TOPPAGE福祉政策>障害者制度のパラダイム転換

障害者制度のパラダイム転換

初出:自治日報「コラム自治」10年219
澤井 勝

パラダイム転換の障がい者制度改革

                                                                           奈良女子大学名誉教授  澤井 勝

 

 障害者自立支援法に代わる障害者総合福祉法制定と、国連の「障害者権利条約」批准に向けた国内法整備の動きが始まった。これは自治体の福祉政策と地域づくりに基本的な転換を迫る可能性を持っている。障がい者が保護の対象から生活や施策の主体となるからである。東京の町田市で大下勝正市長が「車いすで歩けるまちづくり」を70年台に始めて40年。ようやく当事者主体の制度改革が動きだしたようだ。

 

 22日、内閣府に置かれた「障がい者制度改革推進会議」の第二回会合が開かれ、「障害者基本法」の改革方向について論議された。今後隔週に開かれる。昨年128日に首相を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」が閣議決定で設置され、「障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に関する制度の集中的な改革を行」うとされている。この推進本部のもとに、1215日、「障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるため、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験者等の参集をもとめる」として、「推進会議」が置かれた。

 

 現行の障害者自立支援法については、今年の17日、厚生労働省と障害者自立支援法違憲訴訟原告・弁護団との間の基本合意で、「速やかに応益負担制度を廃止し、遅くとも平成258月までに、障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する」とされている。この基本合意では、障害者自立支援法が「立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担の導入等をおこなったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、心から反省の意を表明する」とした。

 

「推進会議」はこの反省もあって、メンバー24名のうち14名が障害者とその家族など障害当事者側である。112日の第一回会合では、福島瑞穂担特命当相が、@障害者基本法の抜本改正、A障害者自立支援法に代わる障がい者総合福祉法制定、B障害者差別禁止法の制定、の3点について夏までに骨格を示す方針を提案した。

 

 またこの「推進会議」の事務局担当室長は弁護士でポリオの障害をもつ熊本学園大学教授の東俊裕さん。昨年末に内閣府参与に任命され、当事者として会議を運営する。東さんは国連での障害者権利条約の審議では当時の政府代表顧問として議論に参加している。

 条約の批准とそれに先立つ関連国内法の改正、整備などに必要な期間は、当面これから5年としている。

 

 自治体の障害者施策としては、既に障害者基本法第92項に基づく長期的計画としての「障がい者計画」と、障害者自立支援法第89条に基づく障害福祉サービスに関する3ヶ年の実施計画的な「障がい計画」を持っている。この二つの計画は一体的に策定され、そのモニタリングも行われていると思われるが、これを根本的に見直していくことが必要となってくる。見直しの内容は「推進会議」の議論をフォローしながら、「障害者の権利条約」(200612月総会で採択、日本は20079月に署名したが未批准である。20084月に批准国が20カ国に達して条約として5月に発効している)の各条項を参照して、障害者差別禁止と人権保障の実効性ある仕組みや決まりを作っていくことである。

 

既に千葉県では堂本前知事時代になるが、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」が20061011日の本会議で全会一致で成立し、20077月から施行されている。また北海道でも2009331日に、「北海道障がい者及び障がい児の権利擁護並びに障がい者及び障がい児が暮らしやすい地域づくりの推進に関する条例」が制定、公布され一部施行されている。限界はあるがこれらの条例の意義は大きい。都市レベルでも具体的な就労支援政策と経営者や職業訓練機関とのネットワークの構築、関連法の改正や整備要求のとりまとめなど、地域での障がい当事者との協働が進むことを期待したい。

 

Copyright© 2001-2010 Masaru Sawai All Rights Reserved..