、地方分権化の政策目標は、高齢者や障害者施策に比較して、明確ではない。それでも「地域の特性に応じた政策」を推進するという方向は示されている。

 同じく1994年の12月には、翌年度予算の編成に向けて、大蔵・厚生・自治の三大臣合意が「当面の緊急保育対策等を推進するための基本的考え方」とうかたちで行われた。緊急対策の主な内容は、以下の通りである。

@低年齢児(0〜2歳児)保育、延長保育、一時的保育の拡充等ニーズの高い保育サービスの整備を図るとともに、保育所制度の改善・見直しを含めた保育システムの多様化・弾力化を進める。

A保育所が乳児保育、相談指導等多様なニーズに対応できるよう施設・設備の改善・整備を図る。

B低年齢児の受け入れの促進及び開所時間延長の促進のため保育所の人的な充実を図ると共に乳児や第3子以上の多子世帯等の保育量の軽減を図る。

C核家族化の進行に伴い、育児の孤立感や不安感を招くことにならないよう地域子育てネットワークづくりを推進する。

 この4番目の子育て支援ネットワークは、保育所の施設とスタッフを活用した「地域子育て支援センター」というかたちで広がってきている。

 この国の「エンゼルプラン」を受けて、市町村においては「子ども福祉、育成計画」が策定されている。これはそれぞれの市町村で工夫され、それなりに市民参加、住民参加も計られているといってよい。中にはコンサルタントに依存し過ぎた計画で、実現性や市町村の能力の形成にマイナスになりかねないものあるという問題をもっている。しかし、子どもを生んで育てることを、部局の垣根を越えて支援すること、ネットワークを形成する基盤を作ることに、市町村が計画的に取り組む機会となったことも事実である。

 

(6)、障害者プランと市町村

 障害者福祉の領域では、ゴールドプランから2年、エンゼルプランから1年遅れて、199512月に、「障害者プラン〜ノーマライゼイション7ヵ年戦略〜」が、障害者対策推進本部決定として策定された。障害者対策推進本部は、関係19省庁で構成され、本部長は内閣総理大臣である。この名称は変更されるべきであるが、国の関連施策を統合するものとしてはもっとも徹底している。この障害者プランの策定によって、国レベルでの計画的な福祉施策はで揃ったことになる。

 障害者プランの基本的考え方は、次の通りである。

「国においては、ライフステージの全ての段階において全人間的復権を目指すリハビリテーションの理念と、障害者が障害のない者と同等に生活し、活動する社会を目指すノーマライゼイションの理念の下、『障害者対策に関する新長期計画』を策定し、その推進に努めているところであるが、この理念を踏まえつつ、次の7つの視点から施策の重点的推進を図る。

@地域で共に生活するために

A社会的自立を促進するために

Bバリアフリー化を促進するために

C生活の質(QOL)の向上を目指して

D安全な暮らしを確保するために

Eこころのバリアを取り除くために

F我が国ふさわしい国際協力・国際交流を」

 この障害者プランに対応して、市町村と都道府県に障害者福祉計画の策定と実施が求められることとなった。「地方公共団体への支援」として、「市町村の施策の実施に当って、障害者等の意見を適切に反映するため、市町村の自主性、主体性を尊重しつつ、市町村障害者計画の策定と障害者及び障害者福祉事業に従事するメンバーを含む市町村の障害者施策推進協議会等の設置等を推進する。」としている。

 この障害者プランによって、市町村での「障害者福祉計画」策定とそれに基づく政策の実施が、これ以後進展していくこととなった。この計画策定過程を通じて障害者福祉政策の主体としての市町村という受け皿がようやく定着する可能性が開けてきたとも言える。

 

(7)、介護保険と市町村

 介護保険制度は、それまで家族の介護と医療機関に任されていた高齢者の長期的なケアを、社会的な連帯と負担において、本来の人間的なケアの確立によって支えること、さらに要介護状態になることを予防することを目指して創設された。

 1989年に中長期的課題として介護保険制度を取り上げた介護対策検討会報告書から、新介護システムを提言した19943月の高齢社会福祉ビジョン懇談会『21世紀福祉ビジョン』を経て、19957月には社会保障制度審議会勧告『社会保障体制の再構築』に至る。そして19964月の老人保健福祉審議会の最終報告『高齢者介護保険制度の創設について』によって制度の基本設計が出来た。

 その後、市町村等との合意形成を図りながら199611月に介護保険法案が国会に上程され、1年以上の審議を経て、衆議院および参議院の修正、与党からの見直し論などの洗礼を受けながら、1997年の12月に成立した。そして2000年の41日から施行されたものである。

 この介護保険制度の特色は、第一に、その徹底した市町村を中心とした分権的性格にある。保険者を市町村とし、都道府県と国とがそのバックアップを行う。第二は、旧来の行政処分と措置の公的供給の原則を、市場の供給力に委ね、それを行政権限(許認可権、介護報酬の設定と交付金の交付、第三者評価など評価システムの構築など)を使って社会的にコントロールする、規制するという原則に転換することを目指した。いわゆる「準市場」の仕組みを、医療保険制度にみならって導入し、民間の活力を活用しようとしたこと、である。(これが現在のグッドウィルによる「コムスン経営の破綻と介護難民の発生」という基本的問題を生んだ基盤である。)

すなわちこのふたつの原則で制度設計が構成されているところに歴史的な特色をもっているのである。

 介護保険制度は、保険者を市町村としている。つまり、介護保険の経営主体は、市町村となっている。これには有力な反論があって、少なくも都道府県単位でないと保険として成立しない、もたないという有力な意見がある。これに対して市町村を保険者にしたのは、要介護高齢者とその家族を地域でもっともよく見ている、あるいは見ることが出来るのは市町村であって都道府県ではないからである。そして、現物サービスの給付の状況を具体的に把握でき、その地域の住民のニーズの変化に対応できるのが市町村だからである。このように地域状況を把握できる市町村が、第1号被保険者(65歳以上)の保険料を、具体的なニーズの測定した上で決定できる。そして介護予防政策の強力な展開によって、市町村の介護費用全体を引き下げるインセンティブが働くことも市町村単位のほうがより可能だからである。

 保険者としての市町村の権限と事務は以下の通りと定められている。

@被保険者の資格管理 

・被保険者の資格管理、・被保険者台帳の作成と管理、

   ・被保険者証の発行と更新 ・住所地特例の管理

A要介護認定・要支援認定に関すること

   ・要介護、要支援認定

   ・介護認定審査会の設置と運営

B保険給付に関する事務

   ・介護サービス計画作成を依頼する旨の届け出の受理

   ・償還払い

   ・支給限度基準額の上乗せ等

   ・現物給付の審査・支払

   ・一部負担金の減免等

   ・居宅介護福祉用具購入費・住宅改修費の支給 など

C保険福祉事業に関する事務

D市町村介護保険時魚計画の策定

E保険料の徴収

   ・第1号被保険者保険料の料率の決定

   ・普通徴収、特別徴収

   ・保険料の減免

   ・督促・滞納処分

F条例の制定

G特別会計の設置等

   ・予算・決算・収支・支出にかかわる事務

   ・国庫負担金、府県負担金、調整交付金等の申請

   ・支払基金の交付金申請

・市町村一般会計からの繰出し、繰り入れ

   ・積立金の設置、管理

H国保保険者、生活保護の事務、広報 など

 

 この中でも、介護保険事業計画の策定および第1号被保険者保険料率の決定の仕事が中心的な事務であり、また要介護認定のための一連の事務(認定申請の受理、訪問調査、介護認定審査会の設置と運営、要介護認定とその通知など)が基礎的な仕事である。

 さらに、法的には定められていないが、介護保険制度を制度本来の目的に沿って運営していくために以下のような仕事は不可欠である。

@ケマネージャーなど専門職の資質向上のための研究、研修

Aケアプランの検討と改善の指導

B地域ケア会議の設置と運営、会議の結果の政策化

C介護サービスの評価システムの構築と運用(施設および在宅)

    ・介護相談員の設置と運営 ・福祉オンブズマンの設置、・市民等による第三者評価委員会の設置と運営

D利用者の権利擁護システムの構築と改良

    ・処遇困難ケースと地域的、広域的援助システムの構築と維持

    ・成年後見制度の活用と法律家、カウンセラーなどとの協働

E新しいケアシステムの研究と政策化

    ・新特養システム(全室個室化とユニットケア)

    ・音楽療法など

    ・既存団地のコーポティ部住宅としての建て替え支援

    ・デイケアの改良と、宅老所の設置支援

 

 このような介護保険制度の運営が始まって、その波及効果はいくつかの点で市町村行政に顕著になってきている。

 第一には、情報公開と住民参加、当事者参加の拡大である。まず、介護保険事業計画に「公募委員」が参加することはごく普通になってきた。このためその後の地域福祉計画でもごく当たり前に「公募委員」が入っている。情報公開では、委員会の傍聴、議事録の作成と公開(インターネットでも)、パブリック・コメントも広く行われるようなり、他の計画(総合計画や環境計画など)でも同じスタイルがていちゃくしつつある。

 第二は、介護保険事務は自治事務(法定の義務的自治事務)であるという意識が浸透し、厚生労働省や府県の指示まちという状態を脱しつつある。

 第三には、「調査なくして政策なし」という政策形成過程のサイクルの最初の段階が、市町村で展開し始めている。すなわち高齢者や障害者、そしてその家族、一般の住民等の意識調査や意向調査、さらには個別の地域座談会やワークショップなどによるニーズの発見とその構造化が身につき始めているといえる。

 市町村において「プラン・ドウ・シー」から「プラン・ドウ・チェック・アクション」という政策循環のイノベーションが意識的に実行される、その突破口が高齢者保険福祉計画と介護保険事業計画で開かれたとも言える。

 

(8)、社会福祉法と市町村

    市町村地域福祉計画の策定、支援費支給制度の実施

 20006月には、従来の社会福祉事業法が改正されて、社会福祉法と名称を改めている。この改正においては、まず、その第1条(目的)で、この法律は「社会福祉を目的とする他の法律と相まって、福祉サービスの利用者の利益の擁護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という)の推進を図る」と改正の主眼点が占めされている。

続いて第4条で(地域福祉の推進)として、「地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えら得るように、地域福祉の推進に努めなければならない。」と規定している。

 さらに第6条(福祉サービスの提供体制の確保等に関する国及び地方公共団体の責務)において、国、社会福祉を目的とする事業の経営者と協力して、「社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう」、必要な措置をとるよう求められている。

そして、第10章に第1節「地域福祉計画」が新たに設けられ、「市町村は、地方自治法第2条第4項の基本構想に即し、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という)を策定する」ことと規定された。

 また、20034月から、従来の措置費制度を改めて、利用者が自らサービスを購入する仕組みとして、支援費支給制度への転換が行われるが、この支援費制度は市町村が実施主体となっている。

 支援費支給制度とは、障害者(児)福祉、知的障害者福祉のサービス(療護施設、更生施設、授産施設、居宅介護事業、デイサービス、ショートステイ、通勤寮、グループホームなど)を利用する者は、市町村に支援費支給の申請を行う。市町村は支給が適切と認めるときは、支給決定を行う。利用者は、都道府県の指定を受けた事業者との契約によりサービスを利用する、という制度である。

 これはこれまでの措置制度が、行政によってサービス内容や施設の決定を行っていたあり方を、障害者の自己決定を尊重し、利用者本位のサービス利用を実現出来る仕組みに変えることを目指し組み立てられている。これは事業者にも転換を要求することとなる。行政の下請け機関から、サービス提供の主体として、利用者の選択に耐えられるように、そのサービスの質の向上と維持を図ることが求められるからである。

 

(9)これからの市町村

 90年の福祉8法改正、分権一括法の施行、介護保険制度の始動、社会福祉法とそれに伴う個々の事業法の改正により、市町村は基本的には「社会福祉の実施主体」として明確に位置付けられている。市町村は「高齢者保健福祉計画」、「エンゼルプラン」、「障害者基本計画」、「介護保険事業計画」という諸福祉・保健計画と、それを総合した「地域福祉計画」の策定と実施の主体としてより積極的な役割を担うことが、地域住民からも、あるいはそれを超えて広く国民的に、そして国際的にも期待されている。

 そのためには、従来の縦割りの機構では十分な政策展開は難しくなっており、保健・医療・福祉の総合的な政策展開と、都市計画事業部局や教育委員会、消防・警察などとの全部局の統一した政策形成と実施が求められている。また、精神障害者福祉の在宅サービスの提供と生活支援事業が、大きく市町村の肩にかかってくることも合わせて、市町村としての高度な専門性の確保とその地域への還元、広域的な協力と連携が求められているのである。そして、個々の利用者を地域で支える地方自治体として、国や都道府県の諸権能や諸サービスをコーディネートし、各福祉施設との連携を図るキーステーションとして、あるいはプラットフォームとして自らを形成することが期待されてもいるのである。

 

 

 

 

 

地域福祉のあり方を学ぶ(2)

 自治体における地域福祉政策と地域福祉計画

 

1、地域福祉計画は福祉でまちづくり

 

1 地域福祉計画の意義

 1990年に行われた福祉八法の改正に始まって、高齢者保健福祉計画(老人福祉法と老人保健法に基いて全ての市町村に制定を義務化)や障害者基本計画(障害者基本法第7条の2第2項、および第3項によって都道府県と市町村に作成の努力義務を課している)、子育て支援計画などが市町村で策定されてきている。

 そして介護保険制度の施行に伴って、1999年度中には、平成122000)年度から平成142002)年度までの介護保険事業計画も策定され、第一号被保険者の介護保険料などを条例で定めることなどが市町村の事務として行われてきた。なお、第二期の介護保険事業計画が20013月に各市町村において策定され、引き続き現在は、第三期(2006年度から2008年度)の介護保険事業計画が策定され事業が行われている。

この介護保険制度は、20056月の法改正で、要介護度の低い人への介護保険給付事業である介護予防事業と、要支援などになるおそれのある人への、交付金と一般財源で行う地域包括支援事によって、要介護高齢者の増加を抑制しようとするところに眼目がある。その拠点が地域包括支援センターでえある。また、ケマネージャーの資質の向上と負担軽減などや、地域密着型サービスの創設などが特色である。特に、施設介護から、在宅での介護への転換を図るのが基本的な方向である。

 このようなさまざまな福祉計画は、同時に、地域での住民などによる積極的な福祉活動によって支えられることによってその真の目的が達成できる。その福祉活動は、総合的で行政の縄張りにとらわれないものとなる。

 このために年6月に社会福祉事業法を社会福祉法に改正することにともない、その第11章に「地域福祉の推進」が設けられ、その第107条に(市町村地域福祉計画)として、次のような努力義務規定が設けられることとなった。

 

 「市町村は、地方自治法第2条第4項の基本構想に即し、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定し、または変更しようとするときは、あらかじめ、住民、社会福祉を目的とする事後湯尾を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、その内容を公表するものとする。

 一 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項

 二 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項

 三 地域福祉の活動に関する住民の参加の促進に関する事項」

 

 その後、児童虐待防止法(20005月成立、20045月)改正、DV(ドメスティック・バイオレンス)防止法(20014月、20046月改正)、発達障害者自立支援法(200412月成立)、改正児童福祉法(200412月)、障害者自立支援法(20051031日成立)、高齢者虐待防止法(200512月成立)、などが制度化された。市町村はこれら施策にもとづく通報と相談の窓口とされ、サービス提供の調整機関となり、またサービス・ネットワーク構築の中心と位置付けられている。

 これからの地域福祉計画の策定と推進は、これらの諸施策を統合した、全体的なケアを実現していくことが求められている。それは、これら支援サービスの利用者をケア対象から生活全体の再構築に向けての主体として包括的に支援していくことをも意味する。QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)の向上こそ求められる。

 そして地域福祉とはこのような、法に基づく支援事業を専門家(ワーカーやNPO)として地域において進めるとともに、地域における住民の生活全体を、住民自身が支える仕組みをつくることでもある。そのようにして、どのように重い障害を持ち、認知症を持つ人でも、その人らしく暮らせるようにしたい。すなわち「ノーマライゼイション」の社会の実現をともに追及するということを意味する。

これを「人権のまちづくり」といってもよい。

 

2、「まちづくり」は地域社会の人のつながりをつくること。

 

 2−1  東京都府中市と北九州市小倉南区での町内自治会長の経験から。

   ・校区社協と共同募金。 ・カヌー競争と炊き出し。

   ・賽の神(道祖神)まつりとドンと焼き。 ・八幡様の秋祭りと府中ばやし。

   ・相互扶助と助け合いの歴史から。二宮金次郎が背負っているものは。

   ・「ゆい」や「手間返し」、頼母子講は助け合い。

   それが今はどうなっているか。

 

2−2、菟田野町の地域福祉行動計画と地域福祉計画策定作業から見えてきたこと。

 

(1)地域福祉計画と地域福祉行動計画は、「地域社会」づくり。高齢者も、障害者も、子育て中の家族も、外国人も、みんな安心して暮らせる地域社会をつくりたい。

 (2)主体は住民だ。行政まかせではなく、やれることは自分たちで。

 (3)行政は役割をはっきりさせる。責任を持って実施する。予算をつける。

 (4)障害者や高齢者の施設を積極的に受け入れる地区をつくる。そのほうがにぎやか

    になるし、安全だ。

 

  そのためには、いまある組織、活動を基礎にして、(1)いいところを伸ばす、(2)不十分なところを改める、(3)不足しているサービスや、(4)不足しているものをつくりだす。(5)新しいものやことをつくる。(6)新しいサービスをつくる。(7)古いものを他に転用して生かす。(8)思い出の中にある姿を取り戻す。(9)他でうまくいっていることをまねる。流用する。

 

2−3 意識調査から見えてきたこと。

 

高齢者(夫婦世帯、高齢者単独世帯)世帯のニーズ

 

(1)、行政や社協への期待は、安全、安心、いざというとき(防災、防犯、緊急時対応)。

  なお、住みよいまちづくりは行政と住民が協力して、が最も多い。

  

1)緊急通報システムや、見守りシステムをつくること。

    いきいきサロンへの誘い。

民生委員の定期的で、いつもの声かけ。

 

   2)地域マップすなわち住宅地図を利用した問題発見地図。

    

   3)きずな推進員の声かけ。回覧板や広報誌の配布の活用。

     きずな推進員の選考、依頼の仕方を基本的に改める。

 

  (2)、健康への関心が高い。

    痴呆の予防(28%)、寝たきりの予防(18)、生活習慣病の予防(17%)について知りたい。

     4)学習機会の提供、毎週どこかで、継続的に

  

     5)正確な知識とその応用、血液さらさらレシピ献立教室

     食生活改善委員の拡大と活用

  

     6)がんに克つ食事とメニュー、食材の教室

   

        7)運動へのいざない。散歩して歩く歩道の整備。

     それらを指導できる人の協力。

 

     (3)、外出しない人が多く、近所づきあいが希薄な人がかなりいる

      

8)生き生きサロンの拡充と、自前の開催、自主的運営のほうへ

  

9)メニューの豊富化(関心があるところ、庭仕事、健康づくり、手仕事、パソコン、など)

  

10)ボランティアの拡大。手話通訳や要約筆記。

  

11)地区デイサービス 障害児もお年よりも、こどもも。若い母親も集える、「居場所」、溜まり場として(この指とまれ、田原本町、西ノ京など)

        転倒防止教室の展開。筋肉トレーニング。

    

12)サービスセンターの整備  寄付ないし提供、既存施設利活用、

        区集会所、

 

(4)  重点課題。

        1)挨拶のできる地区。

 

        2)定期の街路および地区清掃。不法広告の撤去。

        

        3)河川、用水路、の定期的浚え。

         自転車、バイクの撤去。ビニールの撤去。蛍の飛ぶ川に戻す。

 

        4)空き地の雑草刈り。不法廃棄物の撤去。整地して花畑に。その管理。

     藪の切り払い、徒張枝の枝打ち。

 

         5)空き缶回収機の設置。東京早稲田の商店街、エコステーション、エコタウン。

 

6)街路と家の前を、年中咲く、花の垣根で。その栽培管理の技術の研修を、まちの専門家にお願いする。花の苗の栽培管理を委託。

          美しいまち、美しい風景の創造。町に入るとツーリングが楽しい。

 

          7)障害者デイサービスの場所の確保(土曜日、日曜、祝日、休日)

         休みに障害者が行く場所がない、という悩み。ショートステイはできないか。

 

           8)障害者と高齢者の春、夏、秋のツアーをボランティアと事業者とで。

 

           9)移送サービスの実現。2種免許所持者による福祉バス、コミュニティバス。100円の買い物バス。回遊コースの設定。○○屋さんとの共存方策。

 

           10)郵便局の活用。住民票。郵便配達で挨拶を。

 

           11)美山町タナセンのようなものをつくる。買い物の楽しみと溜まり場、情報の交流拠点。一服できる、ゆっくりできる。車で寄りやすい。

 

           12)小学校旧校舎に、住民福祉保健センターと買い物市場。グラウンド、プールの利用。その管理組織は住民協議会で(京都府井手町)。宿泊施設(バンガローでもよい)と作業場、工房、焼き物窯、交流施設とミニホール(ジャズとからおけ、室内楽、わらべ歌など)。

 

            13)四季のまつりの再発見と復活。子どもたちのために。

 

いくつかのポイント

 

1、まちづくりの拠点としてのコミュニティセンターが必要。他の機関、組織(社会福祉法人、NPO、ボランティア団体など)とのネットワークのキーステーションとして。

 ・北九州市の三層制の考えかた

     堺市の校区地域会館とボランティアセンター

 

2、予算はなくても仕事はできる。

 

・「多重債務者施策」は一人の「やる気」のある職員で、年間」1000件以上の相談に対応できる。

 

・そして、大阪府の「コミュニティ・ソーシャルワーカー」設置、運営事業の事例。

 

・また、地域担当職員の設置こそ、地域を支える住民組織をつくる種子である。南丹市美山町の地域振興協議会。

 

(付ー1

介護保険制度改革の主な論点(20056月改正法)              

                              2006114日         

                         奈良女子大学(名)澤井 勝 

 

1、予防重視型システムへの転換

 (1)新予防給付の創設

  ・軽度者(現行の要支援、要介護T)を対象として、要支援1と要支援2および要介護Tの区分は市町村が、介護認定審査会の審査を踏まえ決定する。

  ・市町村が責任主体。地域包括支援センターなどで「介護予防マネジメント体制」を「確立し、実施する。具体的には保健師などがアセスメントを実施――予防ケアプラン作成・実施――事後評価、を行う。

  ・既存サービスの評価と検証

  ・新たに筋肉トレーニングや栄養改善、口腔ケアを位置づける。

 

(2)地域支援事業の創設

  ・要介護、要支援となる可能性のある高齢者(高齢者人口の5%程度を

想定)に対する介護予防事業を介護保険制度として位置づける。

  ・実施の責任主体は市町村。

  @、介護予防事業の実施。

   ・介護予防スクリーニングの実施。

   ・介護予防事業サービスの提供。

     ・特定高齢者施策  1、特定高齢者把握事業

               2、通所型介護予防事業

               3、訪問型介護予防事業

               4、介護予防特定高齢者施策評価事業

     ・一般高齢者施策  1、予防啓発事業

               2、地域介護予防活動支援事業

               3、介護予防一般高齢者施策評価事業

  A、包括的支援事業の実施。

   ・介護予防マネジメント事業

   ・総合相談・支援事業 地域高齢者の実態把握、介護以外の生活支援サービスとの調整等

・権利擁護事業(虐待の防止、発見なども含む)

・地域ケア支援事業(支援困難事例に関するケアマネへの助言、ネットワークづくりなど)

B、その他、介護給付適正化事業、家族支援事業など、各ケアプランの評価・検証

(2)−2 地域支援事業の財源

@ 介護予防事業の財源 国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%、1号非保険者の保険料19%、2号被保険者の保険料31%。

A 包括的支援事業の財源 国40.5%、都道府県20.25%、市町村20.25%、1号被保険者保険料19%。

(2)―3 @とAとをあわて地域支援事業の費用額は、保険給付の見込み額の2006年度に2.0%以内、2007年度に2.3%以内、2008年度に3.0%以内とする。

2、施設給付の見直し(0510月実施)

 (1)居住費・食費の見直し 在宅との負担の公平を図るために、介護保険3施設の居住費用と食費に利用者負担を導入する。介護保険財政の負担軽減。デイサービスなど通所系サービスの食費にも利用者負担。

 (2)低所得者に対して。高額介護サービス費の引き下げ。

    旧措置者に対する経過措置の延長。

 

3、新たなサービス体系

 (1)地域密着型サービス(小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護、グループホーム、小規模介護老人福祉施設など)の創設

 (2)地域包括支援センターの創設

 (3)医療と介護の連携の強化

 

4、サービスの質の向上

 (1)情報開示の標準化

(2)指定事業者の更新制度の導入

(3)ケアマネジメントの見直し

  ・包括的・継続的マネジメントの強化

  ・ケアマネージャーの質の向上

    主任ケアマネージャーを創設

  ・独立性・中立性の確保(50人という一人当たり標準担当件数の見直し)

(4)人材の育成

  ・将来的には介護福祉士を基本とする。

  ・ヘルパー研修の充実。

5、負担のあり方・制度運営の見直し

 (1)第1号保険料を5段階から6段階程に

 (2)介護保険料の特別徴収を遺族年金・障害年金まで拡大

 (3)都道府県の事業者指定について市町村の関与を強化する。

 (4)市町村の事業者に対する調査権限の強化。

 (5)委託調査は申請者の入所している施設への委託禁止。

 (6)代行申請の適正化。

 

6、日常生活圏域構想と今後の介護のありかた

      

(1)改正介護保険制度と日常生活圏域の考え方

 

1)、介護サービスと日常生活圏域という考え方

 ・もともとは「地域包括ケア」の圏域という発想

   介護サービス利用者が日常生活圏において必要なサービスを必要に応じて利用できるような施設等の配置を考える。

 ・介護サービスにおいてはそのサービスによって重層的な圏域を持っている。

   入所施設サービスは市町村を越える広域

   通所施設サービスは比較的狭域(小学校区から中学校区程度)

   訪問リハなどもっと広域(県境を超えて)

   医療圏(第一次、第二次)との関係。

 ・「日常生活圏域」(『介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針』の一部改正の方向性について)

  「市町村は、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件、介護給付等対象サービスを提供するための施設の整備の状況その他の条件を総合的に勘案して日常生活圏域を定める必要がある。」

 

2)地域包括支援センターという考え方(主に6月27日全国課長会議資料から)

 

 1、法的に期待される機能=「包括的支援事業」

  @ 介護予防事業のケアマネジメント

     ・要支援と要介護1(8割から7割――認知症などで対象から2,3割が外れるとして)の一部への介護予防給付(新予防給付)

     ・虚弱高齢者(高齢者人口の5%程度を想定)への介護予防事業

  A介護保険外サービスを含む高齢者や家族への総合的相談・支援

  B被保険者に対する虐待防止等の権利擁護事業

  C支援困難ケースへの対応などケマネージャーへの支援

 

 2、スタッフは

  @保健師または地域ケア、地域保険の経験のある看護師

  A社会福祉士

  B主任介護支援専門員(新たに創設する資格)

 

3、人件費は一センターあたり1400万円から2100万円を想定している。(4月の衆議院委員会での中村秀一老人保健福祉局長の答弁)

 

4、運営協議会を設置する。

 

5、支援事業の財源構成は(前出) 

  @予防事業(115条の381項第1号)

    国・都道府県・市町村・第1号保険料、第2号保険料

  A包括的支援事業(同条同項第2号〜第5

    国・都道府県・市町村・1号保険料

  B全体の財政規模は各保険者の介護保険給付費の3%を目途として政令で定める予定としている。政令ではそれぞれの事業ごとの財政的上限についても規定をおく予定である。

 

6、対象人口は2,3万人を想定。

    これは中学校区程度で、在宅介護支援センターと重なると考えている。

    全国で5千ヶ所程度。

    1号被保険者は3000人から6000人。

    介護予防事業対象者 150人から300人。

 

(2)、地域密着型サービス 市町村が指定し、監督する。

1) 「痴呆ケア」や「地域ケア」を推進する観点から、地域の特性に応じ、多様で柔軟な形態のサービス提供が可能なサービス体系として、新たに「地域密着型サービス」を創設する。利用が主として市町村の県域内にとどまるもの。(当該市町村住民に限定。)

   @ 小規模多機能型居宅介護(富山方式)、通いを中心として、利用者の態様や希望に応じて、随時「訪問」「泊まり」を組み合わせ在宅支援サービスを提供。「居住」については必須としない。必要に応じて居住を担う場を設ける。富山方式。

   A 夜間対応型訪問介護(居宅)

   B 地域密着型介護老人福施設入居者生活介護 29人以下の小規模特養、サテライ  

     ト施設、逆デイとの組み合わせも。せんだんの杜方式(宮城県)

   C 地域密着型特定施設入居者生活介護 29人以下の小規模有料老人ホーム

   D 認知症対応型共同生活介護 グル−プホーム

   E 認知症対応型通所介護 特養やグループホームを活用したデイサービス

 

2)『指針』「市町村及び日常生活圏域ごとの地域密着型サービスの量の見込み  市町村及び日常生活圏域ごとの認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入所者生活介護、及び地域密着型介護老人福祉施設生活介護に係る必要利用定員総数並びに地域密着型サービスの種類ごとの量の見込みを定める。」

   「地域密着型サービス以外の介護給付に係る介護給付等対象サービスの量の見込み

 ・・・夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護及び小規模多機能型居宅介護等の量の見込みを踏まえつつ、種類ごとの量の見込みを定めるとともに・・・」

   「地域密着型サービスの創設により住民に最も身近で基礎的な地方公共団体である市町村がみずから、その地域の実情に応じ、地域密着型サービスに係る事業者の指定に係る審査及び指導監督を行うとともに、その基準の設定、同サービスの介護報酬の設定を行うことができる。」

 

   3)新予防給付に関わるサービス(介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス、介護予防支援)については介護予防ワーキングチームで検討中。指定基準、報酬の諮問答申は20061月ごろ。

   1、介護予防サービス 介護予防訪問介護、介護予防通所介護、介護予防訪問看護など12種類。

   2、地域密着型介護予防サービス

   介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護など3種類。

   3、介護予防支援

 

(3)、圏域についての事例

    地域福祉の拠点としての施設という観点から

1)新自治研究会 サービス圏域分科会報告 20043

    1、宝塚市

    2、武蔵野市

    3、茅野市

2)北九州市小倉南病院と伸寿苑

3)姫路市の日常生活圏域

 

 

 

 

 

 

(付−2)公の施設としての隣保館

 

 (1)「隣保館設置運営要綱 事務次官通知」の性格。

   国庫補助金補助要綱という性格と考えられる。「なお、この設置運営要綱は、国において運営費等について予算措置をする隣保館の事業等を定めるものであるので、念のため申し添える。」(厚生労働省社発0829002号、平成14829日 各都道府県知事、指定都市市長、中核市市長殿  厚生労働事務次官)

  (2)新要綱での隣保館

 2−1  「隣保館は、社会福祉法に基づく隣保事業を実施する施設として、その事業を実施してきたところであるが、さらなる事業の推進を図るため、別紙の通り、」

 2−2  「隣保館は、地域社会全体の中で福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティセンターとして、生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を総合的に行うものとする。」

 2−3 設置と運営主体は市町村である。

 2−4 運営の方針

            ・事業計画の策定と事業の実施

            ・関係機関、社会福祉法人、ボランティア等との連携

            ・公正中立を旨とし、広く地域住民が利用できるよう

            ・必要な情報の提供

            ・苦情受付窓口の設置

 2−5 事業

        (1)基本事業

            1 社会調査および研究事業

            2 相談事業

            3 啓発・広報活動事業

            4 地域交流事業

            5 周辺巡回事業

            6 地域福祉事業

        (2)特別事業

            1 隣保館デイサービス事業  障害者及び高齢者

            2 地域交流促進事業

            3 継続的援助事業

 2−6 職員  館長と指導職員

 2−7 規模・構造・設備

 2−8 備品

 2−9 (隣保館運営審議会)削除

 2−10 関係行政機関との連絡協議  福祉事務所等の関係行政機関との連絡協議会をおこなうと共に、社会福祉法人等とも同様に積極的な連絡協議に務めることとする。

 

2、三位一体改革と補助金の廃止、削減

   隣保館の補助金は一応維持されたが。先の展望はどのように考えたらよいか。

 

3、地域福祉、人権啓発の住民交流の拠点、開かれたコミュニティセンターとはなにか。

       (1)・ドロップ・イン

         ・アウトリーチ

         ・議論し討論する場の創設

       (2)設置条例のありかた。指定管理者条例の検討。

         ・行政目的を明確に書き込むことなど。

 

4、地域福祉の拠点としての隣保館            

 

 

 

(付−3)

心と安定の福祉サービスの仕組みづくり

         コミュニティの再生とCSW制度の確立を

                      

奈良女子大学名誉教授 澤井 勝

             (初出:公職研『地方自治職員研修』076月号)

 

夕張病院は診療所に

 0741日、ベット数171床の夕張市の市立総合病院が19床の公設民営の診療所「夕張診療センター」に移行し、2日から診療を開始している。運営は医療法人「夕張希望の杜」で、理事長は村上智彦医師。村上医師は0612月から、院長らが退職した夕張市民病院に応援に来ていた。その前は、063月まで同じ北海道の桧山支庁の旧瀬棚町で7年間、診療所長として予防医療を軸とした地域医療に取り組み、老人医療費の低減などを実現している。住民や看護士などスタッフの篤い信頼を築き、「瀬棚方式」として全国的に注目されていた。しかし、市町村合併に伴ない新町長と方針があわず、新潟県の湯沢町保健センターに転じていた。此の間の事情は、NHKのETV特集(06422日放映)で全国的にも報道されている。

 061210日には夕張への着任に先だって、市立総合病院の講堂に集まった市民と職員に今後の夕張の地域医療について語った。「高度な医療が必要な患者は1000人に一人。地方に必要なのは、何でも診られる総合医です。」夕張市は高齢化率が全国の市で最も高い。ここで成功すれば新たな医療のモデルになる、という。「19床の診療所と40床の老人保健施設を拠点に、往診による在宅医療を組み合わせる。空いた場所には託児所や娯楽施設を作り、まちおこしの拠点にする」という構想もある(読売新聞など)。

予防医療に力を入れる。「医療機関は病気のプロだが健康のプロではない。市民自身が健康への意識を高めることが大切」とも言う。医師法の第一条、「医師は、医療及び保健指導を司ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」をよく口にするそうだ。

 

理念の共有とアウトリーチ

暗い話ばかりの夕張市の中で、もっとも早く「希望の火」が点ったのがこの「夕張診療センター」だと言っても良い。この「希望の火」をよりしっかりしたものとするためには、多くの課題をクリアしていかなければならない。だがクリアすべきこれらの課題は、夕張市に限らず、多くの地域の共通した課題でもある。

第一には、自治体としての地域医療と福祉についての理念(夢)を、診療所の医療と保健のスタッフはもちろん、市長部局に残った福祉および保健担当者がまず、共有することがポイントである。そのことによって、全国に発信できる、高齢者の地域医療と福祉の先進モデルをつくる、という夢を共につむぐことができたらよい。

その「理念」とは、次のようなものとなるであろう。ひとつめは、健康は住民が主体となって守るもので、それを支援するのが、医療や保健、そして福祉のスタッフだという、「住民が主体となる地域医療と保健、福祉」をつくることである。そのために地域コミュニティを再生するという理念である。

ふたつめは、そのための予防医療、保健、福祉サービスを在宅で活用できる、訪問サービスの充実である。また、まちかどデイサービスや富山方式の「ゼロ歳から100歳まで、障害あってもなくても」預かり、「通って、泊まれ、住める」デイハウスを少なくも旧小学校区にひとつ以上は立ち上げること。これは役所ではなく市民自身が担うもので、これには道の積極的な支援が、移動介助などや施設設置費の補助などを含めて求められる。

みっつめは、地域に展開している「介護保険事業者」との連携の実現である。相互の情報の共有と交換を通じた地域全体の介護力を、新たな財政的な支援なしにでも、自立して高めていくことがもとめられている。そのイニシアティブは診療所がとることもあるだろうし、市の地域包括支援センターがとる場合もあるだろう。また、市の保健福祉部がイニシアティブをとることも必要になる。気が付いたところが声をかけ、連携のための会合や、ネットワークを通じた検討会議がもたれるようなことも不可欠であろう。

したがって第二には、市長部局における地域医療と福祉を推進するリーダーシップの確立である。このリーダーシップは、もちろん市長に期待されるところである。同時に、担当部局の主査クラスからの動きが重要である。つまり、自らの職務のミッションを自らのものとした、一人ひとりの職員の現場での気づきとネットワーク構築力に期待するところが大きい。役場のデスクを離れて(アウトリーチ)、要支援者と寄り添い、コミュニケーションをとることがその出発点である。

そして、これら地域医療と地域福祉を統合した「地域包括ケアシステム」の構築が望まれる。このモデルの一つは、広島県尾道市御調町の「公立御調病院」を中心としたシステムである。この特色は、病院を中心としながら、在宅ホスピスまでカバーする訪問診療、それと社会福祉と介護保険サービスを統合し、さらに、社会福祉協議会などによるボランティア活動の推進、頻繁に開かれる各種の学習会や研修である。

 以上の「地域包括ケアシステム」は、志のあるドクターなどのイニシアティブによるものとも言える。この医療を中心とした「包括ケア」は、過疎地でも有効に機能するシステムである。しかし、志あるドクターや医療スタッフがどこにでもいるわけではない。そういったところでは、繰り返しになるが役場の職員こそが、その「包括ケア」構築のイニシアティブをとるべきである。すなわち「カリスマ職員」の登場が期待される。それはカリスマ係長かもしれないし、カリスマ保健師、カリスマヘルパーであるかもしれない、介護保険制度の立ち上げに当たっては、各地に「カリスマ職員」が登場したことはよく知られている。職員は自らの人件費の範囲で、事業を起すことができる。もちろんそれなりの予算が必要であるが、事業の本体のところでは、人と人を結びつけることができれば仕事になるのである。一種の「予算なき行政」こそ必要とされている。

 

コミュニティ・ソーシャル・ワーカーの設置事業

 ところで、大都市部ではこのような「包括ケアシステム」は、地域コミュニティが衰退する中で、その実現はより難しいと思われる。この間の「地域福祉計画」の策定と、その「アクション・プログラム」の策定と実践においても、この難しさは痛感されるところとなった。そこのところを、「コミュニティ・ソーシャルワーカー」の設置・運営事業で乗り切り、新しい地域福祉システムを構築しようとしているのが大阪府と府内の市町村である。

 この「コミュニティ・ソーシャルワーカー」とは、「地域において支援を必要とする人々の生活圏や人間関係など環境面を重視した援助を行うと共に、地域を基盤とする活動やサービスを発見して、支援を必要とする人に結びつけることや、新たなサービスの開発や公的制度との調整などを行う専門知識を有するもの」とされている。(20029月大阪府社会福祉審議会答申)

 2003年度のモデル事業から始まり、2006年度までに大阪市等を含む府内の市町村にこのコミュニティ・ソーシャルワーカー(以下、CSW)が設置されている。概ね中学校区に一人の配置基準である。大阪府の2004年度予算では、CSW配置促進事業として16823万円が計上され、50ヶ所に配置予定とされている。実施主体は市町村で、定額補助であり、補助基準額は580万円である。各市町村の社会福祉協議会や在宅介護支援センターに配置する。(なお、大阪府地域福祉課のホームページにある、「地域福祉サポーターズ倶楽部」と「コミュニティ・ソーシャルワーカー」を参照されたい。)

 CSWの業務内容は、それぞれの市やCSWの能力などによって様々であり、現在も試行錯誤が続いているのだが、概ね次のように三つになってきている。

(1)セーフティーネット体制づくり(関係機関のネットワーク化)であり、要援護者に対する「見守り・発見、相談からサービスへのつなぎ」が機能する体制の整備。

  (ア)福祉事務所、保健センター、福祉センター、子ども家庭センター、保健所など。

  (イ)小地域ネットワーク活動(小学校区)、民生・児童委員、社会福祉協議会など。

  (ウ)在宅介護支援センター、サービス提供事業者、ケアマネージャー、障害者生活支援センター、福祉作業所、授産施設など。

  (エ)病院、診療所、医師会、歯科医師会、薬剤師会など。

  (オ)地域住民やボランティア団体、当事者団体など。

 (2)個別支援

  (ア)要援護者、家族、地域の発見機能からの相談、巡回など。

  (イ)実態把握、情報提供、訪問指導など。

  (ウ)訪問指導、サービス情報提供、専門機関へのつなぎ。

  (エ)「CSW検討会議」でサービス調整。

  (オ)申請の付き添いなど、サービス利用支援。

 (3)地域福祉活動の育成・支援。市町村社会福祉協議会活動や地域住民活動のコーディネイトや企画。

  これらのCSWは府の行う「CSW養成研修講座」を受講することとされている。200

2年度の場合は749万円の予算で、70名を予定している。講座内容は、社会福祉士や保健師等の養成科目を参考にしている。

  これから「安心・安定した」福祉の仕組みをつくるには、このような「ソーシャルワ

ーカー」を職務として確立していくことが求められる。問題があるところに出向き(ア

ウトリーチ)、その場に関係専門家を集めて、支援プランを決定することができるような

ソーシャルワーカーが必要なのである。大阪府と各市町村のCSW事業の推進はこのよ

うなソーシャルワーカー制度の国レベルでの確立を展望している。

 

まとめ

 以上に見てきたことをまとめると、「安心と安定の福祉のしくみ」は、第一に、住民の意識と活動に担われた仕組みであり、それを通じた地域コミュニティの再生である。長野県栄村の「げたばきヘルパー」や同じ泰阜村の在宅福祉システムも住民の支えあいを基礎にしている。住民が主体的に参加し、知恵と資源を出し合い仕組みこそ求められる。第二にそれを支える医師や保健師、役場職員という専門職のネットワークの形成とそのスキルの向上が求められる。この中で大阪府の実施しているCSW配置事業は、過疎地でも有効である。CSWを軸として、これら専門職と民間の介護保険事業所や福祉作業所、保育所のケマネージャーや看護師、保育士、そしてなにより当事者の主体的参加を推進すること。第三には、地域の医療と福祉の理念を明確にしたリーダーシップが求められるのである。このリーダーシップは、首長、副市長、などとともに、担当部局長そして担当職員がNPOなどと連携して、発揮することが求められる。

国は、介護保険制度や医療制度を過度に競争的なものしないようにしなければならない。

どんな過疎地でも安心して暮らせるよう、地方交付税を含む財源的な手当を確保する責任がある。都道府県は、財政的に苦しい市町村を積極的に支援し、大阪府のCSW事業や「地域就労支援事業のような、市町村と相談しながら新しい施策展開を行うことが重要な役割である。また、民営化される郵政事業でも、過疎地では、高齢者の生活を支えるために郵便事業と貯金事業を兼務できるような仕組みも必要である。

                           

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