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窓口一本化という課題
                           奈良女子大学名誉教授 澤井 勝
                              (初出:『自治研なら』2017年3月号)

 
 
201727日の朝日新聞に次のような記事が載っている。「高齢者やこども、障害者向けの福祉サービスを一体で受けられる『地域共生社会』づくりへ、厚生労働省は実現までの道筋を示す工程表をまとめた。2020年代初頭の全面実施を目標に各制度の縦割りを段階的に排除。まず18年度から相談窓口を順次一元化し、障害者と高齢者の共通サービスを導入するため、7日に関連法案を閣議決定する。」これらを通じて「『我が事』・『丸ごと』の全面展開に向けて改革を忠実に実施していく」という。このため、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法、社会福祉法を一体として運用するための法改正も行う。

 この窓口の一元化、総合化と多様なサービスの複合的提供という、縦割りを横割りに転換する課題は、以前から利用者側から強く求められてきたものだ。

 この福祉サービスの一元化、あるいは総合化には、いくつかのパターンがある。たとえば、障害を持った母子家庭の母親の相談に乗っていると、その子供が引きこもりで不登校であったりする。その家族全体の困りごとををまとめて受け、サービスを複合的にアレンジするワーカーが必要だが、これがなかなか実現しない。この場合だと関連すると考えられるのは、障害福祉課と児童扶養手当担当課、それに教育委員会学校教育課、学校長、不登校支援NPOなどだが、これらの間の連携がない場合が多く、いちいち違う窓口を訪ねまわることになる。また各機関の間で、どこがイニシアティブをとって、サービスを複合的に利用してもらうか、調整するかの合意をつくることができていないことが多いのではなかろうか。

 この「工程表」では、まず18年度に窓口の一元化から始めて、ついで、それに並んで、高齢者と障害者などの複合的サービスを組み立て、活用できる解決力の構築が求められる。

 窓口の一元化では、現在、高齢者については「地域包括支援センター」が主に担い、障害者については「障害者相談支援センター」、生活困窮者(ひきこもり、DV被害者、年金が低い高齢夫婦のみ世帯、独居高齢者、いろいろな事情で生活保護以下の低所得の方など)は生活自立支援相談センター、子育て支援センターなど縦割りになっている窓口を、身近な場所で一元化することをまず求めている。

 その例としては、大阪の豊中市で機能している「福祉なんでも相談窓口」が紹介されている。これは校区ごとに地域自治会館、老人憩いの家、コミュティプラザ、デイサービスセンターなどで開かれている。担当者は無償の住民ボランティアで、大体毎週1回、午前10時から12時間までが多いが、原田校区のように15時まで開いているところもある。市役所の案内では、「福祉サービスや制度に関すること、どこに相談すればよいのかわからないことでもお気軽にご相談下さい。民生・児童委員、校区福祉委員などが相談に応じ、必要な場合には専門機関への連携も行っています。」この専門機関とはコミュニティ・ソーシャルワーカーを指す。この相談窓口は大阪の堺市で言えば、校区ボランティアビューローである。

 高齢者と障害者の複合的サービスの提供では、「工程表」は、本年の介護保険制度などの改正において、介護保険制度と障害福祉制度に「共生型サービス」を創設するとし、介護保険事業所と障害福祉事業所が相互に乗り入れることを可能にするとする。診療報酬、介護報酬の見直しを行う。これは、高齢者と障害者、子どもが同じデイハウスで暮らす「富山型デイハウス」(地域密着型サービスのうち小規模多機能型居宅介護が相当する)を15年ぶりに全国版として引っ張り出すことを意味する。

 もう一つは、「地域福祉計画の充実」について述べられている。すなわち、福祉分野の共通事項を記載し、策定を努力義務とするとしている。事実、高齢者と障害者、児童福祉、生活困窮者を統括して見渡すことができる視点を提供するには「地域福祉計画」が適合している。これも大阪の堺市の場合だが、先日開かれた「地域福祉計画推進懇話会」の出席メンバーは、地域包括支援センター、障害者自立支援センター、老人クラブ連合会、若者サポート支援センター、社会福祉施設協議会、自治連合会、校区福祉委員会協議会、子ども食堂の運営を受託したNPO、など福祉分野をおおむねカバーする多彩なメンバーである。

 いずれにしても、これから問われるのは、第一に、校区レベルでの総合的相談窓口の配置、第二にそれをサポートするコミュニティ・ソーシャルワーカーないし生活支援コーディネーターの配置、そして第3に高齢者と障害者など複合的サービスが可能な事業所の立ち上げとそれの支援である。これらが難しい地域では、窓口の一本化では、地域包括支援センターの機能の拡充によって、高齢者、障害者、生活困窮者、ひとり親の相談とケアプラン策定まで担うことも検討されてよい。

 

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