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小地域福祉とその財源

良女子大学名誉教授  澤井勝
(初出:『地域福祉研究』37号、2009年3月)

 目次 はじめに 小地域福祉の考え方
   1、小地域コミュニティ福祉形成の試み−大阪府堺市に見る  2、CSWの設   置の保障  3,地域福祉の担い手の2面性−旧来の地域住民組織とボランタリ   ーセクター  4、地域福祉の財源は地域資源と外部資源から  5、富山県の   県単独補助金と富山型特区  6,地方交付税を原資とした「地域福祉基金」の   活用と造成  7、生活協同組合の福祉基金との連携  8、共同募金の活性化   と活用  おわりに 交付税への「地域福祉費」の算入
   付表、付図 共同募金の実績額など


はじめに、小地域福祉の考え方

 

 まず最初に、「小地域の自治をコミュニティ福祉と言う観点から見直す」という全体のテーマに即して、そのための財源の調達という課題にアプローチするために、若干「小地域福祉」について考えていることを述べておきたい。

第一に、「小地域」とはどういう範域を想定するかという問題がある。いくつかの考え方があるが、改正介護保険制度に伴う地域包括支援センターの設置にからんだ各自治体での「日常生活圏域」の設定の議論、および自治基本条例制定に伴う「住民自治協議会」や「まちづくり協議会」などの設置に向けての議論などを踏まえると、この「小地域」とは「小学校区」と考えるのが一般的だと思われる。この「小地域」の範囲を超えて、「中学校区」なども想定されるが、「中学校区」になると「共同性」は認めにくくなり、あまり採用されていないようである。

90年代に福祉施策の先進都市とされた北九州市の場合は、1993年から「小学校区」に、校区社会福祉協議会などの活動拠点として「市民福祉センター」を設置し、行政区レベル(7区ある)に保健所と社会福祉事務所を統合した「保健福祉センター」と「保健福祉住民協議会」を置き、それに本庁レベルの企画部門に「北九州市保健福祉協議会」と「リハビリテーションセンター」を置く、というような「三層構造」となっている。

 一方で、合併市町村では地方自治法や合併特例法に基づいて、あるいは独自の「地域自治組織」が旧町村単位で設けられ、これがひとつの「小地域」として機能するような場合もある。京都府南丹市の美山町に設けられ、南丹市全体に広がろうとしている「地域振興会」などがそれにあたる。旧美山町の場合、「地域振興会」は1955年の昭和の大合併で統合された旧5町村単位で20013月に設立されたもの。それぞれは、それまで旧村単位にあった「自治会連合会」、「村おこし推進会議」、「地区公民館」を統合して創られたものである。

 また、奈良県葛城市は當麻町とが2004年に対等合併して生まれた人口35,584人(20054月現在)の市だが、この市の介護保険事業計画と地域包括支援センターの介護予防事業は、基本的には「大字」ごとの自主的な介護予防サポーター事業として立ち上げつつある。主として健康づくり教室や転倒予防教室を42の大字ごとに、一つ一つ、人と人のつながりを大事にして組み立てる作業が続く。現在8つの地区(大字)で拝辞待っている。このように、大字が小地域の単位となる自治体も多い。この「大字」は、もともと幕藩時代の「村」で、この単位で「宗門人別改帳」が調整されていたもので、現在の5万分の一地形図の集落名がこの大字である。

 いずれにしても、ここでの「小地域コミュニティ」には、課税権がなく、予算編成権がない。しかし、なんらかの「役員会」や「住民協議会」のような意思形成、調整の機関を持ち、地域共同の課題に、地域として取り組んでいる。このような「小地域コミュニティ」を「準自治体」とすれば、コミュニティが行政の要請に応えて活動するとき、あるいは自発的に、ボランタリーに活動するとき、その資金を「準自治体」がどう調達するか、どう確保するかを考えなければならない。言うまでもなく財源調達と確保の見通しなしには、コミュニティ活動は有効には成立しないからである。

もともと地方税は、このような地域社会が共同して公共的に解決すべき課題(アジェンダ)を、共同して、公共的に解決するために必要な会費という性格をもっている。自治活動、あるいは自己統治活動のために必要な経費を、住民が分担して賄うのである。もちろん市町村からの税を原資とした補助金は有力な財源であり、その財源を確保する責任が行政にある。しかし、「小地域コミュニティ」を「自治の組織」として形成しようとするなら、行政(財政課と首長、議会)に依存した財源だけでは、その「地域自治組織」はそれとして「準自治体」とはなりえない。

 そこで、小地域福祉を自治的な組織として展開しようとすると、自前の財源を考えなければならないことになる。もちろん、「行政の下請け」に甘んじようとすれば、このような「自主財源」は不要で、いかに補助金をとってくるか、というテクニックの問題になってしまう。

 

1、小地域コミュニティ福祉の形成の試み 

大阪府堺市に見る

 筆者がかかわっている大阪府堺市の場合から、現在の小地域福祉とコミュニティについて若干の紹介をしてみたい。堺市は0810月現在で人口約836千人(うち外国人が約1万2千人)で、20064月に15番目の政令指定都市になり、7つの行政区(合併した美原町を一つの行政区とする)を設けている。ただし、行政区の設置が最近であるため、区への権限移譲や予算執行権、人事権の移譲などの都市内分権はこれからの課題である。

 この政令指定都市移行の前、2003年から、「地域福祉計画策定懇話会」(会長・牧里毎冶関西大学教授)を設けて「堺市地域福祉計画」の策定作業が進められ、20043月に「第一次堺市地域福祉計画」が策定された。対象年次は2005年から2011年度までの5ヵ年として、この間にいくつかの重要な施策を実現してきた。2007年末からは市の社会福祉協議会の「第3次地域福祉総合計画」との調整を図り、社会福祉協議会と共同して第二期の地域福祉計画策定に入っている。この「第二次地域福祉計画・第4次地域福祉総合計画」は、20093月には策定される。

 この過程での重要な施策の一つは、「校区ボランティアビューロー」の設置とその運営が約半分の校区に広がってきていることである。堺市は、もともと堺市社会福祉協議会による「小地域ネットワーク活動推進事業」が活発に行われてきた都市で、2005年度には92校区のうち86校区で、いきいきサロン、ふれあい食事会、地域リハビリ、世代間交流、子育て支援、ふれあい喫茶、などが取り組まれ、2007年度には全92校区で実施されている。

 この「校区ボランティアビューロー」は、地域福祉の「拠点づくり」の一環として、「地域会館等市民の身近なところで、気軽に困りごとを相談したり、地域で全市的な福祉情報を入手できるような『相談・情報交流・集いの拠点』を設けることにより、地域の中のつながりが生まれることを促す。また地域のボランティアの活動拠点として活用されることで、「地域力の向上を図る」、という複合的な機能を持ったもの」(『堺市地域福祉計画策定資料』)として位置づけられている。事業の実施主体は、校区福祉推進委員会、校区自治連合会、校区民生委員児童委員会の三者である。ホームページ上の事業評価の資料では、事業開始の2006年度にはモデル区である南区の18校区で始まり、2年目の2007年度の実績では、42校区で設置されている。週6回も開いているのが3校区、週3回が5校区、週2回が16校区、週1回が17校区となっている。実施回数が延べ3918回で、相談件数830件となっている。

 この費用については、一カ所当たり運営費に年10万円、初度調弁費に10万円が市と社会福祉協議会からの補助金が出ている。この補助金の財源は市の一般財源と社会福祉協議会の運営費(共同募金配分金を含む)によって賄われているようである。

 この「校区ボランティアビューロー」は、一つの「ドロップイン」型の相談、交流拠点である。ここが住民の様々なニーズに応答できる組織に育てば、かなり強力な住民による地域拠点ができることになる。これにかかる費用は、基本的には相談員(自治連合会の役員、それと重なることが少なくない校区福祉推進委員、そして最もその専門的な役割が期待される民生児童委員)はボランティアであるから、ビューロー設置の初度調弁費や茶菓子代やコピー代などの運営事務費が大きいものとなる。今のところは活動範囲が狭いが、相談が多岐にわたると移動のための交通費やガソリン代、それにボランティア保険などの費用が増加することが予想される。

 いずれにしても、コミュニティの自治という観点からすると、地域福祉の財源は、まず自らの地域の施設や財源と人材などの資源を動員すること、いわば眠っている資源を生かし、活用することが基本である。それに、市の一般財源の追加的投入が検討される、という形となることが一般的には想定される。

 しかしながら実際には、行政からの補助金によって動き出すという場合が多い。それは地域自治組織が十分に自治的なものとしては未だに成立していないのが実情だからである。なぜなら自治会や校区福祉委員、民生委員の間で地域の福祉課題について、十分議論が適切なデータによって討論されていないのがこれまでの姿だったからである。

 

2、CSWの設置費を保障する

 堺市の場合、地域福祉計画の推進と展開の次の焦点は、「コミュティ・ソーシャルワーカー(CSW)」の設置である。堺市では0810月から4名が置かれるが、うち2名は社会福祉協議会の区事務所(7区に設置ずみ)に置かれ、他の2名は在宅介護支援センターにごく低額の費用でお願いするとされている。このCSWの設置費が第二次の地域福祉計画の推進にあたって最も大きなものとなる。大阪府の場合はCSWの設置費を580万円として、その半額を補助するとしていたが、09年度からは包括交付金に統合されるため、自治体によっては、その財源確保にバラツキが出てくることが予想される。

堺市は政令指定都市であるために、CSW設置事業は大阪府の事業対象ではなかったため、かえって独自のCSW設置事業が可能になっている。それにしても、このCSW設置事業を単独で進めることになるが、その財源をどのように捻出するかが課題であることには変わらない。できれば常勤の専門職としてのCSWを育てていくことが最も望ましい。そのためには、雇い主負担も含めておおざっぱに一人1000万円、7区に二人づつ配置するとして14千万円である。まずこの一般財源の確保を、財政課と交渉することが必要である。

その際、地域福祉のコーディネテーターであるCSWの活動が、処遇困難層の救済を通じて生活保護受給者やボーダーライン層の増加の抑制などに有効であることを説得的にのべることが求められる。すなわち、長期的にはCSW設置費というコストは福祉サービス需要者の増加を抑制することで十分に回収できるはずである。あるいはこの1億4千万円を、職員の配置転換と専門職化によってひねり出すような工夫が求められる。さらに新しい地域福祉財源の確保(後に述べる地域福祉基金の拡充など)によってCSWの人件費を捻出することを展望することが必要となる。

一方で、コミュニティソーシャルワーカー設置事業は、厚生労働省が2008年から2年間の予定で始めている。設置費700万円の半分を補助し、全国100ヶ所の中学校区にモデル的に置くとしている。もしこれがさらに2年度から3年度、延長するなどして軌道に乗れば、地方交付税の算定対象とすることも必要になり、このような交付税措置を背景とした財源保障も考えられる。

 

3、「地域福祉」の担い手の2面性

    旧来の地域住民組織とボランタリーセクター

 

 地域福祉の財源という問題は、今まで自治体の現場任せで、それとして議論されてこなかったのが実情であろう。それは地域福祉という政策自体が、地域福祉計画の策定とその実施によって、この間にようやく明瞭な姿をとりつつあるという事情にもよっている。いずれにしても、新しい公共サービスとしてのコストを誰が負担するか、という問題があらためて問われていることになる。

その際の基本的な考え方は、先にも触れたが、地域福祉という施策は基本的には住民がその一部を主体的に担うことが期待されているということに基礎を置くことになる。自治会や町内会、あるいはそれと並ぶ校区福祉推進委員、民生委員・児童委員会など住民自身のボランタリーな活動や、ミッションによるNPOなどの自発的な活動、それによる地域住民相互の支えあいである。エスピン・アンデルセン的に言えば「保守主義的な」アプローチに近い取り組みが想定されている。

このことはしかし、市民が公共性を担う、という「新しい市民的公共性」と「市民社会」の再構築、社会的企業の興隆という新しい政府のあり方に向かうトレンドをも表現している。そこでは「ボランタリーセクターという自律的な市民セクターの拡大」という流れと、「保守主義的な地域自治組織の再構築」という流れとが、交錯する十字路に、「市民主体の地域福祉」とそれを支える新しい「地域コミュニティ」いう考え方があるということができる。「地域福祉」という施策は、この二つの側面をもつものと理解することが必要なのである。

 

4、地域福祉の財源は地域資源と外部資源とから

 

この点からすると、地域福祉の財源を考えるにあたって、地域の資源への依存と活性化、という面にだけとらわれることはないことも意味している。地域資源の活用と住民のボランタリーな活動は基本的に重要だが、だからといって「地域福祉は自前でやれ」、ということにはならない。それは社会全体や国家もまた地域の生活を支えるべきものだからである。

その点からすると、地域福祉の財源の地域外からの調達ということは重要な視点となる。すなわち地域福祉に対する国庫補助金や交付金はなお有用であり、地方交付税による担保も極めて重要である。外部資金の活用と動員という政策選択は府の単独事業や厚生労働省のモデル事業補助金によるCSW設置事業にも見られる。

さらに一般的には、介護保険と医療保険の活用である。

介護保険の場合、介護保険の保険事業者の事業収入の財源の内訳は、周知のとおり、基本的には利用者が1割で、これは地域の資金が動員される。残りの9割のうち、半分が税金だが、さらにその半分は国費で賄われる。すなわち9割の25%、この分は全国的な資金の地域的な活用である。(都道府県負担分は地域負担と考える。)また、9割のもう半分は保険料だが、(9割の)19%は第一号被保険者の保険料で、これは地域資金の動員である。残りの31%は40歳以上64歳までの第二号被保険者の保険料で、この部分はやはり全国的にプールした資金の地域的な利用である。つまり、介護保険の場合、介護保険事業者の売り上げのうち、地域外からの資金(このうちには当該地域の分が、おそらく47分の一程度含まれるのだが)が、利用者負担除く部分の56%を占めるという構造となっている。

言い換えれば、介護保険の場合は、支払われる介護報酬(利用者負担分を含めて)の、50.4%は地域外からの資金流入となる。つまり『地域外資金』の活用となっている。残りは第一号被保険者の保険料19%(これは21年度から高齢者人口の比率が高まるために20%に引き上げられる予定)と市町村と都道府県の負担金が12.5%ずつで合計44%、介護報酬(利用者負担を含む)の49.5%が『地域内資源』ということになる。

 この「地域外資金の活用」という視点から、介護保険制度を見直すことが必要である。富山県で元日本赤十字富山病院の看護婦だった総万佳代子さんや西村和美さんら仲間三人が1993年に退職金を持ち寄ってつくった『このゆびとーまれ』は、それこそ市民の「出資」から始まった自主事業であり、市民事業である。コミュニティ・ビジネスといっても良い。始まりは「地域内資金」と「地域内資源」の活用であった。

ここでは「認知症のお年寄り」も、「ゼロ歳児」も、「知的障害者」も、そしてスタッフもみんな一緒の「家」をつくって暮らしている。ただし、この形態のデイハウス(通って、泊まって、最期を看取る)の経営が安定するのは、2000年からの介護保険事業の開始に伴い、NPO法人格をとり介護保険の通所介護事業になることによってだという。この場合は、そのほかに、富山県の単独事業補助金による支援と、国の特区指定という支援との組み合わせも有効であった。

 

5、富山県の単独補助金と富山型特区の活用

 

すなわち法律を超えた制度の利用を当時、国(厚生労働省)は認めていなかった。しかし富山県(人口111万人、0611日現在)は県の単独事業として1996年度(平成8年)に、県と市町村とが、障害者が「在宅障害児者デイケア事業」として、高齢者施設を利用した場合、利用料金の一部を補助する制度を始めた。(以下は地域保健福祉政策研究会編『地域保健福祉政策実践事例集』第一法規、などによる。)

1997(平成9)年度には、富山県が「民間デイサービス育成事業」を創設。高齢者5人以上の介護サービスを行う地域住民団体へ年間180万円を助成。1998年からは、高齢者、障害児者5人以上に180万円、10人以上に360万円に拡充している。

 2002年度からは富山型デイサービスを起業したいという人を対象に、惣万さんたちと「富山型民間デイサービス起業家育成講座」を開催している。

一方2000年度からの介護保険制度の施行により、「民間デイサービス育成事業」を廃止したが、ほとんどの施設は法人格(NPO法人=特定非営利法人法が9812月に施行)を取得して、介護保険法の通所介護事業所の認定を受け、付加事業として障害児者や乳幼児の預かりを行うという事業形態をとることとなった。

しかし、付加事業に対する県単独の「在宅障害児者デイケア事業」の助成が、国の制度に乗った障害者施設のデイサービスに比較して低かったことから、国の制度として位置づけるよう事業者や利用者から強く要求された。

20034月、構造改革特区の規制の特例として、「指定通所介護事業所等における知的障害者及び障害児の受け入れ事業」が認められるようなった。これにより特区の認定を受ければ、介護保険法による指定通所介護事業所での知的障害者及び障害児の受け入れ(身体障害者については、従来から「相互利用制度」により受け入れ可能)と、身体障害者福祉法による指定デイサービス事業所及び知的障害者福祉法による指定デイサービス事業所での障害児の受け入れが可能となった。これにより支援費制度の単価に準じた補助金が交付されるようになった。

これをうけて、富山県はまず富山市、滑川市、砺波市、大山町、福野町と共同で特区の申請を行った。200311月認定を受ける。200511月現在102町に拡大している。 

065月に、富山県は「富山型福祉サービス推進特区」の認定を申請。申請区域は富山市、高岡市、立山町。介護保険法改正により064月から設けられた「指定小規模多機能型居宅介護事業所」で、この推進特区で高齢者だけではなく、障害者も受け入れることが可能になり、7月に認定されている。

「同県では200311月、高齢者向けと障害者向けのケアを縦割りとせず、1つのデイサービスセンターなどで提供できる「富山型デイサービス推進特区」に県内ほとんどの区域が認定され、実際に多くのデイサービスセンターなどが障害者を受け入れている。それらが(介護保険サービスの全国的基準での)小規模多機能型に移行した場合、障害者へのサービスが難しく従来どうりの運営ができなくなる恐れがあった。」(時事通信『官庁速報』06526日号に補足)。そのための推進特区であった。

 200610月にはこの「富山型福祉サービス推進特区」は全国展開され、全国において実施できるようになっている。

これらは「地域内資金」や「地域内資源」の活用から、「地域外資金」の活用、「地域外施策」の動員に展開して全国的な支援システムの構築にまで進んだ好例である。

 

6、地方交付税を原資とした「地域福祉基金」の活用と造成

 

 「地域福祉基金」とは1991年度に2100億円、92年度に3500億円、93年度に4000億円、合計で9600億円を普通地方交付税として全国の道府県、市町村に地域福祉の基金の財源として配分したものである。

1991年度の予算編成に当たって、後にバブル経済と言われる景気拡大の結果、法人税を中心とする国税収入が大幅に伸びることが予想された。そのためにこれら国税の一定割合を割いて地方税の身代わりとして配分する地方交付税も大きくふくらむことなり、従来の基準財政需要額の算定からオーバーフローする状況となった。このために、その交付税のオーバーフロー分を処分するため、第一に、それまでに地方交付税特別会計が借り入れていた借入金元金のうち1709億円を返済するとともに、自治体が借り入れていた財源対策債の償還に当てるための基金を積み立てる財源として19460を交付税として配分した。そしてその交付税オーバーフロー対策の一環として、「地域福祉基金」2100億円が交付税に積み込まれたのである。なおこのとき同時に「土地開発基金」5000億円も交付税として自治体に配分され、各都道府県、各市町村は「土地開発基金」をこの年に設置している。

 この結果、各都道府県、市町村は1991年度から93年度までの3年度間に相当規模の「地域福祉基金」を積み、ほとんどの自治体でそのまま維持され現在にいたっている。この「地域福祉基金」は主として「果実活用型」として、その運用益を地域福祉(社会福祉協議会などの)活動の助成に細々と活用しているという状況にあると推察される。この状況は、長期にわたる超低金利のもとで、一層助長されたと思われる。

結論的に言えば、いわば塩漬けされた「地域福祉基金」の一層の活用と、この「福祉基金」を母体にして、寄付税制の活用などを宣伝するなどして新たに市民(法人企業)からの寄付を求め、基金としての規模を拡充して、地域資金の流動化、動員の手段として活用すべきなのである。以下では主に全国のウェブサイトからの情報の一部を整理して紹介する。

(1)飯田市

 長野県飯田市の「平成17年度事務事業進行管理表」によると、事務事業として「地区社協小地域活動補助事業」があげられているが、この事業の財源の一部として「地域福祉基金利子」が充当されていることがわかる。具体的な重点配分事業としては、「ふれあいサロンの設置」「地域福祉計画及び活動計画策定」「B型地域リハビリへの協力」「一人ぐらし高齢者安心コール」を掲げている。その予算額は2005年度決算で476万円、2006年度予算で567万円となっている。

 飯田市の場合は喬木村、上村、南信濃村との2005年の合併後、旧村と旧市域に「地域自治組織」をつくっている。この地域自治組織の創設にともない、地区社協がまちづくり委員会の保健福祉委員会としての役割を担うことによって、地区ごとに特色のある地域福祉事業の立ち上げや推進を行うことが予定されているが、その支援資金として「地域福祉基金」からの「地区交付金」が期待されている、と記述されている。

(2)倉敷市

 倉敷市では地域福祉基金の運営委員会が設置され、地域福祉基金交付金を地域の福祉活動団体の活動支援のために交付する事業を行っている。助成対象事業として、1、在宅福祉の普及又は向上に関する事業、2、健康づくり、生きがいづくり、自立支援及び社会参加の推進に関する事業、3、ボランテイア活動の活発化に関する事業、をあげている。助成限度額は1年目が10万円、2年目が75000円、3年目が5万円となっている。

(3)秋田市

 秋田市では「秋田市ふれあい基金」を91年度に設置、「地域における保健福祉政策の推進をはかるため、民間団体の行う在宅福祉の向上、健康づくり等の事業を支援する」としている。08年度の補助金交付団体は計6団体で130万円づつ、合計180万円を交付するとしている。どういう団体が助成を受けているかというと以下のとおり。「NPO法人・蜘蛛の糸」、自殺対策でシンポジウム「いのちの再発見」を開催する。「子供のファーストエイド普及協会」、小学生以上の子供対象に「キッズセイフティー教室」を開催する。「NPO法人・子育て応援Seed」、乳幼児と保護者のストレッチ体操講座。食育講座の開催。「ボーンアカデミーアーツ&サイエンス」、発達障害者・不登校・ひきこもり支援。「NPO法人・子育て、高齢者介護サポートばっけの会」、食能体験としての連続講座。傾聴ボランティア、喫茶「茶・房」を開き、心の悩みを持った人の相談を受ける。

(4)北海道

 「北海道地域福祉基金」は、「在宅福祉の普及啓発及び、健康及び生きがいづくりの推進その他の地域福祉の推進を図るために民間団体が行う事業の支援に要する経費の財源に充てるため」に、91年度に設置されている。他の自治体の説明とほぼ同じ文言となっているのも興味深い。積立は91年度に26億円、その後3年間で26億円づつ、合計78億円となっている。97年度に1800万円を追加で積んでいるので現在は781800万円が元金として残る。基金運用状況は北海道一般会計に預託、利息として8940万円を受け取っている。利息は2.50%と高い。そのほかに18万円を渡島信用組合など6金融機関に預託して15109円の利子を受けている。この運用益は、精神障害者共同住居運営費補助金として3478万円、精神障害者地域共同作業所運営費補助金として5462万円に全額充当している(2006年度)。

(5)岩手県

財団法人岩手県福祉基金は昭和52年に設立された古い沿革を持つ。基本財産162300万円のうち県からの出資が5億円だが、この5億円が交付税による「地域福祉基金」と『考えられ、後は、遺贈による寄付等と考えられる。2005年度の決算では、新たな寄付金収入が861224円ある。基本財産運用収入が4559万円で、その運用益のうち2634万円を助成金として支出している。助成金の内容は、社会福祉団体活動助成に1740万円、社会福祉施設整備費助成に315万円、特別基金助成金に490万円などである。内部留保金は、助成事業の未執行や新規寄付金の受け入れなどで増加している。

県の総合政策室の政策評価ではおおむね次のように指摘されている。「当法人は基本財産から生じる果実を財源として民間社会福祉活動を助成し、県民福祉を増進することを目的として設立された。事業については、法人独自の職員がいないことから、法人業務そのものを社会福祉法人岩手県社会福祉協議会に全部委託し、社会福祉協議会の職員が兼務で事務を行っている。経営目標のうち、一般助成事業と特別基金事業はともに80%未満という低い達成度となっている。今後は、先導的・先駆的な民間社会福祉活動が幅広く展開されるような効果的な事業への助成など基金を有効に活用するためのあり方について検討する必要がある。助成事業の時期や事業のPR方法について改善する必要がある。」ホームページの開設や運営委員会に学識経験者を加えること、情報の公開が指摘されている。

(6)大阪府

 大阪府福祉基金は07年度の基金残高が約27億円。「大阪府の拠出金や府民などからの寄付金とその運用益などを財源にボランティア活動や府民の自主的な地域福祉活動に助成する制度」としている。大阪府の特色は、08年度から「ふるさと納税」の対象事業のひとつにしている点である。大阪府の「ふるさと納税制度」では、寄付者の指定する事業に充当することができるが、その事業は「大阪ミュージアム構想」「なみはやスポーツ振興基金」「文化振興基金」「福祉基金」「みどりの基金」「環境保全基金」「女性基金」「ゆとり基金」など8つが指定されている。(注:ふるさと納税の仕組み。給与収入700万円で夫婦と子二人のケース。所得税の税率10%。個人住民税所得割額293500円。地方公共団体に40000円を寄付した場合。寄付控除の対象から5000円が除外され、納税額としては残りの35000円が軽減される。軽減の内訳だが、まず所得税が確定申告によって35000円の10%、3500円が軽減され、還付される。個人住民税は6月に税額控除31500円が行われる。その内容は、基本控除が3500円、特例控除が28000円である。なお、特例控除の上限は、個人住民税の1割である29350円である。)

 2007年度の「政策推進公募型事業助成」の採択事業は次の5事業である。

堺市の「NPO法人きずなの会」、新湊校区福祉事業のまちづくり事業、557千円。内容は、高齢者の見守り事業、子育て支援事業、防災防犯事業、団塊世代の生きがいづくり事業、各種イベント、ふれあい介護講座。

「セルフサポートone by one」、発達障害を持つ子供とその家族への支援及び啓発事業。77万円。大阪府泉南郡岬町の旧孝子小学校で。

「性と身体を考えるネットワーク会議」、性的虐待を受けた子供たちをケアする人のためのスクルアップ研修。936千円。

東大阪市の「シスターフッド大阪」。暴力被害女性に対する支援。936千円で、ステップハウス運営、相談業務、自助グループのサポート。

「NPO法人しんぐるまざあずフォーラム・関西」ひとり親家庭を対象にグループカウンセリング事業を行う。100万円。

これらの団体とその事業を見ると、現行の福祉施策にでは十分にカバーできない活動領域を開拓しているものだということがわかる。この地域福祉基金からの助成は、かなり有効に働いているように思われる。

 

以上のような運用と管理の実績から、これからの各自治体の「地域福祉基金」は、次のような運営の工夫が求められる。(1)所管を明確に福祉保健部局におくこと。(2)積極的に地域福祉の制度のすきまで活動している団体や、先端的な活動に取り組む団体を支援すること。(3)その助成期間は単年度が原則だが、事業によっては3年〜5年の有期とする。また場合によっては助成期間の延長も認める。(4)一件あたりの助成額は十分に事業推進や拡大に資する大きさであること。(5)外部委員を入れた審査会を公開で行う。(6)新しく市民(法人含む)及び全国からの寄付金を継続的に集め、地域福祉基金を大きく造成する。目標としてはこれからの5年間に現在の3倍にするなどの数値目標を掲げる。そのための情報発信事業を拡大、充実することが求められている。(7)「ふるさと納税」制度も積極的に活用する。(8)財政部局との合意を下に、毎年度、福祉部局の予算で未執行となった事業の財源の50%を基金に積むなど、予算執行の工夫を行う。(9)基金の果実ばかりではなく、計画的な基金取り崩しを可能にし、助成団体の運営費(特に人件費)などに充当できるものとするなど、柔軟で使い勝手の良いものにする。ただし、運営費充当は事業が軌道に乗るまでの期間を限って行うことが望ましい。

 

7、生活協同組合の福祉基金との連携

 

 現在いくつかの生活協働組合が、「福祉基金」を造成し、ワーカーズコレクティブの立ち上げ支援等に活用している。この「福祉基金」による市民による地域福祉事業への助成は、組合員を第一の対象とするが、組合員の合意の下に一般市民に対しても開かれたものにしていくことが望ましい。特に相談事業などでは、多重債務の電話相談が最初は生協組合員の救済に始まっても、府県の消費者相談センターとの協働事業にするなど、地域の市民に広く開かれている場合が多い。また行政の「地域包括支援センター」との連携なども検討されて良い。

 

(1)グリーンコープ

 グリーンコープ生協連合は1988年に九州、山口、広島の石鹸派と呼ばれる25の小規模生協が結成した環境派の生協である。93年には新しい中期計画を採択して、「地域福祉」「環境・農業」「教育・文化」の三つの活動に取り組むことになる。939月には15万人の全組合員を対象にアンケートを行っている。その結果、「看るべき高齢者がいる」のが48.4%、「家族にハンディを持つものがいる」のが11.0%、「なんらかの福祉活動をする意思がある」のが76.3%、となどとなった。

 この結果を受けて、94年度には売上金の一部を割いて「福祉連帯基金」を設立し、在宅支援サービス事業、福祉情報の提供、組合員の共済事業、福祉生活用品の供給事業に乗り出している。(この連帯基金は2000年の介護保険事業開始に伴い、20033月に設立された、介護保険事業や介護保険事業外の福祉サービスを担う「社会福祉法人グリーンコープ」の事業の拡大によって2004年度に解散している。)

 2004年度になると、組合員一人一人が「参加と協同の理念に基づいて、広く支えあうため」に、毎月100円を拠出してつくる「福祉活動組合員基金」の検討を始める。この「組合員基金」は、グリーンコープ北九州では難産の末、2005年度に設立されている。グリーンコープ北九州は当時、組合員は約4万人。そのうち9割が参加するとして、年間4320万円の拠出金が集まる。この4千万円余を組合員の地域福祉活動の立ち上げ資金や運営資金の一部に充当して、社会的な共助組織を生協を母体として地域に広げることが目指された。

 筆者は当時、北九州大学法学部の教員であったため、この「100円基金」の草創の時に立ち会うことができた。この財源4千万円に対して、資金援助の公募に応じた団体の提案を審議する「基金運用委員会」の委員の一人として、プレゼンテーションを受けて審議、決定することに参与した。この4千万円は当年度に全額使い切ることが基金の趣旨であった。配食サービスのワーカーズコレクティブ、命の電話相談、家事サービスのワーカーズ、子育て支援のワーカーズなど多彩な事業提案があり、白熱した議論が交わされたことが想起される。この「100円基金」によって多数のワーカーズコレクティブやNPO法人が立ち上がった。これが、地域福祉のサービス利用が生協の組合員以外にも広く利用されることになり、地域福祉の基盤をつくったのは確かである。

この「100円基金」は2007年度現在では次のように成長している。グリーンコープ会員生協(組合員37万人)のうち福岡、佐賀、長崎、大分、山口など8生協で31400万円の基金があつまり、201件の助成が行われている。

家事サービスワーカーは広島市と廿日市市で1事業所。山口県の下関市、防府市、下松市などで2事業所。福岡県の北九州市、福岡市、中間市、遠賀郡、飯塚市、久留米市など9ヶ所。佐賀県で1事業所。長崎県では長崎市や諫早市など3事業所。熊本県では熊本市、八代市などで4事業所。大分県では大分市、別府市、臼杵市で3事業所がある。鹿児島県には鹿児島市と出水市に2ヶ所。宮崎県には宮崎市に1事業所がある。合計で25の家事サービスワーカーが活動しているが、このほとんどは立ち上げ時に、この「組合員基金」の支援を受けていると思われる。

また食事サービスワーカーは福岡県に6事業所、熊本と大分に1事業所があり計8事業所ある。

デイサービスは山口県に2事業所、福岡県に10ヶ所、熊本県に6ヶ所、大分県に2ヶ所、鹿児島に1ヶ所、計21事業所がある。

子育て支援サービスは福岡県に13ヶ所、熊本県に2ヶ所、大分県に4ヶ所、、宮崎県に1ヶ所、鹿児島県に1ヶ所の計21事業所。

 

(2)生活クラブ生協・神奈川

 生活クラブ生協神奈川も組合員一人当たり100円の「生活クラブ福祉助け合い基金」を設置し、地域の福祉活動団体に助成を行っている。2007年度の第1期では、8件、415444円を助成している。「てとてとあおば」、0-3歳児とその家族が一緒に集える場、37千円。「寺子屋」、小学生を対象に素読暗誦など、3万円。「ひよこクラブ」、子育て中のクラブ生協の組合員と地域の方も誘って集まる場、悩みの共有など、95千円。「親子であそぼ」、毎月一回のペースで遊びの場を提供する、9240円。「エコアクションチーム」、ナチュラルクリーニングの普及活動、3万円。「健康づくりワーカーズ」、講座開催と出前、99750円。「NPO法人ばんじい」、家事介護、育児支援など介護保険および介護保険外の独自ホームヘルプサービス、31500円。「若年認知症グループどんどん」、月に一回、川崎市内でレクリエーションを実施、72954円。

 

(3)生活クラブ生協・東京を母体とする「草の根市民基金・ぐらん」

 この基金は特に地域福祉を対象とするものではないが、市民の寄付を基礎とした基金であり、助成対象を広く環境や国際的交流、福祉などの市民活動である。1993年に生活クラブ生協・東京によって設立され、2004年度に運営主体をNPO法人コミュニティファンド・まち未来に移す。200710月に東京ランポとまち未来が統合され、現在はローカルアクション・シンクポッツまち未来が運営。「地域を豊かにするために必要な事業をつくりだし、継続した活動を定着させるために必要な「お金」「知恵」「情報」「仲間」について継続的な支援を行う事業の一つとしての助成事業」と位置づけられている。寄付は一人千円からで、全ての市民に開かれている。

 選考会を公開にし、寄付をした市民が選考過程に参加できる「ポイントアクション(事前投票)」という仕組みを持つ。また寄付をする人、助成先のNPO、運営するメンバーが一同に会して「草の根市民基金交流集会」を開催している。2007年までの11年間に92団体、3211万円を助成してきた。

2007年度の助成団体は次のとおり。「在日無年金問題関東ネットワーク」、国籍問題で無年金となっている当事者の支援、50万円。「どぜうの会(町田市)」、地下水の水質調査を実施する、14万円。「コミュニティスペースよるべ運営委員会(東村山市)」子供づれで気軽に参加できるコミュニティスペースの運営、40万円。「日本語を母語としない中学生のための日本語教室(町田市)」、高校入試に向けての日本語を母語としない中学生への支援、25万円。「NPO法人POSSE」、若者の就労状況を改善するための法律相談やセミナー、44万円。「NPO法人VIVID」、高次機能障害者の支援とその仕組みづくり、26万円。

 

8、共同募金の活性化とその活用

 

(1)共同募金の沿革

共同募金は都道府県の共同募金会(社会福祉法人)が主体で行っている地域福祉の財源調達方式である。実施には市町村社会福祉協議会が募集業務を請け負い、そこが集めた寄付金はほぼ8割が当該地域に還元され、、その市町村内の保育所や老人ホームなどの機材購入や修繕などや、当該社会福祉協議会の運営費に配分されている。その意味では、地域の資金を地域に還元する、という機能を果たしていると言える。

 共同募金は敗戦後間もない1947年に始められた。第一回には59千万円が集まり、主に戦災孤児の救済や失われた社会福祉施設の再建に使われたとされる(中央共同募金会のサイトから)。この59千万円は、現在価値で言えば1200億円から1500億円に相当すると考えられる。最近の2007年度の共同募金総額が約213億円であるから、その6倍から7倍の共同募金が、戦災の後がまだいたるところに残る地域から集まったことになる。これは、地域共同体のつながりがまだ強かったことや、助け合いや「お互い様」の意識が健在だったたこと、それに現在は寄付募集の主体が多様化していることもあって「共同募金離れ」があるのかもしれない。

 その後、1951年に社会福祉事業法の施行に伴い、共同募金は法的な位置づけを与えられている。この年に、同じく社会福祉事業法に社会福祉協議会の節が設けられ、全国で社会福祉協議会が設立されていく。

 1970年に法人税に寄付税制の優遇措置の現行制度が導入され、大分遅れて地方税の個人住民税の寄付税制が1989年に創設されている。

 1991年の社会福祉8法の改正で共同募金関連法制が施行され、2000年には引き続き、社会福祉事業法を社会福祉法に改める改正が行われている。

 現行の社会福祉法では、その第10章(地域福祉の推進)に、第1節、地域福祉計画、第2節、社会福祉協議会、の次に、第3節として「共同募金」が置かれている。この改正で新たに加わったのは主に次の点である。

第一に、共同募金の目的に「その区域内における地域福祉の推進を図るため」との規定が加えられた(第112条)。これは改めて、「共同募金は地域福祉推進のため」という目的を規定したものである。従来の目的は、「その寄付金をその区域内において社会福祉事業、更正保護事業その他の社会福祉を目的とする事業を経営するものに配分することを目的とする」であったが、この事業者等を「地域福祉推進」にかかる事業者という枠をはめたことにもなる。同時に、地域福祉にかかる事業者を社会福祉法人などにかぎらず、もっと広い事業者にも広げることを可能としたとも言える。ちなみに、NPO法はこの前年の1999年に成立している。

第二に、共同募金の配分委員会の規定を新設したこと(第115条)。すなわち「寄付金の公正な配分に資するため、共同募金会に配分委員会を置く。」なお、「共同募金会」は第1種社会福祉事業で、都道府県社会福祉協議会のある都道府県に置くことができる。実際の共同募金は市町村の社会福祉協議会が担っている。

第三に、災害に備えるために準備金の積立をできることとした。「災害の発生その他特別の事情がある場合に備えるため、共同募金の寄付金の額に厚生労働省令で定める割合を乗じて得た額を限度として、準備金を積み立てることができる。」(第118条)またその第2項では、共同募金会の区域外の社会福祉事業者に配分するために、この準備金の全部又は一部を拠出することができる、という共同募金会の相互援助の規程を設けた。

 

(2)共同募金額総額の減少とその要因

 ところで、共同募金の総額は1995年の2657900万円をピークに、毎年一貫して減少してきている(後掲の表1、及びグラフ1を参照)。2007年現在は、先にも触れたが2131800万円(一般募金151億円、歳末助け合い募金62億円)と、ピーク時の80%になっている。(実額では526100万円)の減である。つまり、市民の「共同募金離れ」の進行が止まらない、というのが現状である。(付表1、および付図1、を参照)

この傾向は、一般募金(赤い羽根募金)の最大の額を占める戸別徴収の実際の徴収組織である町内会や自治会の役員の高齢化や加入率の低下が進んでいることの反映だとも考えられる。なお歳末助け合い募金も同じような減少傾向を示している。もっともピーク時の1995年は、バブル経済が崩壊(92-93年)した直後であり、その後の長い景気低迷と雇用なき景気拡大によって、被用者の実質所得が減少を続けたことが経済的なバックにあることも推測される。

しかし、一方で、共同募金の持つ欠陥が、市民との距離を開き、他の募金や寄付などが多様化する中で浮き彫りになっていきたことも、「共同募金離れ」が進む原因の一つと考えられる。

中央共同募金会が実施した『共同募金とボランティア活動に関する意識調査(第2次)』でも次のような結果を見ることができる。この調査は、20006月から7月にかけて全国の18歳以上の男女3000人を住民基本台帳から無作為で抽出して行われた。調査員の戸別面接による聴取で回収できたのは2136サンプルで、回収率71.2%。

@「あなたは、昨年1年間に寄付をしましたか」については、「した人」が87%で、「赤い羽根募金」は75%。これはかなり高い数字だが、面接方式という調査方法のバイアスがかかっているかもしれない。最も多かった寄付先は「10月からの赤い羽根募金(戸別募金)」で56%、次は「お寺・神社等への寄付、おさい銭」で42%。「赤い羽根の街頭募金」は30%。なお「ボランティア団体、NPO」への寄付はまだ1.5%であった。

A「どのくらい寄付をしましたか」の質問では、一人当たりの合計の平均寄付額は5771円とこれはかなり多い。うち共同募金には平均で714円。赤い羽根募金では499円までがもっとも多く41%、500円から999円が36%、2000円までが16%となっている。

B「共同募金の理解度」に関する質問では、理解度が低く、それも前回の95年調査よりも下がっていることがわかる。共同募金の実施主体について「知っていた」のは30%(前回は33%)。「共同募金の寄付に税制上の優遇措置があること」を「知っていた」のは19%(22%)にとどまる。「目的や使い途についての説明を見聞きした」のは52%(59%)とようやく過半数。「共同募金は民間の活動」を「知っていた」のは39%、「民間の社会福祉の活動に使う」ことを「知っていた」のは43%。

理解度全体では10点満点で4.44で、前回よりも0.34低下している。

 C「共同募金をしたときに感じたこと」の質問では、「さわやか」が40%だが、「どのように使われているのか疑問」が33%、「強制感を感じた」のが11%で、両者合わせると44%とネガティブな受け止め方のほうが多い。

 D「あなたは身近な場所で、共同募金の寄付金が有効活用されている施設・団体をご存知ですか」という質問には、「知っている」としたのが17%。ほとんど知られていないという結果である。

 E「共同募金の使い途について、地域の住民が意見を出し合う場があったほうが良いですか」については、55%が「良い」としている。

 全体を通して、共同募金をだれが行っているか、どのように使われているか、などについて知られていないことが鮮明である。そのために、疑問を持ちながら、強制的に徴収されているという、「ボランタリーな寄付活動」とはいえない状況である。この状況では、共同募金に積極的に参加する人は、その効用を知っている少数の人に限られ、多くの市民(おそらく半数)からは敬遠されることは当然である。

 

(3)共同募金の改革提案への提案

 中央共同募金会は20075月に『地域をつくる市民を応援する共同募金への転換』という企画・推進委員会答申をまとめた。これは中央共同募金会第164回評議員会申し合わせとなっている。主な内容は次のとおりである。

@共同募金の実績額が毎年度3〜4%減少していること。そして共同募金としての機能低下や募金の減少の一因に組織運営の弱体化がある。市民参加による地域福祉を進める団体が増えてきた今こそ、共同募金が本領を発揮するチャンスである。

Aそのためにまず運動体としての性格や機能の強化が必要である。市町村組織の機能を強める。具体的には、市民参加の「市町村共同募金委員会」を設置し、実質的な助成先の選定を行う「審査委員会」を置く。

B合わせて都道府県・全国のキャンペーン型の運動体としての活動を強化する。

 

この15年の市民の「共同募金離れ」を、共同募金会の運動体としての性格や機能の強化によって克服しようとする企画委員会の意気込みは評価できる。特にNPOや社会福祉施設、自治会、企業などの参加を得た「市町村共同募金委員会」の設立と、その委員会の社会福祉協議会との連携は実現すべきものである。また配分金の実質的決定を市町村レベルで審査する「審査委員会」の設置も是非すすめたい。

しかし、この改革案の弱点は、共同募金会という組織の強化案に終始しているところにある。先の2000年のアンケート調査に見られるように、「共同募金離れ」は複数の要因から生まれていることはもっと重視されるべきで、その要因のうち共同募金会として取り組みが可能なことがらは組織強化のほかにも少なくない。その点を二つだけ指摘しておきたい。

第一に、共同募金について、それは誰が、何のために実施しているかをもっと積極的に市民に説明し、それを持続的、定期的に行うことが必要である。

第二には、そのためにも、まず最初にすべきことは、共同募金の使途について市民にもっと良くわかるように宣伝し、説明し、疑問に答えることで、この活動に最大の労力を集中しなければならない。「はねっと」などインターネット上でのこのキャンペーンは各都道府県の共同募金会ごとにかなり行われるようになっているが、まだ決定的に不十分である。戸別募金に応じた人、一人一人に使い途と感謝のメッセージを届けるのが、共同募金会と市町村共同募金委員会の第一の仕事でなければならない。

まず配分先決定時に全ての配分先の事業内容と配分理由を開示するべきである。これによって、地域の寄付金が具体的に地域に届けられていることが示される。このような情報の開示によって初めて共同募金の具体的な姿や働きがわかるからである。

次に、年度末には、市町村ごとに配分を受けた全ての事業者の「ありがとうメッセージ」を、寄付者に届くように公開する。それは社会福祉事業者だけではなく、配分金を受けた市町村社会福祉協議会と都道府県社会福祉協議会についても、その活動の成果を数字だけではなく、映像などで個別的に開示することは同様である。

このことによって、寄付者とそれを受ける事業体とが、またそこに働く人と、そのサービスを利用する人との「直接的な関係」をつくることが、まず大事であり、そこに信頼が生まれるし「共同募金離れ」を食い止める鍵がある。「個別性」と「直接性」、そして「ヒューマンストーリー」こそ、交流すべき価値ある情報だからである。

 この10月、京都市左京区社会福祉協議会からの共同募金に向けた回覧板では、区内の社会福祉事業者の「ありがとうメッセージ」と配分先についての情報がいくつか載せられていた。回覧板でもよいし、チラシでもいいのだが、各戸に数字ではなく、具体的な事例と言葉が届くようにすることで、共同募金を見直すきっかけになることはまちがいない、との感じを一層強くしたので付け加えておきたい。

 

おわりに 地方交付税への「地域福祉費」の算入

 これまで、限られた範囲ではあるが、小地域福祉の財源問題について見てきた。「CSWなど専門職について一般財源の確保」、「国や府県のモデル事業特定財源など補助金の確保」、「新しいモデル事業と地域外資源の動員」、「地域福祉基金の造成と活用」、「生活協同組合の組合員基金との連携」、「共同募金の再生と地域福祉への活用」など、である。

この他には地域福祉推進のための「地方税の超過課税」や「自主課税」の検討も行われて良い。それはちょうどグリーンコープなどの「100円基金」のように、薄く広く、住民に課税することを住民自身が選択することを意味する。このタイプの自主課税には、高知県から始まった「森林税」(住民税の均等割りに年間500円を上乗せする)が参考になる。この自主課税は、森林税の場合は「森林保全基金」などに積立て、間伐などの資金に充当しているが、「地域福祉税」の場合にも、先に検討した「地域福祉基金」に積み立てることとするほうがよい。すなわち、この追加的増税は確実に地域福祉に充てられることを明示しなければ、住民の納得を得にくいからである。

 最後に、普通地方交付税に「地域福祉費」の行政費目を新設することを提案したい。現在の普通地方交付税の算定に用いる基準財政需要額算定については、社会福祉費系統では「厚生労働費」として中項目があり、その下に「生活保護費」、「社会福祉費」、「保健衛生費」、「高齢者保健福祉費」が立てられている。このうち、「社会福祉費」の需要額を測定する数値は「保育所入所人員」、「前年度保育所延べ保育所入所人員」「前年度保育所支弁費」など5項目あるが、全て保育所系統である。

 「高齢者保健福祉費」は、2000年度に介護保険が導入されたのに伴って新設された項目である。

 いずれにしても現在、「地域福祉費」という需要額算定項目はない。「地域福祉費」については、市町村や都道府県にあっても、予算科目として独立しているところも少なくないと思われるが、その歴史は浅いと考え荒れる。伝統的には、老人福祉費、児童福祉費、障害者福祉費、生活保護費、母子福祉費という縦割りの予算科目が踏襲されている場合が多いのではないか。その中で、「地域福祉費」が立ち上がっている場合もあろうが、これを大きく育てていかなければならない。

 そのためにも、交付税の需要額項目に「地域福祉費」を創設する必要がある。介護保険では「高齢者保健福祉費」を立ち上げているのだから、福祉の総合化を進める中心的施策として「地域福祉」を立ち上げることが求められる。

想定される内容は、地域福祉計画策定費(5年計画で3年ごと見直し)、CSW設置費(中学校区配置を原則)、地域包括支援センター設置費(市町村で言えば高齢者福祉費から移管するとともに、保健士、社会福祉士、主任ケマネージャー、主任虐待防止法担当、権利擁護担当の法制担当などの設置費を含む)、消費者生活相談センターのうち多重債務者担当員設置費、校区相談・交流センター設置費、などが想定される。収入面では特定財源として、地域福祉基金からの運用益収入がカウントされてもよいが、この運用益収入は、基金を醸成するのを助けるために逆符号とする(運用益が多ければ、需要額にはプラスとなる)。

補正係数としては、校区小地域ネットワークの活動状況を密度補正で加算することや、社会福祉協議会の実施する研修会や小地域リハビリ、大字や校区ごとの「いきいきサロン」の実施状況(高齢者人口に対する参加者の割合など)を同じく密度補正で加算する。

すなわち、「地域福祉」を介護保険や障害者福祉と並び、全体を包括するサービス体系に導くよう、地方交付税での一般財源保障を行うことするのである。

なおそのための追加的財源については、消費税率の引き上げ(複数税率を前提に)と所得税の累進税率をある程度復元するなどの税制改革で確保することを検討する必要がある。

 

付表1、付図1、中央共同募金会ホームページ「共同募金の歩み」から。

全国の募金実績額(平成14年度〜16年度)

総額

平成16年度

平成17年度

平成18年度

金額

構成率

金額

構成率

金額

構成率

総額

22,668,299,541

100%

22,100,114,320

100%

21,705,266,458

100%

戸別募金

16,753,923,960

74%

16,324,367,165

74%

15,926,324,730

73%

街頭募金

446,910,974

2%

423,574,178

2%

421,477,811

2%

法人募金

2,370,809,610

10%

2,242,552,344

10%

2,219,757,761

10%

職域募金

844,117,208

4%

795,417,981

4%

839,684,673

4%

学校募金

319,387,558

1%

336,428,110

1%

333,015,371

2%

イベント募金

132,862,206

1%

140,522,379

1%

141,528,743

1%

その他

968,313,149

4%

973,468,734

4%

888,894,746

4%

NHK歳末

831,974,876

4%

863,783,429

4%

934,582,623

4%

※上記は、47都道府県の募金実績額を合計した額です。

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平成16年度 共同募金配分内訳

平成18年度 共同募金分野別配分額構成比内訳

配分総額:18,799,232,526

 

配分金額

配分全体に占める割合

高齢者福祉

2,624,165,961

14.0%

障害児・者福祉

2,027,060,416

10.8%

児童・青少年福祉

1,771,993,426

9.4%

住民全般を対象とする福祉

5,977,003,388

31.7%

歳末たすけあい

5,933,628,146

31.6%

災害等準備金

465,381,189

2.5%

合計

18,799,232,526

100%


平成16年度 共同募金分野別配分額構成比内訳

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昭和22年度〜平成16年度 募金実績額推移

(単位:千円)

年度

実績総額

一般募金

歳末募金

22

592,968

592,968

0

23

869,729

869,729

0

24

952,906

952,906

0

25

937,407

937,407

0

26

1,011,480

1,008,351

3,129

27

1,059,471

1,053,799

5,672

28

1,069,643

1,063,733

5,910

29

1,112,507

1,083,533

28,974

30

1,143,906

1,109,820

34,086

31

1,185,675

1,142,275

43,400

32

1,238,816

1,183,548

55,268

33

1,286,806

1,223,606

63,200

34

1,697,946

1,397,165

300,781

35

1,925,307

1,534,696

390,611

36

2,027,449

1,622,008

405,441

37

2,303,999

1,823,497

480,502

38

2,482,176

2,031,947

450,229

39

2,826,956

2,221,103

605,853

40

3,163,455

2,323,850

839,605

41

3,451,053

2,537,831

913,222

42

3,570,621

2,536,814

1,033,807

43

3,887,423

2,685,915

1,201,508

44

4,436,355

3,048,806

1,387,549

45

4,579,216

3,017,337

1,561,879

46

5,050,680

3,295,535

1,755,145

47

5,837,397

3,769,157

2,068,240

48

6,954,343

4,330,157

2,624,186

49

8,379,531

4,970,172

3,409,359

50

9,448,141

5,626,628

3,821,513

51

10,997,743

6,575,223

4,422,520

52

12,147,231

7,282,408

4,864,823

53

14,303,635

8,764,669

5,538,966

54

15,946,446

9,699,602

6,246,844

55

17,771,303

11,056,719

6,714,584

56

18,876,358

11,789,402

7,086,956

57

19,784,039

12,440,078

7,343,961

58

20,331,189

12,887,938

7,443,251

59

20,939,983

13,403,336

7,536,647

60

21,745,675

14,112,191

7,633,484

61

22,344,336

14,584,494

7,759,842

62

22,968,773

15,039,459

7,929,314

63

23,545,482

15,465,966

8,079,516

24,250,652

16,037,635

8,213,017

2

24,772,738

16,468,560

8,304,178

3

25,582,060

17,027,409

8,554,651

4

25,750,268

17,117,817

8,632,451

5

26,099,352

17,440,893

8,658,459

6

26,248,501

17,737,419

8,511,082

7

26,579,351

17,949,148

8,630,203

8

26,415,632

17,892,706

8,522,926

9

26,074,240

17,662,905

8,411,335

10

26,098,836

17,694,672

8,404,164

11

25,468,549

17,197,337

8,271,212

12

24,803,164

16,842,588

7,960,577

13

24,323,259

16,586,392

7,736,867

14

23,779,448

16,249,699

7,529,749

15

23,338,366

15,993,016

7,345,350

16

22,668,300

15,621,617

7,046,683

17

22,100,114

15,381,997

6,718,118

18

21,705,267

15,237,266

6,468,001

合計

728,438,272

485,615,591

242,822,681

共同募金実績額の推移

 

 

                       

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